大判例

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東京高等裁判所 平成元年(ネ)862号 判決

一 当裁判所も、控訴人の本件請求はいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、左記の点を付加するほかは、原判決の理由説示のとおりであるから、ここにこれを引用する(ただし、原判決第三三丁裏第一〇行目の「被告(二)足場板意匠」を「被告(一)足場板意匠」に、第三四丁裏第一一行の「差意」を「差異」に、それぞれ改める。)。

本件登録意匠(一)に係る物品であり、被告製品(一)及び(二)である鉄骨用吊り足場は、建築工事等のために作業者を乗せて高所に架設されるものであるから、取引者ないし需要者が最も関心をもつてみるのは安全性にかかわる部分の形状であることは当然である。

具体的にいうならば、鉄骨用吊り足場全体の意匠においては、作業者の転落を防ぐために四囲に設けられる手摺(補強材)、安全枠あるいは斜材の形状、特にそれらの堅牢性に最も関心が注がれるが、同時に、それらは作業者の体が直接触れる箇所であるから、手触りの良さなど使い具合に係る形状も相応の注意を引くと考えられる。一方、足場板はその上に作業者が乗るものであり、また足場取り付け具は鉄骨用吊り足場全体を保持するものであるから、これらの意匠においては、形状の堅牢性に専ら関心が注がれるものと考えることができる。

この視点に立つてみると、本件登録意匠(一)が角張つた素朴な印象を与えるのみであるのに対し、被告(一)全体意匠(被告(二)全体意匠も同じ。)は、手摺及び斜材に緩やかな曲線を持たせたことによつて使い具合が良い優美な印象を与えており、かつ、本件登録意匠(一)の前部が一本の水平な前部手摺及びX字状枠によつて形成されているのに対し、被告(一)全体意匠の前部は二本の水平な前部手摺及び二本の前部支柱によつて形成されているので、両側に添えられているパイプの斜材の形状と相まつて、安全性においてより優れているとの安定感を与えるといい得るから、両意匠が起こさせる美感には明らかな差異があるというべきである。

さらに、被告(一)足場板意匠(被告(二)足場板意匠も同じ。)は下方に計八本の突条様のものを形成したことによつて、また被告(一)足場取り付け具意匠(被告(二)足場取り付け具意匠も同じ。)は本件登録意匠(三)にみられるリブを省略したことによつて、いずれも本件登録意匠(二)あるいは本件登録意匠(三)よりも堅牢な印象を与えているから、本件登録各意匠(二)あるいは(三)とは別異の美感を起こさせるというべきである。

なお、付言するに、鉄骨用吊り足場の足場板及び足場取り付け具はもとより、鉄骨用吊り足場自体も極めて簡単な構成のものであつて、意匠を形成する部材もそれらの本来の用途から必要不可欠のものがほとんどであるということができるから、各意匠が基本的構成態様において類似する結果となるのは必然のことである。したがつて、これらの意匠においては、具体的構成態様における差異が意匠の類否判断の核心とならざるを得ないのであつて、本件登録意匠(一)ないし(三)と被告(一)及び(二)の全体意匠、足場板意匠及び足場取り付け具意匠とが基本的構成態様において類似することを強調し具体的構成態様における差異は顕著なものでないとする控訴人の主張は当たらないものというべきである。

二 よつて、控訴人の本訴請求をいずれも棄却した原判決は正当であつて、控訴人の控訴は理由がないからこれを棄却する。

〔編注1〕本件における当事者が求めた裁判は左のとおりである。

一 控訴人

「原判決を取り出す。被控訴人住友軽金属工業株式会社は、原判決添付目録(一)及び(二)記載の足場装置(以下「被告製品(一)」及び「被告製品(二)」という。)を製造し、販売し又は頒布してはならない。被控訴人朝日鉄工株式会社は、被告製品(二)を貸し渡し、又は貸渡しのために展示してはならない。被控訴人住友軽金属工業株式会社は被告製品(一)及び被告製品(二)を、被控訴人朝日鉄工株式会社は被告製品(二)を、それぞれ廃棄せよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決及び仮執行の宣言

二 被控訴人ら

主文同旨の判決

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