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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)121号 判決 1991年6月18日

京都府京都市中京区西ノ京桑原町一番地

原告

株式会社島津製作所

右代表者代表取締役

西八條實

東京都千代田区大手町二丁目六番三号

原告

新日本製鐵株式会社

右代表者代表取締役

齋藤裕

右原告両名訴訟代理人弁理士

石井康夫

武石靖彦

東京都千代田区霞が関三丁目四番三号

被告

特許庁長官

植松敏

右指定代理人

服部平八

松木禎夫

宮崎勝義

主文

特許庁が昭和五八年審判第二〇八九八号事件について平成元年三月二三日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  原告ら

主文同旨の判決

二  被告

「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決

第二  請求の原因

一  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和五三年二月一七日名称を「高温被測定物の回転形寸法測定装置」とする考案(以下「本願考案」という。)について実用新案登録出願(昭和五三年実用新案登録願第二〇二七一号)をしたが、昭和五八年九月六日拒絶査定を受けたので、同年一〇月六日これを不服として審判の請求(昭和五八年審判二〇八九八号事件)したところ、昭和六二年一〇月三〇日に出願公告(昭和六二年実用新案出願公告第四二三二五号)されたものの実用新案登録異議の申立てがあり、特許庁は平成元年三月二三日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をした。

二  本願考案の要旨

光源部およびコリメータレンズから成る投光部と、結像レンズおよびそのスクリーン面に一列に配置された多数個の光電素子群から成る受光部と前記投光部および受光部を回転軸に対してそれぞれ対称的に取付け、走行する円形断面を有する高温被測定物の長手方向の軸を軸心として回転するように構成した回転駆動板と、この回転駆動板を支承する中空回転軸と、前記受光部の検出信号を外部の演算部に伝達する装置をそなえた装置において、前記中空回転軸と被測定物との間の環状空間に被測定物の走行方向に対して投光光路用間隙をもって前後に分割された遮熱用中空円筒と、この中空円筒に対する冷却ジャケットと、この投光光路用間隙部の周囲に光路を横切って中空円筒の軸方向のエアーカーテンを発生する装置とをそなえたことを特徴とする高温被測定物の回転形寸法測定装置(別紙一参照)。

三  審決の理由の要点

1  本願考案の要旨は前項記載(実用新案登録請求の範囲の記載に同じ。)のとおりである。

2  これに対して、当審における実用新案登録異議申立人ブリティシュスチール コーポレーションが提示し本出願前に頒布された特公昭三三-三三八五号特許公報(以下「第一引用例」という。)には「投光部と受光部を回転軸に対してそれぞれ対称的に取付け、走行する円形断面を有する被測定物の長手方向の軸を軸心として回転するように構成した円筒形枠と、該形枠内に取付けられた被測定物と接触した管と、受光部の検出信号を外部の演算部に伝達する装置を備え、前記形枠はベアリングにより回転されると共に、形枠および管には測光するための窓を設けた、円筒状物体の寸法を測る装置」(別紙二参照)が記載されている。

3  また、同異議申立人の提出に係る実開昭五二-三二三四九号公開公報(以下「第二引用例」という。)には、「高温材料を熱の影響なく安全に測定するための測定器をウォータージャケットで冷却すること、および塵の影響を排除するためエアーカーテンを設けること」(別紙三参照)が、それぞれ記載されている。

4  本願考案と第一引用例記載のものとを対比すると、両者は、投光部と受光部とを回転軸に対してそれぞれ対称的に取付け、走行する円形断面を有する被測定物の長手方向の軸を軸心として回転するように構成するとともに、円筒形枠、すなわち回転駆動板を投光光路間隙をもって前後に分割し、受光部の検出信号を外部の演算部に伝達する装置である点で一致し、

5  前者が(1)高温被測定物の測定のため、回転駆動板を支承する中空回転軸を有し、該中空回転軸の遮熱用中空円筒に対し冷却ジャケットを設けた点、および(2)投光光路用間隙の周囲に光路を横切って中空円筒の軸方向のエアーカーテンを発生する装置を備えた点で相違する。

6  相違点(1)についてみると、第一引用例の測定装置には管という中空体が形枠に取付けられており、該中空体には熱の不導体である空気が入っているから前記中空体は遮熱用中空円筒としての機能を有しているものと認める。ところで、高温被測定物の測定に当たっては、第二引用例に示すように測定部への熱の影響をなくすため、中空体の中に水を導入したウォータージャケットで測定装置を冷却し保護するのが常態である。したがって、測定対象物がより高温になり空気の遮熱では不十分なとき、前記中空体を冷却ジャケットに変更し遮熱用装置とする程度のことは当業者が容易に想到し得ることといわなければならない。そして、その際、中空体を回転軸に設計変更し、それに回転駆動板を支承することは冷却ジャケットという中空体の中に水を導入する構造からみて設計変更といわなければならない。これは前記変更が本願明細書をみても、回転駆動板に遮熱用の中空管を取付けたものに比し格別の効果が認められないところからも首肯できる。したがって、相違点(1)は、第一引用例および第二引用例に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に想到し得ることといわなければならない。

7  相違点(2)についてみると、これは本願明細書の記載からみて、測定装置を塵から保護するところにあるものと認められるところ、前記第二引用例に塵の影響を排除するためエアーカーテンを設けることが記載されているから、該目的のためエアーカーテンを発生させる装置を備える程度のことは当業者が容易になし得ることと認める。また、エアーカーテンの方向についても装置への塵の混入を防ぐという目的からしてそれを投光光路間隙部の周囲に光路を横切って中空円筒の軸方向に発生させることは、理の当然のことといわねばならない。したがって、相違点(2)は第二引用例の記載に基づいて当業者が容易になし得たことと認める。

8  以上のとおりであるから、本願考案は、第一引用例および第二引用例に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易になし得た考案というほかなく、実用新案法三条二項の規定により実用新案登録を受けることができない。

四  審決を取り消すべき事由

審決の理由の要点1ないし4は認める。ただし、同4のうち「円筒形枠、すなわち回転駆動板を投光光路間隙をもって前後に分割し」とした点は誤りである。同5は認める。ただし、相違点はこれにとどまるものではない。同6および7の判断は争う。審決は、第一引用例の技術内容を誤認した結果、本願考案との対比判断を誤ったもので、この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、審決は違法として取り消されるべきである。

1  本願考案の構成および効果

投光部よりの光束を被測定物に向けて投射し、その光束を受光部で受けることにより被測定物の一断面の直径を測定することができるが、この方法を利用して、その投光部と受光部を回転させることにより光束を回転させ、多方向からの輪郭を測定することにより線条の被測定物の輪郭を光学的にとらえることができる。従来、このような光学的に輪郭をとらえる方法が提案されているが、生産ラインで実際に使用できる装置を実現することは困難であった。それは、生産ラインでの線径の測定は熱間で測定しなければならないことが多く、これに基づく回転光学系に対する被測定物からの遮熱、防塵等種々の問題が解決されていなかったからである(本願実用新案公報二欄一三行ないし三欄三行 以下本願実用新案公報を単に「本願公報」という。)。

本願考案は、棒材、管材などの被測定物を圧延、引抜きなどの際の軸方向走行中において、多方向からその輪郭を光学的にとらえ、光学的にその断面形状を測定するようにした寸法測定装置に関するものであって、高温の被測定物に対して全円周の直径連続測定に使用できる回転形寸法測定装置を提供することを目的として、その実用新案登録請求の範囲に記載したとおりの構成を採択したことによって、冷間、熱間を問わず使用できる回転形寸法測定装置を実現できたものである。このような本願考案の目的ないし効果からみても、本願考案の構成上の特徴点は、<1>中空回転軸と被測定物との間の環状空間に被測定物の走行方向に対して投光光路用間隙をもって前後に分割された遮熱用中空円筒を用いた点(「第一の特徴点」ということがある。)、<2>上記投光光路用間隙部の周囲に光路を横切って中空円筒の軸方向のエアーカーテンを発生する装置を用いた点(「第二の特徴点」ということがある。)にある。本願考案は、<1>の構成を採用したことにより、遮熱用中空円筒を用い、それを前後に分割して投光光路用間隙となる円盤状の測定空間(円盤状のスリット)を確保したこと(円筒が前後に分割されれば、その空隙が円盤状の空間となることは明らかであるから、この点が構成要件として規定されていないとする被告の主張は誤りである。)により、遮熱用中空円筒と関係なく、この測定空間において投光部および受光部における測定光束を回転させて測定を行うことができるようになった。

したがって、遮熱用中空円筒は回転しないから、中空円筒に対して冷却ジャケットを構成することが容易になり、効果的な遮熱を行うことができ、回転光学系に対する被測定物からの遮熱を行うことができるものである。また、<2>の構成を採用して、円盤状の測定空間の全周にわたって、塵の影響を排除するようにしたので、エアーカーテンの発生装置は、投光部と受光部の回転と構造的に関係をもたせることなく設けることができるものである。

2  第一引用例の装置の構成

第一引用例の装置は、かなりの長さを有するほぼ円筒状物体、例えば、線、裸または絶縁された電気導体、絶縁線条または碍管、鎧装及び類似物体の直径の変化を記録するものである(一頁左欄一三行ないし一七行)が、その構成を実施例である図面に則してみると、被測定物である円筒状物体は、管3の中央通路を通過するものであり、管3は円筒形枠6内に取付けられ、窓4が形成されている。円筒形枠6はベアリング77'の周りを回転するものである。円筒形枠6は、管状筐体9を有し、管状筐体9は窓4の両側において軸心に直角に延びている。つまり、円筒形枠6と管状筐体9とは一体のものである。管状筐体には、ランプ10、レンズ11よりなる投光部と、窓4と反対側にレンズ12、光電管13よりなる受光部が設けられている。投光部からの測定光束は管3の窓4を通して受光部に投射されるが、管3が円筒形枠6に取付けられているから、管3も回転し、測定光束を被測定物の全周に回転させることができ、多方向からの輪郭を測定することができるものである。したがって、被測定物に対する測定空間としては、管3の窓を通る線状の空間が存在するだけであり、測定空間が円筒形枠の回転に伴って回転するものということができる。

3  第一引用例記載のものにおける管を中空円筒とみた点の誤認(取消事由1)

審決が、相違点(1)の判断に関して、「第一引用例の測定装置には管という中空体が形枠に取付けられており、該中空体には熱の不導体である空気が入っているから前記中空体は遮熱用中空円筒としての機能を有しているもの」と認めていることからして、審決が第一引用例の装置における管3の管壁を中空であると理解していることは明らかである。しかしながら、第一引用例には、管3の管壁を中空であると理解できる記載はない。一般に、管を形成する管壁は中実である。中空壁である場合には、そう理解させる根拠となり得る記載が存在するはずである。

しかるに、第一引用例には、管3の管壁が中空であると理解すべき合理的な根拠はない。むしろ、第一引用例における「管3には窓4を形成する。窓4は二個の壁5、5'にて境され、しかして壁5、5'を傾斜せしめて寄生反射を防止する。」(二頁左欄三〇行ないし三三行)との記載からみて、管壁は中実でなければならない(管3に窓4を形成した場合、管壁が中空であると、窓の壁に相当する部分も、中空となり壁にはならなくなり、窓が壁で境されるためには、管壁が中実でなければならないからである。この点は被告も認めるところである。)。そして、管3の窓を形成する部分とそめ両側の円筒部分とは一体構造のものであるから、窓を形成する部分に連続する円筒部分は当然に中実である。この点、被告は、管3の肉厚部分が中実であるならば、管全体にハッチングが施されているはずであるのに、第2図から明らかなように管3にはハッチングが施されていないのであるから、第一引用例の管3の管壁は、中空とみた方が合理的である旨主張する。しかしながら、第2図における固定突出部8、8も断面が表示されているにもかかわらず、ハッチングが施されていないように管の肉厚部分もハッチングが省略されたものとみるべきである。ハッチングの有無だけで中空であるか否かを認定することは妥当でない。この点は管3が中空の壁であるとみるべき根拠とはなり得ない。また、第一引用例の装置における測定対象である円筒状物は前述のように「例えば、線、裸または絶縁された電気導体、絶縁線条または碍管、鎧装及び類似物体」というものであるから、性質上、高温のものではなく、回転光学系に対して遮熱を行う必要性のないものである。すなわち、第一引用例記載の装置における管3は、冷却機能と無関係なものであり、むしろ、被測定物の保持のために回転させるためのものである。このことは、「測定ヘッドを構成する組立体に物体に対し直角の平面において測定ヘッドを軸心の周りに回転する装置を設け、それにより物体を静止状態に保持し測定ヘッドを回転すると共通の断面における物体のオバリゼーションを表わす曲線を・・・・自由に得ることができる。」(二頁左欄一五行ないし二五行)との記載からも窺われる。したがって、機能的にみても、第一引用例の管3が遮熱の機能を有するものと理解できる根拠はないものというべきである。そうすると、審決が第一引用例について、中空円筒でないものを遮熱作用を有する中空円筒であると誤解したものであることは明らかである。第一引用例の管を遮熱用中空円筒と誤認したことは、審決が、両者の重要な相違点を看過したことにもなり、これが本願考案の特徴的構成の一つである<1>の構成に関する判断に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点で違法として取消しを免れない。

なお、被告は、第一引用例の管の管壁が中空でないとしても、その点の誤認は審決の結論に影響を及ぼさないとする趣旨の主張をするが、審決の結論は、第一引用例の管が中空円筒であることを前提とした判断に基づいていることは明らかであり、中空円筒でないことを前提とした判断は何ら示されていないのであるから、被告主張のような新たな判断によって第一引用例の管を遮熱用中空円筒と誤認した点の違法は治癒されるものではない。

4  第一引用例の「円筒形枠」と本願考案の「回転駆動板」とを誤って対比させたうえ、「円筒形枠、すなわち回転駆動板を…前後に分割し」た点を一致点として認定し、この誤った一致点の認定を前提として相違点(1)(2)についての判断をした点の誤り(取消事由2)

(一) 仮に第一引用例の装置における管が審決認定のとおり遮熱用中空円筒であるとしても、審決は、本願考案と第一引用例の装置とが「円筒形枠、すなわち回転駆動板を投光光路間隙をもって前後に分割し」構成が一致すると認定した点は誤りであるから、取り消されるべきである。

本願考案は、前述のとおり遮熱用中空円筒が前後に分割されていることを特徴とするものであり、それによって、投光光路用の円盤状の間隙を形成するものである。したがって、本願考案においては、回転駆動板が前後に分割されているか否かは問題にするものではない(回転軸を保持する中空回転軸と、この中空回転軸と被測定物との環状空間に配置された遮熱用中空円筒とは別のものである。)。

第一引用例の管は「前後に分割されたもの」とは到底認められない。すなわち、第一引用例における管3は、その一部に窓4を形成して、投光光路用とするものであり、円筒形枠6に取付けられ、投光部および受光部とともに一体的に回転するものである。管3が回転する構成では、冷却効果を十分にするための冷却ジャケットを設けようとしても、冷却ジャケットには冷却用の流体を循環させる必要があり、回転体に流体を循環させるための構造が複雑となる。第一引用例の管は、その一部に窓を形成して投光光路用としているものであるから、管が分割されていなくても、断面形状を測定することに何ら不都合はないので、第一引用例の装置において、管3を前後に分割されなければならない理由もない。

他方、本願考案は、遮熱用中空円筒を前後に分割して投光光路用間隙を形成して、投光部および受光部の支持部材のみを回転させる構成としたことによって、冷却ジャケットの採用を容易にするとともに、回転系の重量を大幅に減らし、高速回転も可能となり、かつ円筒を回転させることによる振動を回避することもできるものである。本願考案は、第一引用例の装置とは構成および作用効果において相違するものであるから、仮に第一引用例の管が遮熱用中空円筒であるとしても、第一引用例から、管を「分割すること」が容易に推考できるものではなく、まして、審決の判断のように「中空体を冷却ジャケットに変更し遮熱用装置とする程度のことは当業者が容易に想到し得ること」とは到底いえない。この点、被告は、投光部からの光が窓部分を通過して反対側の受光部に到達するものであるから、少なくとも窓部分は、円筒形枠を被測定物の走行方向に対して前後に分割した形状になっている旨主張するが、第一引用例の円筒形枠は一体的に形成されたものであるから、その一部に窓部分が存在するからといっで、その窓部分において前後に分割されているというのは、本願考案の分割の意義を誤解したものというべきである。仮に、被告主張のような意味において円筒形枠が「分割されている」としても、これによって、中空円筒を前後に分割した本願考案の作用効果がもたらされるものではない。審決は、右のとおり本願考案の回転駆動板と第一引用例の円筒形枠とを誤って対比させたうえ、両者を「前後に分割し」たものと誤認し、この誤認に基づいて相違点(1)について誤った判断をしているものといわなければならない。

(二) 第二引用例には、塵の影響を排除するためにエアーカーケンを設けることが記載されているが、これは、従来から行われているように、防塵のために測定器の検出部にエアーカーテンにより空気を吹き付けるものである。したがって、測定器の検出部が回転する場合には、回転体に対して空気を導入するための問題が生ずる。本願考案のエアーカーテンは、遮熱用中空円筒を分割したことにより、光路用間隙部の周囲に光路を横切った軸方向の空気流のエアーカーエンを採用したものである。第一引用例においては、光路は管状筐体9によって囲まれているから、本願考案のような空気流の採用の余地はないものである。すなわち、本願考案は、遮熱用中空体を前後に分割して円盤状の測定空間を形成し、投光部および受光部を回転移動することにより、第二の特徴点である環状のエアーカーテンの採用が可能となったものである。それにより、寸法測定装置における塵の影響の排除を容易にできるようにしたものであるから、審決の判断のように、単に「塵の排除のためにエアーカーテンを設ける」という漠然とした技術思想から、本願考案の特異な構成が容易になし得たということはできないものである。

第三  請求の原因に対する認否及び被告の主張

一  請求の原因一ないし三の事実は認める。同四の主張は争う。審決の認定判断は正当であり、審決には原告主張のような違法の点はない。

二  被告の主張

1  第一引用例記載のものにおける管を中空円筒とみた点について

確かに、第一引用例の装置における管3の管壁が中空であれば、窓の壁に相当する部分は中空であり、壁にならないことは原告主張のとおりである。そのため、第一引用例では、第1図bに示すように窓を形成するために窓の形成部分を中実にし、それを表示するためにハッチングを施しているものである。このような図形の表示からみて、管3の肉厚部分が原告のいうように中実であるならば、第2図の管全体にハッチングが施されているはずである。たとえ、ハッチングが施されていないとしても、少なくとも肉厚部分が中実であるように均一な図形でそれを表示するはずである。それが、第2図から明らかなように管3にはハッチングが施されていないばかりか、均一な図形での表示もなく、むしろブロック状の表示があることは、第一引用例の管3が、中実であるというより中空とみた方が合理的である。原告のいうように第1図bから類推して管3が中実とみるのは無理である。

また、第一引用例の測定装置は、「絶縁された電気導体」をもその測定対象としているところ、絶縁された電気導体とは通常、合成樹脂を押出し被覆した絶縁被覆電線であるが、合成樹脂による押出し被覆は摂氏一四〇度ないし二八〇度という高温でなされるものであるから、この測定は非接触型測定器によってなされることになる(昭和四一年六月二五日発行澤田慶司著「プラスチックの押出成形とその応用」一七二頁ないし一七三頁 乙第三号証の一ないし三参照)。このことからみて、第一引用例の管3は、ガイド管としての機能とともに、高温線材からの熱遮断のための機能をも果たしているとみるのが相当である。そうであるから、管3は中空体であり、その中に空気が内在しているものである。このように、第一引用例の管は、中空体であり、それに光を透過させるための窓が形成されているのであるから、第一引用例には前後に分割された中空円筒が記載されている。審決が、「第一引用例の測定装置には管という中空体が形枠に取付けられて」いるとした認定には誤りはない。

仮に、第一引用例の装置における管3が中空体でなかったとしても、本願考案の進歩性を否定した審決の結論には誤りがない。すなわち、第二引用例には、高温被測定物からの熱による測定誤差をなくすために測定器を冷却ジャケットで保護することが記載されているから、第一引用例記載の測定器を前記高温被測定物の測定に転用するに当たり、被測定物と測定器との間の環状空間に該冷却ジャケットを設ける程度のことは当業者がきわめて容易に想到し得る設計変更であり、かつ冷却ジャケットにはその中空体中に水を循環する必要があるところから、この冷却ジャケットを中空回転支承軸とすることは、むしろ率直な設計事項といわねばならないからである。

2  相違点(1)(2)の判断について

(一) 相違点(1)の判断について

審決が、一致点の認定において「円筒形枠、すなわち回転駆動板を投光光路間隙をもって前後に分割し」と表現したのは、第一引用例における回転駆動する円筒形枠6が、窓4によって被測定物の走行方向に対して前後に分割されていることを意味し、円筒形枠が円盤状のスリツトを形成し分割されていることまでも意味するものではない。本願考案も光路の間隙について、「投光光路用間隙をもって前後に分割し」と規定しているにとどまり、円盤状のスリツトを形成して分割していることを要件としていないところから、審決が認定した事項をも本願考案は包含するものといわなければならない。そして、第一引用例の装置について、管3を中空体とみるべきことは前述したとおりであり、かつ、窓についてみると、投光部からの光が窓部分を通過して反対側の受光部に到達するものであるから、少なくとも窓部分は、円筒形枠を被測定物の走行方向に対して前後に分割した形状になっている。第一引用例の装置における管3は中空体であるから、該管には当然に空気が入っているはずである。空気は周知のごとく熱の不導体であるから、管は機能的にみて遮熱用中空体として機能しているとみるのが合理的である。ところで、第二引用例には、高温被測定物の測定に当たり、被測定物からの熱を遮断するため、中空体の中に水を導入した冷却ジャケットで保護することが記載されている。この冷却ジャケットは、第二引用例の第2図に示されるように、水が中空体部に導入され、該中空体部の出口から導出されるもで、絶えず水が中空体の中を循環している構造のものである。したがって、高温被測定物の測定に当たって、測定対象物がより高温になり空気の遮熱では不十分なときには、前記中空体を冷却ジャケットにし、それを被測定物と測定器との間の循環空間部に設け遮熱機能の向上を図る程度のことは当業者がきわめて容易に想到し得ることといわざるを得ない。そして、その際、前記冷却ジャケットを回転軸にし、それに回転駆動板を支承するよう図る程度のことは、冷却ジャケットが中空体中に水を循環する構造であるところから、当業者がきわめて容易になし得る設計事項といわなければならない。したがって、相違点(1)についての審決の判断には誤りはない。

仮に、第一引用例の装置における管3の管壁が中空でなかったとしても、第一引用例記載の測定器を高温被測定物の測定に転用するに当たり、被測定物と測定器との間の環状空間に第二引用例記載の該冷却ジャケットを設ける程度のことは当業者がきわめて容易に想到し得る設計変更であり、冷却ジャケットにはその中空体中に水を循環する必要があるところから、前記冷却ジャケットを中空回転支承軸とすることは、むしろ率直な設計事項であるというべきことは前述のとおりである。そして、冷却ジャケットを回転軸にするとすれば、構造的にみて測定器は回転させざるを得ないのは理の当然であるから、そのため、円盤状のスリット部を設けるよう企図することは支承軸の変換による単なる設計変更にすぎない。したがって、審決の相違点(1)についての判断は結論において正当なものである。

(二) 相違点(2)についての判断について

第二引用例には検出器への塵等の影響を排除するために検出部にエアーカーテンを設けることが記載されているから、第一引用例記載の測定手段を高温被測定物の測定に転用するに当たり、測定部を塵等から保護するため投光光路を横切って軸方向にエアーカーテンを形成するよう図る程度のことは、審決の判断のとおりきわあて容易に想到し得ることといわねばならない。

第四  証拠関係

本件記録中の書証目録の記載を引用する。

理由

一  請求の原因一ないし三の事実(特許庁における手続の経緯、本願考案の要旨および審決の理由の要点)については、当事者間に争いがなく、第一引用例に審決の理由の要点2に摘示された事項が記載されていること、本願考案と第一引用例記載のものとが同4に摘示された点(ただし、「円筒形枠、すなわち回転駆動板を投光光路間隙をもって前後に分割し」とある点を除く)で一致することも当事者間に争いがない。

二  取消事由についての判断

1  前記本願考案の要旨と成立に争いのない甲第二号証の三(本願公報)を総合すると、本願考案は、棒材、管材などの被測定物を圧延、引抜きなどの際の軸方向走行中において、多方向からその輪郭を光学的にとらえ、光学的にその断面形状を測定するようにした寸法測定装置に関し(二欄一行ないし六行)、高温の被測定物に対して全円周の直径連続測定に使用できる回転形寸法測定装置を提供することを目的とし(三欄四行ないし六行)、実用新案登録請求の範囲に記載したとおりの構成を採用したことによって、冷間、熱間を問わず使用できる回転形寸法測定装置を実現したものであることが認められる。

そして、本願考案の一実施例である第1、2図に示された装置の構成をみると、前掲甲第二号証の三によれば、遮熱用中空円筒(2、3)が赤熱丸棒鋼(1)の周りを長手方向に囲むようにしてそれぞれ支持脚(45)によって片持式に取り付けられていて測定部の過熱を防止するため水冷ジャケットとして構成されているものであるが、冷却水の注入、排出については、2は右端部、3は左端部よりそれぞれまとめてなされること、遮熱用中空円筒は、投光光路用間隙をもって前後に分割されていること、投光部6、受光部7が回転駆動板8上に取り付けられ、この回転駆動板はその左方の中空軸部により二個の玉軸受9を介し、軸受台10に回転自在に支承されており、チェーンスプロケットホイル11、チェーン14、駆動用スプロケットホイル13、モーター12により回転されるものであり、これによって、投光部6、受光部7とは被測定物1の周りを回転駆動して全周に亘って直径を測定するものであること、および投光光路用間隙には環状空気ノズル21が設けられ、矢印方向に噴射される空気流によって環状のエアカーテンが形成されるので、投光部6、受光部7の光学系のレンズなどに赤熱丸棒鋼1からのスケールなどが付着して汚染することを防止できるものであることなどが認められる。

2  右認定に係る事項に徴すると、本願考案における構成上の主たる特徴点は、原告主張のとおり次の<1><2>の構成にあるものというべきである。すなわち、

<1>中空回転軸と被測定物との間の環状空間に被測定物の走行方向に対して投光光路用間隙をもって前後に分割された遮熱用中空円筒を用いた点(原告のいう第一の特徴点)

この構成を採用したことによって、投光光路用間隙となる円盤状の測定空間(円盤状のスリット)が確保でき、この測定空間において投光部、受光部を回転させて測定を行えるので、遮熱用中空円筒自体は回転させる必要がなく、中空円筒に対して冷却ジャケットを構成することが容易になるものと認められる(なお、中空円筒が前後に分割されていれば、その間隙が円盤状の空間となることは明らかであるから、第一の特徴点の構成を採用したことによって、投光光路用間隙となる円盤状の測定空間が確保できることは原告主張のとおりであり、この点の被告の主張は採用できない。)。

<2>投光光路用間隙部の周囲に光路を横切って中空円筒の軸方向のエアーカーテンを発生する装置を用いた点(原告のいう第二の特徴点)

この構成によって測定空間の全周に亘って塵の影響を除去することができるものと認められる。

3  原告は、審決が第一引用例記載の装置における管を中空円筒とみた点の誤認を主張し、これが審決の結論に影響を及ぶすべき性質の誤りである旨主張するので、この点について検討する。

前記当事者間に争いのない第一引用例の記載内容及び成立に争いのない甲第三号証(第一引用例)によれば、第一引用例は、かなりの長さを有するほぼ円筒状物体、例えば線、裸または絶縁された電気導体、絶縁線条または碍管、鎧装および類似物体の直径の変化を記録する装置に係るものであるが、第一引用例記載の装置の構成は次のようなものと認められる。すなわち、第一引用例の装置においては、被測定物である円筒状物体は、管3の中央通路2を通過する。管3は円筒形枠6内に取り付けられ、窓4が形成されている。円筒形枠6はベアリング7、7'の周りを回転する。円筒形枠6には回転軸と直角方向に延びた管状筐体9が一体に形成され、管状筐体9に投光部と受光部とが回転軸に対して対称的に取り付けられていて、投光部からの測定光束は、管3の窓4を通して受光部に投射されるが、管3が円筒形枠6に取り付けられている関係上、管3も回転しながら、測定光束を円筒状物体の全周に亘って回転させることができ、これによって円筒状物体の寸法を測定することができるものである。

ところで、第一引用例記載の装置における管3に関する説明としては、「被試験体1は管3の中央通路2を通過し、管3には窓4を形成する。窓4は二個の壁5、5'にて境され、しかして壁5、5'を傾斜せしめて寄生反射を防止する。第2図は測定ヘッドの全体を示す図であって、第1図を直角な平面で切った断面図である。窓4を形成された管3を円筒形枠6内に取付け、円筒形枠6はベアリング7、7'の周りを回転する。ベアリング7、7'は夫々固定突出部8、8'にて支持されている。枠6は管状筐体9を有する。管状筐体9は窓4の両側において軸心に直角に延びている。上記管状筐体は点フィラメントランプ10、レンズ11、窓の反対側にあるレンズ12及び光電管13を有する。ランプ及び光電管13の電気的接続はブラシ14、15によってなされる。」(第一引用例二頁左欄二七行ないし四四行)との記載があるのみであり、他に管3の構成を実質的に規定した記載は認められない。したがって、第一引用例には、管3の管壁が中空であると解すべき合理的な根拠はないものというべきである。管を形成する管壁は中実であるのが、普通のことであり、それを中空壁で形成する場合には、その旨の記載もしくは図示による記述がなされるのが通常であるところ、第一引用例には、その旨の明文の記載がないことは勿論、図面によるその旨の表示もないのであるから、第一引用例における管3の管壁をわざわざ中空と理解すべき合理的理由はないからである。かえって、前記引用に係る「管3には窓4を形成する。窓4は二個の壁5、5'にて境され、しかして壁5、5'を傾斜せしめて寄生反射を防止する。」との記載と第1図を参酌すると、管壁は中実と解する方が合理的な認定というべきである。けだし、管3に窓を形成するときに管壁が中空であれば、壁が形成できないから、少なくとも窓を形成する部分は中実にしなければならないが、第一引用例の装置においては、管3の機能からみても、それに連接する管3部分をわざわざ中空にしなければならない特段の理由が見い出せないからである。すなわち、第一引用例の装置は前記のとおり広く「かなりの長さを有するほぼ円筒状物体、例えば線、裸または絶縁された電気導体、絶縁線条または碍管、鎧装および類似物体」を測定するものであるから、被測定物が高温であるものと解するべき特別の理由もなく、遮熱を行う必要性があるとは認め難いので、本来第一引用例の装置においては、管3に遮熱機能は期待されていないものというべきである。前記引用に係る記載や「測定ヘッドを構成する組立体に物体に対し直角の平面において測定ヘッドを軸心の周りに回転する装置を設け、それにより物体を静止状態に保持し測定ヘッドを回転すると共通の断面における物体のオバリゼーションを表わす曲線を・・・・自由に得ることができる。」(二頁左欄一五行ないし二五行)との記載からみると、管3の機能は円筒状物体を保持するところにあるものと解するのが相当である。したがって、機能的にみても、第一引用例の管3が遮熱の機能を有するものと理解すべき根拠はない。

このようにみてくると、第一引用例の装置における管が審決認定のように遮熱用中空円筒であるとみることはできない。この点について、被告は、第一引用例の第1図bにおいては、窓を形成する部分を中実にすることを表示するためにハッチングを施しているのに対して、第2図の管部分にはハッチングが施されていないこと(中実であるのであれば、ハッチングが施されているはずである。)、少なくとも肉厚部分が中実であるように均一な図形で表示されているはずであるのに、ブロック状に表示されていることから、中空円筒体とみるべきである旨主張するが、管3の窓4のある部分が中実であれば、それに連接する管の部分も中実であるとみるのが素直な理解というべきであり、第2図においては、固定突出部8、8の場合と同様にハッチングが省略されているものと認めるのが相当である。また、ブロック状に表示されているにすぎないからといって、このことから、管3の管壁を中実であるとか、中空であるとかを直ちに理解することはできない。更に、被告は、第一引用例の測定装置が「絶縁された電気導体」をも測定の対象とすることから、管3はガイド管としての機能とともに、高温線材からの熱遮断のための機能をも果たすものとみるのが相当であるので、管3の管壁は中空とみるべき旨主張する。なるほど、前記のとおり第一引用例の装置は、「絶縁された電気導体」をも測定の対象としており、かつ、成立に争いのない乙第三号証の一ないし三(昭和四一年六月二五日発行澤田慶司著「プラスチックの押出成形とその応用」一七二頁ないし一七三頁)によれば、そこに絶縁被覆電線の高速押出の条件として摂氏一四〇度ないし二四〇度という温度が採用されていることおよび高速押出用として光電器を用いた非接触型測定機が開発されている旨の記載があることが認められるが、同時に「導線に被覆されたプラスチックはダイを出たのち冷却されて収縮するので、この点注意を要する。」(一七三頁右欄三行ないし四行)との記載もあるのであるから、高速押出しされた絶縁被覆電線を、たとえ第一引用例の装置において測定するとした場合には、これが管3を通過するときにはすでに冷却された後のものであるとみるのが当を得た見方であるというべきである。そのことは、押出し直後の被覆合成樹脂が軟化状態で電線を回転している管内を通過させることの困難性を考慮すれば尚更のことである。したがって、被告主張のように、第一引用例の装置が、その測定対象の一つとして高温状態にある「絶縁された電気導体」を予定しているものとはいえない。結局、第一引用例の装置における管が高温線材からの熱遮断のための機能をも果たすものとみることはできないから、管壁が中空である必然性は全くないというべきである。被告の右の主張はいずれも採用できない。

4  右のとおりであるから、第一引用例の装置における管3を遮熱用中空円筒とみなした審決の認定は誤りである。そして、第一引用例の装置における管が遮熱用中空円筒であると認められないとすると、審決は、本願考案と第一引用例の装置との間の基本的な構成の相違およびこれに基づく作用効果の差異を看過したものといわざるを得ない。本願考案は、すでに認定説示したとおり中空回転軸と被測定物との間の環状空間に被測定物の走行方向に対して投光光路用間隙をもって前後に分割された「遮熱用中空円筒」を用いた構成(原告のいう第一の特徴点)を採用したことによって、投光光路用間隙となる円盤状の測定空間(円盤状のスリット)が確保でき、この測定空間において投光部、受光部を回転させて測定を行えるので、遮熱用中空円筒自体は回転させる必要がなく、中空円筒に対する冷却ジャケットの構成を容易にしたものであるのに対し、第一引用例の装置の管3は遮熱用中空円筒ではなく、かつ、その一部に窓4を形成して投光用光路とし、円筒形枠6に取り付けられて、投光部と受光部とともに一体として回転するものであるから、投光光路用間隙をもって前後に分割されたものとは到底いえない。したがって、審決は、第一引用例の装置における管を遮熱用中空円筒であると誤認し、その結果、本願考案と第一引用例の装置との間の基本的な構成の相違およびこれに基づく作用効果の差異を看過した点において違法として取消しを免れない。

この点に関して、被告は、仮に、第一引用例の装置における管3の管壁が中空でなかったとしても、本願考案の進歩性を否定した審決の結論には誤りがない旨主張する。しかしながら、審決は、争いのない前記審決の理由の要点から明らかなように、第一引用例の装置における管を遮熱用中空円筒と認定し、これを前提として相違点の判断をし、結論として本願考案の進歩性を否定しているのであるから、第一引用例の誤認の結果、その前提を誤り、前記認定のような本願考案と第一引用例の装置との間の基本的な構成の相違およびこれに基づく作用効果の差異を看過し、そのためにこれらについての判断をしていない。この点で審決の右の誤りは審決の結論を左右するものというべきである。そして、たとえ、被告の右の主張を許すとしても、第一引用例に中空回転軸と被測定物との間の環状空間に被測定物の走行方向に対して投光光路用間隙をもって前後に分割された「遮熱用中空円筒」を用いた構成が開示ないし示唆されていない限り、前後に分割された「遮熱用中空円筒」に第二引用例に記載された冷却ジャケットを設けるという契機は見い出せないのであるから、いずれにしても、被告の右の主張は採用の限りでない。

右のとおりであるから、原告の取消事由1の主張は理由がある。なお、審決は、分割の点に関して、「円筒形枠、すなわち回転駆動板を投光光路間隙をもって前後に分割し」た点を一致点として認定しているが、前記のとおり本願考案において前後に分割されるべきものは、「遮熱用中空円筒」であって、回転駆動板ではないのであるから、第一引用例の円筒形枠と本願考案の回転駆動板とを対比させた審決の認定判断もそれ自体誤りである。

三  以上のとおりであるから、審決に認定判断を誤った違法があることを理由にその取消しを求める原告らの本訴請求は、正当としてこれを認容することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条および民事訴訟法八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松野嘉貞 裁判官 舟橋定之 裁判官 杉本正樹)

別紙一

<省略>

別紙二

<省略>

別紙三

<省略>

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