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東京高等裁判所 平成10年(ネ)2734号 判決 1999年1月27日

控訴人(原告) X

右訴訟代理人弁護士 椎名麻紗枝

被控訴人(被告) Y1

同 Y2

同 Y3

同 Y4

同 Y5

同 Y6

同 Y7

同 Y8

同 Y9

同 Y10

同 Y11

同 Y12

同 Y13

同 Y14

右一四名訴訟代理人弁護士 手塚一男

同 大江忠

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人らは、野村證券株式会社に対し、金一六〇億円及びこれに対する平成六年九月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被控訴人ら

主文一項同旨

第二事実関係及び当裁判所の判断

次のとおり補正するほか、原判決の「事実及び理由」欄第二及び第三記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決六頁八行目の「A」を「Y13」に改め、同八頁一〇行目の「営業特金」の次に「(以下「本件営業特金」という。)」を加え、同末行の「受任者」を「受託者」に改め、同九頁四行目の「一法人」の次に「(東京放送=甲四)」を、同一三頁二行目の「書面」の次に「(以下「確認書」という。)」を、同七行目の「日本証券業協会は、」の次に「同日」をそれぞれ加える。

2  原判決二六頁八行目の「一六〇億円」を「一六一億円」に改め、同末行の末尾に「本訴訟においては右損害額のうち別件訴訟の提起されている東京放送に対する損失補填分を除いた一六〇万円について被控訴人らに対し賠償を求める。」を加える。

3  原判決三二頁末行の「営業特金口座を解消するように」を「営業特金口座の解消に向けて顧客との」に、同三四頁二行目の「解消のためには」を「解消のための」に、同三行目から四行目にかけての「顕在化し、」を「顕在化する情勢にあるので、」に、同五行目の「前記のとおり」を「前記争いのない事実2(二)に記載したとおり」にそれぞれ改め、同六行目の「件数が」の次に「最終的に」を、同三五頁八行目の「調査した結果、」の次に「取引内容に」をそれぞれ加え、同三七頁七行目の「措置が設けられたことについて」を「措置を講じたことについては」に、同九行目の「理解し、」を「理解したうえで、」に、同一〇行目から末行にかけての「やむを得ないと考えられた。」を「やむを得ないものと考えていた。」にそれぞれ改める。

4  原判決三八頁九行目の「まず」から同一〇行目の末尾までを「まず、同号にいう『法令』に含まれると解される証券取引法及び独占禁止法の各規定の違反の有無について本項及び次項で順次検討する(なお商法二六六条一項五号にいう「法令」が一切の法令を意味するものではないとし、これを限定的に解する見解をとるとしても、本件のような会社財産の処分行為に関しては、これを禁ずる法令の制定目的のいかんを問わずその違反につき取締役の責任が問題となるものと解すべきである。)。」に改め、同三九頁八行目の「約束が」の次に「明示的あるいは黙示的に」を加え、同四〇頁一行目の「取引後」を「損失発生後」に、同二行目の「損失を補填する」を「補填をする」に、同三行目の「記載内容」を「各内容」に、同四一頁一〇行目の「されるだけに」を「されるところから」に、同四二頁一行目から二行目にかけての「違法性の故をもって旧証券取引法が」を「行為の違法性の程度の点からいって、旧証券取引法の前記規定が」に、同一〇行目の「規律するに止まり、もとより法律上の拘束力」を「規律するにとどまり、法的拘束力」にそれぞれ改め、同四四頁二行目の「いないこと」を「いなかったこと」に、同五行目から六行目にかけての「ことからすると、事後の損失補填が旧証券取引法五八条一号に」を「ことからみても、これらの行為の違法性の程度は同法五八条一号所定の『不正の手段、計画又は技巧をなす』所為より低いと理解すべきであり、事後の損失補填が右規定に」にそれぞれ改める。

5  原判決四九頁一行目の「被告らにおいて」から同三行目末尾までを「原審における被控訴人Y8本人尋問の結果によれば、被控訴人らは当時右行為が独占禁止法一九条に違反するとの認識を有していなかったものと認められる。」に、同一〇行目から一一行目にかけての「文面において」を「文言上」に、同五〇頁二行目の「としているにとどまり」を「と自主的な抑制を求める表現がされているにとどまり」にそれぞれ改め、同七行目の「行われていたため、」の次に「直接競争者の顧客の引き抜きを図ってなされるものではない」を、同八行目の「一般に、」の次に「独占禁止法による規制対象としてではなく」をそれぞれ加え、同一〇行目から一一行目にかけての「任ぜられていたものと」を「任されていると」に改める。

6  原判決五四頁一〇行目の「発出」の次に「、改正」を、同一一行目の「ものであるから、」の次に「客観的に見れば」をそれぞれ加え、同五五頁七行目の冒頭から五八頁七行目の「さらに、」までを次のとおり改める。

「すなわち、本件損失補填は、前認定のとおり、当該行為のされた当時、未だ証券取引法に違法な行為として定められていたものではなく、損失保証にあってさえ、違法な行為とされてはいたものの、刑罰の対象にはされておらず行政処分を科せられていたにすぎないこと、従前は、損失補填が反社会性の強い行為であるとは明確に認識されていなかったうえに(最高裁平成九年九月四日判決・民集五一巻八号三六一九頁参照)、本件通達においても、損失補填等が厳に慎むべき行為として位置づけられ、また、同時に改正された公正慣習規則においても事後的な損失補填を慎むように求めているにすぎなかったため、必ずしもこれを法律上許されない行為と評価していたとは断じられないこと、しかも、行政当局においても、本件通達によって営業特金の適正化を行うことが、予期せざる株式市場の急落によって結果的に損失補填をせざるを得ない状況に追いやった一つの要因であると認識していることが窺われること(乙三)、野村證券においては本件通達に基づく報告に際して、損失補填の事実も併せて報告していること等にかんがみると、当時、損失補填を反社会性の強い行為であるとする社会的認識が存在していたものということはできず、また、その私法上の効力について学説の多くがこれを有効であると解していた。このような社会経済状況を前提に」

7  原判決五九頁八行目の「予想される」から九行目の「下においては」までを「予想されたことからすると」に、同六〇頁一行目の「難いものの」を「難いところがあるものの」に、同七行目の「未だいえないから」を「未だいえず、営利法人の代表取締役の地位にある者として、会社、株主の経済的利益を最大にすることもその責務であるから、折からの株式市場の暴落によって営業特金口座解消の交渉が難航する中で顧客との取引関係を継続しひいては長期的視点から野村證券の利益維持を図ることが急務であるとの見地から右方針を決定しこれを実行したことは」にそれぞれ改める。

第三結論

以上の次第で、控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加茂紀久男 裁判官 大喜多啓光 合田かつ子)

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