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東京高等裁判所 平成10年(行ケ)85号 判決 1999年3月24日

埼玉県川口市並木2丁目30番1号

原告

株式会社エンプラス

代表者代表取締役

横田誠

訴訟代理人弁理士

竹本松司

杉山秀雄

湯田浩一

魚住高博

塩野入章夫

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 伊佐山建志

指定代理人

田中秀夫

松野高尚

井上雅夫

小林和男

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

特許庁が、平成9年異議第70680号事件について、平成10年1月22日にした実用新案登録異議の申立てについての決定(以下「本件決定」という。)を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は、平成1年11月13日、名称を「面光源装置」とする考案(以下「本件考案」という。)につき、実用新案登録出願(実願平1-131010号)をし、平成8年5月30日に実用新案登録(実用新案登録第2507092号)を受けた。

訴外山崎修一、池田英治及び広田章子は、平成9年2月14日、本件考案について、実用新案登録異議の申立てをした。

特許庁は、同申立てを、平成9年異議第70680号事件として審理したうえ、平成10年1月22日、「実用新案登録第2507092号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。」との本件決定をし、その謄本は、同年2月23日、原告に送達された。なお、原告は、平成9年7月14日、本件考案について、実用新案登録請求の範囲及び明細書の記載を訂正する(以下「本件訂正」という。)旨の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)を行った。

2  本件考案の要旨

(1)  実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された本件考案(以下「本件考案1」という。)の要旨

光源と、入射端面を前記光源に近接配置した導光体と、前記導光体の表面に設けられた拡散面と、前記導光体の裏面に設けられた反射面とを備えた面光源装置において、前記拡散面上に、一方の面が鋸歯状をした透明板を、前記鋸歯状をした面が前記拡散面とは反対方向を向くように配置したことを特徴とする面光源装置。

(2)  実用新案登録請求の範囲の請求項2に記載された本件考案(以下「本件考案2」という。)の要旨

前記拡散面は、前記透明板の鋸歯状をした面とは反対側の面に拡散作用を持たせることにより構成したことを特徴とする請求項(1)の面光源装置。

3  本件訂正後の本件考案の要旨

(1)  本件訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された本件考案(以下「訂正後考案1」という。)の要旨

光源と、入射端面を前記光源に近接配置して側方から前記光源の光を入射させるようにした導光体と、前記導光体の表面に設けられた拡散面と、前記導光体の裏面に設けられた反射面とを備えた面光源装置において、前記拡散面上に、一方の面を鋸歯状とした透明板を、前記鋸歯状とした面が前記拡散面とは反対方向を向くように配置し、前記一方の面を鋸歯状とした透明板の屈折作用によって前記拡散面に対して傾いた方向に進行する光を前記拡散面に対して垂直な方向へ向けるようにした、前記面光源装置。

(2)  本件訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項2に記載された本件考案(以下「訂正後考案2」という。)の要旨

前記拡散面が、前記透明板の鋸歯状とした面とは反対側の面に拡散作用を持たせることにより構成されている、請求項(1)の面光源装置。

4  本件決定の理由

本件決定は、別紙決定書写し記載のとおり、訂正後考案1が、照明学会研究会資料「液晶ディスプレイ用バックライト」46~54頁(社団法人照明学会1988年11月26日発行、以下「引用例1」という。)及び特開昭63-68814号公報(以下「引用例2」という。)に記載された考案(以下、それぞれ「引用例考案1」及び「引用例考案2」という。)に基づいて、当業者が容易に考案をすることができたものであり、訂正後考案2が、引用例考案1及び2並びに特開昭56-37124号公報(以下「引用例3」という。)に記載された考案(以下「引用例考案3」という。)に基づいて、当業者が容易に考案をすることができたものであって、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録出願の際に独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、平成6年法律第116号附則9条の規定により準用する特許法120条の4第3項の規定により更に準用する同法126条4項の規定に適合しないので、認められず、したがって、本件考案1が、引用例考案1であることが明らかであって、実用新案法3条1項3号に該当する考案であり、また、本件考案2が、引用例考案1ないし3に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定に違反してなされたものであり、本件考案1及び2に係る実用新案登録はいずれも、平成6年法律第116号附則9条2項により準用する特許法113条2号に該当するので、これらを取り消すべきものとした。

第3  原告主張の取消事由の要点

本件決定の理由中、本件考案1及び2の要旨の認定、訂正後考案1及び2の要旨の認定、引用例1~3の各記載事項の認定、訂正後考案1と引用例考案1との一致点(後記相違点の看過を除く。)及び相違点の認定並びに相違点についての判断の一部(決定書7頁1~10行、8頁5~9行)、訂正後考案2の認定の一部(同8頁14~20行)は、いずれも認める。

本件決定は、訂正後考案1と引用例考案1との相違点を看過して訂正後考案に関する進歩性の判断を誤る(取消事由1)とともに、訂正後考案2の有する顕著な作用効果を看過した(取消事由2)結果、本件訂正請求を認めず、本件考案の要旨の認定を誤ったものであるから、違法として取り消されなければならない。

1  訂正後考案1と引用例考案1との相違点の看過(取消事由1)

訂正後考案1は、主たる進行方向が斜めを向いている拡散光を、鋸歯付の透明板で正面方向に屈折させることにより、「拡散面3に垂直な方向よりも斜め方向への光の輝度が高く、垂直方向より見る画像よりも斜め方向から見る画像の方が明るい」(甲第2号証2頁3欄1~4行)という本件明細書に記載された従来技術の問題点を解決したものである。このことは、訂正後考案1が具体化されている図1(同3頁)の構成が、従来構成を示した図2(同頁)の構成に、透明板7をその鋸歯が拡散面5と反対側を向くように配置したものとなっていることに端的に表現されており、その他の本件訂正請求に係る訂正明細書(以下「訂正明細書」という。)の記載(例えば、甲第4号証訂正明細書3頁24行~4頁3行)からも明らかである。

訂正後考案1の要旨である「前記一方の面を鋸歯状とした透明板の屈折作用によって前記拡散面に対して傾いた方向に進行する光を前記拡散面に対して垂直な方向へ向けるようにした」という表現は、上記特徴を受けてのものであり、ここにいう「拡散面に対して傾いた方向に進行する光」は、拡散面を通過した後の拡散光であるが、「完全拡散光中に含まれる斜め進行光」ではなく、「斜め方向の指向性を有する拡散光」であって、訂正後考案1の「透明板のプリズム作用」は、当然、そのような指向性を修正して正面方向の指向性を持つ拡散光に転換するものである。仮に、プリズムへの入力光が完全拡散光であれば、指向性を持たないので、「垂直方向より見る画像よりも斜め方向から見る画像の方が明るくなる」ことはなく、単に、「垂直方向、斜め方向いずれの方向から見ても明るさに差がない」という結果をもたらすだけである。

これに対し、引用例考案1では、引用例1に「従来のバックライトの出力光配光は完全拡散性であったが、それを、プリズム等で制御し指向性を持たせる事によって、有効な方向の光を増やそうというものである。例えば、図8に示すようにプリズムによって、液晶のコントラストの高い方向(角度特性で、透過率の高い方向)へ光を制御する事等が考案されている。」(甲第6号証53頁13~16行)と記載されるとおり、プリズムに入力される光が完全拡散光であることは明らかであり、プリズムに指向性のある拡散光を入力することについては、示唆的な開示もなされていない。いうまでもなく、「完全拡散光」とは、指向性のない、すなわち、特定の方向に相対的に強く伝播するような進行方向分布を実質的に持たない拡散光のことであり、進行方向分布が均一であるという条件を満たす特殊な拡散光である。そして、引用例考案1に開示されている「プリズム」の役割は、指向性のない光に指向性を与えることで有効な方向の光を増加させることにある。

要するに、引用例考案1における「プリズム」への入力光が、完全拡散光とされているのに対し、訂正後考案1ではそのような限定がなく、「透明板」への入力光が、指向性を持つ拡散光である点で相違し、また、引用例考案1における「プリズム」が、指向性のない完全拡散光を出射する面光源装置に適用されているのに対し、訂正後考案1における「鋸歯付の透明板」は、斜め方向への指向性を有する拡散光を出射する面光源装置に適用されているという点で相違する(以下、これらの相違を「原告主張相違点」という。)。

本件決定は、このように重要な原告主張相違点を看過して進歩性の判断を行っているから誤りである。

また、この相違点を作用面から見れば、引用例考案1の「プリズム」は、指向性のない完全拡散光に指向性を与え、その結果として特定の方向への進行光を増大させる機能を果たしているのに対し、訂正後考案1における鋸歯付の透明板は、入力時点から既に指向性のある拡散光の主たる進行方向(明るく観察される方向)を正面方向に矯正し、その結果として特定方向(正面方向)への進行光を増大させる手段として機能する。

したがって、本件決定が、このような作用効果の違いを無視して、「このようにしたことにより奏する作用効果は、当業者が予期し得るものに過ぎない。」(決定書7頁16~17行)と判断したことも、明らかに誤りである。

2  訂正後考案2の顕著な作用効果の看過(取消事由2)

上記のとおり、訂正後考案1の進歩性を否定した判断が誤りである以上、訂正後考案1の構成に更に限定を加えた訂正後考案2について、その進歩性を否定することが誤りであることは明らかである。

しかも、訂正後考案2では、面光源装置の光配向制御板としての鋸歯付の透明板の入射面側に、光拡散機能を持たせており、この特徴により、引用例考案1で使用されているような光拡散板が不要になるから、部品点数の減少とともに、光利用効率の向上という作用効果をもたらす。なぜなら、引用例考案1のように光制御配向板と導光体の問に光拡散板を配置すると、必然的に空気層が介在することになり、その結果、光拡散板の表裏に空気層との間の界面が存在することになるが、これら界面を境にして屈折率が異なるために、光制御配向板へ向かおうとする光に反射が生じて光損失が増大し、特に、斜め進行光に対してこの弊害が大きいのである。これに対し、訂正後考案2では、このような拡散板介在配置に伴う光損失の増大のおそれがない。

本件決定が、上記のような訂正後考案2の有する顕著な作用効果を無視し、引用例考案3が、「透明板の一方の表面に拡散層を形成しこれと反対側の表面をフレネルレンズ面とすること」(決定書8頁18~19行)を開示しているだけであり、面光源装置への配置については開示していないにもかかわらず、訂正後考案2の鋸歯形成面と反対の面に拡散機能を持たせた透明板と、引用例考案3のフレネルレンズ付き透明板とを、単独での形態のみで比較してその進歩性を否定したことは不当である。

したがって、本件決定が、「本件第1考案における透明板の鋸歯状をした面とは反対側の面に拡散作用を持たせるようにすることは、当業者が必要に応じて極めて容易になし得ることに過ぎない。」(決定書8頁20行~9頁3行)と判断したことは誤りである。

第4  被告の反論の要点

本件決定の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由は、いずれも理由がない。

1  取消事由1について

原告主張相違点でいう「拡散光」に関して、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1には、「拡散面に対して傾いた方向に進行する光」と記載されているだけであり、「斜め方向への指向性を有する拡散光」である点については記載されておらず、かつ、「拡散面に対して傾いた方向に進行する光」が「斜め方向への指向性を有する拡散光」のみを指すものとも解釈できない。したがって、原告主張相違点は、訂正後考案1の実用新案登録請求の範囲に基づいていないものであり不当である。

仮に、訂正後考案1において、「拡散面に対して傾いた方向に進行する光」が、「斜め方向への指向性を有する拡散光」に特定されるとしても、本件明細書の記載(甲第2号証1頁2欄12行~2頁3欄4行)に基づけば、引用例考案1においても、拡散面を通る最も強い光は拡散面に対して傾斜した光で、そのために拡散面に垂直な方向よりも斜め方向への光の輝度が高くなることになるから、そのような拡散光は、既に引用例考案1においても実在しているものであり、同考案における「鋸歯状とした透明板の屈折作用によって特定の方向に向ける」対象の光に含まれていることになるため、上記相違点は実質的なものではない。

したがって、訂正後考案1の進歩性を否定した本件決定の判断に誤りはない。

2  取消事由2について

訂正後考案2のうち訂正後考案1の構成に限定を加えた点について検討するに、本件決定が引用例3から引用している技術は、光学素子という光学技術分野において、透明板の一方の表面に拡散層を形成しこれと反対側の表面をフレネルレンズ面とする点、すなわち、拡散層を透明板のフレネルレンズ面(光配向制御機能を有する面)とは反対側の面に一体に構成した点であり、このような一体構成のものが、その構成自体の有する効果として、部品点数の減少をもたらすことになるのは自明のことである。

そして、引用例1に記載の面光源装置において、部品点数の減少を目的として、同じ光学技術分野の引用例3に記載の技術を適用して、光配向制御機能を有する透明板に拡散面を一体に構成し、「拡散面が、透明板の鋸歯状とした面とは反対の面に拡散作用を持たせることにより構成」することは、当業者が必要に応じて任意になし得る程度の事項である。

しかも、原告が主張する光利用効率の向上に関する効果は、光拡散板と透明板との間の空気層が介在しないことによる当然の効果であるから、各引用例に記載の技術を組み合わせる際に、当業者が予測し得る範囲の効果にすぎない。

したがって、この点に関する本件決定の判断(決定書8頁20行~9頁3行)に、誤りはない。

第5  当裁判所の判断

1  取消事由1(訂正後考案1と引用例考案1との相違点の看過)について

本件決定の理由中、訂正後考案1の要旨の認定、引用例1及び2の各記載事項の認定、訂正後考案1と引用例考案1との一致点(原告主張相違点の看過を除く。)及び相違点の認定並びに相違点についての判断の一部(決定書7頁1~10行、8頁5~9行)は、いずれも当事者間に争いがない。

訂正後考案1について、本件明細書(甲第2号証)には、「[従来の技術]従来知られている導光体を用いた面光源装置は、第2図に示す通りの構成である。即ち、光源1と、入射端面を光源に近接させ配置した導光体2と、導光体2の表面に設けた拡散面3と、導光体2の裏面に設けた反射面4とより構成されている。そして光源1よりの光が入射端面より導光体2に入射しその内部を表面、裏面で反射しながら入射端面と反対側へ伝えられて行く間にその一部途拡散面3を通り拡散光として出て行くことによって拡散面から均一な拡散光を発する面光源となる。[考案が解決しようとする課題]このような構成の従来の導光体を用いた面光源装置は、第2図に示すように、光源1よりの光は任意の入射角で入射端面より入射し、導光体の表面、裏面にて反射されながら進むため、拡散面3を通る光も最も強い光は拡散面3に対して傾斜した光で、そのために拡散面3に垂直な方向よりも斜め方向への光の輝度が高く、垂直方向より見る画像よりも斜め方向より見る画像の方が明るいと云う欠点があった。実験の結果、第2図に示すような構成の面光源装置で、導光体の材質が屈折率が1.50である透明なアクリル樹脂である場合、最も高い輝度を示す方向は、第2図におけるγの値が約75°(74.6°)の方向であった。本考案の目的は、拡散面に垂直方向の輝度が明るく、垂直方向からの明るい画像の観察が可能な導光体を用いた面光源装置を提供するものである。」(同号証1頁2欄1行~2頁3欄11行)と記載され、訂正明細書には、「[課題を解決するための手段] 本考案の面光源装置は、光源と、入射端面を光源に近接させて側方から光を入射させるように配置した導光体と、導光体の表面に設けられた拡散面と、導光体の裏面に設けられた反射面とよりなり、更に拡散面に、一方の面が鋸歯状をした透明板を、鋸歯状とした面が拡散面とは反対方向を向くように配置したもので、この透明板の屈折作用によって出射光の進行方向を拡散板に対し垂直に近い方向とし、その方向の輝度を向上させるようにしたものである。また、上記の透明板の鋸歯状とした面とは反対側の面に拡散作用を持たせるように加工を施し、この面を拡散面として、透明板を導光体の表面に、鋸歯状の面が導光体とは反対方向を向くように配置した構成としてもよい。これによって導光体表面からの光が透明体を通る際、拡散面にて拡散光となり更に鋸歯状部分にて屈折されて拡散光が垂直方向へ向かうようにした。このように拡散面と鋸歯状部分とを組み合わせることにより拡散面に垂直な方向での輝度を大にすることが出来る。更に本考案の面光源装置は、導光体を構成する透明体の材質を屈折率の低い材質としたもので、これによって導光体表面より射出する光の傾き角を小さくし、更に拡散面と鋸歯状部とによって前記の傾き角による影響を除去して垂直方向への光が明るく均一な輝度分布になるようにしている。」(甲第4号証訂正明細書2頁9~26行)、「従来の面光源装置の導光体は、アクリル樹脂を用いられ、その最も輝度の高い方向は、実験の結果74.6°であった。このことから導光体内を順次反射しながら進む光のうち、第2図に示す角αが約40°の光が最も光量が大であると考えられる。又導光体の屈折率によって角αの光が導光体を出る時の角γは異なり、αは一定であれば屈折率が小さい程γは小である。本考案は、この点を利用して導光体の屈折率を小にしてγの値を出来る限り小にし、拡散面に垂直な方向の輝度が一層大になるようにした。」(同3頁17~23行)と記載されている。

これらの記載及び訂正後考案1の実用新案登録請求の範囲に記載された考案の要旨によれば、訂正後考案1は、従来の導光体を用いた面光源装置において、光源からの光が、任意の入射角で入射端面より入射し、導光体の表面、裏面で反射されながら進むため、最も強い光は拡散面に対して傾斜した光で、そのために拡散面に垂直な方向よりも斜め方向への光の輝度が高く、垂直方向より見る画像よりも斜め方向より見る画像の方が明るいという欠点を技術課題として、拡散面に、一方の面が鋸歯状をした透明板を、鋸歯状とした面が拡散面とは反対方向を向くように配置した構成を採用し、この結果、導光体表面からの光が、拡散面で拡散光となり、更に鋸歯状部分で屈折され、その結果、出射光の進行方向が拡散板に対し垂直に近い方向となり、その方向の輝度を向上させたものと認められる。そして、アクリル樹脂を用いた導光体の場合に、その中を進行する光の内、拡散面に対して特定の角度をもって傾斜した光が最も強いことを推測し、導光体自体に低屈折率のものを用いることによっても、導光体中を進行した当該光が導光体から出射するときの角度を垂直に近い方向に改善できることが示唆されている。これに対し、このような傾斜した光が導光体から拡散面を通過して進行する際の、拡散面における拡散の態様や拡散光の性質その指向性の有無等は、全く記載されていないものと認められる。

原告は、「拡散面に対して傾いた方向に進行する光」が、導光体から拡散面を通過して進行した後の光であることを前提として、これが、「完全拡散光中に含まれる斜め進行光」ではなく、「斜め方向の指向性を有する拡散光」であって、訂正後考案1の「透明板のプリズム作用」は、当然、そのような指向性を修正して正面方向の指向性を持つ拡散光に転換するものであると主張する。

しかし、前示のとおり、訂正後考案1の要旨における「拡散面に対して傾いた方向に進行する光」とは、光源から入射されて導光体の表面、裏面で反射されながら進み、拡散面に対して傾斜した方向で入射する光を意味するものと認められ、本件明細書や訂正明細書においては、拡散面における拡散の態様や拡散光の性質等は全く記載されていないのであるから、「拡散面に対して傾いた方向に進行する光」が拡散面を通過した後の拡散光であることを前提とする原告の主張は、その前提において誤りがあり、到底採用できない。

また、原告は、原告主張相違点として、引用例考案1における「プリズム」への入力光が、完全拡散光とされているのに対し、訂正後考案1ではそのような限定がなく、「透明板」への入力光が、指向性を持つ拡散光である点で相違し、また、引用例考案1における「プリズム」が、指向性のない完全拡散光を出射する面光源装置に適用されているのに対し、訂正後考案1における「鋸歯付の透明板」は、斜め方向への指向性を有する拡散光を出射する面光源装置に適用されている点で相違すると主張する。

しかし、訂正後考案1においては、前示のとおり、拡散面における拡散の態様や拡散光の性質等が、その実用新案登録請求の範囲やその他の明細書の記載には開示されていないものと認められるから、拡散光の相違を前提とする原告主張相違点は、訂正後考案1の要旨に基づくものではなく失当というほかない。

ただし、訂正後考案1においては、前示のとおり、その具体的構成に基づいて、導光体の中を進行する光の内、拡散面に対して傾斜した光が強いものであることが開示されており、そうとすると、当業者は、前記明細書等に記載がなくとも、拡散面における拡散後も、斜め方向への指向性を有する拡散光が強いものと推測することが技術上可能であると解される。

これに対し、引用例1(甲第6号証)には、「図1~3に明らかなように、基本構成は同一であり、そのなかで、反射板1は導光板光導入端への入射効率アップのためのものである。次に、反射板2は、導光板から下面および先端への光を反射する作用をする。最後に拡散板は、反射板2との間に拡散相互反射をおこし、かつ透過時のヘーズによって最終的な光出力を均一化する働きを持つ。」(同号証50頁4~7行)と記載されており、この記載並びに引用例1の図3(同47頁)、図5(同50頁)、図7(同52頁)及び図8(同53頁)等に基づけば、引用例考案1においても、訂正後考案1の具体的構成と全く同様に、拡散面と反射面とに挟まれた導光板に対して、導光板の側方から光供給を行う面光源装置が開示されており、光源から導光板に入射された光は、反射板と拡散板との間で相互に斜めに反射を繰り返しながら進行し、透過率に応じて一部の光が拡散面に達し拡散されるものと認められる。そうすると、拡散光の性質等を開示していない訂正後考案1の場合と同様に、当業者は、引用例発明1においても、拡散面に対して傾斜した光が強いことから、拡散面における拡散後も、斜め方向の指向性を有する拡散光が生じると推測できるものといえる。

したがって、訂正後考案1と引用例考案1とでは、拡散光の性質及び指向性の有無についても相違するところはなく、原告主張相違点を認めることはできない。

この点について、原告は、引用例1の記載(甲第6号証53頁13~16行)からみて、引用例考案1では、プリズムに入力される光が完全拡散光であることは明らかであり、プリズムに指向性のある拡散光を入力することについては、示唆的な開示もなされていないと主張する。

確かに、引用例1の図8及び上記記載によれば、引用例考案1では「バックライトの出力光配光は完全拡散性であった」旨が開示されているものと認められるが、このことのみならず、当業者であれば、前示のとおり、上記引用例1の記載及び各図に基づいて、引用例考案1の具体的構成及び拡散面に対して傾斜した光が強いものであることを認識できるものと認められ、その結果、拡散面において、完全拡散性を有する拡散光のみならず、斜め方向の指向性を有する拡散光が生じることも、技術常識上、容易に理解できたものと認められるから、原告の上記主張も採用することができない。

さらに、原告は、原告主張相違点を作用面から見ると、引用例考案1の「プリズム」が、指向性のない完全拡散光に指向性を与え、その結果として特定の方向への進行光を増大させる機能を果たしているのに対し、訂正後考案1における鋸歯付の透明板は、入力時点から既に指向性のある拡散光の主たる進行方向を正面方向に矯正し、その進行光を増大させる手段として機能すると主張する。

しかし、引用例考案1では、前示のとおり、拡散面において、完全拡散性を有する拡散光のみならず、斜め方向の指向性を有する拡散光も生じるものと認められるから、原告の上記主張はその前提において誤りがあり、これを採用することはできない。

したがって、本件決定の相違点の認定(決定書6頁13~19行)に看過はなく、訂正後考案1が引用例考案1及び2に基づいて当業者が極めて容易に考案できたとする本件決定の判断(同9頁4~6行)にも誤りはない。

2  取消事由2(訂正後考案2の顕著な作用効果の看過)について

本件決定の理由中、訂正後考案2の要旨の認定、引用例3の記載事項の認定、訂正後考案2が、訂正後考案1における「透明板の鋸歯状をした面とは反対側の面に拡散作用を持たせたものである」(決定書8頁16~17行)ことは、いずれも当事者間に争いがない。

また、引用例考案3が、「透明板の一方の表面に拡散層を形成しこれと反対側の表面をフレネルレンズ面とすること」(決定書8頁18~19行)を開示していることも、当事者間に争いがない。

そうすると、引用例考案1の面光源装置において、同じ光学技術分野に属する引用例考案3に開示された、「透明板の一方の表面に拡散層を形成しこれと反対側の表面をフレネルレンズ面とする」という公知の構成を採用して、光配向制御機能を有する透明板に拡散面を一体に構成し、訂正後考案2の「拡散面が、透明板の鋸歯状とした面とは反対の面に拡散作用を持たせることにより構成」することは、当業者が容易になし得る程度のことといわなければならない。

原告は、訂正後考案2が、面光源装置の光配向制御板としての鋸歯付の透明板の入射面側に、光拡散機能を持たせており、この特徴により、部品点数の減少とともに、光利用効率の向上という顕著な作用効果をもたらすと主張する。

しかし、前示のとおり、引用例考案1の面光源装置において、引用例考案3に開示された、「透明板の一方の表面に拡散層を形成しこれと反対側の表面をフレネルレンズ面とする」という公知の構成を採用して、光配向制御機能を有する透明板に拡散面を一体に構成すれば、その構成自体の有する効果として、部品点数の減少をもたらすことになるのは自明のことといえる。

また、上記の一体的構成を採用すれば、光拡散板と透明板との間に空気層が介在しないことになり、それに基づいて光利用効率が向上することは、技術常識上明らかなことであるから、光利用効率の向上に関する効果も、上記引用例考案に開示された構成を組み合わせる際に、当業者が当然に予測し得る範囲内の効果と認められ、原告の上記主張を採用する余地はない。

さらに、原告は、引用例考案3が、面光源装置への配置については開示していないにもかかわらず、訂正後考案2の鋸歯形成面と反対の面に拡散機能を持たせた透明板と、引用例考案3のフレネルレンズ付き透明板とを、単独での形態のみで比較してその進歩性を否定したことは不当であると主張する。

しかし、訂正後考案2は、訂正後考案1の「透明板の鋸歯状をした面とは反対側の面に拡散作用を持たせた」だけのものであるところ、訂正後考案1は、前示のとおり、引用例考案1及び2から当業者が容易に想到できるものであり、引用例考案1には訂正後考案1及び2と同様の面光源装置への配置が開示されているのであるから、本件決定が、上記の訂正後考案2と訂正後考案1との相違する構成についてのみ、引用例考案3に「透明板の一方の表面に拡散層を形成しこれと反対側の表面をフレネルレンズ面とする」構成が開示されていることを前提として、その進歩性を検討したことに不当な点はなく、この点に関する原告の主張も採用する余地がない。

したがって、本件決定が、「本件第1考案における透明板の鋸歯状をした面とは反対の面に拡散作用を持たせるようにすることは、当業者が必要に応じて極めて容易になし得ることに過ぎない。」(決定書8頁20行~9頁3行)と判断したことに誤りはない。

3  以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、本件決定が本件訂正請求を認めなかったことに誤りはないから、本件考案の要旨の認定は正当であり、その他本件決定に取り消すべき瑕疵はない。

よって、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

平成9年異議第70680号

実用新案登録異議の申立てについての決定

埼玉県川口市並木2丁目30番1号

実用新案権者 株式会社エンプラス

東京都港区虎ノ門1丁目23番10号 山縣ビル2階 あいわ内外特許事務所

代理人弁理士 竹本松司

東京都港区虎ノ門1丁目23番10号 山縣ビル2階 あいわ内外特許事務所

代理人弁理士 杉山秀雄

東京都港区虎ノ門1丁目23番10号 山縣ビル2階 あいわ内外特許事務所

代理入弁理士 湯田浩一

東京都港区虎ノ門1丁目23番10号 山縣ビル2階 あいわ内外特許事務所

代理人弁理士 魚住高博

東京都港区虎ノ門1丁目23番10号 山縣ビル2階 あいわ内外特許事務所

代理人弁理士 塩野入章夫

神奈川県横浜市金沢区町屋町25-22

実用新案登録異議申立人 山崎修一

東京都渋谷区代々木5丁目26番1号

実用新案登録異議申立人 池田英治

東京都町田市三輪緑山2丁目25番9号

実用新案登録異議申立人 広田章子

実用新案登録第2507092号「面光源装置」の請求項1ないし2に係る実用新案について、次のとおり決定する。

結論

実用新案登録第2507092号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。

理由

【1】経緯

本件実用新案登録第2507092号は、平成1年11月13日の出願であって、平成8年5月30日に設定登録され、その後、実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成9年7月14日に訂正請求がなされたものである。

【2】訂正請求

[2-1]本件訂正請求は、実用新案登録請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的として実用新案登録請求の範囲及び明細書の記載を訂正請求書に添付の明細書のとおりに訂正しようとするものであるところ、訂正後の実用新案登録請求の範囲の記載は、次のとおりである。

「(1)光源と、入射端面を前記光源に近接配置して側方から前記光源の光を入射させるようにした導光体と、前記導光体の表面に設けられた拡散面と、前記導光体の裏面に設けられた反射面とを備えた面光源装置において、前記拡散面上に、一方の面を鋸歯状とした透明板を、前記鋸歯状とした面が前記拡散面とは反対方向を向くように配置し、前記一方の面を鋸歯状とした透明板の屈折作用によって前記拡散面に対して傾いた方向に進行する光を前記拡散面に対して垂直な方向へ向けるようにした、前記面光源装置。

(2)前記拡散面が、前記透明板の鋸歯状とした面とは反対側の面に拡散作用を持たせることにより構成されている、請求項(1)の面光源装置。」

[2-2]これに対して、当審において通知した訂正拒絶理由において引用した、照明学会研究会資料「液晶ディスプレイ用バックライト」第46~54頁(社団法人照明学会1988年11月26日発行、以下「引用例1」という。)は、「エッジライト方式液晶ディスプレイ用バックライトの設計」の表題のもとにエッジライト方式のバックライトについて記載したものであって、第47頁には代表的なエッジライト方式のバックライトが図示されている。これによれば、エッジライト方式のバックライトは、その一面には反射板が、その反対側面には拡散板が設けられた導光板の端面にはランプが配置されていることが記載されており、また第53頁には、「従来のバックライトの出力光配光は完全拡散性であったが、それを、プリズム等で制御し指向性を持たせる事によって、有効な方向の光を増やそうというものである。たとえば、図8に示すようにプリズムによって、液晶のコントラストの高い方向(角度特性で、透過率の高い方向)へ光を制御する事等が考案されている。」なる記載がなされており、第8図には、拡散板を設けた面の反対面に反射板を設けた導光板の端面に近接して光源を備えたバックライトにおいて、拡散板の前面に、拡散板に対向しない側の表面を平面でなく鋸歯状としたプリズムを配置したものが示されている。

同じく引用した特開昭63-68814号公報(以下、「引用例2」という。)には、「従来より、第9図に示すように、光源1と液晶表示装置3との間に乳色ガラス等の拡散板5を介装して光源1からの光をほぼ均等拡散透過させる構成や、・・・液晶表示装置3の板面に対する入射角が大きいと光線を全反射して透過させないものであるから、光源1から放射された光線の利用率を考慮すると、板面にほぼ直交する光線を背後から照射するのが望ましい。しかしながら、上述したような拡散板5を透過した光線は液晶表示装置3に対してあらゆる角度で入射するのであるから、従来のように拡散板5を用いて輝度むらを減少させる方法では光源1から放射された光線の利用率が低いという問題点があった。・・・本発明は・・・光源から放射された光線の利用率が高く、比較的小さな光源で液晶表示装置に高い輝度が得られるようにした液晶表示装置用照明装置を提供することにある。」(1頁下右欄16行~2頁上左欄20行)なる記載がなされている。

また同じく引用した特開昭56-37124号公報(以下、「引用例3」という。)には、一面に光拡散層を形成し、その反対側の表面をフレネルレンズ面とした透光性合成樹脂シートが記載されている。

[2-3]本件訂正後の請求項1に係る考案(以下「本件第1考案」という。)と上記引用例1記載の考案とを対比すると、両者はともに、光源と、入射端面を前記光源に近接配置して側方から前記光源の光を入射させるようにした導光体と、前記導光体の表面に設けられた拡散面と、前記導光体の裏面に設けられた反射面とを備えた面光源装置において、前記拡散面上に、一方の面を鋸歯状とした透明板を、前記鋸歯状とした面が前記拡散面とは反対方向を向くように配置し、前記一方の面を鋸歯状とした透明板の屈折作用によって特定の方向に向けるようにした、面光源装置である点で一致するが、鋸歯状とした透明板の屈折作用により、本件第1考案においては拡散面に対して傾いた方向に進行する光を拡散面に対して垂直な方向へ向けるようにしているのに対して、引用例1には拡散面に対して傾いた方向に進行する光を拡散面に対して垂直方向へ向けるようにすることについては記載されていない点において相違している。

そこで、上記相違点について検討する。

引用例1には、液晶表示装置のエッジライト方式のバックライトにおいて、液晶のコントラストの高い方向へ入射するように液晶に入射する光をプリズム等を用いて制御することが記載されており、引用例2には液晶表示装置の背面から液晶に直交する光線を照射するのが望ましいこと、しかも、このために拡散板と配向制御板とを併用して拡散板を透過後の光線を配向制御板により特定の方向へ屈折させるようにすることが記載されているのであるから、引用例1記載の考案において、プリズムの頂角を液晶表示装置に対して直交して光が入射するように、即ち、拡散面に対して傾いた方向に進行する光が透明板を透過後は拡散面に対して垂直方向となるようにすることは当業者が極めて容易に想到し得ることである。

そして、このようにしたことにより奏する作用効果は、当業者が予期し得るものに過ぎない。

なお、訂正請求人は意見書において「引用例2は、「斜めに進行する光線を正面方向に向かせるために配向制御板を使用出来ること」は開示しておりますが、その前提となるような「斜めに進行する光線」がサイドライト型の面光源装置においても存在し、それが正面方向への照射の妨げになっているという認識を開示している訳ではない」旨主張している。しかしながら、サイドライト型の面光源装置において拡散板透過後の光は、拡散板透過後であるから拡散板面に対して斜めに進行する光線に限らずあらゆる方向に進行するものであることはよく知られていることであり、これを前提として引用例1には、プリズムを用いて光を制御して有効な方向への光をより増やすことが記載されているのであるから、上記主張は認められない。

次に、本件訂正後の請求項2に係る考案(以下「本件第2考案」という。)は、本件第1考案における透明板の鋸歯状をした面とは反対側の面に拡散作用を持たせたものであるが、上記引用例3には透明板の一方の表面に拡散層を形成しこれと反対側の表面をフレネルレンズ面とすることが記載されているのであるから、本件第1考案における透明板の鋸歯状をした面とは反対側の面に拡散作用を持たせるようにすることは、当業者が必要に応じて極めて容易になし得ることに過ぎない。

[2-4]したがって、本件第1考案は、上記引用例1及び引用例2記載の考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、また、本件第2考案は、上記引用例1乃至引用例3記載の考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであって、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、平成6年法律第116号附則第9条の規定により準用する特許法第120条の4第3項の規定により更に準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、認められない。

【3】実用新案登録異議申立て

[3-1]本件請求項1に係る考案又は請求項2に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、それぞれ実用新案登録請求の範囲の請求項1又は請求項2に記載された次のとおりのものである。

「(1)光源と、入射端面を前記光源に近接配置した導光体と、前記導光体の表面に設けられた拡散面と、前記導光体の裏面に設けられた反射面とを備えた面光源装置において、前記拡散面上に、一方の面が鋸歯状をした透明板を、前記鋸歯状をした面が前記拡散面とは反対方向を向くように配置したことを特徴とする面光源装置。

(2)前記拡散面は、前記透明板の鋸歯状をした面とは反対側の面に拡散作用を持たせることにより構成したことを特徴とする請求項(1)の面光源装置。」

[3-2]これに対して、当審で通知した取消の理由通知において引用した上記引用例1及び引用例3には、上記[2-2]において指摘した事項が記載されている。

したがって、本件請求項1に係る考案は、上記引用例1に記載された考案であることは明らかである。

また、本件請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案における透明板の鋸歯状をした面とは反対側の面に拡散作用を持たせたものであるが、上記引用例1及び引用例3には上記[2-2]において指摘した事項が記載されているのであるから、引用例1記載のものに引用例3記載の技術を適用して本件請求項2に係る考案のようにすることは、当業者が必要に応じて極めて容易に想到し得ることに過ぎない。

【4】以上のとおりであるから、本件請求項1に係る考案は、実用新案法第3条第1項第3号に該当する考案であり、また本件請求項2に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件請求項1に係る実用新案登録及び請求項2に係る実用新案登録はいずれも、平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

平成10年1月22日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

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