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東京高等裁判所 平成10年(行コ)82号 判決 1999年2月10日

控訴人(原告)

梅原はつ

右訴訟代理人弁護士

成田信子

河村信男

被控訴人(被告)

社会保険庁長官高木俊明

右指定代理人

齋藤紀子

外七名

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人が控訴人に対して平成七年一月一四日付けでした遺族厚生年金不支給処分を取り消す。

三  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

第二  事案の概要等、争いのない事実等並びに争点及び当事者の主張

本件事案の概要等、争いのない事実等、争点及び当事者の主張は、次のとおり加除訂正するほか、それぞれ、原判決の「事実及び理由」の「第二 事案の概要等」、「第三 争いのない事実等」、「第四 争点及び当事者の主張」に記載のとおりであるから、これらを引用する。

1  原判決七頁六行目の「第二四号証、」の次に「第二九号証、」を、七行目の「第一九号証の一、二、」の次に「第二〇号証」を、八行目の「同富子」の次に「同木内良平(以下「木内」という。)(当審)」を、それぞれ加え、一一行目の「昭和三五年ころ」を「昭和三三年ころから」と改め、同八頁七行目の「死亡時」の次に「を経て現在に至る」を加え、同一〇頁九行目の「として登記され」を「であって」と改める。

2  原判決一四頁八行目の次に、改行して「11 なお、原告は、平成一〇年、大陽精機の取締役を任期満了で退任した。」を加える。

3  原判決一六頁一〇行目の「大陽精機」から同一七頁四行目の「ある。」までを「原告は、亡陽三郎から、生計維持費を、大陽精機の取締役報酬、大陽ステンレススプリングの株式配当等という形式で支給を受けていた。また、仮に、大陽精機からの取締役報酬の給付が亡陽三郎からの生計維持費の給付と認められないにしても、亡陽三郎は原告に対し定期的な取締役報酬が得られるように大陽精機の取締役の地位を与えたものと解釈できる。」と改める。

第三  当裁判所の判断

当裁判所も、本件全資料を検討した結果、控訴人の請求は理由がないので棄却すべきものと判断する。

その理由は、次のとおり加除訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の「第五 当裁判所の判断」において説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一九頁一一行目の「これによれば、」から同二〇頁三行目の「できる。」までを削り、四行目の「そうすると、」を「そして、法五九条一項の文言及び以上の関係各条文から窺われる法の趣旨からすると、」と改め、四、五行目の「収入」から五行目の「老齢年金)」までを「出捐」と改め、六、七行目の「収入」を「出捐」と改め、七、八行目の「が自己の収入から生活費、療養費等」及び「を行い、これ」を削り、九行目の「収入からの」を削り、一一行目の「勤労」から同二一頁一行目の「給付」までを「出捐」と改め、一、二行目の「できない」を「困難である」と改める。

2  原判決二二頁四行目の「次に、」の次に「右通達から離れて、端的に、」を加え、四行目の「収入」を「出指」と改め、同二三頁四行目の「亡陽三郎の意図があった」を「点が亡陽三郎の考慮要素となっていた」と改める。

3  原判決二三頁五行目の「乙第一七号証」から「証人美子」までを「甲第六号証の一ないし三、第七号証の一、二、第二八号証、第二九号証、乙第一六号証の一、二、第一七号証の一ないし三、第二〇号証、証人美子、同木内(当審)」と改め、六行目の「によれば、」の次に「以下の各事実が認められる。すなわち、①大陽ステンレススプリングは、精密マイクロシャフト等の開発に成功していたが、同社の社名では精密部品の販売に困難が予想されたことから、精密部品の販売にふさわしい社名を有する新会社の設立が必要となり、昭和三八年二月、このような新会社として大陽精機が設立された。設立当時の代表取締役は小笠原喜太郎、資本金一〇〇万円、株主八名の株式会社で、役員、株主には亡陽三郎の親族等関係者は含まれていなかった。②その後、増資がされ、会社の業績も順調に推移したが、昭和四七年、大陽精機の取締役であった亡賢一が死亡したため、後任の役員選任の臨時株主総会が開催され、原告が取締役に選出され就任した。③大陽精機では、株主総会は、定時株主総会は年一回、臨時株主総会は必要がある場合に開催されている。招集手続は、株主が全員大陽ステンレススプリング関連の会社関係者であるため、口頭で行われることもあった。株主総会は、主に大陽精機の本店事務所で行われ、場合により、他の場所でも開催されていた。取締役会は、随時開催され、原告に対しては、原告と同居している美子を通じて口頭による招集を行い、議事録についても、持ち回りで確認の上原告の押印を受けていた。④昭和五九年一〇月当時の大陽精機の七〇名近い株主は、全員大陽ステンレススプリング関連の会社関係者であったが、当時の代表取締役の亡陽三郎から、株式は従業員等会社関係者に限定して持たせ、外部に流失しないように整理する必要があるとの提案がなされ、これに基づき株券が発行された。そして、亡陽三郎の発案の下、会社関係者以外の者に株式が流通しないようにする方法として、平成五年八月、タイヨウ社員持株会が創設され、当時の株主全員が右会の会員となった。⑤役員報酬については、その限度枠につき株主総会の承認を得た上で、各役員の報酬額につき大陽ステンレススプリングの内規に準じて決められていた。また、役員の定年についても、大陽ステンレススプリングの内規に準じて役付取締役は六七歳と定められていた。原告も、大陽ステンレススプリングの内規に準じて定められた一定額の報酬を、平成一〇年に取締役を退任するまで受けていた。⑥」を加え、一〇行目の「ことが認められるから、」を「。以上の事実によれば、大陽精機は、」と改める。

4  原判決二四頁二行目の「の収入」から三行目の「からの」までを「自身による」と改め、六、七行目の「商業登記簿上」及び七行目の「して登記」を削り、八行目の「としての」の次に「義務ないし」を、「実働の有無」の次に「自体」をそれぞれ加え、九行目の「右判断を」の次に「直ちに」を加え、九行目の「ある。」を「あるし、右のような者に対し前記のような取締役報酬を支払うことの商法上の問題点は別として、前記のとおり大陽精機が経営の実体を有する会社である以上、原告に対して大陽精機から支払われた取締役報酬につき、亡陽三郎自身による生活費の支払と同視することは困難であるといわざるを得ない。」と改め、その次に、改行して「 なお、原告は、(1)亡陽三郎が、大陽精機に土地を買わせた、その土地上に愛人(竹本)と住む家を建てるために、自分の株と交換して右土地を自分の名義としたこと、(2)大陽精機の金で買った土地建物に、別の愛人(田中みよ)及びその子を住まわせたが、賃料も取らず、固定資産税も会社負担としたこと、(3)別の子会社においても、これらの愛人を取締役とし、取締役報酬を支給していたこと、(4)美子が自宅で個人用としていた乗用車は、大陽精機の名義であり、そのガソリン代、保険料等もすべて会社負担であったこと等の事実を縷々主張するが、右主張事実が認められるとしても、前記と同様、商法上の問題点は別として、原告に対して大陽精機から支払われた取締役報酬につき亡陽三郎自身による生活費の支払と同視することができることに直結するものではない。」を加える。

5  原判決二六頁一行目の「目的であって」を「目的があったとしても、前記判示に係る大陽精機の実体等に鑑みると」と改め、二行目の「得る場合であったとしても」を「得るほどの場合であったものとは認め難い上、仮に右の点を措いたとしても」と改め、五行目の「ないから、」の次に「そもそも、」を加え、六行目の「場合ではない」を「場合とはいい難いもの」と改め、七行目の「である」の次に「といわざるを得ない」を加える。

6  原判決二六頁七行目の次に、改行して「 また、原告は、仮に右のように法人格否認の法理が適用される場合に当たるとはいえなくても、亡陽三郎は大陽精機を意のままに支配し、原告に取締役報酬を支払うことも、またその額についても意のままに決定することができたのであって、自分の財布代わりに大陽精機を使用して原告に対して役員報酬を支払っていたのであるから、亡陽三郎個人が原告に生計維持費を支払っていたのと同視できると主張するが、大陽精機の実体等については前記判示のとおりであって、原告の右主張は、その前提を欠くものであり、失当であるといわざるを得ない。」を加え、その次に、さらに改行して「さらに、原告は、仮に大陽精機からの取締役報酬の給付が亡陽三郎からの生計維持費の給付と認められないにしても、亡陽三郎は原告に対し定期的な取締役報酬が得られるように大陽精機の取締役の地位を与えたものと解釈できると主張するが、右主張についても、前記判示に係る大陽精機の会社としての実体等からして、取締役の地位を亡陽三郎個人自身が付与したと解するには無理があり、失当であるといわざるを得ない。」を加え、その次に、さらに改行して「 なお、原告が亡陽三郎から大陽ステンレススプリングの株式配当等の形式で生計維持を受けていたとの原告主張についても、前掲関係各証拠等から認められる同社も大陽精機同様経営の実体のある会社であること等からして、右の大陽精機の取締役報酬に係る主張と同様に理由がないものといわざるを得ない。」を加える。

7  原判決二六頁八行目の「亡陽三郎がその収入から」を「亡陽三郎自身が」と改め、一一行目の「これをもって」から同二七頁二行目の「ものではない。」までを「右のような昭和五一年ころの贈与をもって、原告が亡陽三郎の死亡の当時同人によって生計を維持していた者に当たると解するには無理があることはいうまでもない。」と改め、三行目の「そして」を「なお」と改め、六行目の「法が」から七行目の「としての」までを「原告がその生活につき亡陽三郎の死亡当時同人の出捐に依拠していたかどうかの」と改める。

第四  結論

以上のとおりであって、同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官塩崎勤 裁判官橋本和夫 裁判官大渕哲也)

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