東京家庭裁判所八王子支部 事件番号不詳 決定
少年 N(昭一九・四・一生)
主文
少年を東京保護観察所の保護観察に付する。
理由
一、非行事実
昭和三七年七月二五日付司法警察員作成少年事件送致書記載の犯罪事実及び昭和三七年七月三〇日付追送致書記載の犯罪事実の記載を引用する。
二、上記事実に適用すべき法案
刑法二三五条
三、主文記載の保護処分に付する事由
少年の非行事実は前記のとおりであるが、少年の非行の態様ならびに性格環境等に鑑み相当期間保護観察に付することが、少年の健全な育成を期するため必要であると認められるので、少年法第二四条第一項第一号少年審判規則第三七条第一項により主文のとおり決定する。
(裁判官 坂本謁夫)
別紙一
原審の決定(東京家裁八王子支部 昭三七・八・二二決定)
参照 少年法第二四条第一項第三号
主文
少年を中等少年院に送致する。
理由
(犯罪事実)
少年は
一、昭和三七年四月中旬頃の午後〇時頃、東京都調布市○○××番地△△電子工業株式会社製造工場において、東京都港区芝田村町四丁目一四番地、前記会社社長イイヤーミルベラー(二九歳)所有のリアルトン、トランヂスターラジオ一台(時価一〇、〇〇〇円相当)を窃取し
二、同年六月一五日頃の午後〇時頃、東京都武蔵野市○○×丁目××番地△△工業株式会社において、同社代表取締役松○○夫所有のトランヂスターラジオ一台(時価八、〇〇〇相当)を窃取し
三、同年七月一八日頃の午後〇時頃、前記会社において、前記松○○夫所有のトランヂスターラジオ一台(時価五、〇〇〇円相当)を窃取したものである。
(適条)
刑法第二三五条
(要保護性)
少年の性格及び前記非行並に鑑別所において新入の少年に対して所謂リンチを加えたことなどから総合して収容保護を必要とするものと認めるから少年法二四条一項三号を適用して主文の通り決定する。(裁判官 村崎満)
別紙二
抗告審の決定(東京高裁 昭三七(く)八〇号 昭三七・一〇・二五刑一〇部決定 附添人抗告)
参照 少年法第三三条第二項
主文
原決定を取り消す
本件を東京家庭裁判所八王子支部に差し戻す。
理由
本件抗告の要旨は、少年を中等少年院に送致する旨を決定した原決定の処分が著しく不当であるというのである。
よつて、一件記録を精査し、且つ当審の事実取調の結果をも斟酌し、これらに現われた本件非行事実の罪質、態様、動機、少年の年令、性行、経歴、生活環境、家庭の事情等諸般の情状を総合考察するに、少年は性格的には自己顕示性及び気分易変性が強く、情緒的に不安定で衝動的に実行に移し易く、且つ協調性を欠く傾向があり、又二年半位前から盛り場に出入して不良の徒と交際をしており、且つ前に一回窃盗罪により検挙された前歴があり、且つ本件により少年鑑別所に収容されるや件間の少年と共に新入の少年に対していわゆるリンチを加えた事実もあるが、本件非行はいずれも小使銭欲しさに自分の職場に置いてあつた物を窃取したものであつて、いずれも犯情が比較的軽く、又いわゆるリンチ事件もさ程悪質なものではなく、なお少年には実父母があるが、少年の両親は少年に自動車運転の技術を身につけさせ、実父の監督の下に自動車による運送業をさせたいと希望しており、少年も亦深く前非を悔い、将来は自動車運転の技術を習得して実父の監督の下に自動車による運送業をしたいと希望しているが、少年の両親には或る程度の保護能力があるものと認められるので、適当な専門的指導者があれば、両親の監督と相い俟つて少年を矯正することができるものと思われ、結局少年を保護観察所の保護観察に付さずに、これを中等少年院に送致する旨の決定をした原決定の処分は著しく不当のものというべきである。
よつて、本件抗告は理由があるから、少年法第三三条第二項、少年審判規則第五〇条により、原決定を取り消し、本件を東京家庭裁判所八王子支部に差し戻すこととして、主文のように決定をする。(裁判長判事 加納駿平 判事 河本文夫 判事 清水春三)