大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成10年(ネ)3097号 判決 1998年11月25日

控訴人・附帯被控訴人(以下「控訴人」という。)

野沢温泉村

右代表者村長

久保田哲夫

右訴訟代理人弁護士

坂東克彦

被控訴人・附帯控訴人(以下「被控訴人」という。)

依田俊雄

外一名

右両名訴訟代理人弁護士

金澤優

主文

一  控訴人の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

1  控訴人は、被控訴人らに対し、各金一八一一万〇六二四円及びこれに対する平成六年一月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

二  被控訴人らの附帯控訴をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、第一、二審を通じて、これを五分し、その二を控訴人の、その余を被控訴人らの各負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴につき

1  控訴人

(一) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

(二) 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

(三) 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人らの負担とする。

2  被控訴人ら

(一) 本件控訴を棄却する。

(二) 控訴費用は、控訴人の負担とする。

二  附帯控訴につき

1  被控訴人ら

(一) 原判決を次のとおり変更する。

(二) 控訴人は、被控訴人らに対し、各金四二五〇万円及びこれに対する平成六年一月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(三) 訴訟費用は、第一、二審とも、控訴人の負担とする。

2  控訴人

本件附帯控訴をいずれも棄却する。

第二  当事者の主張

当事者の主張は、原判決九枚目裏一行目末尾の次に「また、スキー場のとるべき安全対策については、スキーヤーが危険回避行動をとることを前提として施設等を設置し、安全を配慮すれば足りるというべきである。」を加えるほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

第三  証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一 当裁判所は、被控訴人らの本件請求は、それぞれ一八一一万〇六二四円及びこれに対する平成六年一月二七日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容すべきであり、その余は理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり付加し、又は訂正するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これをここに引用する。

1  原判決一五枚目裏三行目の「まで及ぶ」を「までに及ぶ」と改める。

2  原判決一七枚目裏一一行目の「午前」を「午後」と改める。

3  原判決二一枚目表九行目の「ならない」を「ならず、スキー場のとるべき安全対策も、スキーヤーが危険回避行動をとることを前提とするもので足りる」と改め、同行目から同一〇行目にかけての「当裁判所も」の次に「、スキーヤーが自己の責任において安全に滑走しなければならないことについては、」を、同行目の「考えるが」の次に「、スキーヤーがいかに安全に注意して滑走していたとしても前記三2において説示したように身体のバランスを崩し、制御不能の滑走状態になる場合のあることは避け得ないのであるから、スキーコースにおける危険防止措置はこのような事態にも対応し得るものでなければならないところ」をそれぞれ加える。

4  原判決二四枚目表二行目の「三1(六)」を「二1(六)」と改める。

5  原判決二四枚目裏三行目の「ならない。」を「ならない(」と、同八行目から原判決二五枚目裏六行目までを次のとおりそれぞれ改める。

「ない。)また、前記認定のとおり、本件事故当時、雪が降っていたため、視界はやや不良であったが、コース脇の標識や自己の滑走しようとする前方の状況が判別できなくなるほどではなかったのであるから、本件コースを滑走して本件橋の手前に来ると、本件橋でコースの幅が狭くなり、かつ、傾斜度も急に変化していることや、本件橋付近のコース両脇に本件ネットが張られていることが認識可能な状況であったというべきであり、また、本件橋の手前には、本件コースの右側に記号と平仮名の「はし」という文字により橋の存在を示し、その間に片仮名の小さな字で「スピードダウン」と記載した表示の看板が、本件コースの左側に「危険橋あり」と記載した表示の看板がそれぞれ設置されていた(乙第一四、第一五号証)のであるから、孝之においても、自己が滑走しようとする前方の状況に注意を払い、コース脇の看板の表示を見ることによって、本件橋の存在並びに右のようなコースの幅及び傾斜度の変化を知り、危険の存在を容易に認識することができたはずである。そうとすれば、孝之には、右のようなコースの状況の変化に対応して、右の危険を回避するため、滑走の速度を落とすなどして自己の技量に応じた無理のない滑走をし、危険個所を通過するように努めるべき注意義務があったというべきである。

ところが、孝之は、格別の減速をすることもなく、長さ二メートル三センチメートルと長くコントロールしにくいスキー板を履いていたにもかかわらず、スピードの出やすいパラレルターンで本件橋上を滑走し、前記認定のとおり、身体のバランスを崩して本件ネットに突っ込んでいったのであるから、孝之にも相当大きな過失があったことを認めざるを得ない。そして、本件事故の発生に至るまでの諸事情を考慮すると、孝之の過失割合は六割と認めるのが相当である。」

6  原判決二五枚目裏七行目から同八行目にかけての「三二二二万一二四八円」を「一六一一万〇六二四円」と改める。

7  原判決二六枚目表一行目の「二五〇万円」を「二〇〇万円」と、同五行目の「三四七二万一二四八円」を「一八一一万〇六二四円」とそれぞれ改める。

二  よって、当裁判所の右判断と異なる原判決は、一部不当であるから、これを変更し、被控訴人らの附帯控訴は、いずれも、理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六七条、六一条、六四条、六五条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官石井健吾 裁判官櫻井登美雄 裁判官杉原則彦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例