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東京高等裁判所 平成10年(行ケ)115号 判決 1998年11月18日

東京都千代田区五番町7番地

原告

株式会社伊勢半

代表者代表取締役

澤田亀之助

訴訟代理人弁護士

杉林信義

大阪府八尾市末広町2丁目8番65号

被告

清水ルリ子

訴訟代理人弁理士

杉本勝徳

松原敦

杉本巌

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

特許庁が、平成8年審判第4067号事件について、平成10年3月2日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

被告は、別紙1のとおり、「ルリード ローションファンデ」の片仮名文字と「RUREED LOTIONFOUNDA」の欧文字とをそれぞれ横書きで2段に併記してなり、第4類「ローション型ファンデーション」(平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表の区分による。以下同じ。)を指定商品とする登録第2712554号商標(平成2年5月2日登録出願、平成4年2月13日出願公告、平成8年2月29日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。

原告は、平成8年3月19日、被告を被請求人として、本件商標につき登録無効審判の請求をした。

特許庁は、同請求を平成8年審判第4067号事件として審理したうえ、平成10年3月2日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同月25日、原告に送達された。

2  審決の理由の要旨

審決は、別添審決書写し記載のとおり、本件商標が、別紙2の1のとおり、「ファンデ」の片仮名文字を横書きしてなり、第3類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品とする登録第466054号商標(昭和29年5月20日登録出願、昭和30年2月19日出願公告、同年5月20日設定登録、昭和50年10月9日、昭和60年7月16日、平成7年10月30日各存続期間更新登録)、及び別紙2の2のとおり、「FOUNDE」の欧文字を横書きしてなり、第4類「せっけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品とする登録第1734602号商標(昭和56年12月24日登録出願、昭和59年4月28日出願公告、同年12月20日設定登録、平成7年5月30日存続期間更新登録、以下この両商標を併せて「引用各商標」という。)と、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であり、本件商標は、商標法4条1項11号に違反して登録されたものでないから、同法46条1項の規定により、その登録を無効にすることはできないとした。

第3  原告主張の審決取消事由の要点

審決は、本件商標の要部の認定を誤った結果、本件商標と引用各商標との類否判断を誤り(取消事由2)、また、判断遺脱がある(取消事由1、3、4)から、違法として取り消されなければならない。

1  取消事由1(商標法3条についての判断遺脱)

本件商標中の「ローション/LOTION」の語からは、アルコール性化粧水を直感観念するものというべく、したがって、本件商標は、「ルリード/RUREED」、「ローション/LOTION」、「ファンデ/FOUNDA」の3語を組み合せた商標というべきである。そして、特許庁商標課編「商品区分に基づく類似商品審査基準(改訂版)」には、第4類「化粧品」の大分類中に小分類として「化粧水」が掲載されているから、本件商標中の「ローション/LOTION」の語は、商標法3条1項1号にいう「その商品・・・の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章」に当たるものというべきであり、そうであれば、本件商標の登録出願に対しては、同法4条1項16号に則り、その指定商品を第4類「化粧水」と補正させた後、登録すべきかどうかを審査すべきものであった。

ところが、本件商標の登録出願手続において、審査官は、その指定商品を、出願当初の第4類「化粧品(薬剤に属するものを除く)その他本類に属する商品」から、第4類「ローション型ファンデーション」と補正させて登録査定をしたものであり、そうすると、「ローション/LOTION」の語は、本件商標の構成要素をなさないというべきである。

したがって、以上の点について判断しなかった審決には、審理不尽・理由不備の違法がある。

2  取消事由2(類否判断の誤り)

商標の類否判断は、当該商標の有する外観、称呼及び観念の各判断要素を総合的に考察して行うべきところ、本件商標に係る文字の組合せは不自然であって、一体とか一連不可分とはいい難いから、これを分離観察すべきであり、その場合に、本件商標中の自他商品の識別力を有する部分、すなわち本件商標の要部について検討すると、上記のとおり、「ローション/LOTION」の語は自他商品の識別力を有しないので除外され、本件商標は、前部の「ルリード/RUREED」と後部の「ファンデ/FOUNDA」の2要部を有するものとして、引用各商標との類否の判断を行うべきものである。

そうした場合、本件商標の一要部である「ファンデ/FOUNDA」と引用各商標とは、いずれも特定の観念を有しないが、外観のうえで類似することが明らかであり、さらに本件商標の該要部からは「ファンデ」の称呼を生じ、他方引用各商標からも「ファンデ」の称呼が生じるので、本件商標は、称呼の点でも引用各商標と類似するものというべきである。

したがって、本件商標は、引用各商標との関係で商標法4条1項11号に該当する商標というべきであって、これが引用各商標と互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であるとし、同号に違反して登録されたものではないとする審決の判断は誤りである。

3  取消事由3(商標法4条1項15号についての判断遺脱)

原告は、戦後化粧品全般の製造販売を行っており、原告の商品は既に大衆に周知であるところ、原告は、引用各商標の商標権者であって、昭和30年から現在まで、継続してファンデーションに引用各商標を使用しており、その結果、引用各商標は、同業者、情報宣伝業者間において周知商標となるに至っている。かかる状況の下で、引用各商標を付した原告の乳液状ファンデーションと、本件商標を付したローション型ファンデーションが市場に流通すれば、上記のとおり、本件商標からは「ファンデ」の称呼が生じるから、時と場所を異にして接する場合に、商品の出所に混同が生じるものというべきである。

したがって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当する商標というべきであるところ、かかる点につき判断しなかった審決には、審理不尽・理由不備の違法がある。

4  取消事由4(平成8年法律第68号による改正前の商標法7条違背についての判断遺脱)

本件商標は、平成8年法律第68号による改正前の商標法7条1項、3項の適用により、被告の有する登録第1330511号商標の連合商標として登録されたものであるが、上記のとおり、本件商標は、「ルリード/RUREED」と「ファンデ/FOUNDA」の2要部を有し、引用各商標と類似するものであるから、同項を適用するに先立って、同法4条1項11号を理由とする拒絶理由通知がなされるべきものであった。

そうすると、本件商標の設定登録は、平成8年法律第68号による改正前の商標法7条に違背してなされたものであるところ、かかる点につき判断しなかった審決には、審理不尽・理由不備の違法がある。

第4  被告の反論の要点

本件商標と引用各商標とが、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても非類似であることは、審決の認定判断のとおりであり、審決がその類否判断を誤ったとの取消事由の主張は理由がなく、また、その余の取消事由の主張もいずれも理由がない。

第5  当裁判所の判断

1  取消事由1、3、4について

本件審判請求書(甲第3号証の1)には、本件商標の登録の無効を求める審判請求の理由として、本件商標が引用各商標と類似し、その指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから商標法4条1項11号に該当し、よって、本件商標の登録は同法46条1項1号に基づき無効とされるべき旨の記載があるものの、原告が、取消事由1、3、4において主張するような無効事由についての明確な記載はなく、また、これらの事由が職権によって取り上げることを要する程度のものであると解することもできない(本件審判請求書には、取消事由1の主張等に類する記述部分があるが、それらは、引用各商標が著名であることの主張のために付加されていると理解されるので、明確な主張がない本件では、審理不尽・理由不備の違法があるとすることはできない。)。

したがって、審決がこれらの事由につき判断しなかったことが、審理不尽・理由不備の違法となるものとする原告の主張は、採用することができない。

2  取消事由2について

(1)  本件商標の構成が、別紙1のとおり、「ルリード ローションファンデ」の片仮名文字と「RUREED LOTIONFOUNDA」の欧文字とをそれぞれ横書きで2段に併記してなるのに対し、引用各商標の構成が、別紙2の1のとおり、「ファンデ」の片仮名文字を横書きしてなり、あるいは別紙2の2のとおり、「FOUNDE」の欧文字を横書きしてなることは、当事者間に争いがないところ、この事実によれば、本件商標と引用各商標とは、外観上、明瞭な差異を有し、いわゆる対比的観察による場合はもとより、いわゆる離隔的観察による場合であっても、互いに紛れるおそれがないことは明らかである。

(2)  また、本件商標からは、その構成文字に応じて「ルリードローションファンデ」の称呼が生じるものと認められるほか、当該称呼が冗長でないとはいい難いことに加え、本件商標が、片仮名文字部分においては「ルリード」の部分と「ローションファンデ」の部分の間に、欧文字部分においては「RUREED」の部分と「LOTIONFOUNDA」の部分の間に、それぞれ1文字分の空白があるその構成態様により、前段の「ルリード」及び「RUREED」の文字部分と、後段の「ローションファンデ」及び「LOTIONFOUNDA」の文字部分とに分離して認識されることも自然であると認められ、そのような場合を考慮すると、その前段部分から「ルリード」の称呼が、また後段部分から「ローションファンデ」の称呼が生じるものと認めることができる。

他方、引用各商標からは、それぞれその構成文字に応じて、「ファンデ」の称呼が生じるものと認められる。

そうすると、本件商標から生じる「ルリードローションファンデ」、「ルリード」及び「ローションファンデ」の各称呼と、引用各商標から生じる「ファンデ」の称呼とを比較した場合に、「ルリード」の称呼と「ファンデ」の称呼との間には音構成において、また、「ルリードローションファンデ」及び「ローションファンデ」の各称呼と「ファンデ」の称呼との間には音構成及び音数において、それぞれ顕著な相違があるものと認めることができる。

(3)  さらに、少なくとも本件商標が特定の意味合いをもつとの主張立証はなく、また特定の意味合いを持つことが顕著な事実であるともいい難いから、本件商標と引用各商標の観念は、これを比較すべくもない。

(4)  原告は、本件商標のうち「ローション/LOTION」の語は自他商品の識別力を有しないので、本件商標は、前部の「ルリード/RUREED」と後部の「ファンデ/FOUNDA」の2要部を有するものとして、引用各商標との類否の判断を行うべきものであると主張する。

そして、本件商標の構成のうちの「ローション」及び「LOTION」の各文字部分は、それ自体としては化粧水を意味する英語表現であって、本件商標の指定商品との関係においては商品の品質を表す語に相当するものであり、それだけを取り出せば、自他商品の識別力を有しないものと認められる。

しかしながら、本件商標は、前示のとおり、その構成態様により、前段の「ルリード」及び「RUREED」の文字部分と、後段の「ローションファンデ」及び「LOTIONFOUNDA」の文字部分とに分離して認識されることがあるとしても、この後段部分は、片仮名文字部分も欧文字部分も、それぞれ同書体、同大の文字により同間隔で横書きしてなるもので、その一部分が他の部分から独立して強調されていると見られるような態様ではなく、また、格別冗長であるとか、発音が困難である等ということもないから、類否判断においては、後段部分の全体を一体として観察するのが自然であり、ことさらに「ローション」及び「LOTION」の各文字部分を分離抽出して、その自他商品識別力を論じなければならない必要も理由もないものというべきである。

したがって、前示後段部分を、「ローション」及び「LOTION」の各文字部分と、「ファンデ」及び「FOUNDA」の各文字部分とに分離して、後者のみを本件商標の要部とする原告の主張は採用することができず、外観、称呼及び観念について引用各商標と比較する場合に、本件商標のうち「ファンデ」及び「FOUNDA」の各文字部分をもってすることが、当を得たものということはできない。

(5)  そうすると、審決が「本件商標は、引用商標(注、引用各商標を指す。)とその外観、称呼及び観念のいずれの点においても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。」(審決書9頁4~6行)と判断したことに誤りはない。

3  以上のとおり、原告の審決取消事由の主張は理由がなく、他に審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。

よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

(別紙1)

本件商標

<省略>

(別紙2)

引用各商標

<省略>

平成8年審判第4067号

審決

東京都千代田区五番町7番地

請求人 株式会社 伊勢半

大阪府八尾市末広町2丁目8番65号

被請求人 清水ルリ子

大阪府大阪市天王寺区四天王寺1丁目14番22号 日進ビル 杉本特許事務所

代理人弁理士 杉本勝徳

和歌山県和歌山市寄合町44番地 宮本ビル3階 杉本内外国特許事務所

代理人弁理士 杉本巌

上記当事者間の登録第2712554号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する.

結論

本件審判の請求は、成り立たない.

審判費用は、請求人の負担とする.

理由

1.本件登録第2712554号商標(以下、「本件商標」という。)は、「ルリード ローションファンデ」の片仮名文字と「RUREED LOTIONFOUNDA」の欧文字を2段に併記してなり、平成2年5月2日登録出願、第4類「ローション型ファンデーション」を指定商品として、同8年2月29日に設定登録がなされたものである。

2.請求人が、本件商標の無効の理由に引用する登録第466054号商標は、「ファンデ」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和29年5月20日登録出願、第3類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品として、同30年5月20日に設定登録がなされたものである。同じく、登録第1734602号商標は、「FOUNDE」の欧文字を横書きしてなり、昭和56年12月24日登録出願、第4類「せっけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品として、同59年12月20日に設定登録がなされたものである。そして、上記引用両登録商標(以下、「引用商標」という。)は、現に有効に存続しているものである。

3.請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を概略深のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至甲第21号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)本件商標は、引用商標と類似であり、その登録に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は、同法第46条第1項の規定に基づき無効とされるべきである。

(2)本件商標は、その構成文字に相応して「ルリードローションファンデ」、「ルリード」及び「ローションファンデ」の各称呼が生ずるものである。

さらに、本件商標の中「ローション/LOTION」の文字は、指定商品の商品名であって顕著性を有しないものであるから(甲第5号証乃至甲第12号証)、その構成中の「ローションファンデ/LOTIONFOUNDA」の文字も「ローション/LOTION」と「ファンデ/FOUNDA」に分断され、「ファンデ/、本件商標からは「ファンデ」の称呼をも生ずるものというべきである。

故に、本件商標からは全体的称呼である「ルリードローションファンデ」の他に、「ルリード」及び「ファンデ」なる称呼が生ずるというべきであり、同じく「ファンデ」の称呼が生ずる引用商標と本件商標は、称呼上類似する商標である。

(3)被請求人は、「『ローションファンデ/LOTIONFOUNDA』の部分は冗長でもなく、同一の書体で同寸同大の文字で一連一体に書してなるから、『ファンデ/FOUNDA』の文字部分のみを切り離して認識することはない」と述べているが、該文字は同寸同大の文字で書されていない。

また、本件商標が、審査において、拒絶理由に基づき指定商品を補正された事実より案ずれば、「ローション/LOTION」の文字部分と「ファンデ/FOUNDA」の文字部分は切り離されて認識されるのが当然である。

つぎに、被請求人は、「通常言葉を略して称呼するときには前半部分のみを略して称呼するか、複合語のそれぞれ前半部分を略して称呼するものであり、後半部分のみを称呼することはないので、本件商標が『ファンデ』と称呼されることは決してない」と述べているが、「ローション/LOTION」の文字が指定商品として明らかに認識される以上、業者や需要者は「ファンデ」という「ローション」と称呼するか、単に「ファンデ」とのみ称呼するのが当然というべきである。

さらに、被請求人は、「女性が化粧品を選ぶ場合には、その製造元や効能などを吟味してから購入するものであるから、本件商標の付された商品と引用商標の付された商品の出所を混同することはない」とも述べているが、化粧品購入時その効能を吟味することは当然であるが、しかし、効能の吟味以前に需要者が認識するのは、商品の種類とその名称即ち商品の識別標識であり、「ルリード/RUREED」のような出所標識は、一般的に効能の吟味即ち使用して商品が気に入った後に認識するものである。

さらにまた、被請求人は、「ローションファンデ/LOTIONFOUNDA」が一連一体の標章として認識され称呼されるものであることを示す例として、乙第1号証乃至乙第8号証を提示しているが、これらは総て証拠としての根拠がないものである。

4.被請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と答弁し、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至乙第10号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)本件商標は、登録第1330511号商標の連合商標として登録されたもので、「ローション型ファンデーション」を指定商品としている。

したがって、「ルリードローションファンデ」なる称呼が生ずるとともに、「ルリード/RUREED」と「ローションファンデ/LOTIONFOUNDA」との間に空白部分があるためにそれぞれの部分が別々に認識され、「ルリード」あるいは「ローションファンデ」と称呼される可能性もある。

しかしながら、「ローションファンデ/LOTIONFOUNDA」の部分は冗長でもなく、同一の書体で同寸同大の文字で一体一連に書してなるから、「ローション/LOTION」の部分が指定商品そのものを表すものであるとしても、「ファンデ/FOUNDA」の文字部分のみを切り離して認識されることはない。

また、例え「ローションファンデ/LOTIONFOUNDA」の部分が冗長であっても、通常言葉を略して称呼する場合、前半部分のみを略して称呼するのであり、後半部分のみを称呼することはない。

さらに、本件商標の指定商品が含まれる化粧品は、需要者の殆どが女性であり、女性にとって化粧は非常に重要である。したがって、その化粧の重要なアイテムである化粧品を選ぶ場合も手に取って、その製造元や効能などを吟味してから購入に及ぶもので、本件商標と引用商標との相違を見逃すはずがない。

しかも、本件商標の場合、「ローションファンデ/LOTIONFOUNDA」部分の前に、本件商標の商標権者が代表取締役である周知なルリード化粧品の登録商標である「ルリード/RUREED」を書してなり、購入者はこの「ローションファンデ/LOTIONFOUNDA」がルリード化粧品の製品であることを認識する。したがって、このことをもってしても、需要者が本件商標を付した商品と引用商標を付した商品と出所混同することはないといえる。

さらにまた、乙第1号証乃至乙第3号証に示すように、他人の登録商標と同一の語句部分の前方に指定商品そのものを表す語句が連結された形状の商標の場合、冗長でもなく一体一連によどみなく称呼できれば、後方の他人の登録商標と同一な部分のみを称呼されることがないと従来から判断されてきたことが明らかである。

このことは、乙第4号証乃至乙第8号証に示すように、他類においても同様の判断がなされていることから見ても明らかである。

なお、請求人は、甲第15号証乃至甲第17号証を証拠として示し、甲第1号証に示された商標「ファンデ」が、請求人の販売するファンデーション商品を表す商標として著名であると主張しているが、これらの証拠では「ファンデ」なる商標が著名であるかどうか不明である。しかし、「ファンデ」なる商標が著名であるにせよ、著名でないにせよ、本件商標は、「ファンデ」の称呼が生ずることがないことは上述のとおりである。

したがって、本件商標は、引用商標と非類似の商標であり、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

5.よって、本件商標と引用商標との類否について判断するに、それぞれ前記したとおりの構成よりなるものであるから、外観においては互いに区別し得る差異を有すること明らかである。

つぎにこれを称呼についてみるに、本件商標は、「ルリード ローションファンデ」と「RULEED LOTIONFOUNDA」の両文字よりなるところ、その構成文字に相応して「ルリードローションファンデ」の一連の称呼を生ずるものではあるが、該称呼は極めて冗長なものといえるものであり、その構成態様からして「ルリード」及び「RUREED」の前段の文字部分と「ローションファンデ」及び「LOTIONFOUNDA」の後段の文字部分とに分離して看取され、それぞれの文字部分より生ずる「ルリード」及び「ローションファンデ」の各称呼をもって取引に資される場合も決して少なくないといえるものである。

そうとすれば、本件商標からは、「ルリードローションファンデ」、「ルリード」及び「ローションファンデ」の各称呼を生ずるものというのが相当である。

なお、請求人は、本件商標は、その構成中の「ファンデ」及び「FOUNDA」の文字部分より単に「ファンデ」の称呼をも生ずると主張するが、本件商標の構成中「ローション」及び「LOTION」の文字部分が、指定商品との関係において、商品の品質を表示する語であって、自他商品識別標識としての機能を有しないものであるとしても、取引の実情からして本件商標の如き構成にあっては、最後部の「ファンデ」及び「FOUNDA」の両文字部分のみを分離抽出して、これより生ずる称呼をもって商品取引に資する場合はないものというべきである。

他方、引用商標は、その構成文字に相応して「ファンデ」の称呼が生ずるものである。

そこで、本件商標より生ずる「ルリードローションファンデ」、「ルリード」及び「ローションファンデ」の各称呼と引用商標より生ずる「ファンデ」の称呼とを比較すると、両称呼は、その構成音数及び音構成を全く異にするものであるから、本件商標と引用商標とは、称呼においても全く相紛れるおそれのないものといわなければならない。

また、本件商標と引用商標は、ともに特定の観念を生じない一種の造語と認められるものであるから、観念については比較することができない。

してみれば、本件商標は、引用商標とその外観、称呼及び観念のいずれの点においても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

平成10年3月2日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

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