東京家庭裁判所 昭和48年(家)14286号 審判 1974年2月28日
申立人 小峰弘(仮名)
被後見人 中村良友(仮名)
主文
申立人の被後見人中村良友に対する後見人就職後その終了に至るまでの間の報酬を金二〇〇万円とする。
理由
申立人は被後見人中村良友(以下被後見人と称す)に対する後見人報酬付与の審判を求め、申立人は昭和四六年一一月一五日被後見人の後見人に選任されて以来、被後見人の財産関係の整理とくに死亡した両親の相続財産の調査と相続債務の整理、そして被後見人の生活維持に腐心し、昭和四八年一月一八日被後見人が成年に達した後も、従前からの財産整理の未解決部分が残り、ようやく昭和四八年一〇月九日その未解決部分の整理も完了したので、ここに右後見事務の報酬として金二〇〇万円以上の付与決定あることを求めて本申立に及ぶものである、と述べた。
当庁昭和四六年(家)第一〇九八九号、一〇九九〇号事件審判書謄本、当庁昭和四六年(家)第二〇〇三四号後見監督事件記録、筆頭者中村美津子の戸籍謄本、申立人の後見事務管理計算書および申立人、被後見人の各審問結果によると次の各事実を認定することができる。
一 被後見人の父尹釆元、母中村美津子は昭和四六年八月二日自動車衝突事故により死亡し、右父母死亡による後見開始により被後見人のために昭和四六年一一月一五日弁護士たる申立人がその後見人に、高木ひろ子がその後見監督人に選任されたこと、
二 申立人の後見事務は当時一八歳で高校生のしかも一人暮しである被後見人の生活維持とその監督のほかに、前記両親の交通事故死に対する自賠責保険金の請求および相手方車輌の損害との調整問題、さらに亡父の合計金二、五〇〇万円を超える数多くの相続債務の整理、そして各種生命保険金の受給とその管理および問題をはらむ借地権とその地上建物の右相続債務弁済のための売却処分等難解な課題をかかえていたこと、
三 申立人は後見人就職後直ちに右課題に取り組み、債権者から請求されている相続債務については可能な限りその額の譲歩を求めて整理し、現在長野地方裁判所に係属する前記交通事故に関連する保険金求償債権金七〇万円の支払請求事件を残して全部弁済を完了し、自賠責保険の関係も亡父の過失の存否および被害者請求との関連において慎重な処理を要し昭和四八年八月一四日に至りようやくその受給を完了し、あわせて千代田火災保険相互会社に対する生命保険金の請求もその後の昭和四八年一〇月九日に受給を完了し、他の生命保険金とあわせて合計金二、九〇〇万円余は前記債務弁済の一部および被後見人の生活費に支出した以外は貸付信託預金化し、現在内金一、〇六〇万三、五八六円を被後見人に引渡し、残金一、一二四万三、三三三円は被後見人および後見監督人の依頼により申立人において保管し、その後見事務としての財産整理を完了していること、
四 被後見人はその後調理師学校に進学し、現住居に居住して、申立人の過去二年間にわたる後見事務が適正でありかつ満足すべきものであつたとしていること、
五 申立人の被後見人が成年に達した昭和四八年一月一八日以降の前記財産管理整理事務は被後見人自ら処理するには極めてむずかしく、しかも従前よりの継続事務として申立人がその任にあたる必要性が極めて高い事情にあつたもので、被後見人からも特に依頼されてなしたものであるから、民法八七四条六五四条にもとづく後見終了後における必要処分の範囲内の事務と解するのが相当であること、
以上認定諸事情を勘案するとき、申立人の被後見人に対する後見事務の報酬として金二〇〇万円を付与するのが相当である。
よつて主文のとおり審判する。
(家事審判官 渡瀬勲)