東京高等裁判所 平成10年(う)1177号 判決
被告人 有限会社ティーアイシー企画 外一名
〔抄 録〕
所論は、まず、本条例は、自動販売機によって販売できないビデオテープにつき、「みなし有害図書等」なるものを設けているが、(一)知事が有害図書等を指定する場合には、その表題だけから自動販売機に収納できるものであるかどうか識別できるのに対し、「みなし有害図書等」であるかどうかは、一点一点商品について点検しなければ識別できないから、実行不可能な規制を加えるものであり、自動販売機によるビデオテープの販売を全面的に不可能にするものであって、販売業者の有する基本的な人権である表現の自由及び営業の自由を不当に侵害する、(二)本条例の別表第一において掲げられている「みなし有害図書等」の基準は、人の価値観によって大幅に理解が異なるものや、実際の判定に当たって客観性が担保されない事項が羅列され、いわゆる三分間規制についても、もともとあいまいな判定基準をもとにその始期と終期を計測するなど現実的でないことが明らかであって、表現の自由及び営業の自由を公共の福祉の立場から規制する上で要請される明確性の原則に反すると主張する。
そこで、所論(一)についてみるに、本条例のように、青少年に有害な図書、雑誌、絵画、磁気テープ等(以下「有害図書等」という。)につき、知事による指定のほか、一一条二項により、同項各号に定める図書等を有害図書等とみなす方法(以下、このようにみなされる図書等を「みなし有害図書等」という。)をとることは、知事が指定する方法では、業者が一夜のうちに表紙を付け替えるなどして容易にその規制を免れることが可能で、実効性が上がらないことから、合理性が認められるところ、その結果、業者が商品を販売するに当たって、それが有害図書等に当たらないかどうかを点検しなければならないことになるが、そのことは、青少年の健全な育成を図るための必要かつやむを得ない制約と考えられ、それが実行不可能なものとはいえないし、自動販売機によるビデオテープの販売を全面的に不可能にするものでもない。したがって、違憲の主張は前提を欠き、採用できない。所論(二)についてみるに、本条例一一条二項、別表第一に規定されている有害図書等の定義は、どのようなものを規制の対象としているかにつき、その文言から十分具体的に読みとることができるものであるから、所論のように不明確であるとはいえない。したがって、違憲の主張は前提を欠き、採用できない(以上につき、最高裁平成元年九月一九日第三小法廷判決・刑集四三巻八号七八五頁参照)。
(佐藤文哉 小出[金享]一 波床昌則)