大判例

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東京高等裁判所 平成10年(う)1106号 判決

被告人 岩野富英

〔抄 録〕

以上の事実に基づいて検討するのに、本件令状が適法に発付されたものであることは明らかであるが、その捜索場所の記載は単に「アーバン神山二〇六号室」とされていたのではなく、「住吉会住吉一家石井会河村組事務所」と付記されていたから、本件令状によって捜索が許されていたのは河村組事務所として使用されている本件居室と解するのが相当である。したがって、本件令状を執行する警察官としては、本件居室が河村組の事務所として使用されているか、少なくとも同組員が寝泊まりするなどして同組が利用している場所であることを確認した上で捜索に着手すべきであるところ、前記認定事実によれば、本件居室が河村組の事務所などとして利用されているのか必ずしも明らかでなかった上、在室していた被告人は自分が借りている部屋であると説明していたから、そのような状況の中で本件居室の捜索を実施したことの適法性が問題となる。しかし、前述のとおり本件令状は適法に発付されたものであること、警察官は本件居室が少なくとも以前には河村組事務所として使用されていたことを把握していた上、本件捜索開始時において本件居室にはそれ以外の第三者が居住していることを示す表札などはなく、既に事務所として使用されていない形跡は全くなかったこと、警察官が来訪すればうしろめたいことのない者ならすぐに応答し、中に入れるのが普通であるのに、被告人は警察官が来訪したことを知りながら約四〇分間も玄関を開けようとしなかったこと、被告人がヤクザの見上から借りた部屋であると述べていたとはいうものの、示された令状に記載されている河村組とは関係がない旨申し述べたわけではなく、警察官としては、被告人あるいは見上が河村組と関係があるかどうかについて断定するだけの資料がなかった上、六畳洋間とは別の部屋から河村組の組看板などが発見されたことなどの事実に照らすと、警察官が本件令状に基づいて本件居室の捜索を実施したことに、とくに咎め立てしなければならない点はなく、もとより令状主義の精神を没却するほどの重大な違法があったということはできない。

(島田仁郎 下山保男 福崎伸一郎)

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