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東京高等裁判所 平成元年(ネ)3823号 判決 1991年9月30日

控訴人

青木利道

右訴訟代理人弁護士

岩田洋明

被控訴人

株式会社全国身元保証受託協会

右代表者代表取締役

添田工

被控訴人

添田工

被控訴人

東北国際信用身元保証協会こと

大川孝治

被控訴人

株式会社全國信用身元保証協会

右代表者代表取締役

添田工

右四名訴訟代理人弁護士

小清水義治

主文

原判決を取り消す。

被控訴人らは、各自、控訴人に対し、金一二〇〇万円及びこれに対する平成元年六月一七日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

この判決第二項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

主文同旨

第二事案の概要

一本件は、控訴人が、被控訴人株式会社全國信用身元保証協会(以下「被控訴人保証協会」という。)に対して、不当利得を理由として、控訴人が支払った資格取得金の返還を求め、被控訴人大川に対しては不当利得または不法行為を理由として、その余の被控訴人らに対しては不法行為を理由として、いずれも右資格取得金相当の金員の支払いを求めた事件である。

二争いのない事実

1  控訴人は、昭和六〇年七月三一日、被控訴人保証協会に対し、被控訴人株式会社全国身元保証受託協会(以下「被控訴人受託協会」という。)が発行する保証証券販売の総代理店となるための資格取得金として一二〇〇万円(以下「本件金員」という。)を支払った。

2  被控訴人受託協会は、身元保証の引受を業とし、保証証券を発行する資本金四〇〇〇万円の株式会社であり、被控訴人保証協会は、右保証証券を販売する資本金一〇〇万円の株式会社であって、被控訴人添田は右被控訴人両名(以下「被控訴協会ら」という。)の代表者である。被控訴人大川は、東北国際信用身元保証協会という名称で被控訴人保証協会の総代理店を務めるものであり、控訴人は、同被控訴人の勧誘に応じて保証証券販売の総代理店となったものである。

三争点

1  控訴人が昭和六〇年七月三一日に総代理店契約(以下「本件契約」という。)を結んだ相手は、被控訴人保証協会か、被控訴人受託協会か。すなわち、本件金員は、被控訴人らが主張するように、控訴人と被控訴人保証協会との間で締結された総代理店契約に基づいて支払われたものであるか。

2  仮に本件契約の当事者が被控訴人保証協会である場合は、本件契約は、無効であるか。

(一) 控訴人の本件契約締結の意思表示に要素の錯誤があり、無効であるといえるか。

控訴人は、保証証券の発行元であり、資本金も四〇〇〇万円ある被控訴人受託協会の総代理店となる意思で、本件契約を締結したものであって、保証証券のディーラーにすぎず、資本金も一〇〇万円しかない被控訴人保証協会と契約する意思はなかったと主張する。

(二) 本件契約は、公序良俗に反し、無効であるといえるか。

(1) 控訴人は、要旨次のように主張する。

被控訴協会らが行っている商法(以下「本件商法」ということがある。)においては、控訴人のような総代理店等の資格取得者を勧誘する行為と保証証券を販売する行為との二つの要素があるが、保証証券の売却手数料のみで資格取得金を回収するのは、事実上不可能であり、総代理店等が収入を上げるためには、他の資格取得者を勧誘する以外にない。つまり、本件商法は、加盟者が複数の者を加盟させることによって初めて資金を回収し、利益を取得できる仕組となっており、正しくマルチ商法の一種である。しかも、普通の形態のマルチ商法は論理的には無限に連鎖する可能性がありながら、現実には有限である(破綻する)ものであるが、本件商法は初めから有限であることが確定していて、投下資本を回収できない者が発生することが初めから予測されており、その意味で、通常のマルチ商法より著しく違法性(反社会性)が大きい。

そのうえ、被控訴人らの勧誘方法自体も違法性(反社会性)が強い。すなわち、①被控訴人らは、控訴人に対し、「総代理店は県の協会長である。」と説明して勧誘したが、実際は、例えば、控訴人が住む山形県の場合、「県の協会長」は一〇名も予定されているうえ、山形県以外に居住する資格取得者が山形県居住者に対し資格取得を勧誘したり証券を売却するのに、山形県の県協会長たる総代理店の許可または承認を得る必要がないことになっている。このように、「県の協会長」なる名称は著しく事実に反した名称で、不実の告知というべきである。また、資格者ポストの残数を開示しないのは重要な事実の不告知というべきである。②被控訴人大川の収入の大半は資格取得者勧誘手数料であって、その収入は有限で、継続性がなく、後続加盟者になるほど不利になる性質のものであるのに、被控訴人らは、被控訴人大川の昭和五九年の収入は一七四二万円余あったと宣伝したが、これは明らかに故意に事実を告げず、いたずらに被勧誘者の射倖心を煽るものである。③被控訴人大川は、控訴人に対し、資格取得金は近日中に値上げすると言って契約を急がせたが、真実は資格取得金が値上げされることはなかった。これも不実の告知である。④被控訴人らは、実際は保証証券の有効性は争点になっておらず、したがって、この点について裁判所が何ら判断していない訴訟のものであるにもかかわらず、裁判所の和解調書や高等裁判所の判決をパンフレットに掲げ、あたかも裁判所が積極的に保証証券を有効と認定したかのような虚偽の事実を喧伝した。

(2) 被控訴人らの主な反論は次のとおりである。

被控訴人ら全員が控訴人主張の商法を行っていることはないし、本件商法の収入の中心は身元保証の取次、すなわち証券取扱による収入であって、マルチ商法ではない。控訴人もこのことを承知して本件契約を締結したのであり、現に、手数料収入のみで安定した業績を上げている者もいる。証券は二、三年の保証期間が切れるごとに更新され、そのつど手数料が得られるから、収入は安定し、継続している。なお、勧誘者に支払われるのは、勧誘手数料ではなく、被勧誘者に対し今後二〇年間にわたり業務指導をすることについての報酬である。

被控訴人らの勧誘についても違法不当な点はない。「県の協会長」というのは名称に過ぎず、一都道府県に一人とは限らないのであって、このことは、パンフレット等で公表しているし、控訴人の総代理店としての営業には地域的制限はなく、他の都道府県に進出することができるのである。また、代理店の数が有限であることは、控訴人において事前に熟知していることであり、射倖心に煽られて締結したものでないことは、控訴人自身、本件の契約書等で認めているところである。

控訴人主張の和解調書等についても、保証証券の有効性が前提になっているはずで、不実の告知ではない。

3  被控訴人受託協会は、保証証券のディーラーである被控訴人保証協会と表裏一体の関係にあるメーカーとして、被控訴人保証協会らが控訴人に本件商法加盟の勧誘をするにあたり、契約相手方当事者を誤解させ、あるいは、被控訴人大川らの違法な勧誘を助け、これらの行為により控訴人に一二〇〇万円の損害を被らせる不法行為を犯したか。

4  被控訴人添田は、被控訴人らの公序良俗に反するシステムの考案者かつ推進者として、被控訴人らの違法な商法を中心として行い、また、被控訴協会らの代表取締役として、紛らわしい名称の二つの会社について紛らわしい住所を表示し、紛らわしい業務を行わせ、控訴人に契約当事者を誤解させ、これらの行為により控訴人に一二〇〇万円の損害を被らせる不法行為を犯したか。

5  被控訴人大川は、控訴人を勧誘したことにより勧誘手数料六六〇万円を被控訴人保証協会から受領し、同金員を不当利得したものであるか。また被控訴人大川は、控訴人に契約の相手方を誤解させたり、総代理店になれば継続的に高収入が得られるように嘘を言うなどの違法な勧誘をして本件契約を締結させ、控訴人に一二〇〇万円の損害を被らせる不法行為を犯したか。

第三争点に対する判断

一争点1について

<書証番号略>によれば、本件契約は控訴人と被控訴人保証協会との間で結ばれたものというべきである。

二争点2について

1(一)  昭和六〇年五、六月ころ、控訴人は、被控訴人大川から身元保証証券等の保証証券の販売代理店となるようにダイレクトメールによる勧誘を受けた。そのとき控訴人が受け取った資料の中には「収入実例の一部」なる書面があり、被控訴人大川が岩手県の総代理店として昭和五八年に月平均六二三万〇九〇〇円の収入を、昭和五九年には年間で一七四二万九〇〇〇円の収入を挙げていること、及びほか総勢二四名、延べ二七名の会長(総代理店)がそれぞれ何百万円という月収を挙げ、中には年収一億円以上の収入を挙げている者があることが記載されていた(<書証番号略>、控訴人)。

(二)  控訴人は、被控訴協会らの商売の仕組はよく分からなかったが、多額の収入の実例が書かれていたことから、興味を惹かれ、被控訴人保証協会に問い合わせたところ、同協会からパンフレット等の資料が送られてきた。控訴人はこれらの資料を読んだが、依然としてよく理解できなかった。そこで、控訴人は、電話をかけてきた被控訴人大川に勧められ、同人と一緒に上京して「本部」を訪問することとし、同年七月ころ、同人とともに新宿にある「第二保証会館」というビルを訪れた(<書証番号略>、控訴人、被控訴人大川)。

控訴人は、右ビルで被控訴人添田ほか一名と会い、保証証券に関するビデオを見せられたあと、被控訴人添田らに対し、被控訴人保証協会の商法は豊田商法(豊田商事が行っていた違法な商法の意味)ではないのか、なぜそのような多額の手数料を支払えるのか、行政上違反行為はないのか等の疑問点につき質問した。被控訴人添田は、これらの質問に対し二、三〇分足らずの間に簡単に説明し、その中で、「普通の保険会社では従業員の給料が非常に大きいが、本件保証証券の場合は、証券が働くので人件費はいらず、そのため手数料が大きい。」、「証券を売って手数料がたくさん入るので、自分一人で売っても駄目だから、兵隊を作らねばならない、その兵隊が働いた利益が上の方に自動的に振り込まれてくる。」、「証券はじゃんじゃん売れている。しかし、一人でやるよりも兵隊を作ってその人にさせればそれだけ手数料が多くなる。」などという趣旨のことを述べた。そして、被控訴人添田と同大川は、控訴人に対し、被控訴人大川は岩手県の総代理店だが、控訴人の居住する山形県ではまだ総代理店が決まっていないので、ならないかと勧めた。ところで、被控訴人保証協会では、人口一〇〇万人あたり総代理店の人数は八人と決まっていて、「県協会長」とはいっても、必ずしも各県一人だけというわけではなかったが、控訴人はその名前からして当然総代理店は一県につき一人であると考えたし、被控訴人添田らからも明確な説明はなかった。また、被控訴人添田らは、総代理店になった場合の多額な収入実例を示して、「このとおりいいですよ。」と言ったが、各人の収入のうち、他の総代理店等の資格取得者を勧誘した場合受け取る「指導料」と証券販売手数料との比率がどの程度であるかについては説明しなかった(<書証番号略>、控訴人。なお、一部これに反する被控訴人添田の供述は、控訴人本人尋問の結果に照らし、採用できない。)。

(三)  控訴人は、総代理店の仕事は保証証券を売ることと兵隊(下の地位の人)を募集することであると大体理解はできたものの、その日は契約することなく、山形に帰った。その後、被控訴人大川は控訴人に電話をかけたり、控訴人宅に尋ねてきたり、「東北国際信用身元保証協会 全国あけぼの連合会 会長大川孝治」作成名義による「地域協会長(総代理店・代理店・特約店)資格取得の御案内」なる書面を送ってきたりして総代理店になることを勧誘した。右「御案内」には、被控訴人保証協会との関係、総代理店等の収入の仕組(後記(六)で認定するとおり)等についての説明、総代理店等になるには資格取得金が必要であるが、システムの性質上、上位の資格の方が有利であるから、なるべく上位の資格を選択するのが成功の第一のポイントであること、保証証券は、通常の商品と異なり、見込客というものはなく、むしろ、二〇歳以上の者はすべて見込客といえる、したがって、ダイレクトメールを出す宛先も無差別でよい、通常の商品のダイレクトメールはいくら出してもほとんど反応がないのが実情だが、保証証券のダイレクトメールは、身元保証は誰にとっても必要であり、協会は保証証券を取扱うわが国で唯一の組織であり、長引く不況で、誰もが良い副業を求めていることの三つの理由から、かなりの引合、受注があること等々が記載されていた(<書証番号略>、控訴人)。

(四)  控訴人は、前記各資料や被控訴人添田、同大川の説明・勧誘により被控訴人保証協会の総代理店になることを決意し、すでに受け取っていた業務約款等を記した書面(控訴人と被控訴人保証協会との間の契約書の実質を有するものである。)に署名押印して被控訴人保証協会に送り、同年七月三一日に本件金員を送金し、同被控訴人の総代理店となった(<書証番号略>、控訴人)。

(五)  控訴人は、その後、被控訴人保証協会から送られた資料等をダイレクトメールで方々に配付したが、一向に引合はなかった。ただ一件のみ新潟から問い合わせがあったので、被控訴人大川にも同行してもらって総代理店になるように勧誘したが、これも失敗に終わり、結局、控訴人は支出した本件金員をまったく回収しえないでいる(控訴人、被控訴人大川)。

(六)  被控訴人受託協会が発行する保証証券としては、就職・在職更新保証証券(いわゆる一号証券)等一八種類の証券があり、基本は右一号証券と二号証券と言われる賃貸借保証証券(住居・事務所)であり、現在は後者の数が一番多い。保証証券の仕組は、証券を買い受けた者が有効期間内(例えば二号証券の場合は二〇年)に証券下部にある「信用と身元保証誓約書」請求用紙に必要事項を記載して被控訴人受託協会に送り、これに応じて同協会から身元保証誓約書が送られた段階で、保証証券に表示された保証期間中その額面額の範囲で(例えば、二号証券の額面額は一口五〇万円、保証期間は二年)、保証の効力が生じることとなっている。被控訴人保証協会は、被控訴人受託協会から保証証券を買い受け、被控訴人保証協会が契約する総代理店(県協会長)、代理店(市協会長)、特約店(町協会長)が保証証券を売り捌く(あるいは「保証の取次」をする。なお、<書証番号略>によれば、他に、一級ないし五級指導員、取次所なるものがあるようであるが、その詳細に不明な点があるので、以下省略する。また、以下に認定するのは、本件契約当時の機構であり、現在は訪問販売等に関する法律〔以下「訪販法」という。〕の昭和六三年改正に対応する形で若干改められている。)仕組となっている。総代理店等になるためには、一二〇〇万円(総代理店)、四〇〇万円(代理店)、一五〇万円または三〇〇万円(特約店)の資格取得金を被控訴人保証協会に支払う必要がある。総代理店らは、証券を販売したときは、その売買金額の四五パーセント(総代理店)、四三パーセント(代理店)、四〇パーセント(特約店)の手数料をそれぞれ受け取る。また、他人を総代理店等にした場合には、自己の地位に応じて、その他人の支払った資格取得金の五五パーセント(自己が総代理店の場合)、五〇パーセント(代理店の場合)、四五パーセント(特約店の場合)の「指導料」を取得する。ただし、自分以下のクラスの者しか「指導」すなわち、勧誘することはできない。さらに、自分が「指導」(勧誘)した者が他の者を「指導」(勧誘)したり、証券を売った場合は、「指導料」あるいは手数料の差額が自動的に間接収入になる仕組となっている(さらに、当審における被控訴人添田の本人尋問の結果によれば、下位の者が「仕事」をして上位に上がることもあるようであるが、詳細は明らかでない。)。そして、販売手数料及び「指導料」の三〇パーセントを被控訴人受託協会が受け取り、同協会及び総代理店らが受け取った後の残金はすべて被控訴人保証協会が取得する(<書証番号略>、被控訴人添田〔当審〕)。

2  以上の事実を前提に検討する。

(一) 被控訴人らは、総代理店らの本件商法の基本は証券販売であると主張するので、まず、この点につき考察する。<書証番号略>によれば、例えば最もポピュラーな二号証券の保証入会費、すなわち売値は平成元年三月現在一万二〇〇〇円であったことが認められ、弁論の全趣旨によれば本件契約当時から右価格は変わらなかったものと認められるから、控訴人は、右証券を一枚売るごとにその四五パーセントである五四〇〇円を手数料として取得するにすぎず(今は、総代理店の取得する手数料の割合の当否は問題としないでおく。)、仮にこの証券の販売手数料のみにより本件金員相当の金員を回収しようとすれば、ダイレクトメール等の経費、金利等を考慮の外においたとしても、二二二三枚の証券を売らなければならない。本件契約の有効期限は二〇年間であるから(<書証番号略>)、一年間に平均一一一枚以上の証券を販売しなければ元金さえ回収できない計算になる。しかし、これは、保証証券がいまだ一般に普及しているとは到底いえず、また、今後急速に普及する見込みがあるとも見受けられない現況(<書証番号略>によれば、被控訴人受託協会設立約二〇年後の昭和六三年三月末現在で、総発行証券数八〇〇万枚余、保証契約成立額面一〇七九億円余であったことが認められ、前者によると年間四〇万枚余の数字になるが、これは被控訴人受託協会が発行し、販売のために総代理店等に渡した証券数にすぎないので、これから販売実績を推し量ることはできない。後者の契約が成立した証券がすべて二号証券であると仮定して計算すると、約二〇年間に二一万六〇〇〇枚余、一年間では一万枚余の契約が成立したにすぎない〔後述する総代理店等の数三一六三名を前提とすると、一名あたり三枚強となる。〕こととなる。しかも、右パンフレットに保証証券の効力が発生した事例として掲げられている企業名からすると、そのかなりの部分はもう一つの基本的証券である一号証券〔就職・在職更新保証証券〕ではないかとも見られるので、仮にすべて一号証券であったと仮定すると、同証券の額面は一〇〇万円〔<書証番号略>、同証券の保証入会費は二号証券と同額であることが認められる。〕なので、総契約成立枚数はさらに半減することになる。そのうえ、<書証番号略>によれば、被控訴人受託協会が改装工事に関連する債務の保証責任を追求された長野地方裁判所昭和五九年(ワ)第一四九号、東京高等裁判所昭和六一年(ネ)第三一三三号の事件〔以下「長野事件」ということがある。〕においては、右改装工事の担当会社代表者の兄が被控訴人保証協会の長野県における総代理店であったことから、一六五〇万円もの額を限度とする保証契約が成立したことが認められることからすると、前記総契約成立額面については、このような特別の大口の件数も相当数あることが推測され、特別の「コネ」もなく、単なるダイレクトメールで多数の保証証券を販売する可能性はますます小さいものと推認される。)を考慮すると、実現困難な数字ではないかと考えられる。なお、被控訴人らの提出した資料(<書証番号略>)によれば、平成元年一二月三一日現在総代理店等は全国で三一六三名おり、同年三月三一日までの一年間の有料証券販売数三五万三三五八枚で、一人当たり平均一一二枚売れたこととなっており、計算上は、平均的には何とか元金回収に必要な枚数だけは売れているかのようである。しかしながら、右各資料は、当審の最終段階になって、裁判所に促されて初めて提出されたもので、原審では提出されなかったものであり(そのうえ、当審口頭弁論終結時においてもなお、販売手数料収入と指導料収入の割合され明らかにしない。)、単に結論的な数字を羅列したものにすぎず、原始記録の裏付けもないうえ、前記認定の昭和六三年三月末までの実績(多い目にみても年間一万枚余)と余りに掛け離れており、そのままには信用しがたいものである。のみならず、仮にこれらの数字をすべて信用するとしても、控訴人のように特別の「コネ」もない一般人が右の平均的な売上を上げることさえ困難であろうことは容易に想像しうるところである。したがって、販売手数料のみでは現に支出した資格取得金を回収することすら実際にはかなり困難であり、まして、パンフレットに記載されているような、何百万円という月収などは到底得られるはずはないものといわなければならない(もっとも、<書証番号略>及び被控訴人添田の当審本人尋問の結果によれば、被控訴人保証協会から総代理店等に無償で渡す証券もあり、これを総代理店等が販売したときは、被控訴協会らに対しその一部を送金する必要はなく、売買代金額全額を総代理店等において取得することができることが認められるが、数も少なく、議論の大勢に影響はない。)。被控訴人らは、証券には保証期間(例えば二号証券の場合は二年)が定められているから、更新時にまた使われるので需要が絶えないというけれども、本件保証証券は、一定の有効期間、例えば二号証券の場合は二〇年の間に使用すればよいものであるから、ある枚数の証券が売れたからといって、これがすぐに使用されるわけのものではないのであり、したがって、証券の保証期間に相当する期間、例えば二年が経過したからといって、同じ枚数の証券が売れる保証はまったくないのである。また、被控訴人添田は、前記収入実例に挙げられた「K氏」は販売手数料のみにより多額の収入を得たものであると供述する。例外的にはそのような事例もあるであろうから、右供述を直ちに虚偽のものと決めつけることはできないが、これを一般化することは到底許されないものというべきである(先の販売数に関する考察等からして明らかである。)。それに同人についても、他の者についてはすべて昭和五八、五九年の収入が記されているのに、同人に限って昭和五六年度の収入のみが記されていることからすると、同人の場合、昭和五七年以降はさほどの収入を上げていないことが容易に推測されるのである。ところが、被控訴人添田及び被控訴人大川らは、これらの収入の内訳については、控訴人に対しまったく説明しなかったし、本訴においても、「K氏」の場合を除いては、一貫して不明と答えるのみである。被控訴人大川についても、乙第三号証及び同人の本人尋問の結果によれば、前記パンフレットに書かれていた同人の昭和五八、五九年当時の収入自体は誤りでなかったことが認められるが、同号証(被控訴人大川の預金通帳)によれば、被控訴人保証協会からの送金の欄に個人名が注記されていることが認められるので、被控訴人大川の収入も、大部分はむしろ「指導料」収入であったものと推測されるところである。

したがって、多額の収入を上げようとする者、あるいはせめて自己が支出した資格取得金だけでも取り戻そうとする者は、他の者を勧誘して本件商法に参加させ、「指導料」を得るほかはないというのが実態であったと認められる。ところで、前記業務約款では、「指導料」は二〇年間の指導に対する必要経費の前渡金として渡されることとなっており、「指導規定」等も定められている(<書証番号略>)が、その具体的内容は明らかとはいえない。被控訴人添田の供述(当審)によれば、証券の説明が基本であり、証券の売り方、下部の作り方等業務全般の指導をするものであるというのであり、被控訴人保証協会において指導会などを行っていること(<書証番号略>、被控訴人添田〔当審〕)からすると、総代理店等において自己が勧誘した総代理店、特約店等に対し多額の経費を要するような実質的な「指導」をしているものとは到底認められず、結局右「指導料」なるものの実質は、勧誘して本件商法に加盟させたことに対する報酬(いわゆるリクルート料)に他ならないものであり、本件商法は一種のマルチ商法であるといわなければならない。そして、県人口一〇〇万人に対し総代理店八、代理店一〇〇、特約店二〇〇の上限が定まっていること、総代理店等の活動範囲には地域的制限がないこと(<書証番号略>)からすると、右のような「指導料収入」もすぐに限界に達するのは明らかである(現に控訴人の本人尋問の結果によれば、被控訴人大川もその後証券を売ることも特約店を作ることもできず、大した収入を上げていないと言っていることが認められる。)。したがって、本件商法においては、両社合わせて資格取得金の四五パーセント以上、証券売上額の五五パーセント以上を受け取る被控訴協会らと、他人を多数参加させることに成功した若干の総代理店等が巨額の利益を得ることができる(<書証番号略>によれば、被控訴人受託協会は、昭和五四年四月二三日から平成二年一二月三一までの約二〇年間に合計五〇〇〇万円弱の代位弁済をしたのみであり、しかもうち二四四〇万円余を主債務者から求償していることが認められるし、被控訴人添田自身も、被控訴協会らの経営が「成り立ち過ぎている」ことを当審における本人尋問において認めている。)が、反面、投資した資格取得金相当の金員も取り戻すこともできないような者(被害者)が多数出ることが構造的に予定ないし予想されているものといわなければならない。

(二) しかるに、被控訴人らは、ダイレクトメール等により証券を販売し、あるいは第三者に参加を勧誘することにより多額の収入を得られるもののごとく、少数の例外的な成功者を実例として掲げて本件商法への参加を勧誘したものであって、不公正な商法であるといわなければならない。もっとも、被控訴人大川が控訴人に送った前記「収入実例の一部」なる書面二枚目の右隅には、総代理店等の数は有限であり、総代理店等には制限収入があって、全国的に上限に達したときには新契約による指導料収入は発生せず、保証証券取扱収入のみとなること、収入実例は収入を約束するものではなく、収入格差が生じるものであること、射倖心で指導料収入を追求しようとする者は契約の申し込みを遠慮願いたいこと等の注意事項が書かれているが、これは他の会長名とか収入額を印刷した部分に比べて非常に細かい活字で印刷されているし(<書証番号略>)、また、前記業務約款にも、同趣旨のことが書いてあるが、これまた全体的に小さな活字で種々細かいことを沢山規定した契約書の一部に記載されており(<書証番号略>)、いずれも契約相手方としての一般人の注意を惹くには十分なものとはいいがたい。それに、このように、第三者を「指導」ができない場合には手数料収入のみになること、そして、資格を得ても、収入が得られないことがありうることは書いてはあるものの、本件保証証券の販売が容易とは言いがたいことについて十分な説明はなく、かえって、努力さえすれば十分な収入が得られるように書いてあり(<書証番号略>)、そのうえ、あとどの程度のポストがあいているのか(残数)の表示もないのである。以上の事実からすると、被控訴人保証協会において、本件契約を締結するにあたり、契約の相手方に対し、重要な事項を告知していないものといわなければならない(それどころか、被控訴人添田において控訴人に対し、保証証券はじゃんじゃん売れていると言ったのであるから、不実の告知をしたとさえいえる。)。なお、前記業務約款とか、やはり昭和六〇年七月三一日付けで控訴人が被控訴人保証協会に対し差し入れた「指導会・案内状送付申込書・新企画書・新印刷物・新證券送付申込書・契約・注意告示・保証業と指導業の重要事項告示・事実の証拠に関する確認及び念書」なる書面及び控訴人が昭和六二年二月一九日付けで被控訴人保証協会に対し差し入れた「確認書」なる書面等には、控訴人が総代理店等の数が有限で、指導料収入にも限りがあるから本来の証券販売の努力を怠ってはならないこと等の事実を十分承知したうえ本件契約を締結したことを確認する趣旨の文言とか、控訴人は、射倖心から本件契約を締結したものではないこと等が書かれていることは事実である(<書証番号略>)が、いずれも小さな活字でこまごまと種々の事柄が書かれている書面に、いわば後日の言い訳のために併記されたものといわれても止むを得ないものといえる(専門家が注意深く読んでさえ、真意を把握しかねるような文章が並んでいる。一般の人がこれを読んで意味を理解できる者がどれだけあるか、疑問である。)。当初の勧誘のための宣伝用のパンフレットとか、実際に控訴人が説明を受けたときの内容からすると控訴人において真実これらのことを十分納得して本件契約を締結したものとは認めがたい(<書証番号略>及び控訴人本人尋問の結果によれば、控訴人は、雑貨商であり、長井たばこ販売協同組合理事長等も務めた経験があることが認められるが、この事実も、右認定を左右するに足りるものではない。)。さらに、これらの書面とか、控訴人が昭和六〇年七月一二日に被控訴人保証協会に送付した「資格審査と役務の権利契約申し込み書」(<書証番号略>)あるいは被控訴人添田の供述中には、被控訴人保証協会が作成し、あるいは被控訴人添田が押印した書面以外は正式な書面ではなく、被控訴人保証協会等において関知しないものであり、控訴人はこれら被控訴人保証協会等の関知しない書面に影響されることなく本件契約を結んだものであるとか、被控訴人大川が控訴人に対し送付したパンフレット(<書証番号略>)も被控訴人添田の承知していないものである等の趣旨の部分がある。しかし、そもそも、本件のような商法にあっては、総代理店等は、形式上は独立の商人ではあるが、実質は被控訴人保証協会の使用人ともいうべきものであるから、被控訴人保証協会としては、総代理店等が他人を勧誘するにつき違法な勧誘を行わないよう十分な監督をすべき義務があるものというべきであるうえ、右パンフレット(<書証番号略>)は、東京都の総代理店と称する比嘉会長が作成したパンフレットを被控訴人大川が一部変更して写したものであって(同被控訴人の尋問の結果)、右比嘉が昭和五八年には年間一億円以上の収入を上げ(<書証番号略>)、その地位等からしても被控訴人保証協会の総代理店中で中心的な地位を占める人物と推測されること、及び<書証番号略>の内容自体、被控訴人保証協会等自身が作成した<書証番号略>と比較しても、後者が昭和六三年改正後の訪販法に対応した内容となっていることを除いては内容的に大差があるものではないこと等からして、右パンフレットのことを被控訴人保証協会等が知らないはずはなく、関係がないなどというのは、言い逃れにすぎないものと評せざるをえない。

3  以上のように、本件商法の根幹に関わる重要な事実につき事実の不告知(さらに進んで証券がじゃんじゃん売れているという虚偽の事実の告知)があるうえ、被控訴人らの商法には、さらに、次のように、正常の取引とは評価しがたい点(というより、むしろいかがわしい商法によくある手法)がいくつも見受けられるのである。

(一) 被控訴人受託協会は、もと東京都新宿区西新宿七丁目一五番六号(被控訴人添田の住所地)に本店を置いていたが、昭和六〇年六月一八日(登記は同月一九日)本店を現在地に移転したものである。一方、被控訴人保証協会は、もとの商号は被控訴人受託協会と同じ「株式会社全国身元保証受託協会」であった。そのうえ、両社の代表者は被控訴人添田であり、ともに後記の「本部ビル」で営業している。このように両社は非常に紛らわしく、また、この両社が別のものであることにつき説明がなかったため、控訴人は、両社が別会社であるとの認識も持たないまま本件契約を締結したものである。また、被控訴人保証協会は現在登記簿上本店を東京都中野区本町<番地略>に置いているが、現実には同住所地には誰もおらず、控訴人訴訟代理人が平成元年七月一八日に右住所地に宛てて出した郵便も結局宛て所に尋ねあたらないとの理由で送達されずに終わった(<書証番号略>、控訴人、被控訴人添田〔原審〕)。

このように、被控訴人添田は、一見すると名称・実態ともに区別をつけがたいような被控訴協会らを設立し、しかも、総代理店等と直接の契約関係に立つ被控訴人保証協会については、資本金も一〇〇万円と極めて低額にし、郵便物も届かないような住所を本店所在地としているのである。被控訴人添田が被控訴人受託協会のほかに証券の販売を受け持つ被控訴人保証協会を設立した動機は被控訴人添田の供述によっても明確ではなく、被控訴人受託協会が追求を受けることを免れるためではないかとの控訴人の指摘も、もっともなところがあるとさえ感じられるのである(行政上の追求を避ける目的も考えられないではない。)。

いずれにせよ、右のような被控訴協会らの態度は、契約の相手方に対して誠実な対応をしているとは到底いいがたいものである。

(二) 被控訴協会ら両社の事務所が存在する「第二保証会館」は、実際は被控訴協会らが賃借しているものにすぎないが、被控訴人大川はこれを「本部ビル」と呼んで控訴人を案内し、また、控訴人に送ったパンフレットにも「他の代理店を募集している本部なるものは驚くほど貧弱なものが多いが、六階建ての当協会の本部ビルが昭和五五年七月に完成した。」との趣旨の記載がある(<書証番号略>、被控訴人大川、被控訴人添田〔原審〕)。これらは、右本部ビルを被控訴協会らが所有しているかのように言って、被控訴協会らが十分な資産を有する大会社であるように控訴人に思い込ませようとしたものであると評されても仕方がないことである。

(三) 被控訴人大川が控訴人に送ったパンフレットには、現在総代理店になるための資格取得金は特別優遇第五回で一二〇〇万円であるが、次の特優第六回には一七〇〇万円になり、最終的には五〇〇〇万円まで上げられる予定であるとの記載がある(<書証番号略>)。また、被控訴人大川は、本部を見てきたあと、電話で控訴人に対し、資格取得金が来月(昭和六〇年八月)ころから値上げになるから早く入った方がいいと言ってきた(控訴人)。しかし、事実はすぐに値上がりするような状態にはなく、事実値上げもされなかった(被控訴人添田〔当審〕)。これらは、虚偽の事実を申し向けて本件契約を締結させたものというべきである。

(四)  被控訴協会らは、保証証券の有効性が争点になっていない訴訟(東京地方裁判所昭和五五年(ワ)第四三六八号事件)において成立した和解調書の写しを添付して「裁判所と「信用身元保証證券」」なるパンフレットを作成し、東京地裁が、保証証券が「強行法規に適法であり、公序良俗に適合すること」を認めたなどと記載し、あたかも裁判所が保証証券の有効性を積極的に認定したかのように宣伝している(<書証番号略>)が、これは、裁判所を不当に利用して一般人に対し本件証券を権威付けしようとしたものと見られる。

また、本件契約成立後のことであるが、被控訴協会らは、前記長野事件(2(一))において、総代理店が保証料を受け取ったときに契約が成立することを否定し、被控訴人受託協会は誓約書請求用紙の送付を受けたときにも保証契約を締結するか否かの自由を有するものであるとか、はては主債務者が完済する資力があるのに支払いを怠ったことが被控訴人受託協会の支払い義務履行の条件であるとか種々の主張をして支払いを免れようとしたが、これらの主張がいれられず全面敗訴になったものであり、本件保証証券の有効性自体は争点になっていなかったにもかかわらず、控訴審判決のうちで自分の都合のよい部分だけを取り出して、東京高等裁判所が保証証券は保証人だから有効であると積極的に確定したと称し、しかも、判決文そのものの正確な抜粋であるかのような体裁の文書を作り上げて、繰り返し宣伝に使っているのである(<書証番号略>)。これはまさに裁判所の判決を悪用するものであって、到底誠実な商法とはいいがたい。本件契約後のことであるから、本件契約に直接影響を及ぼすものではないが、被控訴協会らが代理店等を勧誘する際に行っていた説明に嘘やごまかしがあったという実態の一端を示すものとして無視しえないし、被控訴人添田本人(被控訴協会ら代表者)の供述の信用性を判断するに当って考慮すべき事情でもある。

4  以上の事実を総合して考えると、本件契約は、公序良俗に反する無効な契約であると断ぜざるをえない。

なお、<書証番号略>及び当審における被控訴人添田本人尋問の結果によれば、被控訴協会らは、無限連鎖講の防止に関する法律に違反したり、訪販法の適用を受けたりしないようその契約書の文言等について細心の注意を払っているというが、昭和六三年改正後の訪販法に対応して作成された現行の契約書(<書証番号略>)は、改正訪販法が適用されないこと、法適用の要件が欠けていることを結論的に繰り返し述べることにのみ急であり、その結果実体が極めて分かりにくいものとなっているのであって、かえって勧誘を受ける者を惑わせるような内容になっていることを指摘しておく。被控訴協会らが訪販法が適用されるべき実体を有しているか否か(特に現在の被控訴協会らの商法が、契約の文言上のみでなく、実際も改正訪販法が適用されない実体を有するものであるか否か)はさておき、形式上訪販法等が適用されないようになっているからといって、本件商法自体が公序良俗違反にならないとはいえないことは当然である。当裁判所は、本件商法の実際、現実にされている勧誘方法からいって公序良俗違反と判断するものである。

三争点3、4について

前記説示のとおり、被控訴人保証協会と控訴人との間の本件契約は公序良俗に反し、かつその勧誘の方法は違法なものであったというべきである。そして、前記認定事実からすると、被控訴人受託協会は、本件保証証券の発行者として、被控訴人保証協会と一体となって違法な本件商法を実行したものというべきであり、また、被控訴人添田は、本件商法考案の中心人物であり(このことは同人の供述から明らかである。)、被控訴協会らの代表者として、違法な本件商法を中心となって推進し、これら被控訴人受託協会及び被控訴人添田の行為の結果控訴人に損害を被らせたものであるから、いずれも、控訴人に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うべきものである。

四争点5について

前記説示のとおり、被控訴人大川は、被控訴協会らの本件商法に参加し、控訴人に対し違法な勧誘を行ったものであり、しかも、同被控訴人は、「東北国際信用身元保証協会」の会長(一番上のランクである総代理店)として、他にも多数の者を勧誘したことが認められる(<書証番号略>)から、同被控訴人もまた、本件商法を実行したものとして、控訴人に対して不法行為に基づく損害賠償として控訴人の被った損害を賠償する責任がある。

五結論

以上によれば、被控訴人保証協会に対し、不当利得返還請求権に基づき、本件金員一二〇〇万円及びこれに対する同被控訴人に本件訴状が送達された日の翌日である平成元年六月一七日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める請求、並びにその余の被控訴人らに対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、本件金員一二〇〇万円及びこれに対する不法行為の後である平成元年六月一七日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める請求はいずれも理由があり、これらは、不真正連帯債務の関係にあるものというべきである。

よって、控訴人の本訴請求はすべて理由があり、認容すべきであるから、これと結論を異にする原判決を取り消し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官上谷清 裁判官滿田明彦 裁判官亀川清長)

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