東京家庭裁判所 昭和48年(家)8678号 審判 1974年2月26日
申立人 野沢秋造(仮名) 外一名
主文
一 別紙目録(一)における被相続人野沢昌一の墓地使用権の承継者を申立人野沢秋造と定める。
二 別紙目録(二)における被相続人野沢昌一の墓地使用権の承継者を申立人野沢澄子と定める。
理由
一 申立人野沢秋造は別紙目録(一)における被相続人野沢昌一の墓地使用権の承継者の指定を求め、申立人野沢澄子は同目録(二)における同被相続人の墓地使用権の承継者の指定を求めた。
二 墳墓の所有権、使用権は民法第八九七条第一項の規定に従い、祖先の祭祀を主宰すべき者が被相続人により指定されているときはその者がこれを承継し、その指定がないときは慣習に従つて祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する。しかし本件においては記録を調べてみても、被相続人昌一が祖先の祭祀を主宰すべき者を定めたことを認めるに足りる証拠がなく、また同法第八九七条第一項にいう「慣習」が明らかであるものとも認められない。
そこで更に記録を検するに、被相続人昌一は従前から別紙目録(一)及び(二)の墓地使用権を有して居つたもので、同人の死亡後前妻側の相続人と、後妻側の相続人が二派に別れて、右墓地の承継をめぐつて対立した形になつているが、同目録(二)の墓地には前妻かずえ、前妻との九女裕子の分骨その他の親族が埋葬してあつて、従前前妻の子である申立人野沢澄子において管理し、その費用を支弁したこともあつたこと、同目録(一)の墓地については右裕子の遺骨の一部埋葬もあるが、後妻側の相続人において特にその承継について関心が深く、申立人秋造は後妻側の養子であること、前妻側の相続人及び後妻側の相続人は概ね目録(二)の墓地については前者の側の者が、目録(一)の墓地については後者の側の者が承継すれば満足すべき意向を示しているものと認められる。そこで諸般の事情を綜合すると記録上前妻側の相続人の代表とも目しうべき申立人澄子を右目録(二)の墓地につき、申立人秋造を右目録(一)の墓地につき権利を承継すべき者と定めるのが相当である。
よつて主文のとおり審判する。
(家事審判官 長利正巳)