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東京家庭裁判所八王子支部 平成18年(少ロ)2号 決定 2006年3月09日

少年 A(平成元.9.27生)

上記被疑者に対する殺人被疑事件について、裁判官がしたとみなされる勾留に関し、東京地方検察庁八王子支部検察官が平成17年12月2日付けでなした、上記被疑者を代用監獄たる警視庁○○警察署留置場に収容することの同意請求につき、平成18年3月8日東京家庭裁判所八王子支部裁判長裁判官がしたこれに同意する旨の裁判に対し、弁護人○○から適法な準抗告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

原裁判を取り消す。

東京地方検察庁八王子支部検察官が平成17年12月2日付けでなした本件被疑者についての少年収容場所同意請求につき、これに同意しない。

理由

第1本件準抗告申立ての趣旨及び理由

<編中略>

第2当裁判所の判断

1  <編中略>

2  検察官は、検察官送致決定に伴って少年法17条1項2号の措置が勾留とみなされる場合に本件留置場を勾留場所として求める理由として、再度取り調べ等を行う際に少年鑑別所では捜査に支障を来すことをあげている。

(1)  そこで、本件における捜査及び審判の経過について検討するに、一件記録によれば、被疑者は平成17年11月12日本件で通常逮捕され、同月13日勾留され、勾留期間が延長されていること、その間連日にわたり司法警察員または検察官から取り調べがなされ、また、犯行再現や被疑者が犯行に使用した凶器の投棄場所等についての引き当たり捜査も行われていること、その後同年12月2日当庁に事件送致されて同日観護措置決定され、その後3回観護措置更新決定がなされたこと(同年12月27日から平成18年2月10日までは鑑定留置)、その間、平成17年12月15日、同月21日、同月22日、同月27日、平成18年3月1日にそれぞれ審判期日が開かれ、裁判所、付添人及び検察官から、被疑者に対し、本件犯行に至る経緯、犯行状況、犯行後の状況等について詳細な質問がなされていることが認められる。

(2)  上記認定にかかる捜査及び審判の経過に照らせば、すでに事案の解明のために必要な相応の捜査及び審判が行われたことが認められ、これらによれば、その他に被疑者を本件留置場に収容した上で行うべき補充捜査の必要性は窺われず、仮に今後さらに捜査が必要であるとしても、被疑者を少年鑑別所に収容していても十分に行うことが可能であるというべきである。

3  上記事情のほか、被疑者が16歳であること、その他本件に現れた一切の事情を考慮すれば、被疑者については本件留置場に収容する必要性は認められず、現段階では少年鑑別所に収容するのが相当というべきであって、本件留置場への収容に同意した原裁判は失当である。

以上の次第で、本件準抗告の申立ては理由があるから、刑事訴訟法432条、426条2項により、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 一宮和夫 裁判官 綿貫義昌 能登謙太郎)

準抗告申立書<省略>

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