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東京簡易裁判所 平成14年(ハ)14021号 判決 2003年3月14日

主文

1  被告は,原告に対し,金25万6543円を支払え。

2  原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用は,これを10分し,その4を原告の,その余を被告の負担とする。

4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

被告は,原告に対し,金39万4210円を支払え。

第2事案の概要

本件は,原告が,交通事故に基づく損害賠償として,被害車両の修理中におけるタクシー代,レンタカー代並びに評価損等を求めた事案である。

1  請求の原因

原告は,下記交通事故(以下「本件交通事故」という)により,次の損害をこうむった。

ア  車両修理中におけるタクシー代 金2万8600円

イ  同レンタカー代 金15万9810円

ウ  車両評価損 金20万0000円

エ  事故証明手数料 金800円

オ  通信費 金5000円合計金39万4210円

(交通事故の概要)

① 事故発生の日時 平成11年11月18日午後6時頃

② 事故発生の場所 岩手県胆沢郡a町b A店駐車場

③ 加害車両 被告運転の普通乗用自動車

④ 被害車両 原告所有普通乗用自動車

⑤ 事故態様 駐車場において駐車中の原告車両に被告車両が衝突

2  争点

被告は,代替の交通手段として代車を提供したにもかかわらず原告はこれを拒否したものであり,タクシー代,レンタカー代は損害として認めるべきではないとして争っている。また,本件交通事故から3年近く経過した訴訟提起についても争う意向を示している。

したがって,本件の争点は,①本件損害賠償請求権は時効により消滅しているか,②タクシー代等を損害として認めるべきか,③相当と認められる評価損の額等である。

第3争点に対する判断

1  争点①について

本件損害賠償請求は民法709条の不法行為に基づくものであり,その消滅時効は「被害者…が損害及び加害者を知りたる時より3年間」と定められている(民法724条)。本件請求並びに訴え提起は本件交通事故から3年以内になされたことは明らかであるから,被告の主張はそれ自体失当である。

2  争点②について

証拠によれば,原告は,本件事故当時いわゆるマイカー通勤をしていたこと,住居から勤務先までの通勤距離が約15キロメートルであったこと,代替の公共交通機関としてはバスと鉄道を乗り継ぐ方法があるが,住居・バス停間の距離は約1キロメートルあり,そのバス停から最寄りの鉄道駅までの所要時間は約20分であったこと,それぞれの1日の運行本数も極めて少なかったこと(鉄道については1時間に1本程度),また,買物は郊外のスーパーマーケットを利用しており,車を使用せざるを得なかった事実などがそれぞれ認められる。

一方,被告が主張する代車提供の事実,また,その提供した代車が相当なものであったか否かについては,これを認めるに足りる証拠はない。そうすると,原告が車の修理に要した期間(23日間)タクシーやレンタカーを使用したことは相当であり,これを使用したことにより出費した金銭を損害として認めることができる。なお,原告は,勤務先から通勤費等として月に1万3000円(内訳 通勤費1万円,駐車場代3000円)の支給を受けているので,タクシー等利用代金合計18万8410円から23日分の通勤費相当額7667円(1万円×23日/30日)を差し引いた18万0743円が損害となる。

3  争点③について

本件事故によって,原告車両の修理に24万円の費用を要していること,事故後の平成14年に,原告は事故車両を30万円の下取りに出して新たな車を購入していること,事故車両は平成10年に新車を購入したものであり,その購入代金は180万円であったことなど(原告本人)を考慮すると,本件事故による評価損は7万円程度と認めるのが相当である。

4  その他の損害について

被告は,事項証明手数料800円並びに通信費5000円については争うことを明らかにしないので,これを認めたものとみなされる。

5  結論

以上によると,原告の損害は,合計金25万6543円となる。よって,主文のとおり判決する。

(裁判官 廣瀬信義)

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