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東京高等裁判所 平成10年(ネ)3864号 判決 1999年2月17日

控訴人(原告) 亡A遺言執行者X

被控訴人(被告) Y1

被控訴人(被告) Y2

被控訴人(被告) Y3

右三名訴訟代理人弁護士 飯野仁

同 木戸伸一

同 堀越靖司

被控訴人(被告) Y4

右訴訟代理人弁護士 土屋公献

同 高谷進

同 小林哲也

同 小林理英子

同 加戸茂樹

同 五三智仁

同 高橋謙治

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  本件を東京地方裁判所に差し戻す。

二  被控訴人ら

(被控訴人Y1、同Y2及び同Y3)

主文と同旨

(被控訴人Y4)

主文一項と同旨

第二事案の概要等

事案の概要、当事者の主張及び争点は、原判決の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本件訴えはいずれも不適法であるから却下すべきものと判断する。その理由は、原判決一五頁三行目の「には」から同一六頁七行目末尾までを次のとおり訂正するほかは、原判決の「第三 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

「(本件遺言)は、原判決別紙遺産目録1(2)の土地をBに「遺贈する」と記載する一方、その余の財産はいずれも被相続人らに「相続させる」と記載しており、後者は、これを遺贈と解すべき特段の事情は認められないから、被控訴人ら各自の相続分の指定とともに遺産分割方法の指定をしたものと解される。そして、同目録1(2)の土地は、Bが遺贈を放棄したことにより遺産に復帰し、遺言執行の対象から除外され、改めて被控訴人らの遺産分割協議によりその帰属者が定められるべきものとなったのであり(本件遺言ではBが遺贈を放棄した場合の措置を何ら定めていない。)、その余は、本件遺言の効力の発生(Aの死亡)と同時に、本件遺言のとおり、被控訴人ら各自に相続により確定的に帰属したものと解されるから、いずれも遺言の執行の余地はなく、控訴人が遺言執行者としてこれに関与する余地はないものといわざるを得ない。(なお、付言すれば、原判決別紙遺産目録3以下の遺産のうち、被控訴人らの一部の者にそれぞれ当該遺産の一定数量又は一定割合を相続させるとしている遺産に係る各自の取得分については、本件遺言において、遺言執行者に具体的な分割権限を付与したものとは認められないから、被控訴人ら間の遺産分割協議、調停又は審判により、具体的な帰属を決定することになる。そして、本件遺産分割協議は、原判決別紙遺産目録1(2)の土地についての遺産分割の協議とともに、その余の遺産について被控訴人ら各自が本件遺言によりいったん取得した各自の取得分を相互に交換的に譲渡する旨の合意をしたものと解するのが相当であり、右の合意は、遺言執行者の権利義務を定め、相続人による遺言執行を妨げる行為を禁じた前記民法の各規定に何ら抵触するものではなく、有効な合意と認めることができる。)」

二  よって、当裁判所の右判断と同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井健吾 裁判官 櫻井登美雄 杉原則彦)

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