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東京高等裁判所 平成10年(ネ)23号 判決 1998年11月09日

控訴人(原審・本訴被告、反訴原告)

小泉硬義

右訴訟代理人弁護士

畑中耕造

被控訴人(原審・本訴原告、反訴被告)

矢島二三雄

外三名

被控訴人ら訴訟代理人弁護士

大槻厚志

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。

2  被控訴人らの控訴人に対する請求をいずれも棄却する。

3  被控訴人らは、各自控訴人に対し、金一五万四五〇〇円及びこれに対する平成七年七月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は、本訴反訴を通じ、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

5  第3項につき仮執行宣言

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  事案の概要

事案の概要は、次のように改めるほかは、原判決「事実及び理由」欄中「第二 事案の概要」記載のとおりである。

一  原判決一一頁一〇行目の「第一次及び」を削る。

二  同一四頁一行目の「3」を「4」に、同一三頁一〇行目の「2」を「3」にそれぞれ改め、同九行目の次に行を改めて次のように加える。

「2 控訴人の債務不履行責任が認められた場合、被控訴人らの損害賠償請求は信義則に反するか。また過失相殺が認められるか。」

三  同一四頁一行目の次に行を改めて次のように加える。

「三 争点についての当事者の主張

1  争点1について

(被控訴人ら)

(一) 被控訴人らは、税理士である控訴人に対し、亡つきの相続に伴う相続税申告のための税務業務の処理を委任したが、その具体的な内容は、被控訴人らの各相続税申告書及びそれに付随する書類の作成、右申告の前提として必要な資料の収集及び適正な申告についての助言・指導も当然に含まれるものであった。

特に、本件においては、いわゆるバブルの崩壊による不動産の実勢価額の急激な下落に伴い、本件相続土地についても路線価よりも実勢価額が下回っている状況の下で、納税者である被控訴人らとしては、税務の専門家である控訴人に対し、実勢価額に基づく申告ができるか否か、できるとした場合、その具体的な価額の算定及び申告上注意すべき事項についての助言・指導を求めたものである。

(二) 相続税法二二条は、「相続、遺贈又は贈与に因り取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」旨規定している。さらにこれを受け、国税庁は「財産評価基本通達」により、「財産の評価は、時価によるものとし、時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立する価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による」と定め、「市街地的形態を形成する地域」にある宅地については、「路線価方式」を採用し、国税局長が路線ごとに評価した一平方メートル当たりの価格である路線価が定められている。右規定や通達の趣旨からすれば、宅地の評価について路線価方式により評価することが絶対的なものではなく、実勢価額がこれを下回る場合には、相続税を申告するに当たり、当該宅地の時価を適正に判断し、その価額により申告することも適正な申告といえる。しかし、路線価方式等が課税の公平という観点から定められていることからしても、路線価を下回る価額で相続税の申告をし、これを適正な申告として税務署の認めてもらうためには、地価の動向を周辺の取引事例をもとに把握し、不動産鑑定士の鑑定結果に基づいて申告価額を算定し、これらの資料とともに提出する等の手段を講じなければならないことは明らかである。

(三) しかるに、控訴人は、税務の専門家であるにもかかわらず、相続税法や右通達の趣旨を誤解し、路線価よりも実勢価額が下回った場合には、その実勢価額を基準とし、さらにその七割で評価した価額以上の価額で申告すれば適法な申告であり、税務署としてもこれを認めざるを得ない旨被控訴人矢島に対し説明し、具体的な申告額の算定に当たり、本件土地の正面路線価は一平方メートル当たり五九万円であるのに対し、被控訴人矢島が限られた範囲の情報に基づいて伝えた一平方メートル当たり約四一万円という額を、税務申告上も適正に認められる実勢価額と判断した上、なおかつその額の七割に相当する一平方メートル当たり二九万円以上の額であれば、被控訴人らにおいてその価額を任意に認定して申告したとしても、税務署はこれを認めざるを得ないと断言し、誤った助言・指導を行った。また、控訴人は、被控訴人矢島が、不動産鑑定士の鑑定の必要性を問い質したことに対しても、その必要性を否定し、自ら作成した「土地評価に関する上申書」を申告書に添付することにより、税務署としては本件土地の評価につき反論することはできず、したがって否認されることはあり得ないとの助言・指導を行った。控訴人が右のように誤った助言・指導をしたことが被控訴人らに対する債務不履行に当たることは明らかである。

(四) また、平成六年一二月一日、市川税務署から、申告に係る相続財産中に亡つきの預金のうち生前に引き出して被控訴人かねに交付してあった一〇〇万円及び亡つきの所有していた賃貸建物の火災保険の解約返戻金相当額六七万九八四〇円が脱漏していたことが指摘されたが、これらは、申告前に被控訴人矢島が、控訴人に対し、説明していたにもかかわらず申告から脱漏していたものであり、これも控訴人の債務不履行に当たる。

(五) 被控訴人らは、控訴人の右債務不履行によって次のような損害を受けた。

(1) 被控訴人らは、控訴人の右助言、指導に従って相続税の申告をしたところ、前記のとおり、市川税務署によってこれを否認され、あるいは脱漏を指摘され、その結果、修正申告をすることを余儀なくされ、また、そのために過少申告加算税及び延滞税を納付せざるを得なくなったものであるから、控訴人は、被控訴人らに対し、債務不履行に基づく損害賠償として、被控訴人らが負担することとなった右過少申告加算税及び延滞税相当額を支払うべき義務がある。

(2) 被控訴人らは、当初の相続税の申告が市川税務署により否認されてからその額が確定するまで、納付すべき相続税額が幾らになるのか、場合によっては相続した不動産を処分する等の手段を講じなければならないのか等と日夜不安な日々を送らざるを得ず、精神的損害を受けた。よって、被控訴人らは、各人につき慰藉料として三〇万円の支払を請求する。

(3) 被控訴人らは、弁護士に委任して訴訟手続により右損害賠償を請求しなければならず、弁護士費用として着手金と報酬を合わせて被控訴人ら各人につき二〇万円の支払を約した。

(控訴人)

(一) 被控訴人矢島は、宅地建物取引主任者の資格を有しており、不動産業を営む株式会社藤栄ハウジングに勤務していたこともあったことから、控訴人よりも不動産取引に精通し、また、相続税についても詳しかった。したがって、控訴人は、被控訴人矢島が提案した一平方メートル当たり三九万円という本件土地の評価額は、合理性があるものと信じ、右価額による本件土地の評価に同意したものである。

(二) また、被控訴人矢島は、本件土地の評価額を路線価によらない価額で申告すれば、税務署から否認される可能性があることは過去の経験から十分認識しており、同被控訴人と控訴人との間では、本件土地の評価額を前記価額によって申告すれば税務署から否認される可能性があることをお互いに認識した上で右価額を決定したものである。したがって、控訴人において、被控訴人矢島に対し、否認される可能性があることを説明しなかったからといってそれが債務不履行になることはない。

(三) 被控訴人矢島が本件申告前に控訴人に対し亡つきの預金の引出し及び火災保険の解約返戻金の点について説明したことは否認する。

2  争点2について

(控訴人)

(一) 仮に、控訴人に債務不履行があったとしても、被控訴人矢島は、前記のとおり税務に関する知識が豊富であり、路線価よりも低い価額で申告すると、場合によっては税務署により申告が否認され、その結果、附帯税を課せられるというリスクがあることは知っていた。したがって、本件において、結果的に申告が否認され、附帯税が課せられたからといって、これを損害として控訴人に対しその賠償を請求することは信義則上許されない。

因みに、平成四年度の路線価(一平方メートル当たり五九万円)に基づいて申告していれば、被控訴人らが納付すべき相続税は五九〇〇万五〇〇〇円であり、本件において被控訴人らが納付した本税四一八〇万五九〇〇円及び附帯税三六五万四〇〇〇円の合計四五四五万九九〇〇円よりも一三五四万五一〇〇円も上回る結果になっていたもので、被控訴人らは、控訴人の協力により、右金額の節税をすることができたものである。

(二) 仮に、右主張が認められないとしても、本件相続土地の評価額を路線価によらずそれを下回る一平方メートル当たり三九万円として申告することを提示したのは被控訴人矢島である。そして、同被控訴人は、路線価を下回る右価格に基づいて申告をした場合には、それが税務署によって否認され、その結果、過少申告加算税や延滞税が課せられることがあることは十分に予想することができたものである。しかるに、その危険を回避せずに敢えて路線価を下回る評価額で申告をしたことは、同被控訴人の過失によるものである。したがって、仮に、控訴人に債務不履行責任があるとしても、損害賠償額の算定に当たっては被控訴人矢島の過失を斟酌すべきである。

(被控訴人ら)

(一) 被控訴人矢島が、控訴人に対し、相続税の申告を依頼したのは、節税のためであることは当然であるが、その依頼の趣旨は、本件相続により取得した土地の実勢価額が路線価より相当程度低額となっていることが明らかな状況において、税務申告上、実勢価額に従って申告することが可能かどうか、またその場合どのような方法をとれば適正な申告(後日税務署により否認されることなどがない申告)となるのかの助言・指導を依頼したものである。したがって、被控訴人矢島は、税務署による否認の可能性のある申告をする意思は全くなかったものであり、そのようなことにならないためにこそ、控訴人に依頼したものである。

(二) 控訴人は、被控訴人矢島に対し、実勢価額が路線価を下回った場合にもその実勢価額の七割以上の価額で申告すれば、税務署はこれを否認することはできないとの独自の見解から、本件相続税の申告についても、宅地建物取引主任者の資格を有する被控訴人矢島が本件土地の実勢価額であると判断した一平方メートル当たり四一万三〇〇〇円(路線価の七割)を前提に、この価額の七割である約二九万円以上の申告であれば税務署も認めざるを得ないという助言・指導を行った。被控訴人矢島は、取引事例を集めることができなかったことから実勢価額の評価には一抹の不安があったことや、控訴人の助言・指導に係る価額が実勢価額よりもあまりにも低かったため、これに一〇万円上乗せした三九万円での申告を控訴人に提案し、同人も右金額であれば絶対に間違いないということであったので、右金額で申告することにしたものである。被控訴人矢島としては、実勢価額が自分の認識したところよりも幾分高かったとしても、それに一〇万円も上乗せすれば絶対に税務署から否認されることはあり得ないと考えていた。

(三) 以上の経過からすれば、被控訴人らが控訴人に対し、本件について損害賠償を請求することは信義則に反することでもなければ、本件相続税の申告が税務署から否認されたことにつき被控訴人矢島に過失があったわけでもない。

3  争点3について

(被控訴人ら)

(一) 被控訴人らは、控訴人に対し、本件契約に基づき、税務代理及び税務書類作成の委任の報酬として、一三三万九〇〇〇円(消費税を含む)を支払ったが、そのうち税務代理報酬金は八〇万円であり、消費税は二万四〇〇〇円であった(一人当たり各二〇万六〇〇〇円)。

(二) 右税務代理業務については、控訴人に前記のとおりの債務不履行があったので、被控訴人らは、右部分について、平成七年一一月二四日到達の内容証明郵便で委任契約を解除した。

よって、被控訴人らは、控訴人に対し、右報酬金として支払った各二〇万六〇〇〇円の返還を求める。

4  争点4について

(控訴人)

(一) 被控訴人らは、同人らがした相続税の申告につき、市川税務署から、平成六年一二月一日、相続財産に預金等一六八万〇九六三円の脱漏があることが指摘され、さらに、本件土地の評価額が否認された。

(二) 控訴人は、被控訴人らの依頼に基づき、それぞれにつき修正申告書の作成をしたが、右書類の作成の報酬は三六万円、そのための税務調査立会報酬は二四万円であり、消費税一万八〇〇〇円を加えると合計六一万八〇〇〇円となる。

(三) そこで、控訴人は、平成七年七月一〇日、被控訴人らに対し、各一五万四五〇〇円の支払を請求したが、支払をしない。

よって、控訴人は、被控訴人らに対し、各一五万四五〇〇円及びこれに対する平成七年七月一〇日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(被控訴人ら)

報酬請求権は、委任契約に基づき、その業務を適正に処理したときに発生する権利である。しかるに、控訴人主張の修正申告書の作成及び税務調査の立会は、控訴人の誤った助言・指導による税務申告に起因するものであり、控訴人が被控訴人らとの間の税務業務委任契約につき、契約の本旨に従った履行をしなかったために行わざるを得なかった作業であるから、右についての報酬請求権は発生しない。」

第三  証拠

証拠関係は、原審及び当審記録中の各証拠関係目録記載のとおりである。

第四  当裁判所の判断

一  当裁判所は、被控訴人らの本訴請求は、損害賠償として附帯税相当額の金員の支払を求める部分は全部理由があり、その余は理由がないものと判断するが、原判決は附帯税相当額の金員の賠償を求める本訴請求の九八パーセントを認容しているにすぎないところ、被控訴人らが附帯控訴をしていないので、結局、不利益変更の禁止の原則に従い、原審が認容した限度でこれを認容すべきであり、控訴人の反訴請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のように改めるほかは、原判決「事実及び理由」欄中「第三 争点に対する判断」記載のとおりである。

1  原判決二六頁四行目の「(乙六)」を「(乙五、六、控訴人本人)及び弁論の全趣旨」に、同九行目の「なされている」から同一〇行目の「被告としても、」までを「されており、控訴人もこれを知っていたこと、したがって、控訴人としては、時価が路線価を上回る場合は、時価に最も近い公示価格の七割が路線価とされて相続税の評価基準価額となっていたことから、納税者が立証することができる時価が路線価を下回る場合には、時価の七割を評価基準価額とするのが正しいとの認識は持っていたものの、本件」に、同二七頁一行目の「していたものの」を「していたこと、しかし、控訴人は」に、同四行目の「事情」から同八行目の末尾までを「事実が認められる。そして、右事実によれば、税務の専門家である控訴人としては、右評価額で申告した場合には、税務署によって否認される可能性があると認識していた以上、自分ではたとえそれがいずれは正当な申告であるとして認められると確信していたとしても、委任者である被控訴人矢島に対し、その旨を説明し、また、右価額が適正であることを裏付ける不動産鑑定士の鑑定書を用意するように助言・指導をするべきであったのであって、それを説明せず、また、不動産鑑定士の鑑定書の作成を勧めなかったことは、税務の専門家としての注意義務に違反したものというほかはない。」にそれぞれ改める。

2  同二七頁九行目の「確かに」から同三〇頁五行目末尾までを次のように改める。

「これに対し、控訴人は、被控訴人矢島は、不動産取引に精通しており、また過去の経験から相続税にも詳しく、相続税の申告において路線価を下回る価額を基準として土地を評価し、相続税の申告をした場合には、税務署によってそれが否認されることがあることは知っていたものであり、また、本件申告における土地の評価を一平方メートル当たり三九万円とすることは、控訴人が提案したものであるから、控訴人が、被控訴人矢島に対し、右価額では税務署によって申告が否認されるおそれがあることを告げなかったからといって、債務不履行にはならない旨主張する。

そして、証拠(乙三ないし五、七、八、被控訴人矢島本人)によれば、確かに、被控訴人矢島は、宅地建物取引主任者としての資格を持ち、不動産を扱う会社に勤務していたことがあることから、土地の価格等については通常人よりも精通しており、また、過去に亡つきから土地の贈与を受け、その贈与税の申告を自ら行っていることから、相続税についても通常人よりは詳しかったことが認められ、また、相続税の申告が適正でなかった場合には、税務署により申告が否認され、附帯税が課されることがあることも知っていたものと推認される。

しかしながら、それ以上に、本件申告をするに際し、前記評価額で申告した場合には、税務署から申告を否認される可能性があると認識していたと認めるに足りる証拠はなく、かえって、被控訴人矢島が本件申告を控訴人に依頼したのは、本件土地の価格が時価よりも下回っているという状況があったことから、路線価を下回る価額で本件土地を評価して相続税の申告ができるかどうかを確かめるために控訴人に相談し、控訴人がこれを肯定したために依頼したものであることや、本件土地の評価額を決定するに際し、控訴人が示した一平方メートル当たり約二九万円という額にも不安があったことから、それに一〇万円を上乗せしていることなどからすれば、右評価額で申告すればそれを税務署から否認されることはあり得ないと信じていたものと推認される。」

3  同三一頁五行目から三三頁一一行目までを次のように改める。

「3 被控訴人らの信義則違反及び過失相殺について

控訴人は、被控訴人矢島は、税務に精通しており、本件申告が税務署により否認される可能性があることを知っていたものであり、また、結果においても、路線価方式により本件土地を評価し、それに基づいて相続税の申告をした場合よりも節税になっているのであるから、被控訴人らが、控訴人に対し、損害賠償を請求するのは信義則に反し許されない旨主張する。

しかしながら、被控訴人矢島が本件申告が否認される可能性があることを認識していたことを認めるに足りる証拠がないことは前示のとおりであり、また、結果的に路線価方式によって申告をした場合よりも納税額が少なくてすんだとしても、そもそも、当初から控訴人による適正な助言・指導があれば、過少申告加算税等を支払う必要がなかったことは明らかであるから、控訴人の右主張も理由がない。

また、控訴人は、被控訴人矢島においては、本件申告が否認される可能性があることを十分に予測することができたのであるから、本件土地の価額を前記価額によって申告したことについては、被控訴人矢島にも過失があった旨主張する。

しかし、この点についても前示のとおり、被控訴人矢島は、税務の専門家である控訴人の助言・指導に基づいて本件申告をしたものであって、同被控訴人に落ち度があったとすることは相当でなく、控訴人の右主張も理由がない。

4  右債務不履行による損害について

(一) そこで、被控訴人らが納付した過少申告加算税及び延滞税が、前記控訴人の債務不履行によって生じた損害といえるかどうかについて検討するに、証拠(甲二、七、二三及び二四の各一ないし三)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人らが納付した右各附帯税は、被控訴人らが平成七年七月一四日にした第二次修正申告に基づいて決定された附帯税であり、第二次修正申告は本件土地の評価を修正するためにされたものであるから、右各附帯税はその全てが控訴人の債務不履行によって被控訴人らが支払わなければならなくなったものであり、したがって被控訴人らは同額の損害を受けたといえる。そうすると、被控訴人らの請求は、少なくとも原審が認定した限度、すなわち、被控訴人矢島につき二〇〇万〇二七八円、同北澤につき八九万九一五〇円、同かね及び同弘子につき各三四万〇七四六円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成八年二月九日から各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度においては理由がある。」

4  同三五頁一〇行目の「というべきである」から同三六頁三行目の「ことなどから」までを「というべきであり」に改める。

5  同三九頁一一行目の「被告は」から同四〇頁五行目から六行目にかけての「あるけれども」までを「本件申告から本件定期預金が漏れていたことについては、控訴人に責任がないことは前認定のとおりであるが」に改め、同四一頁一一行目から同四二頁九行目までを削り、同一〇行目の「3」を「2」に改める。

二  よって、控訴人の本件控訴は、理由がないからこれを棄却し、控訴費用につき民訴法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官青山正明 裁判官小野田禮宏 裁判官高田健一)

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