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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)17号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実及び同四1の(二)の事実は当事者間に争いがない。

二 そこで原告主張の審決取消事由について判断する。

1 第一引用例記載の事実の認定の誤りについて

(一) 原本の存在及び成立について当事者間に争いのない甲第四号証によれば、第一引用例の明細書の発明の詳細な説明の欄には次のような記載があることが認められる。

(1) 本考案は従来の駆動車軸に取付ける遊動輪取付車輌に関するものである。(甲第四号証中の明細書一頁一一行から一二行まで)

(2) 従来の四輪タイヤ式のフオークリフト、トラツク用などの重荷重を受ける動車軸において、その前車輪を例えば六輪としてその径を小さくすることは、荷重中心と前車輪中心との距離を小さくすることとなり、バランス的に有利となる為、車体をコンパクト化、軽量化することに役立つ。(甲第四号証中の明細書一頁一三行から一九行まで)

(3) またトラツク等において、動車輪の径を小さくすることは、荷床を下げることができる故、より安定の良い車となる。(甲第四号証中の明細書一頁一九行から二頁一行まで)

(4) 本考案は、従来の動車軸に取付けるようにした簡単な改造により、車輪を増加するから車輪サイズを下げることができ、トラツクをより軽量化且つ安定化とするものである。(甲第四号証中の明細書二頁二行から五行まで)

(5) 以下実施例を示す添付図面によつて詳述する。第1図に示すような、従来のハブ減速機を備えた四輪式動車軸11のブラキツトスパイダキヤツプ(「ブラネツトスパイダキヤツプ」とあるのは「ブラキツトスパイダキヤツプ」の誤りであることは当事者間に争いがない。)12を、第2図に示す如く延長したスパイダキヤツプ21とし、適宜手段で取付け、これを外側車輪の一輪27のシヤフト(「シヤツト」とあるのは「シヤフト」の誤りであることは当事者間に争いがない。)となし、これに外側車輪の一輪27又は二輪27、27´を増設する。且つ、増設した外側車輪27は、車体の旋回時のタイヤスリツプによる事故及びタイヤ摩耗を少なくする為、駆動されない遊動車輪となし、他の駆動用の内側車輪14とは関係なく回転する構造とする。又、パンク等の場合の如くタイヤ交換を要するとき、容易に交換し得るように、内側車輪は従来と同様のウエツジバンドクランプ式13とするが、外側車輪はボルト24とナツト25によるクランプ式とする。(甲第四号証中の明細書の二頁六行から三頁二行まで)

(6) 本考案を実施するときは下記の如き効果を齎すことができる。

a タイヤ本数を増すことにより小サイズのタイヤが使用できフオークオーバーハングの小さいコンパクト且つ軽量なフオークリフト、又安定のよいトラツクができる。

b タイヤ及びリムの価格はサイズが小さくなると加速度的に安価になるのでコストダウンできる。

c 六輪のため四輪や二輪のものに比較するとパンク時の安全性が大きい。

d 従来の四輪式のものから簡単な改造で六輪化できる。(基本的には、四輪式のアクスルが使用できる。)

e 最外輪が遊輪となつているため、旋回時の各車輪のスリツプが少なく、タイヤの摩耗が少ない。

f タイヤ交換が簡単である。

(甲第四号証中の明細書三頁一六行から四頁一三行まで)

(二) 前記請求の原因四1の(二)の事実、右認定の第一引用例中の明細書の記載及び前記甲第四号証によれば、第一引用例の考案は、従来の動車軸に取付けるようにした簡単な改造により、車輪を増加して車輪サイズを小さくし、それにより、トラツク、フオークリフト等の軽量化及び安定化を図ることを目的とするものであること、右の目的を達成するために、第一引用例の考案は、第一引用例中の明細書の実用新案登録請求の範囲の欄及び図面並びに(一)(5)に実施例として記載されたような構成を採用し、駆動輪の外側に遊動輪を増設するものであるが、そのように、増設する外側の車輪を遊動輪とするのは、車体の旋回時のタイヤスリツプによる事故及びタイヤ摩耗を少なくするためであること、右のような構成を採用することにより(一)(6)記載の各効果を奏するものとされていること、及び、(一)(6)記載の各効果のうち、abcの効果は、動車軸に取付ける車輪を増加することにより車輪サイズを小さくした結果得られる効果であり、dfの効果は、車輪の取付方の具体的な構成による効果であり、eの効果は、増設する外側の車輪を遊動輪としたことにより得られる効果であることが認められる。

(三)(1) ところで、前記(一)(4)の記載に先立つ(一)(2)(3)の記載は、従来の四輪タイヤ式のフオークリフト、トラツク用などの重荷重を受ける動車軸において、その前車輪を例えば六輪に増設することにより車輪の径を小さくすることが車体の軽量化、安定化を達成することになる技術的理由を説明するものであることは文理上明らかである。

(2) そして、右の「動車軸」とは駆動車軸と同じ意味であること、一般に駆動車軸に取り付けられる車輪は駆動輪であるのが通常であること及び第一引用例の実用新案登録願出願当時、前輪四輪が駆動輪のフオークリフトは周知であつたことは当事者間に争いがないから、「従来の四輪タイヤ式のフオークリフト、トラツク用などの重荷重を受ける動車軸において、その前車輪を例えば六輪として」との前記(一)(2)の記載は、その前車輪の六輪全部を駆動輪とすることを含むものと解するのが文理上自然である。

(3) また、前記のように、車輪の径を小さくすることができるのは車輪を増設することによるものであり、増設された車輪が駆動輪か遊動輪かを問うものでないことは、前記(一)に認定した第一引用例の明細書の発明の詳細な説明の記載中(6)aにもあるとおりで、当業技術者であれば容易に理解できる技術常識であることも当事者間に争いがないから、技術的観点からみても、「従来の四輪タイヤ式のフオークリフト、トラツク用などの重荷重を受ける動車軸において、その前車輪を例えば六輪としてその径を小さくする」との前記(一)(2)の記載は、その前車輪の六輪全部を駆動輪とする場合を含むものと解するのが自然である。

(4) さらに、前記(一)(5)のうち「増設した外側車輪27は、車体の旋回時のタイヤスリツプによる事故及びタイヤ摩耗を少なくする為、駆動されない遊動車輪となし、他の駆動用の内側車輪14とは関係なく回転する構造とする。」との記載中の、「車体の旋回時のタイヤスリツプによる事故及びタイヤ摩耗を少なくする為」との部分は、外側車輪を増設しない場合よりも少なくするという趣旨ではなく、増設した外側車輪を駆動輪とした場合よりも少なくするとの趣旨であることは明らかであるから、右の記載は増設した外側車輪を駆動輪としたものを比較の対象としていることは明らかである。

(5) 以上の(1)ないし(4)の諸点を考慮すると、第一引用例の考案そのものは駆動輪の外側に遊動輪を増設するものではあるが、第一引用例の、「従来の四輪タイヤ式のフオークリフト、トラツク用などの重荷重を受ける動車軸において、その前車輪を例えば六輪として」との前記(一)(2)の記載には、前輪六輪を駆動輪とする前輪六輪式フオークリフトという技術的思想が開示されていると認めることができる。

したがつて、「第一引用例には実質的に前輪六輪を駆動輪とする前輪六輪式フオークリフトが開示されているものと認める。」旨の本件審決の認定には、原告主張の誤りはない。

(6) なお、第一引用例中の明細書の右部分の記載は、従来の四輪タイヤ式のフオークリフト、トラツク用などの重荷重を受ける動車軸において、その前車輪を例えば六輪に増設することにより車輪の径を小さくすることが車体の軽量化、安定化を達成する技術的理由を説明するものであることは前記(1)のとおりであり、その中で、前輪六輪を駆動輪とする前輪六輪式フオークリフトという技術的思想を開示しているもので、従来技術を開示するものではないから、第一引用例には実質的に前輪六輪を駆動輪とする前輪六輪式フオークリフトが「従来技術として」開示されているとの本件審決の認定は誤りであるが、右の誤りは、「第一引用例には実質的に前輪六輪を駆動輪とする前輪六輪式フオークリフトが開示されているものと認める。」旨の本件審決の認定が正当であることを左右するものではない。

(四) 原告は、「従来の四輪タイヤ式のフオークリフト、トラツク用などの重荷重を受ける動車軸において、その前車輪を例えば六輪とし」とは、従来の四輪式即ち片側二輪のダブルタイヤに、遊動輪を付加して、片側を二輪の駆動輪と一輪の遊動輪とによる三輪とした六輪式の前輪を意味するものであることは、第一引用例の明細書の全文、特に一頁一一行及び一二行、同二頁一一行から一七行までにおいて、従来の駆動車軸に増設する外側車輪を遊動車輪とすることを明記していることからも明らかであると主張するが、原告が指摘する第一引用例の明細書の一頁一一行及び一二行、同二頁一一行から一七行までは第一引用例の考案を説明している箇所であり、第一引用例の考案そのものは駆動輪の外側に遊動輪を増設するものであるけれども、第一引用例の明細書の発明の詳細な説明の前記(一)(2)認定の記載には、前輪六輪を駆動輪とする前輪六輪式フオークリフトという技術思想が開示されていると認められることは右(三)に判断したとおりであり、原告の右主張は採用できない。

また、原告は、第一引用例には前輪六輪を駆動輪とする構造等は何ら開示されておらず、第一引用例に前輪六輪を駆動輪とする独立の技術的思想が開示されていると主張するのは、第一引用例を曲解したものである旨主張する。

第一引用例には、前輪六輪を駆動輪とする場合の具体的構造、形状等が開示されていないことは、前記甲第四号証から明らかであるが、具体的構造、形状等が開示されていなければ、前輪六輪を駆動輪とする前輪六輪式フオークリフトという技術的思想が開示されているとはいえないものではないから、原告の右主張は失当である。

2 本願考案と第一引用例記載のものとの一致点の誤認について

本件審決には第一引用例の記載事項の誤認がある旨の原告の主張が認められないことは、右1に判断したとおりであるから、右の誤認があることを前提に、本件審決は一致点でないことを一致点と誤認したとする原告の主張、さらに、本件審決は、誤認した一致点を前提に、本願考案は、第一引用例、第二引用例に記載されたものに基づいて、当業技術者が極めて容易に考案をすることができたものと認められると、誤つて判断したものであるとする原告の主張は、いずれも失当である。

なお、第一引用例には実質的に前輪六輪を駆動輪とする前輪六輪式フオークリフトが「従来技術として」開示されているとの本件審決の認定が誤りであることは前記1(三)に判断したとおりであるが、この誤りは、右原告の主張はいずれも失当である旨の判断を左右するものではない。

三 よつて、その主張の点に違法があることを理由に、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は失当であるから、これを棄却することとする。

〔編注〕本願考案の要旨は左のとおりである。

フオークリフトの前部に取付けられた前輪用の車軸管(11)の両端部にそれぞれ円筒状のハブ(14)が回転自在に設けられ、これらのハブ(14)の外周面の車両中心側端部からこれと反対側端部にかけて同じ構造の三つずつの第一~第三車輪(1)(2)(3)が隣り合うもの同士間隔をおいて順次嵌められ、各車輪(1)(2)(3)のリム(16)の内周面にはテーパ部(16a)が設けられ、第一車輪(1)がそのテーパ部(16a)を車両中心側に向けるように配されて同テーパ部(16a)がハブ(14)の外周面の車両中心側端部に設けられたテーパ部(14a)に当接させられ、第二および第三車輪(2)(3)がそれぞれのテーパ部(16a)を車両中心側と反対側に向けるように配され、第一車輪(1)と第二車輪(2)の間には第一スペーサ(18A)が介在され、第二車輪(2)のテーパ部(16a)とハブ(14)の間には第一ウエツジ・バンド(17A)が挿入され、第一ウエツジ・バンド(17A)と第三車輪(3)の間には第二スペーサ(18B)が介在され、第三車輪(3)のテーパ部(16a)とハブ(14)の間に第二ウエツジ・バンド(17B)が挿入され、第二ウエツジ・バンド(17B)を車両中心側に向かつて押える端板(19)がハブ(14)の車両中心側端部と反対側端面に着脱自在に取付けられ、上記車軸管(11)に挿通された車軸(12)から伝達機構を介して上記二つのハブ(14)に回転駆動力がそれぞれ伝達されるようになされている前輪六輪式フオークリフト。

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