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東京高等裁判所 平成10年(ネ)1524号 判決 1998年8月25日

控訴人

有限会社英貴

右代表者代表取締役

X1

控訴人

Aこと

X1

被控訴人

東京総合信用株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

土屋東一

岩崎淳司

佐藤貴夫

五十嵐チカ

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

一  控訴人らは、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文と同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、原判決三頁九行目「2 提携ローンの対象物の不存在」の項を次のとおり改めるほか、原判決の「事実及び理由」に記載のとおりであるから、これを引用する。

「2 控訴人らの抗弁

(一)  控訴人会社が、君津エースからゴルフ会員権を購入するに際し、被控訴人は、君津エースといわゆる提携ローンの取扱契約を締結し、君津エースが控訴人会社の連帯保証人となり、その信用の下に控訴人会社に対する融資が実行されたし、融資の事務手続も君津エースが被控訴人を代理した。このような取引の実体からすれば、被控訴人と控訴人会社との間の金銭消費貸借契約は、君津エースと控訴人会社との間のゴルフ会員権売買契約(更には、被控訴人と君津エースとの間の連帯保証契約)とは一体であり、割賦販売法二条二項一号所定の「ローン提携販売契約」に類似する。したがって、控訴人らは、被控訴人の請求に対し、右金銭消費貸借契約に関する事実だけでなく、提携ローンの対象であるゴルフ会員権売買契約について生じた瑕疵・故障をも主張することができる。

そして、君津エースは、事実上倒産し、ゴルフ場の建設工事も停止され、その開設の見通しすら立っていないから、債務不履行(履行不能)の状態にある。そこで、控訴人らは、君津エースの債務不履行を理由として、被控訴人に対する割賦金の支払を停止する。

(二)  本件売買の対象とされたゴルフ会員権は、将来開設される予定のゴルフ場に対する権利である。このように、将来開設されるか否か不確実な商品の購入者に信用を供与する者は、その開設が不能となることを現に予見しているか予見すべき場合において、実際に信用を供与し、かつ、その後そのゴルフ場の開設が不能となったときは、当該割賦代金の支払を拒否されてもやむを得ない。被控訴人は、君津エースとの提携ローン契約を通して、本件ゴルフ場の開設が不能となることを予見すべきであったのに、あえて控訴人会社に信用を供与したから、本件ゴルフ場の開設が不能となった以上、信義則により、本件融資金に対する控訴人らの支払拒絶を受忍すべきである。」

理由

一  請求原因について

≪証拠省略≫及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人主張の請求原因事実を全て認めることができる。

二  抗弁について

1  (一) 控訴人らは、本件金銭消費貸借契約が、ゴルフ会員権売買契約とは一体となるものであるところ、本件ゴルフ場が開設されず、その販売会社が債務不履行(履行不能)の状態にあるから、被控訴人に対する借入金の返済を停止することができると主張する。

確かに、本件融資は、控訴人会社が、君津エースからゴルフ会員権を購入するため実行されたのであり、その際、被控訴人と君津エースはローン取扱に関する契約を締結し、君津エースが控訴人会社の債務を連帯保証するとともに、控訴人会社は被控訴人にゴルフ会員権を担保として譲渡するなどしており、両契約が経済的に密接な関係にあることが認められる(前掲各証拠及び弁論の全趣旨)。

しかし、右事実が認められるからといって、本件金銭消費貸借契約とゴルフ会員権売買契約が一体となるものであるということはできず、他に両契約が一体となるものであることを認めるに足りる証拠も根拠もない。むしろ、両契約は、それぞれ当事者を異にする別個の契約とみるべきであるから、控訴人らは、君津エースに対して生じた事由があるからといって、これをもって被控訴人に主張することができるということはできない(もとより、本件金銭消費貸借契約において、ゴルフ会員権に問題が生じたときに、控訴人らが融資金の返済を拒みうる旨の合意がされたことを認めるに足りる証拠もない。)。

(二) 付言すると、控訴人らの主張には、割賦販売法三〇条の四第一項は、購入者があっせん業者に対し販売業者に対して生じた事由をもって割賦金の支払を拒絶することができる旨を規定しているから、本件の場合、控訴人らが被控訴人に対して貸金の弁済を拒絶することができる旨の主張が含まれている余地がある。

よって判断するに、同条項は、同法所定の「割賦購入あっせん」の方法により購入した「指定商品」(定型的な条件で販売するのに適する商品であって政令で定めるもの)の代金について、あっせん業者から支払の請求を受けたときに限り適用されるものであるところ、控訴人らの主張する「ローン提携販売」の方法により購入した場合はその適用の対象外とされているし、ゴルフ会員権は、右の「指定商品」には含まれない。したがって、本件貸金の請求について同条項を適用する余地はない。そして、同法は、私人による取引への過剰な規制を避けつつ購入者保護の目的を達成するため、規制の対象となる商品を、一般の購入者に同様の条件で販売される大量生産品に限定していること、同条項は、特に購入者保護の必要性の高い取引形態による商品購入の場合に限って抗弁権の接続を認めたことなどに思いを致すと、これを拡大解釈して本件に類推適用するのも相当でない。

2  被控訴人が控訴人会社に対する本件融資を実行するにあたり、君津エースが将来倒産し、ゴルフ場を開設できない状態に至ることを知り得べきであったことを認めるに足りる証拠はない。したがって、控訴人らの抗弁(二)も採用することができない。

三  よって、被控訴人の請求を認容した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 増井和男 裁判官 小圷眞史 高野輝久)

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