大判例

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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)111号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び同二(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

原告は、「株式会社かじの」の文字は、商品である「京ふき」を収納した容器の裏面に付されているが、容器の裏面に付された文字は、右容器が被告ら専用の容器であることを示すものであつて、商標ではないし、また、これが使用されていた時期も証拠上明らかではない旨主張する。

しかしながら、原本の存在及びその成立について争いのない乙第九号証によれば、被告らは、昭和六二年一〇月頃、商品である蕗の佃煮をいれた透明体の容器の裏面中央部付近に、上段に楷書体で比較的小さく「株式会社」と、下段には字体を草書的にして大きく「かじの」と文字を刻設していたことが認められる。右事実からすれば、容器裏面に刻設された文字の配列、態様は本件商標とはやや異なるが、構成文字全体において同じであり、外観にさしたる差異はなく、社会通念上本件商標と同一のものであると認められ、また、その使用商品は請求に係る商品である「加工野菜及び加工果実」に含まれるものであることは明らかである。そして、本件のように容器に収納された食品を購入するに際しては、需要者は当該商品の成分や製造日それに商品の出所等を確認するため、これを手に取り、容器の裏面をも観察することは日常よく行なわれていることである。してみると、容器裏面に刻設された「株式会社かじの」の文字は、商品の自他識別標識としての機能を果たし得るものであるといえる。

そうすると、本件商標は、審判請求の登録日である昭和六三年四月四日前三年以内である昭和六二年一〇月頃、加工食料品に区分される商品に使用されていたものであるといわざるを得ない。

原告は、商標は典型的な商品の顔であるから、通常消費者の目に触れない容器裏面の表示を商標とみることはできないし、また、乙第九号証からは本件商標が指定商品に使用されていたことを立証することはできない、と主張する。しかしながら、需要者が商品購入に当たつて容器の裏面をも観察することがしばしばあることは前記判示したとおりであり、また、乙第九号証の証明書の内容は、右証拠によれば、「本件商標は、昭和六二年一〇月頃、商品である『蕗の佃煮』に使用されていたことを証明します」という趣旨のものであることが認められ、他にこれに反する証拠はないことからして、右証拠をもつて本件商標が昭和六二年一〇月頃、指定商品に使用されていたことを認めるに充分であり、原告の前記主張はいずれも理由がないものである。

以上のとおりであるから、本件商標の登録は、請求に係る指定商品につき、商標法第五〇条第一項の規定により、取り消すことができない、とした審決の認定、判断に誤りはなく、審決に原告主張の違法はない。

三 よつて、審決の取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。

〔編注〕本件における特許庁における手続の経緯は左のとおりである。

被告らは、「株式会社かじの」の文字を横書きして成り、指定商品を第三二類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く」)とする登録一〇二九五九四号商標(昭和四五年四月二一日商標登録出願、昭和四八年九月一日設定登録、昭和五九年三月二一日存続期間の更新登録。以下「本件商標」という。)の商標権者であるが、原告は、昭和六三年三月一日、被告らを被請求人として、商標法第五〇条の規定に基づき、商標登録取消の審判を請求し(昭和六三年四月四日同登録)、昭和六三年審判第三四四一号事件と審理された結果、昭和六三年一二月一五日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は平成元年一月二八日原告に送達された。なお、原告のための出訴期間として九〇日が附加された。

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