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東京高等裁判所 平成10年(ネ)2962号 判決 1998年11月18日

東京都荒川区西尾久五丁目一番一九号

控訴人(原審原告)

関文隆

東京都港区南青山二丁目一番一号

被控訴人(原審被告)

本田技研工業株式会社

右代表者代表取締役

吉野浩行

右訴訟代理人弁護士

平尾正樹

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた判決

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、被控訴人の自動車カタログのうち、原判決別紙一の赤線で囲まれた「リモコンエンジンスターター」の名称並びにその説明文及び写真を掲載したものの全てを回収して、一般消費者の目に触れないようにせよ。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

4  仮執行の宣言

二  被控訴人

主文と同旨

第二  当事者の主張

次のとおり、当審における当事者双方の主張を付加するほかは、原判決事実摘示の「第二 当事者の主張」(原判決三頁二行目から四頁六行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  控訴人の主張

(一)  原判決は、被控訴人説明文等をカタログに掲載し、配布しているのが、被控訴人ではなく株式会社ホンダアクセス(以下「ホンダアクセス」という。)であると認められるから、被控訴人には、控訴人が著作者人格権の侵害行為であると主張する行為を行った事実が認められないと判断した。

しかし、ホンダアクセスは、その株式の全部を被控訴人において保有するいわゆる百パーセント子会社であり、実質上被控訴人の一事業部に等しい。ホンダアクセスは、被控訴人の意思によらなければ、被控訴人説明文等をカタログに掲載することができなかったから、被控訴人説明文等をカタログに掲載し、配布しているのは被控訴人であるということができる。

(二)  原判決は、ホンダアクセスが、平成五年ころからリモコンエンジンスターターの名称でリモコン操作による自動車のエンジンの始動・停止装置を販売しており、そのころから、リモコンエンジンスターターをカタログ(乙第一号証)に掲載して配布していると認定したが、乙第一号証が平成五年ころに作成されたとの証拠はなく、右認定は誤りである。

2  被控訴人

(一)  右控訴人の主張(一)のうち、ホンダアクセスが被控訴人の百パーセント子会社であることは認めるが、その余の事実は否認する。

(二)  乙第一号証が平成五年に作成された事実は、その裏面左下隅の「本カタログに記載された価格、仕様は一九九三年七月現在のものです。」との記載、及び裏面右下隅の「RS93」との記載のほか、ホンダアクセスが、平成四年二月四日に、名称を「エンジンのリモコンスタート装置」とする実用新案登録出願をしたこと(乙第二号証)によっても、十分に認められる事実である。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本件請求は理由がないものと判断する。

その理由は、控訴人の当審における主張に対し次の判断を付加するほかは、原判決「理由」欄一、二項(原判決四頁八行目から八頁一〇行目まで)と同じであるから、これを引用する。

1  ホンダアクセスが、その株式の全部を被控訴人において保有するいわゆる百パーセント子会社であることは、当事者間に争いがないところ、控訴人は、ホンダアクセスが実質上被控訴人の一事業部に等しいとか、被控訴人の意思によらなければ、被控訴人説明文等をカタログに掲載することができなかったとして、被控訴人説明文等をカタログに掲載し、配布しているのは被控訴人であるということができる旨主張するが、ホンダアクセスが被控訴人の百パーセント子会社であることから、ホンダアクセスが実質上被控訴人の一事業部に等しく、被控訴人の意思によらなければ、被控訴人説明文等をカタログに掲載することができなかったとの事実を直ちに推認することはできず、他にこのような事実を認めるに足りる証拠はないから、被控訴人説明文等をカタログに掲載し、配布しているのが被控訴人であると認めることはできない。

2  控訴人は、乙第一号証のカタログが平成五年に作成されたことを争うが、同号証の裏面左下隅に「本カタログに記載された価格、仕様は一九九三年七月現在のものです。」との記載があることが認められ、この事実によれば、同カタログが平成五年に作成されたことが推認される。

また、乙第二号証によれば、ホンダアクセスが、平成四年七月一四日に、名称を「エンジンのリモコンスタート装置」とし、リモコン操作で自動車のエンジンのスタータモータを始動させる装置に係る考案について実用新案登録出願をしたことが認められるところ、同号証によれば、右考案は、その構成上、変速装置がいわゆるマニュアル式である自動車に取り付けるものと認められ、いわゆるオートマティック式変速装置を有する自動車にも取付けが可能であると認められる乙第一号証のカタログに掲載された装置とは必ずしも同一の考案とはいえないものの、右考案に基づいてオートマティック式変速装置を有する自動車に取り付ける同様の装置を推考することは極めて容易であると考えられるから、ホンダアクセスが平成四年七月一四日に右実用新案登録出願をした事実も、乙第一号証のカタログが平成五年中に作成された事実を裏付けるものということができる。

二  よって、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条、六七条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

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