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東京高等裁判所 平成10年(ラ)1092号 決定 1998年8月31日

抗告人

大成クレジット株式会社

右代表者代表取締役

松本潔幸

相手方

A

主文

一  原決定を取り消す。

二  本件差押命令の取消しの申立てを却下する。

三  裁判費用は、第一、第二審とも相手方の負担とする。

理由

一  抗告の趣旨

原決定を取り消すとの裁判を求める。

二  抗告の理由

別紙「抗告状」に記載のとおりである。

三  当裁判所の判断

1  本件債権差押命令取消しの申立ての理由は、次のとおりである。

相手方は、平成九年一〇月二八日、浦和地方裁判所川越支部において破産宣告と同時に破産廃止の決定を受けたところ(同支部平成九年(フ)第四二四号)、その免責手続において、破産裁判所から、免責決定を受けるためには、総債権額の約五パーセントに当たる金額を積み立ててこれを債権者らに対して任意配当するようにとの指示を受けた。

抗告人は、東京簡易裁判所平成九年(ハ)第二七〇三一号貸金請求事件の執行力ある判決正本に基づき、抗告人を債権者、相手方を債務者、米国貿易株式会社を第三債務者とする債権差押命令の申立てをし(浦和地方裁判所川越支部平成一〇年(ル)第二〇四号債権差押命令申立事件)、同支部は平成一〇年三月二日、相手方の第三債務者に対する給与債権から給与所得税等を控除した残額の四分の一等を差し押さえる旨の債権差押命令(以下「本件差押命令」という。)を発した。

抗告人は、本件差押命令の申立てに先立ち、同支部に対し、相手方の前勤務先に対する退職金等の債権について、債権差押命令の申立てをし(同支部平成九年(ル)第一〇七二号)、一二万六五〇五円の支払いを受け、抗告人に対する任意配当予定額である二万〇一一三円を超える支払を得ている。

相手方の給与は、手取り約三〇万円であり、扶養家族として妻と一歳の子供がおり、妻は無収入であるため、本件差押えを取り消さなければ、破産裁判所の指示による任意配当に支障が生ずる。

よって、本件債権差押命令の取消しを求める。

2  そこで、本件債権差押命令を取り消すべき事情があるかどうかについて判断するに、本件債権差押命令の取消しの申立ては、破産裁判所の指示による任意配当に支障が生ずることを理由とするものであるところ、仮に破産裁判所が、相手方主張の指示をしたとしても、それは、破産者及び破産債権者に対して法的効力を有するものではないから、右の点をもって、本件差押命令と取り消すべき事情とすることはできず、他に本件債権差押命令の全部又は一部を取り消すべき事情は認めることができない。

四  よって、原決定は不当であるからこれを取り消した上、本件債権差押命令の取消しの申立てを却下する。

(裁判長裁判官宇佐美隆男 裁判官柳田幸三 裁判官菊池洋一)

別紙抗告状<省略>

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