東京簡易裁判所 平成16年(少コ)3704号 判決 2005年3月25日
主文
1 被告は,原告に対し,金59万9957円を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,被告の負担とする。
4 この判決は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1 被告は,原告に対し,金60万円を支払え。
2 訴訟費用は,被告の負担とする。
3 仮執行の宣言
第2請求の原因
別紙「請求原因変更の申立書」記載のとおり
第3理由
被告は,本件口頭弁論期日に出頭しないが,陳述したものとみなされた答弁書によれば,要は,「被告の本件通帳は,平成16年8月11日新規作成したが,その後A駅構内に置き忘れて紛失したままになっており,原告主張の内容については自分は一切知らない。」というものと解される。
証拠及び弁論の全趣旨によると,原告が振り込んだという口座は,被告の口座であることが認められ,本件通帳の記載内容は,甲2号証(B銀行A駅前支店からの照会・回答書)によれば,原告が本件通帳に合計250万円を振り込む前の残高は金100円であって,請求の原因記載の経過のもとで,当裁判所からの銀行照会の回答日である平成17年3月7日現在で本件通帳には残高金60万0057円が存在していることが認められる。そうすると,被告は,元々存在した金100円を除く金59万9957円を利得する法律上の何らの権原がないことは明らかであり,これを原告に返還する義務があると言わなければならない。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 小林一義)
別紙
「請求原因変更の申立書」
1 原告は,平成16年9月2日午前9時半ころ,訴外佐藤と名乗る人から「急に飛び出した息子を避けようとして,車が近くの建物にぶつかり,その修理代として250万円を払ってほしい。」という電話連絡を受けた。
2 原告は,動転し,相手の話を信じてしまったこと,組員だと名乗り,お金を支払えば息子を解放するとの言葉に,同日,3回に分け合計250万円を,指定されたB銀行A駅前支店,普通預金口座C,Dあてに振り込んだ。
3 その後,原告は,おかしいと気付いて,直ちにE警察署へ出向いて事情を説明し,相談したところ,振り込め詐欺と判明し,同警察が前記銀行に連絡・調査したところ,既に,金190万円は引き出され,金60万円が残されていることが判明した。
4 以上のとおり,原告は,訴外佐藤と名乗る人にだまされて,被告の本件通帳に金250万円を振り込んでしまったものであり,被告は,これを取得する何らの法律上の原因も有しないばかりか,現に,残金60万円が通帳に残り,これを利得している結果となっている。
5 よって,原告は,被告に対して民法703条に基づいて,金60万円の返還を求める。