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東京簡易裁判所 平成14年(ハ)66177号 判決 2002年11月01日

主文

1  被告は,原告に対し,金270万6000円及びこれに対する平成14年2月20日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は,被告の負担とする。

3  この判決は,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

主文と同旨

第2事案の概要

1  請求の原因

(1)  原告は,平成12年8月15日,訴外有限会社A(以下「A」という)との間で,Aが訴外株式会社B(以下「加盟店」という)から購入した自動車(プレジデント)の代金300万円を立替払いし,Aはこの立替金に手数料69万3000円を加えた金額を分割して支払う内容の契約を締結した。

(2)  原告は,上記契約に基づき,平成12年8月18日,加盟店に対し代金300万円を立替払いした。

(3)  訴外C(以下「C」という)及び被告は,Aの(1)の債務について,原告に対し,連帯保証した。

(4)  よって,原告は,被告に対し,上記立替金並びに手数料の残金270万6000円とこれに対する最終支払期限の翌日である平成14年2月20日から支払済みまで年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。

2  争点

本件連帯保証契約の成否

第3争点に対する判断

1  証拠によれば,以下の事実を認めることができる。

Cは,姉の夫・D(以下「D」という)が経営するE建設に勤めていたが,義兄にあたるDから,新たに設立するAの代表取締役になるように頼まれ,名義上の代表取締役となった。Cの妻である被告も,同様にAの名義上の取締役となった。その際,Dは,Aの会社設立登記に必要であるという理由で,被告の印鑑を作り,これを被告の実印として印鑑登録をした。実印はDが保管していたが,これらのことは,被告も承知していた。

その後,C並びに被告はAの役員を退任し,平成14年1月2日,Dがその代表取締役に就任したが,Cが名義上の代表取締役となっていた期間,Aが第三者と交わす契約は,すべてDの判断で行われ,Cは全く関与することはなかった。しかし,名目上ではあっても,代表取締役となっていたことから,Cは,Aが第三者と契約をする際には,Dの指示に従い,必ず連帯保証人として,自ら契約書に署名押印をし,業者からの保証意思確認の電話にも応答していた。

Aが自動車を購入するという本件契約も,Dの判断に基づき締結されたもので,Cは,Dに言われるままに,過去の例と同様に,E建設の事務所で,連帯保証人として契約書に署名押印をした。また,本件の契約では,連帯保証人が複数人必要であったため,Dは,Cが署名した後に,もう一人の連帯保証人として,被告の住所氏名を契約書の当該欄に自書し(乙第1号証によれば,Dの筆跡であることが明らかである),自ら保管していた被告の実印を押捺した。

Cは,平成12年8月10日午後8時40分頃,自宅において,原告担当者から保証意思確認の電話を受け,承諾する内容の返答をした(甲第3号証,証人C)。

2  被告は,Aの名義上の取締役になったことや実印をDに預けたままにしていた理由について,Dは夫・Cの義兄であり信用していた,と供述している。この事実は,被告が,自分の実印がDによって使用されることを容認していたこと,すなわち,Aの取締役であるがゆえに,本件のように,Aの連帯保証人として自分の名前が使われることを予想していたことを推認させるものである。

また,被告は,自分に対する保証意思確認の電話はなかったと供述し,これを否認している。しかし,原告の担当者Fは,被告に対する保証意思の確認は,Cに対する照会と同一の機会に行われたと証言しおり,これを裏付ける甲第2号証ないし第4号証には,被告に対する意思確認が先に行われ,その10分後にCに対する意思確認をしたとの記載がある。

被告は,家庭の主婦として,夫・Cと二人の幼い子供と暮らしており,原告が,被告らの自宅に電話をする方法により行った保証意思確認が,まず主債務者Aの代表者であり連帯保証人でもあるCに対してではなく,最初に電話口に出た被告に対して行われ,その後,電話を引き継いだCに対して行われたという前記F証言には,何ら不自然なところはない。また,Fは,その電話確認の際,被告が,「Aの電話は,兄が経営しているE建設の電話と共同です」と話していたと証言しているが,E建設という会社の存在は,被告からの情報がなければ原告が知り得ないものであり,F証言は十分信用できる。逆に,これと相反する被告並びにCの各供述は,いずれも不自然であり,信用できない。

3  以上の検討によると,被告は,連帯保証人として,契約書に自ら署名捺印していないものの,契約書作成の頃,本件連帯保証を承諾していた事実を認めることができる。

したがって,原告の請求は理由があり,主文のとおり判決する。

(裁判官 廣瀬信義)

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