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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)9号 判決

一 請求の原因一ないし三は当事者間に争いがない。

二 成立に争いのない甲第二号証(特許願及び添附の明細書、図面)、第三号証(昭和五八年一〇月七日付手続補正書)、第四号証(昭和五九年九月一七日付手続補正書)によれば、本願発明は、閉鎖された円形の軌道に沿つて相前後して配設されたレツテル貯蔵ステーシヨンであるレツテル一堆積分を収容するレツテルケース、のり付けステーシヨンである回転するのり塗布ローラ、レツテル伝送装置である回転する捕捉シリンダー、前記軌道の内側に設けられた支持体上に偏心して設けられ、円筒状に彎曲した収容面を有する複数の取出要素のための回転支持体を有する特にびんのような物体に対するレツテル貼り機に関する発明であり、本願第一発明は、特許請求の範囲記載の構成を採択したもので、特に、回転支持体、取出要素、捕捉シリンダーを右に記載されたとおりに回転させることにより、取出要素の収容面、のり塗布ローラ、レツテルケース、捕捉シリンダーの各構成要素を請求の原因四2において参加人が主張するとおり機能させて、レツテル貼りをすることを意図したものであることが認められる。

三 そこで、審決が本願明細書の記載が不備であると指摘した収容面の転動作用について、検討する。

当事者間に争いのない本願第一発明の特許請求の範囲には、収容面に関し「曲率半径が前記いくつかのステーシヨンによつて描かれる半径より小さいその収容面が、特に捕捉シリンダーとして形成されたレツテル伝送装置に沿つて転動する」と記載されている。そして、前掲甲第二号証によつて認められる本願明細書の<3>の記載及び「取出要素の収容面と特に捕捉シリンダーとして形成されているレツテル伝送装置の表面との間に要求されている完全な転動のためにレツテルの受渡しの時点で同期が存立する必要がある・・・捕捉シリンダーへのレツテルの受渡を完全に実現するためには一定の位置における同期のみでなく、一定の領域における同期が必要である。」との記載(四頁一二行ないし同頁末行)によれば、収容面の転動とは、参加人が主張するように、捕捉シリンダーと取出要素とのレツテルの受渡しを円滑に行うため、取出要素が加速、減速等速度調整を受けることによつて、収容面が捕捉シリンダーに沿つて回転する作用を指すものであることが認められる。

しかして、特許明細書の発明の詳細な説明には、発明公開の要請に応え、実施例を示すなどの方法により、その記載だけで当業者がその発明を容易に実施することができる程度の内容の開示が求められるものというべきところ、速度調整のための具体的な制御機構の構成、作用については、本願明細書の発明の詳細な説明中の右各記載からは明らかでなく、前掲甲第二、第四号証によつて認められる<1>及び<2>の記載からも明らかでない。もつとも、右<1>及び<2>の記載は、いずれも右制御機構に関するドイツ特許公報(成立に争いのない甲第七、第一〇号証)の記載の極く一部を引用する形式をとつているが、右の程度の引用ではその具体的機構を知ることは不可能である。そして、前掲甲第七、第一〇号証のドイツ特許公報によれば、右制御機構に関する具体的構成がうかがえないではないが、右公報(前者は一九七三年五月一八日出願、一九七四年一二月五日公開、後者は一九六五年九月一七日出願、一九六九年四月三日公開)に記載された転動のための制御機構が周知のものであることを認めるに足りる証拠もない。このように、特許請求の範囲に記載された技術的事項について、かかる引用形式によつては、その記載自体から具体的内容を知ることはできないから、右<1>及び<2>の記載をもつて、転動のための制御機構を開示したものと認めることは困難であるというほかなく、その他本願明細書を精査するもこの点を明らかにした記載を見出すことはできない。そうであれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、特許請求の範囲に記載されている収容面の転動に関し、その発明の属する分野に属する通常の知識を有する者が容易に実施できる程度に記載されているものということはできない。

なお、参加人は、収容面の転動作用は本願第一発明の新規性と関係がないため、その指摘に係る記載をもつて明細書の記載として十分である旨主張するが、本願第一発明の新規性が参加人主張の点にあるとしても、収容面の転動が特許請求の範囲における必須要件とされている以上、右の主張が理由がないことは明らかである。

三 以上述べたところによれば、本願は特許法三六条三項の要件を満たしているものと認めることはできず、これと同趣旨の審決の判断に誤りはない。よつて、参加人の本訴請求を失当として棄却する。

〔編注〕本件における特許請求の範囲1の記載(本願第一発明)は左のとおりである。

「特に円形の閉鎖された軌道に沿つて相前後して配設されたいくつかのステーシヨン、即ちレツテル貯ぞうステーシヨン、特にレツテルー堆積分を収容するレツテルケース、のり付けステーシヨン、特に回転するのり塗布ローラ、レツテル伝送装置、特に回転する捕捉シリンダー、前記軌道の内側に設けられた、支持体上に偏心して設けられているいくつかの取出要素のための回転支持体を有し、前記取出要素はそれぞれ、その円筒状に彎曲した収容面と該収容面の彎曲中心点との間の軸を中心に回転し、且つ曲率半径が前記のいくつかのステーシヨンによつて描かれる半径より小さいその収容面が、特に捕捉シリンダーとして形成されたレツテル伝送装置の表面に沿つて転動する、特にびんのような物体に対するレツテル貼り機において、支持体と捕捉シリンダー(6)が同方向(P1・P3)に、取出要素(1)が反対方向(P4)に回転するように構成されていて支持体の回転軸(M)が取出要素(1)の外側の中心位置で円筒形に彎曲した収容面(2)で被われる円形(9)の内側にあることを特徴とするレツテル貼り機」

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