東京家庭裁判所八王子支部 平成17年(少)1013号 決定 2005年6月08日
少年 A(昭和63.4.×生)
主文
この事件を東京地方検察庁八王子支部検察官に送致する。
理由
(非行事実)
少年は、平成17年1月から、□□○○郡○○町所在の○○牧場に寄宿して稼働していた者であるが、同牧場主の長男であるBに対して恋愛感情を抱くようになり、Bとの間で2回にわたり性関係を持つに至ったが、その後のBの言動から、Bには少年に対する恋愛感情がないと感じ、このままでは単なる性関係の相手にされてしまうことを危惧して、Bから離れようと考えたものの、義母との関係が悪いため養父の下には戻れず、自分は行くところがないなどと思い悩み、遂にはBが大切にしているBの母を殺害すれば、Bは少年のことを嫌い、少年も捕まってBから離れることができると考えて、Bの母であるCの殺害を決意するに至り、平成17年4月22日午前5時20分ころ、□□○○郡○○町○○××番地の×D方東側敷地内において、C(当時50歳)に対し、殺意をもって、同女の腹部、大腿部、頭部等を所携の牛刀(刃体の長さ約21.3センチメートル)で複数回突き刺すなどし、同女に腸管損傷を伴う腹部刺創等の傷害を負わせ、よって、同月27日午前4時45分ころ、同町△△××番地○○病院において、腹部刺創による腹膜炎により同女を死亡させて殺害した。
(法令の適用)
刑法199条
(本件を検察官に送致する理由)
1 本件は、牧場に住み込みで働いていた少年が、恋愛感情を抱いていた男性との関係を解消するために、その母親を殺意をもって包丁で複数回にわたり突き刺し、数日後に腹膜炎を発症させて死亡させた事案である。これは、17歳の少年が、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であるから、少年法20条2項本文の要件を満たし、原則として検察官に送致すべきものである。そこで、同項ただし書所定の事情を考慮し、本件において刑事処分以外の措置が相当と認められるかについて、以下検討する。
2 まず、本件について、その動機、態様及び犯行後の情況等その犯情をみると、少年は、何らの落ち度もなく、むしろ牧場において少年の面倒を見てくれていた被害者を、その長男との関係を解消する目的のもとに殺害しており、この動機それ自体は、何よりも尊ばれるべき生命の重さを顧みない、自己中心的かつ短絡的なものであって、何ら酌量の余地はない。また、少年は、あらかじめ台所から、切っ先が鋭利で、刃体の長さ約21センチメートルにも及ぶ、殺傷力の高い牛刀を持ち出し、朝の牧場の仕事に出かけようとする被害者を待ち伏せて、無防備な被害者の腹部目がけてこれを突き出し、10センチメートル以上に及ぶ刺創を負わせた上、逃げまどい抵抗する被害者に対し、さらに大腿部、頭部、腹部を複数回にわたって突き刺すなどしており、犯行態様は執拗かつ残忍である。被害者は、○○という難病を患って入院中の夫になりかわり牧場経営を支える一家にとっては重要な立場にあったところ、50歳という若さで突如として生命を絶たれたのであって、その無念さは察して余りある。また、かけがえのない家族を奪い、残された遺族を悲嘆の淵に陥れたのみならず、牧場経営の要である被害者の死亡により、今後の牧場経営にも深刻な影響が懸念されるのであって、本件の結果は真に重大である。当然のことながら、遺族の処罰感情も強い。しかしながら、少年及びその保護者から、遺族に対して損害賠償等の慰謝の措置はまったく講じられていない。また、少年は、現時点においては、自己の行為や結果の重大性を認識しているとは言い難く、真摯な反省や悔悟があるとはいえない。以上によれば、本件犯行が計画的とまではいえないことを考慮しても、その犯情は極めて悪質といわざるをえない。
3(1) ところで、少年が本件犯行に至った動機は上記非行事実記載のとおりであり、これは主に少年の供述とこれを裏付ける関係者の供述等を総合して認定したものであるところ、その内容は、およそ一般の感覚からは理解に苦しむ特異なものであることは否定できない。そこで、このような動機を生じた少年の精神状態には責任能力の点で問題がなかったかどうか、疑問がないわけではない。また、この点で問題がないとしても、このような動機形成に少年の性格傾向等の資質面やその生育歴等の環境面がどのように影響しているかは、この動機の特異性ゆえに、本件の犯情を評価する上では十分検討すべきところと思われる。
(2) まず、責任能力の点であるが、受託鑑定者医師○○作成の鑑定書は、少年は行為障害ではあるものの、犯行時における是非善悪を弁識し、その弁識に従って行為することのできる能力を十分に有していたとしており、鑑別結果通知書添付の精神科診断票においても同旨の判断が示されている。また、少年には覚せい剤を含む薬物の使用経験があり、その後遺症によって稀に幻視を生じることがあったが、少年自身そうした異常体験が本件に影響したことを否定している上、上記鑑定書では幻視の程度は軽度であるとされていることからすると、本件犯行が薬物の影響によって引き起こされたものとも認められない。そして、他に少年が病的な精神疾患に罹患していたことを窺わせるような事情はなく、本件犯行時少年の責任能力を減じるような状況にあったとは認められない。
(3) そこでさらに、上記動機の形成に、少年の資質面や環境面が与えた影響について検討する。
少年は、幼少時に実父母と離別し、養父に引き取られ育てられてきたが、その間、義母が何度も交代し、現在の義母との間には確執があるなど、養育環境が不安定で家庭が落ち着ける場所とはなり得ない状態であった。養父からは厳しい体罰を受けることもあり、養父に対する恐怖心から自分の感情を率直に言えないような関係となり、その一方で養父の強圧的な態度に対する反発も強くなっていった。そのような中、少年は、小学校高学年のころから万引きを始め、中学生のころからは覚せい剤、シンナーの使用や、いわゆる援助交際などを行い始め、中学3年生のときには親族の勤務するパチンコ景品交換所から現金約79万円を盗んで長期の家出をし、無銭飲食が発覚して保護されたという件でぐ犯事件として送致され、平成15年1月に東京家庭裁判所より保護観察決定を受けた。しかし、その後も義母との折り合いは悪く、家出を繰り返し、LSDなどの薬物を使用するなど、問題行動が続いていた。平成15年6月から1年間は□□の牧場において住み込みの仕事をし、平成16年末から再び□□に行き何度か牧場を転々とした後、平成17年1月から本件の○○牧場において稼働を始めている。
鑑別結果通知書及び少年調査票においては、少年は、強圧的な養父の下で感情や気持ちを率直に表現できなかったことから、敵意や憎悪といった感情をはっきりと言語化できず、無意識に蓄積して混在させる状態となっていた上、自分に自信がなく無力感を抱きやすいために困難な場面になると投げやりな行動に走る面もあって、そうした傾向が、被害者の長男の態度に触発されて敵意や憎悪を爆発させることになった旨が指摘されている。
これらによれば、たしかに少年の家庭環境や生育歴に不遇な面があり、その影響を受けた少年の性格傾向が、本件犯行動機の形成に相当程度の影響を与えたものと認められる。しかし、他方で、少年は知的能力は正常であって、前記鑑定書等において発達障害の存在も否定されており、□□の牧場で1年間勤務し、また○○牧場においても本件までは特に問題を起こすことなく稼働するなど、一定の社会適応力を持っているものと認められることからすると、少年の生育環境等がその人格形成に与えた影響や少年が現に抱える資質面での問題性は、本件について刑事罰をもってその責任を問うのが少年の健全育成の観点から不相当といえるほどの特別の事情とはいえず、他にそのような事情は見受けられない。そうだとすると、本件において、少年の資質面や環境面がその動機形成に与えた影響は、本件の犯情の悪質性を特段減ぜしめる理由とまではいえないというべきである。
(4) ところで、少年が資質面で抱える問題性は前記のとおり大きく、鑑別結果通知書及び少年調査票の個別意見の中には、少年が本件の重大性を実感を持って受け止め、罪障感を抱けるようになるためには、自他を尊重する人格発達が伴わなければならず、現在は意識化されていない自分の衝動や感情に目を向けることが必要で、そのためには体系だった専門的な教育施設である少年院での処遇が適切である旨の意見がある。そして、少年の抱える問題性に対する矯正教育の点のみを考えると、少年院での個別的処遇の方がより効果的であるとも思える。しかし、少年法20条2項が定められた趣旨に鑑みれば、同項に該当する事件については、処分の有効性の観点から保護処分と刑事処分とを並列させて選択できると考えるべきではなく、犯情等を中心に検討する中で、あくまで刑事処分を相当としない特別の事情があって初めて、保護処分の選択自体が許され、そこで刑事処分と保護処分の有効性を比較衡量して適切な処分を選択する段階に移ることができるというべきである。そうすると、保護処分が刑事処分よりも少年にとって有効適切であるという事情を、少年法20条2項ただし書の適用にあたって、直ちにこれを考慮するのは相当でないというべきである。
4 以上をまとめると、本件犯行における犯情の悪質性は極めて高いというべきであるところ、少年の家庭環境、生育歴等の環境面や、それに基づく少年の性格傾向等の資質面が、理解困難な動機の背景となっている面があるとしても、それが上記犯情の悪質性を減じるまでの事情とはなりえていないというべきであって、本件については、刑事処分以外の措置が相当であるとはいえない。
よって、少年法23条1項、20条2項本文を適用して、この事件を東京地方検察庁八王子支部検察官に送致することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 阿部浩巳 裁判官 本間陽子 能登謙太郎)
〔参考〕 刑事審(函館地裁 平17(わ)137号 平18.3.23判決)
主文
被告人を懲役5年以上10年以下に処する。
未決勾留日数中210日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、少年であるが、平成17年4月22日午前5時20分ころ、□□○○郡○○町○○××番地の×D方東側敷地内において、C(当時50歳)に対し、殺意をもって、同女の腹部、大腿部等を所携の牛刀(刃体の長さ約21.3センチメートル、平成17年領第189号の1)で複数回突き刺すなどし、同女に腹部刺創等の傷害を負わせ、よって、同月27日午前4時45分、同町△△××番地○○病院において、同女を腹部刺創に起因する腹膜炎により死亡させて殺害したものである。
(証拠の標目)
<編中略>
(事実認定の補足説明)
弁護人は、被告人には被害者を殺害する動機が全く見当たらないのであるから、被告人に殺意があったとするには疑問があるという。
1 関係証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1) 被告人は、犯行の直前、被害者方台所から、刃体の長さ約21.3センチメートルの牛刀1本を持ち出し、被害者が毎朝牛舎に向かう際に通る被害者方裏口階段下の建物の陰に身を隠し、被害者を待ち伏せした。被告人は、被害者が階段を降り、建物の壁沿いに右に曲がろうとしたとき、右手で牛刀の柄を握り左手を添え、自己の腹部付近に引きつけて構えた体勢から、右足を1歩踏み込み曲げていた肘を伸ばし、牛刀を被害者の右腹部に突き刺した。被告人は、階段方向に身体を向けて座り込んだ被害者に対し、その正面に回り込み、足をばたつかせるなどしていた被害者の足を手で振り払い、牛刀を逆手に持ち替え、被害者の大腿部を刺した。さらに、被告人は、四つん這いで逃げようとする被害者の右肩を掴んで、その頭部を牛刀で切り付けた上、立ち上がろうとした被害者の左腹部を牛刀で突き刺した。
(2) 被害者は、被告人の刺突行為により、<1>右腹部(右季肋部)に創口5センチメートル、腹腔に入り肝臓に達する深さ10.8センチメートルの創傷、<2>右大腿部に深さ7.5センチメートルの創傷、左大腿部に3.5センチメートルの創傷、<3>頭部5か所に弁状切創、<4>左腹部に創口5センチメートル、腹壁を貫通し腹腔に至り腸間膜を貫通する創傷を負った。
2 被告人は、当公判廷においては、「言いたくない。自分でも分からない。」などと述べるにとどまり、被害者を牛刀で突き刺した動機について明らかにしていない。一方で、被告人は、捜査段階では、「好意を寄せていた被害者の長男との関係が発展する見込みのないままずるずると性交渉を持つことが耐えられなくなり、このような関係を終わらせるため、長男が大事に思っている被害者を傷付けることで、長男を自分から離れさせ、自分の長男に対する気持ちも吹っ切ろうと思った。」旨述べている。
確かに、被告人には被害者に対する憎悪やその原因となる被害者との諍いなどは見当たらないのであり、被告人自身、捜査で述べた(被告人の述べるところによれば、被告人が選択した)動機に実感あるいは現実感を持てないでいること、それ故に当公判廷での供述に至ったであろうことがうかがえる。
ところで、少年鑑別所の鑑別の結果及び家庭裁判所の調査の結果によれば、被告人の資質、行動傾向上の特徴として、被告人は、愛情欲求が強く、愛情欲求を満たすため愛着対象を求める気持ちが一貫して強いこと、被告人は、内心に抱える期待は過大であり、自分の気持ちが叶わないと被害感を持ち、内向させている攻撃性を爆発させやすく、欲求不満状態を一気に断ち切る短絡的な行動に至りやすいこと、被告人は、養父を義母と取り合うという三角関係に囚われてきており、男性は被告人にとって依存対象であり理想化していて攻撃を向けることはないが、女性については自分を捨てた実母や養父との関係を邪魔する義母のイメージを反映させており、男性と親しくする女性に強い嫉妬心を向けがちであること、被告人は、義母への嫌悪を通じて、女性の性的要素に関する否定的イメージを抱いており、自らの女性性について受け入れがたく感じていること、被告人は、本来ならその都度生起していたはずの相手に対する憎悪、敵意、恐怖といった悪感情をはっきり意識し言語化することができず、相手と対峙することなく、現実場面から逃避する形でやり過ごすことを繰り返してきたため、無意識のうちに憎悪、敵意、恐怖から生ずる攻撃衝動を混然とした状態で蓄積していたことなどが指摘できる。このような被告人の資質、行動傾向上の特徴を踏まえて考察すれば、被告人から好意の気持ちを打ち明けられた被害者の長男の本件犯行の数日前の態度は、被告人にとって不誠実で、被告人の好意や期待を裏切るものであり、しかも好意を抱いた長男から単なる性的欲求の対象とみなされていたことは、被告人にとって相当に屈辱的に感じられたと思われる。また、住み込み先である被害者方に長男との関係から居づらくなり、行き場所のなさを抱えていた被告人にとっては、かなり追い詰められた状況にあったと思われる。従来であれば、被告人は家出や薬物に逃避していたであろうが、当時、被告人にはそのような逃げ場所すらなかったのである。そうした中で、裏切られた思いや屈辱感から生ずる攻撃衝動を処理することができず、長男に対してではなく、長男の身近にいる存在で長男が大切にしていた女性である被害者に攻撃を向けたものと推察される。
そうすると、被告人には被害者に殺意を抱く動機が存在したのであり、ただ、被告人がそのような動機あるいは動機形成過程をはっきり意識し言語化できていないだけであって、弁護人のいうように被告人に被害者を殺害する動機が全く見当たらないということではない。
3 以上の検討によれば、被告人に殺意があったことは優に認めることができる。
(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法199条に該当するところ、所定刑中有期懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で、少年法52条1項により、被告人を懲役5年以上10年以下に処し、刑法21条を適用して未決勾留日数中210日をその刑に算入することとし、訴訟費用は刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の事情)
事実認定の補足説明の項1(1)(2)で認定したところによれば、犯行態様は執ようかつ残忍で凶悪なものといわなければならない。殺意を抱くに至った過程をみても、被告人の裏切られた思いや屈辱感から生じた攻撃衝動を無関係の被害者に向けたものであって、短絡的かつ自己中心的なものと評せざるをえない。被害者は、二男一女を育て上げ、○○を患い入院治療中の夫に代わって酪農業を支える存在であったのであり、住み込みで働いていた被告人にも好意的に接していた。そのような被害者が、理由も分からないまま、突如として、被告人の凶行によって、50歳という若さで人生の幕を閉ざされたのであって、その無念さは筆舌に尽くせない。かけがえのない被害者の生命を無惨にも奪われた遺族の悲嘆も甚大であり、その心情にかんがみれば、被告人に対し厳罰を望むのも至極当然である。また、被害者が支えていた酪農業への深刻な影響も懸念される。結果は誠に重大である。被告人は、その公判供述に照らしても、未だ本件と真摯に向き合うことができず、心を閉ざしており、罪障感を持てない状況にある。
被告人の抱える資質、行動傾向上の問題点は前記認定のとおりであり、家庭裁判所の調査の結果によれば、被告人は、中学3年時に、金銭の持ち出し、家出、無銭飲食などでぐ犯送致され、保護観察処分を受けており、小学4年時に初発非行が現われ、中学生になってからは覚せい剤やシンナーなどの薬物使用、いわゆる援助交際等の問題行動が続発していた。このような被告人の問題行動歴からしても、被告人の非行性は進行しており、深刻な事態に至っていると認められる。
他方、本件は計画的な犯行とはいえないこと、被告人の幼少期からの親子関係や生育歴に不遇な面があり、これに影響を受けた被告人の資質、行動傾向が殺意の形成に相当程度影響を及ぼしているとみられること、養父がこれまでの被告人との関わり合いにおいて、被告人の気持ちを全く考えていなかったことを反省し、今後被告人の更生に尽力する旨述べていること、その他犯行時17歳という年齢等被告人のために酌むことができる事情が認められる。
被告人の処遇について、弁護人は、被告人に対しては治療的な関わりが必要であり、その援助をすることができる医療少年院に送致するのが相当であり、事件を家庭裁判所に移送すべきであると主張する。被告人の抱える資質、行動傾向上の問題点に対する矯正教育という観点のみからは保護処分が有効な処遇であることは否定できないように思われるが、少年法55条の保護処分相当性を認めるには、保護処分の有効性の観点とともに、刑罰ではなく保護処分によって処遇することが社会において受忍、許容され得ることを要するというべきである。そして、同法20条2項の改正の趣旨、処遇選択の構造は、保護処分相当性の判断にも反映されるべきであると解される。これまでに認定した本件の罪質、態様の悪質さ、結果の重大性に加え、被告人のために酌むべき事情を考慮しても、本件の犯情を相当程度軽減するものとはいえないし、犯行後の情況に被告人にとって顕著に有利なものもない。そうすると、被告人を刑罰ではなく保護処分によって処遇することが、被害感情や社会の不安感、処罰感情、一般の正義観念に照らして、受忍、許容され得るものとはいいがたい。被告人に対しては、保護処分に付するのは相当ではなく、主文の刑に処するのが相当である。(求刑 懲役5年以上10年以下)
(裁判長裁判官 園原敏彦 裁判官 伊藤聡 深野英一)