東京高等裁判所 平成10年(行ケ)133号 判決 1999年10月28日
原告
株式会社松岡刃物
代表者代表取締役
【A】
訴訟代理人弁護士
野方重人
被告
兼房株式会社
代表者代表取締役
【B】
訴訟代理人弁護士
鮎澤多俊
同
小池徹
同弁理士
【C】
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第1 請求
特許庁が平成6年審判第21796号事件について平成10年4月6日にした審決を取り消す。
第2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯
原告は、考案の名称を「面ホゾカッター」とする登録第1972446号実用新案(昭和56年6月26日出願(昭和56年実用新案登録願第95659号)、平成5年6月25日設定登録。以下「本件考案」という。)の実用新案登録権者である。
被告は、平成6年12月26日本件考案の登録を無効とすることについて審判を請求した。
特許庁は、この請求を平成6年審判第21796号事件として審理した結果、平成10年4月6日、本件考案の登録を無効とする旨の審決をし、その謄本は、同月15日原告に送達された。
2 本件考案の要旨
中心に軸の取付孔を設けた主体の外周に間隔的に刃体を突設し、該刃体の先端内側縁に側面平刃を、外側縁に予め組立てんとする桟材の表面に形成せんとする凹凸条に合致する形状の二枚ホゾ用の凹凸面と一枚ホゾ用の凹凸面との成形が出来る波形状の抱き縁成形刃を設け、且つこの抱き縁成形刃には側面平刃に対して平行する部分がなく、両刃の刃幅を先端から中心に及ぶに従って幅広く成形してなる面ホゾカッター。
(「ホゾ」の文字については、正しくは、「木」に旁(つくり)を「内」とした文字が使用されているが、本判決では「ホゾ」で代用することとする。以下、同じ。)
3 審決の理由
審決の理由は、別紙2審決書の理由写し(以下「審決書」という。)に記載のとおりであり、審決は、請求人(被告)が審判検甲第1号証(本訴検乙第1号証)として提出した【D】が使用していた面ホゾカッター(以下「【D】カッター」という。)は、本件考案の出願の日(昭和56年6月26日)の前に日本国内において公然知られ又は公然と実施されたものであるところ、本件考案に係る面ホゾカッターと【D】カッターとは同一であるから、本件考案は、その出願前に日本国内において公然知られ及び公然と実施された考案であり、実用新案法3条1項1号及び2号の考案に該当し、同法37条1項1号により本件考案の登録を無効とすべきであると判断した。
なお、審決書中の「面・カッター」、「一枚・」、「二枚・」又は「・の抱き縁」の「・」は「木」に旁(つくり)を「内」とした文字(ただし、本判決では、前記のとおり「ホゾ」と表記する。)の誤記であり、15頁17行、18行の「第3条第1項及び第2項」は「第3条第1項第1号及び第2号」の誤記である。
第3 審決の取消事由
1 審決の認否
(1) 審決の理由1(手続の経緯)、2(本件考案の要旨認定)及び3(当事者の主張)は認める。
(2) 審決の理由4(当審の判断)(1)(証人【D】が使用したカッターの構成)のうち、【D】カッターを資料1の図面に付された記号を用いて文言として表現すると、【D】カッターは、「中心に軸の取付孔(a)を設けた主体(b)の外周に間隔的に刃体(c)を突設し、該刃体の先端内側縁に側面平刃(d)を、外側縁に予め組立てんとする桟材の表面に形成せんとする凹凸条に合致する形状の波形状の抱き縁成形刃(e)を設け、」たものであることは認め、その余は争う。
(3) 審決の理由4(当審の判断)(2)(【D】カッターの構成に対する被請求人の主張及びそれに対する検討) のうち、審決書6頁6行ないし7頁17行「主張している。」まで及び9頁8行ないし17行は認め、その余は争う。
(4) 審決の理由4(当審の判断)(3) (本件考案と【D】カッターとの比較)は争う。
(5) 審決の理由4(当審の判断)(4)(【D】カッターの公知性について)のうち、審決書13頁14行ないし14頁6行及び15頁3行ないし16頁1行は争い、その余は認める。
(6) むすび(審決書16頁3行ないし7行)は争う。
2 取消事由
審決は、【D】カッターの平行部分の有無についての認定を誤り(取消事由1)、本件考案におけるきちょうの要否についての判断を誤り(取消事由2)、本件考案における兼用の方式についての判断を誤り(取消事由3)、【D】カッターが公知公用となった時期についての認定を誤り(取消事由4)、審判手続上の違法を有するものであるから(取消事由5)、違法なものとして取り消されるべきである。
(1) 取消事由1(【D】カッターの平行部分の有無についての認定の誤り)
ア 審決は、審判段階における証人【D】の証言等を根拠として、資料2(本訴甲第57号証)を【D】カッター(検乙第1号証)の製作図面であると認定しているが(審決書5頁6行ないし11行)、誤りである。
証人【D】の証言には、各所に曖昧かついい加減な点、前後矛盾する点、重要な個所における証言の訂正等が存在し、記憶の正確性に疑問があるばかりでなく、被告の利益に資するための一方的な証言であり、到底信用することができないというべきである。
イ また、上記製作図面(甲第57号証)は、書き換えたり修正を施したりすることの容易な書面であり、かような信用性に乏しい証拠に基づいて【D】カッター(検乙第1号証)の形状を認定することはできないものというべきである。
ウ さらに、【D】カッター(検乙第1号証、甲第23号証)には、明瞭に修理した痕跡がみられ、刃先形状の変更の可能性を否定することができない。
エ 仮に上記製作図面(甲第57号証)が【D】カッターを表しており、【D】カッター(検乙第1号証)につき刃先形状の変更等がなかったとしても、【D】カッターには抱き縁成形刃に側面平刃に対して平行する部分がない旨の審決の認定は(審決書9頁3行ないし5行)、誤りである。上記両証拠に表れている抱き縁成形刃はそれぞれ小さく、明瞭性を欠き、平行部分の存否は判然としない。したがって、これら両証拠だけに基づいて平行部分の不存在を認定することには無理がある。
オ なお、審決は、【D】カッターによって製作された桟材(検乙第2号証、甲第29号証)の外面の曲面(ひょうたん面)と交差する部分のうち、抱き縁の先端部とその根元部(柄に近い部分)に側面平刃と平行する切削刃部で切削されたと認められる段部が存在することを認めながら、「カッターの側面平刃に対して平行する部分で切削されたため形成されたと認められる実質的な折れ線状段部が形成されているとは言えない。」(審決書8頁末行ないし9頁2行)とし、上記甲第29号証等を排斥している。
その根拠は、被告が審判部からの釈明に応じて行った「桟材の一部が切削時に該刃部に押されて外側に逃げるため、その部分に削り残しとして形成された」か又は「木工機械の調整不良により切削位置が僅かにずれ、一部が削り残しとして形成された」かいずれかに起因するとの回答(甲第20号証4頁)にあると思われるが、このような被告の主張を裏付ける証拠は明らかにされておらず、審決は上記認定を証拠に基づかずに行ったといわざるを得ない。むしろ原告が指摘したようにカッターの刃に平行部分が存在し、そのために桟材の接合線が折れ線状になると解することが合理的な推認というべきである。
(2) 取消事由2(本件考案におけるきちょうの要否についての判断の誤り)
審決は、「本件考案は、きちょう成形部を設けることを構成要件としていないから、本件考案はきちょう成形部を有するとはいえない。」(審決書10頁4行ないし6行)と判断するが、誤りである。
ア 考案の要旨の解釈は、出願当時の技術常識を前提にして行うべきところ、本件考案の出願当時以後の被告の作成頒布にかかる面ホゾカッターのカタログには、すべてきちょう成形段部を含む成形面を有する面ホゾカッターのみが掲載されており、きちょう成形段部のない面ホゾカッターは一切掲載されていないこと、被告自身、昭和52年10月に作成したカッターカタログ(甲第67号証)及び昭和54年7月に作成したカッターカタログ(甲第31号証)のそれぞれ表紙の裏の部分に、「キチョウを作ることが絶体条件です。」と記載してきちょうを設けることの重要性、必須性を強調し啓蒙していたこと、しかも一枚ホゾ、二枚ホゾ兼用刃の場合にはきちょう成形段部は常に2箇所に存在していること(甲第40号証の2、甲第65号証、甲第66号証)によると、面ホゾカッターの抱き縁成形刃には一枚ホゾ用でも、二枚ホゾ用でも常にきちょう成形段部が存在しなければならないことが本件考案の出願当時の技術常識になっていたものである。
また、考案の要旨の解釈は、考案の詳細な説明及び図面を参酌して行うべきところ、本件考案の図面(甲第2号証)記載の実施例には、すべてきちょう成形段部を有している。
これらによれば、本件考案は、きちょう成形段部を設けることを構成要件としているものと認めるべきである。
イ さらに、以上の解釈が認められないとしても、本件については公知技術除外説が適用されるべきである。すなわち、一般に「出願者は、その登録請求範囲の項中往々考案の要旨ではなく、単にこれと関連するに過ぎないような事項を記載することがあり、また逆に考案の要旨と目すべき事項の記載を遺脱することもあるのは経験則の教えるところであるから、実用新案の権利範囲を確定するにあたっては、「登録請求ノ範囲」の記載の文字のみに拘泥することなく、すべからく、考案の性質、目的または説明書および添付図面全般の記載をも勘案して、実質的に考案の要旨を認定すべきである。また、出願当時すでに公知、公用にかかる考案を含む実用新案について、その権利範囲を確定するにあたっては、右公知、公用の部分を除外して新規な考案の趣意を明らかにすべきである」(最高裁三小判決昭和39年8月4日民集18巻7号1319頁)と解されている。
本件においては、審決は、きちょう成形段部の存在しない【D】カッターは本件考案の出願当時既に公知のものであり公然と実施されていたと認定しており、したがって【D】カッターに認められるきちょう成形段部の存在しない形状を持たせた技術は公知、公用の技術であると認定したものであるから、本件考案の構成要件の中からきちょう成形段部の存在しない形状を持たせた技術の部分を除外して、きちょう成形段部の存在する形状を持たせた技術を新規な考案の趣旨と認めるべきである。
(3) 取消事由3(本件考案における兼用の方式についての判断の誤り)
審決は、「【D】カッターの抱き縁成形刃も、二枚ホゾ用の凹凸面と一枚ホゾ用の凹凸面との成形ができる波形状の抱き縁成形刃と認められる。」(審決書10頁末行ないし11頁2行)と認定し、「本件考案に係るカッターと【D】カッターとを比較すると両者は同一であると認める。」(審決書11頁14行、15行)と認定するが、誤りである。
【D】カッターの使用方法は、一枚ホゾ用として使用する場合にも二枚ホゾ用として使用する場合にも抱き縁成形刃の全体を使用する方法である(ただし、きちょう部分の厚みが異なる。)。
これに対し、本件考案に係るカッターは、考案の詳細な説明の項に「本考案に係る面ホゾカッターの刃体の先端外側縁に設けた抱き縁成形刃は予め桟材の表面に形成せんとする二枚ホゾ用の凹凸条を含んだ一枚ホゾ用の凹凸条に合致する波形状に形成したものであるからカッターの使い分け、即ち桟材の木口の切削位置を変えることにより抱き縁の内壁面に第5図(別紙1第5図参照)に示す様な一枚ホゾ用の深い波形状の凹凸面を形成することも又第9図(別紙1第9図参照)に示す様な二枚ホゾ用の浅い波形状の凹凸面を形成することも出来るので、…一枚のカッターで兼用出来る特徴を有するものである。」(甲第2号証4欄16行ないし27行)と記載されていることから明らかなように、カッターの刃の全体を使用して(深く使用して)一枚ホゾ用の成形面を、刃の一部を使用して(浅く使用して)二枚ホゾ用の成形面をそれぞれ形成するという使用方法を構成要件としているものであり、【D】カッターとはその構成を異にするものである。
(4) 取消事由4(【D】カッターが公知公用となった時期についての認定の誤り)
審決は、「(【D】)証人が【D】カッターを昭和55年12月に購入したとの証言は信用できる。してみれば、【D】カッターは、本件考案の出願の日(昭和56年6月26日)前に公然と知られまたは実施されたものである。」(審決書15頁9行ないし14行)と認定するが、誤りである。
証人【D】の上記証言は、そもそも【D】カッターの購入の時期、過程について訂正を繰り返したり、同証人がこれを見て購入をしたとされる古林木工所の【E】カッターを表すとされる検査票(甲第51号証の9の写真の右から2番目のもの)記載の平ホゾカッターの厚みは5.7ミリであるのに、同じく【E】カッターを表すとしている納品書(甲第47号証)及び請求書(甲第48号証)記載の平ホゾカッターの厚みは5.5ミリとなっており、明らかに異なるカッターと考えられるものを同一のカッターであるかのごとく証言をしたり、その他各所にその信憑性を疑うべき証言がなされており、【D】のかような証言を根拠とした審決の事実認定は不当かつ違法な認定というべきである。
(5) 取消事由5(審判手続の違法性)
ア 被告は、本件無効審判請求事件を担当した特許庁審判部からの公式の質問に対し、平成10年2月3日特許庁審判長あてに回答書(甲第20号証)を提出し、さらに、同日付けの弁駁書(甲第21号証)を提出した。
イ 上記両書面には、後記ウのとおり、本件無効審判請求事件の帰趨を決するような重要な争点につき新たな主張がなされており、審判部は、原告に対し、これらに対する防御の機会を与えるべきであった。
しかるに、審判部は、これらの副本を原告に交付しなかった。しかも、審判部は、原告代理人からの副本交付送達の強い要求に対しても、「副本を送付するつもりはない。不服があれば東京高等裁判所に対して手続を行え。」と拒絶し、結局そのまま審決を下したものである。
かような審決は、原告の権利である防御の機会を奪う極めて公平を失する審理手続に基づくものであり、法の要求する適正手続に違反する違法な審決であって、違法なものとして取り消されるべきである。
ウ 被告の提出した回答書(甲第20号証)及び弁駁書(甲第21号証)には、本件無効審判請求事件の帰趨を決するような重要な争点につき新たな主張がなされていた。すなわち、
(ア) 被告は、回答書(甲第20号証)において、「甲第13号証(本訴甲第34号証)及び資料3(本訴甲第58号証)は、何れも【F】カッターに対する理解を便ならしめるために請求人が作成した図面に過ぎず、・・・理解に資するため提出した図面において「側面平刃に対し平行する部分」の有無を云々しても全く意味のないことである。」(2頁9行ないし18行)と主張した。
しかし、被告は、「今回新たに提出する資料3に係る図面は、【F】刃物を極力正確な形で示したものである」(平成9年6月9日付け口頭審理陳述要領書(甲第18号証9頁13行、14行))と主張しており、上記主張は従来の主張を明確に変更したものである。
(イ) 被告は、回答書(甲第20号証)において、【F】カッター及び【D】カッターによって製作された切削見本には、側面平刃と平行する切削刃部により形成されたとの疑問のある段部が存在するが、それは側面平刃と平行する切削刃部により形成されたものではなく、桟材の一部が切削時に該刃部に押されて外側に逃げるため、その刃部に削り残しとして形成されたか、または木工機械の調整不良により切削位置が僅かにずれ、一部が削り残しとして形成された旨(3頁下から5行ないし4頁下から4行)主張した。
しかし、かような主張もここで初めて主張されたものである。
(ウ) さらに、被告は、弁駁書(甲第21号証)において、製品カタログ(甲第31号証。審決時甲第10号証)が遅くとも昭和52年頃には発行されていたという事実を根拠づけるために、その表紙に掲載されたカッターの「5C」は1975年3月に製造されていることを表している旨(5頁17行ないし下から5行)主張した。
かような主張は、初めての主張である。
(エ) 被告は、弁駁書(甲第21号証)において、有限会社丸一商会作成にかかる古林木工所あての請求書(甲第48号証(審判甲第27号証))に記載されている平ホゾカッターの厚みの数字5.5は同商会の記載ミスである旨(6頁9行ないし下から8行)主張した。
かような主張も、初めての主張である。
第4 審決の取消事由に対する認否及び反論
1 認否
審決の取消事由(5)アの事実は認め、その余は争う。
2 反論
(1) 取消事由1(【D】カッターの平行部分の有無についての認定の誤り)について
ア 審判段階における証人【D】の証言は信用することができるものであり、これに反する被告の主張は理由がない。
イ 原告は【D】カッターの製作図面(甲第57号証)が書き換えたり、修正を施したりすることの容易な書面である旨主張するが、かようなことが容易であるはずがない。
そもそも当該図面には、これに対応する【D】カッターの現物が存在する。しかも【D】カッターそのものの製造・販売の時期については、【D】証人自身の証言が存在する。かかる背景のもとで、被告が上記製作図面を書き換えたり、修正を施したりする必要は全くない。
ウ 【D】カッターには一箇所修理した痕跡がみられるが(甲第23号証参照)、このことを根拠に刃先形状が変更されたとすることはできない。
仮に刃先形状の変更がされたのであれば、カッターの1箇所の刃先のみならず、他の刃先すべてを変更し、かつ、このカッターと対をなす面ホゾカッター及びこれらと雄雌の関係になる框(かまち)カッターの刃先形状もすべて変更されていなければならないが、【D】カッターにはこのような形状変更の痕跡は全く見られない。
エ 甲第23号証の各写真、殊に9、10及び甲第59号証の製作図面を、【D】カッター(検乙第1号証)の現物とともに比較対照すれば、【D】カッターには抱き縁成形刃に側面平刃に対して平行する部分がないことは明らかに看取することができる。
オ 被告が審判部に対してした削り残しや木工機械の調整不良についての釈明は、木工機械による加工の場合において現にしばしば生ずる現象の説明をしたものであり、これを審判官が合理的な説明として受け入れたのは当然のことである。
(2) 取消事由2(本件考案におけるきちょうの要否についての判断の誤り)について
本件考案の実用新案登録請求の範囲には、きちょうの点が規定されていないから、本件考案は、きちょうをその構成要件とするものではない。
【D】カッターによる切削加工例(甲第29号証)にきちょうが存在するからといって、これによりきちょうの存在が必須であるとなるものでないことは、理の当然である。
(3) 取消事由3(本件考案における兼用の方式についての判断の誤り)について
原告は、本件考案はカッターの刃の全体を使用して一枚ホゾ用の成形面を、刃の一部を使用して二枚ホゾ用の成形面をそれぞれ形成するという使用方法を構成要件としている旨主張するが、本件考案の実用新案登録請求の範囲にはこのような構成要件は全く記載されていない。
なお、【D】カッターの使用においても、甲第39号証左下の木型を作成する場合においては抱き縁成形刃の一部しか使用しないものである。
(4) 取消事由4(【D】カッターが公知公用となった時期についての認定の誤り)について
【D】証人は、昭和50年代に自らがした【D】カッターの購入につき、その可能な限り正確な購入日時を特定すべく、わざわざ第1回証言(甲第68号証)の後、同業者の古林木工所に確かめた(甲第69号証4項)。その結果、昭和52、3年頃本件カッターを購入したというのは間違いで、昭和55年に購入したのが正しいことが確認できたものである(甲第69号証4項)。
【D】証人が本件カッターを購入するに至ったきっかけは、昭和53年の東京での建具展示会と住まいの表情展にて【D】カッターと同じものを見たことからであるというのは、極く自然なことである。
しかも、古林木工所が【D】カッターと同様の【E】カッター(甲第51号証)を被告から購入したのが昭和55年7月5日であることは、甲第44号証(【E】に対するご質問書)によってのみならず、甲第47号証(納品書)及び甲第48号証(請求書)の各日付によって明確に裏付けられるのである。
原告は、【E】カッターにつき、検査票(甲第51号証9の写真)と納品書(甲第47号証)及び請求書(甲第48号証)におけるカッターの厚さの違いを指摘する。この点については被告の側においても不明であるが、甲第51号証写真中には、古林木工所使用のカッター(検乙第7号証)を納める箱に同梱されていた検査証が4枚写っており、製造番号OG02132に係る検査証には、「サイズ」の項目中に「T5.7」の表示がなされているので、検乙第7号証として提出した古林木工所使用のカッターは、その厚みが5.7mmのものであったことに間違いないと考えられる。したがって、納品書(甲第47号証)及び請求書(甲第48号証)にそれぞれ「5.5」と記載されているのは、請求書を発行した有限会社丸一商会の記載ミスとしか考えられない。
(5) 取消事由5(審判手続の違法性)について
ア 回答書や弁駁書の副本を原告に送付するか否かは審判長の判断に委ねられるものであり、これをもって攻撃、防御の機会を不当に奪ったということにはならない。
イ(ア) 「甲第13号証及び資料3は、何れも【F】カッターに対する理解を便ならしめるために請求人が作成した図面に過ぎず、・・・理解に資するため提出した図面において「側面平刃に対し平行する部分」の有無を云々しても全く意味のないことである。」との被告の主張は、本件無効審判請求事件は、本件考案の出願前より【D】カッターや【F】カッターが公然実施されていたことを無効理由として提起されているものであるから、これら【D】カッターや【F】カッターそのものがいかなる構造になっているのかが問題とされるべきであって、理解に資するため提出した図面において「側面平刃に対し平行する部分」の有無を云々しても全く意味のないことであると主張しているにすぎず、この論述が従来の主張を変更したものに当たるものではない。
(イ) さらに、被告において切削見本の木工機械による加工時のずれとか削り残しという加工上生ずる現象の解説が「新たな主張だ」などということは、牽強付会の議論にすぎない。
(ウ) 【F】証人は、昭和52年10月に甲第10号証と同様の内容のカタログを見て【F】カッターを購入したと述べている(甲第70号証)。しかも当該【F】カッターに関する書証(甲第30ないし第35号証)の提出時期は、平成8年9月18日付け物件提出書により明白である。
(エ) さらに、古林木工所あての納品書(甲第47号証)、請求書(甲第48号証)についての被告の主張も、証拠の説明にすぎず、これをもって原告の防御の機会が奪われたなどということはありえない。
理由
1 取消事由4(【D】カッターが公知公用となった時期についての認定の誤り)について
(1) 弁論の全趣旨及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第24号証、第44号証、第48号証、成立に争いのない甲第47号証及び第68、第69号証(審判における証人【D】の調書)によれば、検乙第1号証及び甲第23号証のカッター(【D】カッター)は、被告の製造に係るものであるが、福島県伊達郡<以下略>で建具店(有限会社東城木工所)を営む【D】が昭和55年12月に福島市の有限会社丸一商会からこれを買い入れ、以後、建具加工に使用していたことが認められる。
(2) 原告は、証人【D】の証言は、そもそも【D】カッターの購入の時期、過程について訂正を繰り返したり、これを見て購入をしたとされる【E】カッター中の平ホゾカッターの厚みは5.7ミリであるのに、これに対応するとして提出された納品書(甲第47号証)等における厚みは5.5ミリとなっており、明らかに異なるカッターと考えられるものを同一のカッターであるかのごとく証言をしたりするなどその信用性を疑うべきである旨主張する。
しかしながら、前掲の各証拠によれば、平成6年8月当時、【D】は、被告からの質問書に対し、被告製品である【D】カッターを昭和55年12月に福島市の有限会社丸一商会から購入した旨書面により回答していたものであり(甲第24号証)、原告が指摘する審判(平成8年9月及び同年11月)における【D】証人の購入時期に関する証言の訂正も、同証人が昭和53年の東京における全国建具展示会と住まいの表情展で実演を見た後にすぐ購入したか(東京における展示会の時期については、甲第36号証30頁参照)、近隣の同業者である古林木工所が購入したものを見た後か記憶がはっきりしなかったため、古林木工所に確認の上、「昭和53年ころ」から「昭和55年12月」と証言を訂正したというものであり、他の関係証拠と対比してみても、証言内容に格別の作為ないし虚偽があることを疑わしめる事情は存在せず、訂正があったことをもって、【D】証人の証言を信用できないものとすることはできない。
カッターの厚さのちがいの点については、確かに、甲第51号証(9の写真の右から2番目のもの)によれば、【E】カッター中の平ホゾカッターの厚みは5.7ミリであるのに対し、納品書(甲第47号証)及び請求書(甲第48号証)には厚さ5.5ミリと記載されていることが認められ、一致していないことが認められる。しかしながら、弁論の全趣旨により【E】カッターであると認められる検乙第7号証及び弁論の全趣旨により【E】カッターを撮影した写真であると認められる甲第51号証によれば、【E】カッターには「0G02130」、「0G02131」との刻印が付されていることが認められるが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第25号証及び弁論の全趣旨によれば、先頭の「0」は西暦で表し、2番目のアルファベット文字は製造月を表し、3番目及び4番目の数字は製造日を表していることが認められ、そうすると、【E】カッターは刻印の点から昭和55年(1980年)7月2日に製造されたものと認められるから、同時期に作成された納品書(甲第47号証)及び請求書(甲第48号証)は、平ホゾカッターを含む【E】カッターの納品書等であり、ただ、平ホゾカッターの厚さについての記載に誤りがあるものと認めるべきである。
したがって、【D】証言の信用性を問題とする原告の上記主張は理由がない。
(3) よって、「(【D】)証人が【D】カッターを昭和55年12月に購入したとの証言は信用できる。してみれば、【D】カッターは、本件考案の出願の日(昭和56年6月26日)前に公然と知られまたは実施されたものである。」との審決の認定に誤りはなく、原告主張の取消事由4は理由がない。
2 取消事由1(【D】カッターの平行部分の有無についての認定の誤り)について
(1) 検乙第1号証によれば、【D】カッターの抱き縁成形刃には側面平刃に対し平行する部分がないことが認められる。
さらに、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第57号証によれば、【D】カッターの設計図面である甲第57号証においても、刃の厚みが6.3mm、刃先の半径方向の長さが12mm、刃先先端部及び刃先基部が側面平刃と平行をなしつつ、その間において刃先の断面形状がなめらかな波形状となるように半径6mmと半径8mmの円弧を当接させた曲面を形成すべきことが示されていることが認められ、【D】カッターの抱き縁成形刃に側面平刃に対し平行する部分がないことは、その設計図面である甲第57号証からも裏づけられる。
これに反する原告の主張は採用することができない。
(2) 原告は、【D】カッター(検乙第1号証、甲第23号証)には明瞭に修理した痕跡がみられ、刃先形状の変更の可能性を否定することができない旨主張する。しかしながら、刃先形状を変更するためには6つある刃のすべてにつき刃先形状を変更する必要があるところ、原告の指摘する修理の痕跡は6つある刃のうち1つにのみ認められるものであり、他の5つの刃には何ら修理の痕跡は認められないものであるから、刃先形状が変更された可能性をいう原告の上記主張は到底採用することができない。
さらに、上記製作図面(甲第57号証)は書き換えたり修正を施したりすることの容易な書面であり、信用性に欠ける旨主張するが、上記製作図面(甲第57号証)に書き換え等があったことを疑わせるような形跡はなく、これを認めるに足りる証拠もないから、原告の上記主張は採用することができない。
(3) よって、【D】カッターには抱き縁成形刃に側面平刃に対して平行する部分がない旨の審決の認定に誤りはなく、原告主張の取消事由1は理由がない。
3 取消事由2(本件考案におけるきちょうの要否についての判断の誤り)について
(1) 原告は、本件考案はきちょう成形段部を設けることを構成要件としているから、きちょう成形段部を設けていない【D】カッターと同一ではない旨主張する(甲第5号証の1及び弁論の全趣旨によれば、「きちょう」とは、面ホゾカッターにより切削された木口の縦桟と横桟の接合部分(嵌合部分)に強度を高めるためにある程度の厚みを持たせた形状にすることがあり、このような桟材の抱き縁の先端部に所要の厚みが残るように切削加工して嵌合を強固にする木組みをいうものと解される。)。
しかしながら、本件考案の実用新案登録請求の範囲には、「予め組立てんとする桟材の表面に形成せんとする凹凸条に合致する形状の二枚ホゾ用の凹凸面と一枚ホゾ用の凹凸面との成形が出来る波形状の抱き縁成形刃」と規定されているのみであり、波形状の抱き縁成形刃にきちょう成形段部を設けることは何ら規定されていないから、本件考案はきちょう成形段部を設けることを必須の構成要件としていると解することはできない。
(2) 原告は、面ホゾカッターの抱き縁成形刃には一枚ホゾ用でも、二枚ホゾ用でも常にきちょう成形段部が存在しなければならないことが本件考案の出願当時の技術常識になっていた旨主張する。しかし、甲第69号証及び第70号証(審判における証人【D】及び証人【F】の各証人調書)によれば、面ホゾ加工の技術において、きちょうを作ることが常に必要であるとはされていないことが認められ、原告が指摘する被告のカタログ(甲第31号証、第67号証)にはきちょう成形段部を含む成形面を有する面ホゾカッターのみが掲載されており、被告自身そのカタログにおいて、「キチョウを作ることが絶体条件です、」と記載してきちょうを設けることの重要性を啓蒙していたこと等のみでは、面ホゾカッターの抱き縁成形刃にきちょう成形段部が必ず存在しなければならないことが本件考案の出願当時の技術常識になっていたものと認めることはできず、他に原告主張の技術常識を認めるに足りる証拠はないから、原告の上記主張は理由がない。
また、原告の考案の詳細な説明及び図面を参酌しての解釈及び公知技術除外論に基づく主張も理由がない。
(3) よって、「本件考案は、きちょう成形部を設けることを構成要件としていないから、本件考案はきちょう成形部を有するとはいえない。」との審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由2は理由がない。
4 取消事由3(本件考案における兼用の方式についての判断の誤り)について
(1) 原告は、【D】カッターは、二枚ホゾ用として使用する場合にも抱き縁成形刃の全体を使用する方法であるが、本件考案は、カッターの刃の全体を使用して(深く使用して)一枚ホゾ用の成形面を、刃の一部を使用して(浅く使用して)二枚ホゾ用の成形面をそれぞれ形成するという使用方法を構成要件としているものであり、【D】カッターとはその構成を異にする旨主張する。
しかしながら、本件考案の実用新案登録請求の範囲には、「二枚ホゾ用の凹凸面と一枚ホゾ用の凹凸面との成形が出来る波形状の抱き縁成形刃を設け」と規定されているのみであり、本件明細書の考案の詳細な説明における「本考案に係る面ホゾカッターの刃体の先端外側縁に設けた抱き縁成形刃は予め桟材の表面に形成せんとする二枚ホゾ用の凹凸条を含んだ一枚ホゾ用の凹凸条に合致する波形状に形成したものであるからカッターの使い分け、即ち桟材の木口の切削位置を変えることにより抱き縁の内壁面に第5図に示す様な一枚ホゾ用の深い波形状の凹凸面を形成することも又第9図に示す様な二枚ホゾ用の浅い波形状の凹凸面を形成することも出来るので、従来一枚ホゾ用と二枚ホゾ用の二枚のカッターを必要としたところを一枚のカッターで兼用出来る特徴を有するものである。」(甲第2号証4欄16行ないし27行)との記載も、実施態様についての記載と認めるべきものであるから、本件考案においてカッターの刃の全体を使用して(深く使用して)一枚ホゾ用の成形面を、刃の一部を使用して(浅く使用して)二枚ホゾ用の成形面をそれぞれ形成するという使用方法を構成要件としていると解することはできない。そうすると、これを前提とする原告の上記主張は理由がない。
(2) また、甲第68、第69号証(証人【D】の証人調書)によれば、【D】カッターにおいても、桟材の厚さとホゾの厚さの関係に応じて刃の一部を使用したり(浅く使用したり)、全部を使用したり(深く使用したり)していることが認められ(甲第39号証参照)、常に抱き縁成形刃の全体を使用しているものではないことが認められるから、原告の上記主張は、この点からも理由がない。
(3) よって、「【D】カッターの抱き縁成形刃も、二枚ホゾ用の凹凸面と一枚ホゾ用の凹凸面との成形ができる波形状の抱き縁成形刃と認められる。」、「本件考案に係るカッターと【D】カッターとを比較すると両者は同一であると認める。」との審決の認定に誤りがなく、原告主張の取消事由3は理由がない。
5 取消事由5(審判手続の違法性)について
(1) 被告が本件無効審判請求事件を担当した特許庁審判部からの公式の質問に対し、平成10年2月3日特許庁審判長あてに回答書(甲第20号証)を提出し、さらに、同日付けの弁駁書(甲第21号証)を提出したことは、当事者間に争いがない。
(2) 特許権等を失うかもしれない立場に立つ特許等無効審判の被請求人としては、特許等の無効事由を知らされ、それに対して自己の言い分を主張する機会が与えられなければならないところ、無効審判請求人の主張は当初から審判請求書にすべて記載されているとは限らず、後に提出された弁駁書や審判長からの審尋書で重要な間接事実等が主張されることがあるものであるから、そのような重要な間接事実等が記載された書面は原則として無効審判の被請求人に送達され、それに対する反論の機会が与えられなければならない。特許法134条1項も、形式的に審判請求書と題された書類のみを送達すれば足りると規定しているものではなく、上記のように無効審判の被請求人の反論をさせる必要がある事項の送達を規定しているものと解すべきである。そして、重要な間接事実等が記載された回答書や弁駁書が無効審判手続の終了前に送達されなかったことは、それが審決の結論に影響する限り、審決の取消事由になると解すべきである。
(3) 以上の観点から本件について検討する。
ア 原告は、回答書(甲第20号証)における資料3(本訴甲第58号証)は、【F】カッターに対する理解を便ならしめるために被告が作成した図面であるとの説明が、「今回新たに提出する資料3に係る図面は、【F】刃物を極力正確な形で示したものである」(平成9年6月9日付け口頭弁論陳述要領書(甲第18号証9頁13行、14行))との従来の主張を明確に変更したものである旨主張する。
しかしながら、原告が指摘する上記「今回新たに提出する資料3に係る図面は、【F】刃物を極力正確な形で示したものである」との上記口頭弁論陳述要領書の記載は、資料3が【F】カッターに対する理解の便宜のために被告が作成した図面であることを意味していることは明らかであり、回答書における上記主張が従来の主張の変更に当たるものではない。
イ 原告は、回答書(甲第20号証)における、【F】カッター及び【D】カッターによって製作された切削見本にある側面平刃と平行する切削刃部により形成されたとの疑問のある段部は桟材の一部が切削時に該刃部に押されて外側に逃げるためその刃部に削り残しとして形成されたか、木工機械の調整不良により切削位置がわずかにずれ一部が削り残しとして形成された旨(3頁目の下から5行ないし4頁目の下から4行)の被告の主張は、初めてされたものである旨主張する。確かに、甲第75号証によれば、本件を担当した審判部から被告に対し発出された審尋書には、【D】カッターにより製作された検甲2の1、検甲2の2号証にも同様な段部が存在する旨指摘されていたことが認められるが、上記の回答書における被告の主張は、その内容をみると、新たな事実主張というより、疑問のある段部が形成された原因について、加工上生じ得る一般的な事柄から推測を述べたものにすぎず、現に、審決においては、上記審尋書とは異なり、検甲第2号証の1及び同2(本訴検乙第2号証の1、2)につき段部に起因する接合線の折り線の存在を認めていないものである(審決書8頁14行ないし9頁2行)。したがって、上記被告の主張に対し反論の機会を与えなかったことに手続上の違法を生じ得る可能性があるとしても、この点は審決の結論に影響しないことが明らかであって、違法とすべきものとはいえない。
ウ 原告は、弁駁書(甲第21号証)において、製品カタログ(甲第31号証。審判甲第10号証)が遅くとも昭和52年頃には発行されていたという事実を根拠づけるために、その表紙に掲載されたカッターの「5C」は1975年3月に製造されていることを表している旨(5頁9行ないし下から5行)の主張は、新たな主張である旨主張する。しかしながら、被告の製造するカッターに付された製造番号の意味については既に主張されていたところであり(甲第3号証7頁8行ないし19行)、これをもって新たな主張と認めることはできない。
エ 原告は、弁駁書(甲第21号証)において、有限会社丸一商会作成に係る古林木工所あての納品書(甲第47号証)、請求書(甲第48号証)に記載されている平ホゾカッターの厚みの数字5.5は同商会の記載ミスである旨(6頁9行ないし下から8行)の主張は新たな主張である旨主張する。しかしながら、被告の上記主張については、【E】カッターは昭和55年7月に納入され、その裏付けが納品書(甲第47号証)、請求書(甲第48号証)であるとの既にされていた被告の主張(甲第18号証6頁8行ないし24行)から当然予想される範囲のものにすぎず、この点につき原告に反論の機会を与えなかったことをもって、審決の結論に影響すると認めることはできない。
オ 以上のとおり、原告が反論の機会を与えるべきであると主張する事項は、新たな主張とはいえないものか、仮に新たな主張であるとしても、結論に影響しない事項であるから、審判手続の違法性をいう原告主張の取消事由5も理由がない。
6 結論
よって、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結の日 平成11年10月12日)
(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 市川正巳)
<省略>