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東京高等裁判所 平成10年(ネ)3465号 判決 1998年11月17日

東京都目黒区中町二丁目三二番四-一〇一号

控訴人

篠塚賢二

東京都大田区中馬込一丁目三番六号

被控訴人

株式会社リコー

右代表者代表取締役

桜井正光

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  控訴人は、「原判決を取り消す。本件を東京地方裁判所に差し戻す。」との判決を求めたが、当裁判所も、本訴は不適法であって却下すべきものと判断する。事実及び理由は、次のとおり改めるほか、原判決の事実及び理由に示されているとおりである。

1  原判決三頁一行目及び四行目の「『申立書』」の次に「及び本控訴審判決別紙一『脱漏カツコ補足申立書』」を加える。

2  四頁八行目及び七頁六行目の「四万五七五五台」を「一万四二五〇台」に、四頁末行及び七頁八行目の「三万三六二五台」を「一万二九七〇台」にそれぞれ改める。

3  原判決八頁九行目の次に改行して、次のとおり加える。

「控訴人は、本件訴えが適法なものであるとして、本控訴審判決別紙二「『第三当裁判所の判断』に対して」のとおり主張する。そこにおける主張は、要するに、本訴請求には理由があることが明らかであるから、前訴(原判決五頁八行目参照)の一部請求の残りの一部の請求に係る訴えを不適法とすることはできないというものである。しかしながら、控訴人の右主張をもってしても、本訴の提起が不適法であるとする右判断は動かない。」

二  よって、本件控訴は理由がなく、民訴法二九七条、一四〇条により口頭弁論を経ることなく本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき同法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 市川正巳)

別紙一

平成一〇年(ネ)第三四六五号

脱漏カツコ補足申立書

控訴人 篠塚賢二

被控訴人 株式会社リコー

目録(一)が係る(平成一〇年七月一三日付けの)申立書の二枚目表一一行目の『構造』を『構造」』と改める。

目録(三)が係る(平成一〇年七月一三日付けの)申立書の三枚目表八ないし九行目の『(固着』を『(固着)』と、また、同枚目裏一行目の『構造』を『構造」』と、それぞれ、改める。

平成一〇年一〇月二八日

右控訴人 篠塚賢二

東京高等裁判所第一八民事部御中、

別紙二

六 「第三 当裁判所の判断」に対して

1 その存在が明らかな後に請求し得る残部との審判の範囲が不確定とならないようにその部分が特定されており、また、数額も確定しており、しかも、前五の過去における確定判決(本件実用新案権を有していた権利者が敗訴)とは異なり、前二の記載が係る訂正後の目録記載の被告製品(新規な主張が関するもの)を基礎(前提)としている本件訴えについて本案審理・本案判決がなされれば、本件実用新案権(昭和五六年六月一三日存続期間満了)の権利者すなわち控訴人(被害者)の勝訴となることが余りにも明らかである(訴状記載中の「ク」の証拠付き簡便対比をも参照。)から前訴のものを蒸し返すものでないことが明らかであるところ、本件訴えについて本案審理・本案判決がなされると、従前の確定判決とは異なる結果となることを知りながら、ことさらに争い続けている本件実用新案権の侵害者すなわち被控訴人(加害者)に応訴の負担を強いるものとは到底いえない等の特段の事情があることが明らかな本件訴えにおいて、債権の特定の一部を請求することは信義則に反しないというべきであり、したがそ、最高裁判所の判例(平成九年(オ)第八四九号同一〇年六月一二日第二小法廷判決・裁判所時報一二二一号一四四頁)を本件訴えには用いるべきでないが、債権の特定の一部を請求するものである控訴人は、一部請求において、確定判決の既判力は、当該債権の訴訟上請求されなかった残部の存否には及ばないとする最高裁判所の判例(昭和三五年(オ)第三五九号同三七年八月一〇日第二小法廷判決・民集一六巻八号一七二〇頁)の趣旨に照らしても、本案審理・本案判決がなされるべきであると主張するものである。

「紛争の解決」、「権利保護」等を目的とする民事訴訟制度による解決は、勝つべき者が勝つということが手続上保証されたものでなければならず、強者(ここに甲第三二号証として提出する「(代表取締役社長は技術系出身の株式会社リコーの平成一〇年三月三一日現在の)平成9年度決算公告」掲載の平成一〇年六月二七日付け日本経済新聞写によっても明らかな大企業。最初の東京地方裁判所昭和五三年(ワ)第七九四〇号以前の段階において「天下のリコーは決して逃げ隠れしない」との「(重みのあるべき)断言」もしていた。)の無理が通って弱者(経済系の出身であり、全く経験も知識もなかった暗中模索の当初から細細と本人訴訟を継続してきた一個人。)は泣き寝入りであってはならないことはいうまでもないところ、真実に反することを真実に合致しないと主張・立証して訂正等することは許されるべきであることも、社会的正義からも当事者の訴訟上の羲務と観念すべき「真実を述べること」等も信義則に反するものではなく、訴権の濫用にあたらず、訴えの利益を欠くことにはならず、したがって、不適法とならないというべきであるところ、本件訴えは民事訴訟法第三三八条の規定による再審請求ではないが、「当事者がみずから前訴訟において勝訴の確定判決を受け次いで後の訴訟において同一請求につき敗訴の第一審判決を受けたときは特別の事情のない限り前確定判決との抵触を知っていたものと認めるべきである」とする判例(大判昭一四・一二・二民集一八-一四七九)を類推準用してみると、右にいう「当事者」は「被控訴人(被告)」が当て嵌まり、右にいう「後の訴訟」は「本件訴訟」が当て嵌まることが明らかである。

なお、多忙が明らかな裁判所の立場は理解できるが、本案審理・本案判決を求める正当な必要があるので提起した本件訴えにおいて、権利侵害の成立が余りにも明らかとなっている以上、権利濫用の禁止の安易な適用は、本来保護すべき権利者の利益を害することになるので、すべきでない。

2 以上によれば、有効適切な紛争の解決が得られることが余りにも明らかな訴訟要件を具備しているといえる本件訴えは、訴権の濫用に当たらない適法なものといえるので本案審理・本案判決が必要である。よって、訴権の濫用に当たる不適法なものであって、かつ、その点の補正をすることができないと判断するのが相当であるとして本案審理・本案判決をすることなく本件訴えを却下した東京地方裁判所の判決は取り消されるべきである。

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