東京高等裁判所 平成10年(行ケ)233号 判決 1999年10月19日
原告
吉野銘木製造販売株式会社
代表者代表取締役
A
原告
B
原告両名訴訟代理人弁理士
C
同
D
同
E
同
F
同弁護士
白波瀬文夫
被告
特許庁長官G
指定代理人
H
同
I
同
J
同
K
主文
特許庁が平成8年異議第70892号事件について平成10年6月25
日にした決定の1の項を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 原告らが求めた裁判
主文同旨の判決
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告らは、発明の名称を「パネル及び軸組プレカットパネル嵌め込み構法」とす
る特許第2552051号の特許発明(平成4年1月20日に特許出願、平成8年
8月22日に特許権設定登録、以下「本件発明」といい、その特許請求の範囲請求
項1の発明を「本件第1発明」という。)の特許権者である。
本件発明の特許については、特許異議の申立てがあり、特許庁は、これを平成8
年異議第70892号事件として審理した結果、平成10年6月25日に1の項と
して「特許第2552051号の請求項1に係る特許を取り消す。」、2の項とし
て「同請求項2に係る特許を維持する。」旨の決定(以下「本件決定」という。)
をし、同年7月6日にその謄本を原告らに送達した。
2 本件決定の理由の要点
本件第1発明は、特開平2-289731号公報記載の発明及び周知の手段に基
づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項
の規定に違反してされたものである。
3 訂正審決による特許請求の範囲の訂正
(1)特許請求の範囲請求項1の記載は、本件決定の当時、次のとおりであった。
建築物の軸状部材間で形成される空間に嵌め込んで固定するための木製パネルで
あって、前記パネルは側面が前記軸状部材に接触しかつ内部から固定手段により固
定するための枠部材を備え、前記枠部材間は格子状に結合されているとともに、前
記枠部材の一面に、平面上の板部材が固定され、前記板部材の周辺部が、前記軸状
部材に固定するために前記枠の縁部より突設していることを特徴とするパネル。
(2)原告らは、本件決定後に本件明細書の訂正をすることについて審判を請求し、
特許庁は、これを平成11年審判第39037号事件として審理した結果、平成1
1年7月15日に上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)を
し、本件訂正審決は確定した。
(3)本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲請求項1の記載は、次のとおりで
ある(下線部が訂正により追加ないし変更された箇所である。)。
建築物の軸状部材間で形成される空間に嵌め込んで固定するための木製パネルで
あって、前記パネルは側面が前記軸状部材に接触しかつ内部から固定手段により固
定するための枠部材を備え、前記枠部材間は格子状結合部材により格子状に結合さ
れているとともに、前記枠部材及び前記格子状結合部材の一面に、平面上の板部材
が固定され、前記板部材の周辺部が、前記軸状部材に固定するために前記枠の縁部
より突設していることを特徴とするパネル。
第3 当裁判所の判断
1 本件訂正審決による訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであること
は明らかである。
特許法29条の規定に違反してなされた特許であることを理由に特許を取り消し
た決定の取消しを求める訴訟の係属中に、当該特許に係る特許請求の範囲の減縮を
目的とする訂正審決が確定したときは、決定は、判断の対象となるべき発明の要旨
の認定を誤ったものとして違法となると解すべきであるから、本件決定の1の項
は、取消しを免れない。
2 よって、本訴請求を認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟
法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山下和明 裁判官 春日民雄 裁判官 山田知司)