東京高等裁判所 平成10年(ネ)2609号 判決 1998年11月16日
控訴人(被告) 株式会社ダイヤモンドリゾート
右代表者代表取締役 A
右訴訟代理人弁護士 田中学
被控訴人(原告) 有限会社福厚
右代表者代表取締役 B
右訴訟代理人弁護士 正田茂雄
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求める裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文第一項と同旨
第二事案の概要
事案の概要は、次のとおり付け加えるほかは原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
(当審における控訴人の主張)
本件クラブ及び控訴人の存続を考えた場合には、預り保証金の返還留保の外方法がない。そして、会員と控訴人との関係は、単に個別的な債権関係としてとらえることはできず、団体的要素が含まれていると考えられるから、本件クラブの健全な存続、運営という観点からされた本件決議には合理性が認められ、右決議は有効である
第三証拠関係
証拠関係は、原審訴訟記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。
第四当裁判所の判断
当裁判所も、被控訴人の本件請求は理由があると判断する。その理由は、次のとおり付け加えるほかは原判決「事実及び理由」中の「第三 当裁判所の判断」記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決書七頁三行目の「甲四」から同一〇行目末尾までを次のとおり改める。
「前記第二、二1及び2の後段の事実によると、本件クラブの会則における預託金の据置期間の定めは、控訴人の会員に対する預託金返還債務の履行期という控訴人と会員との間の本件クラブ入会に関する契約上の基本的権利義務に関するものであるから、控訴人と被控訴人との間において右契約の内容として合意されたと認めるのが相当である。」
二 同九頁五行目の「とまでは認めることができない」を次のとおり改める。
「ことを認めるに足りる証拠はなく、また、本件クラブの会則に、一定の要件の下に預託金の据置期間を延長することができる旨の規定が置かれていることを認めることはできない」
三 同頁七行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「なお、控訴人は、会員と控訴人との関係に団体的要素が含まれていることを理由として本件決議には拘束力がある旨主張するので判断するに、本件クラブの会則の解釈において団体的考慮が必要であることは当然であるが、右会則の条項が契約上の基本的権利義務の内容として合意された以上、これを団体的考慮によって権利者の承諾を得ることなしに変更することはできないというべきである。
また、本件決議は、被控訴人が契約(その内容となっている会則の定め)に基づき退会手続をとり預託金の返還請求権が具体的に発生した後に、その行使を制限しようとするものであるから、これを承諾しない被控訴人に対し効力を及ぼすものではない。」
第五結論
したがって、被控訴人の請求を認容した原判決は相当であり(差し引くべき手数料の有無及び額につき控訴人は主張立証しない。)、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六七条一項本文、六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 新村正人 裁判官 生田瑞穂 宮岡章)