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東京家庭裁判所 昭和41年(家イ)795号 審判 1966年3月29日

本籍 韓国慶尚南道 住所 新潟県

申立人 金ヨシ(仮名)

本籍 申立人に同じ 住所東京都

相手方 金正全(仮名) 外一名

主文

相手方金正全と相手方金哲との間に父子関係の存在しないことを確認する。

理由

申立人はもと山田ヨシと称する日本人であつたが、韓国人である相手方金正全と昭和二四年頃日本本土において事実上の夫婦関係に入り、同二五年九月四日婚姻届を、また同四〇年一〇月一六日離婚届を、いずれも所轄戸籍機関に提出し、受理された。申立人は、これより先昭和二八年七月一五日頃相手方金正全と別居し、爾来同一人と一度も面接することなく今日に至つたが、この間同三三年一〇月頃からは日本人である申立外木川昇と事実上の夫婦生活を継続してきたところ、同人の胤を宿し、同三四年九月二六日相手方金哲を出産した。

以上の事実は、当事者間に争いがなく、当裁判所の取り調べによつてもこれを認め得るところである。この事実によれば、申立人は相手方金正全との婚姻により、遅くとも平和条約発効の日である昭和二七年四月二八日以降日本の国籍を喪失し、韓国人となつたもので、その後木川との婚姻外関係によつて出生した裕もまた韓国人である。

ところで、本件について日本の裁判所が裁判管轄権を有することは、申立人及び相手方らの住所がいずれも日本にあることから肯定されるところ、その準拠法は、法例第一七条に則り、相手方金哲出生当時の母である申立人の夫たる相手方金正全の本国法即ち韓国法である。而して韓国法によれば、夫婦が別居中妻が他男と通じて儲けた子については、利害関係人から親子関係不存在確認の審判の申立が家庭法院に対してなされ得る。(韓国民法第八六五条、第八六二条、家事審判法第二条第一項乙類二、権逸「韓国親族相続法」一一四頁参照)。

当裁判所は、以上の事実関係及び法律関係に鑑み、相手方金正全と相手方金哲との間に父子関係の存在しないことは明らかであるから、当事者間のその旨の合意に相当する審判をなすべきものとし、家事審判法第二三条に則り、主文のとおり審判する。

(家事審判官 高野耕一)

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