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東京高等裁判所 平成10年(行コ)88号 判決 1998年11月26日

宇都宮市下栗町二三〇一番地七

控訴人

株式会社リック

右代表者代表取締役

市川之一

右訴訟代理人弁護士

中村隆

宇都宮市昭和二丁目一番七号

被控訴人

宇都宮税務署長 福田征治

右指定代理人

竹村彰

須藤哲右

吉村正志

宇田川祐一

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人宇都宮税務署長の控訴人に対する、

(一) 平成元年四月二一日付けでした、控訴人の昭和六一年一二月一日から昭和六二年一一月三〇日までの事業年度以後の法人税の青色申告の承認の取消処分

(二) 平成元年四月二六日付けでした、控訴人の昭和五八年一二月一日から昭和五九年一一月三〇日までの、昭和五九年一二月一日から昭和六〇年一一月三〇日までの、昭和六〇年一二月一日から昭和六一年一一月三〇日までの各事業年度の各法人税についての重加算税の各賦課決定処分

(三) 平成元年四月二六日付けでした、控訴人の昭和六一年一二月一日から昭和六二年一一月三〇日までの事業年度の法人税の更正処分並びに重加算税及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、裁決により一部取消された後のもの)

をいずれも取消す。

3  訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二本件事案の概要

本件事案の概要は、次のとおり補正するほかは、原判決の事実及び理由の「第二 事案の概要」の「一争いのない事実」及び「二 争点」に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決四頁七行目の「会社」の次に「(旧商号『株式会社市川』平成二年一二月一日現商号に変更。)」を加え、同一六頁五行目の「昭和六二年九月二五日」を「昭和六二年六月三〇日」に、同頁六行目の「同月三〇日」を「同年九月一八日」にそれぞれ改める。

2  同二六頁一〇行目の「行っていた。」の次に改行して次のとおり加える。「すなわち、千代田は、結婚し出産するまでの九年間控訴人に正社員として勤務していたものであるが、出産後の昭和五九年七月から昭和六二年一一月まで在宅勤務期間に控訴人にもたらした営業情報及び交友関係によって、控訴人は、泉ケ丘ハイタウンの分譲住宅四棟の売却を成立させ、いわき市常磐下湯長谷の建物工事を受注できた。また、千代田は、昭和五九年秋から翌六〇年春ころまで、控訴人の従業員二名の行った泉ケ丘ハイタウンの確定測量、分筆登記につき、その計算式のチェック、数値照合を補助した。そして一年間近く、同タウンに新番地を付するための作業に当たった。控訴人においてこれらの作業について測量担当の社員又はその補助者を新たに雇用する等して行うよりも、控訴人に九年間正社員として勤務した経験を有する千代田を在宅勤務者として雇用したほうが、利益があったものである。

中沢は、長野県内の不動産会社に勤務した経験があった。また、控訴人には、長野県内には支店等を設置するまでの件数ではなかったが、リゾートマンション、ペンション、法人研修センター、保養施設等を建設するための土地取得情報が求められていた。そこで、控訴人は、昭和六一年五月中旬から、中沢の不動産についての知識経験を利用することとして、在宅勤務者として雇用した。中沢は、大町市の研修センター及び保養施設の各案件、軽井沢町の別荘案件について現地調査をしている。

なお、控訴人においては、右両名の他にも当時他に二名の在宅勤務者を雇用していた。」

3  同二七頁三行目末尾の次に改行して、「市川専務は、右通帳や預金の事実上の管理を控訴人の経理責任者であった月井安以に再委託していたので、右通帳が控訴人の銀行口座の通帳とあたかも同一の管理下におかれたような状態となったが、その性質は全く異なるものである。

なお、市川専務の被控訴人に対する申述は、千代田及び中沢への給与は直接に現金支給をしていたのではなく、銀行への振り込みによって支払っていたことを認めただけであって、給与の支払のないこと自体を認めたものではないし、右給与に関する修正申告も、千代田らに対する調査の拡大を防ぐために已むを得ずしたもので、被控訴人の主張を認めたものではない。」と加える。

4  同二八頁一一行目末尾に改行して「なお、右仲介行為の不存在を認めた控訴人代表者本人作成の上申書(乙第一二号証)は、同代表者が被控訴人の担当者から質問を受けたとき、細部にわたる事項については報告を受けていなかった等の理由から回答に窮した際に、右担当者からの示唆を受けて、いわれるままに筆記して作成したものであって、真実が記載されているものではない。」を加える。

5  同三〇頁一一行目の末尾に改行して「また、右譲渡対価区分が相互協議によって成立したものであることは、本件第一契約において売主三芳の代理人であった鈴木弁護士も甲第六号証の事実証明書で確認している。」を加える。

6  同三三頁二行目末尾の次に「さらには、明確な法的根拠もなく、不動産について一律に課税する際の根拠として算定された固定資産税評価額やその他、国、地方公共団体、第三者の決定した額を基に、現実の取引の価格を当事者以外の第三者が外から決定することは不当であるばかりでなく、違法である。被控訴人の主張するような土地の時価、借地権割合という数字は、課税や統計等の基礎として存在するとしても、それを現実の個別の取引に当てはめることは、何ら法的根拠も存在せず、契約の自由、価格決定の自由に反するもので違法である。」を加える。

7  同四九頁八行目の「いたものであるから、」の次に「また、右両名名義の銀行口座は控訴人の本社が宇都宮市にあることから同市内の銀行に口座が開設されたものであり、その通帳等を市川専務が管理していたのは、両名は同車務の親族(千代田は妹、中沢は姉)であって、同人を信頼してその部下に保管管理を任せていたのであり、両名にとって右給与手当は、家族に内密にしていたいわゆるへそくりであった事情があったので、そのため両名による預金の引き出しもなされなかっただけのことであるから、控訴人には」を加える。

8  同五四頁三行目末尾の次に改行して「控訴人と都市開発とは同族会社であり、同族会社間での仲介業務の委任とその報酬の支払は適法である。都市開発は控訴人から受領した本件仲介手数料を所得として申告して納税しているから、右のとおり同族会社である控訴人と都市開発の所得を通算するときには、その合計納税額にほとんど変化はないのであるから、都市開発の代表者でもある控訴人代表者には、本件仲介料の支払を仮装する必要はない。」を加える。

第三争点に対する判断

当裁判所は、控訴人の本件請求は理由がないとするものであって、その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第三項記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決六二頁五行目の「ものであり、」の次に「具体的に千代田の活動のおかげで泉ケ丘ハイタウンの分譲住宅四棟の売却や建物工事の受注ができたとか、また中沢は大町市の研修センター及び保養施設の各案件、軽井沢町の別荘の案件について現地調査等を担当したことなどがあり」を、六行目の「主張するが、」の次に「甲一(市川勇作成の回答書)や証人市川勇の証言には右主張に副う部分があるが、千代田や中沢の右のような具体的な営業活動や事務補助があったことを認定するに足りる客観的証拠はなく、千代田や中沢が家族に内密に右預金等をへそくりとして扱っていたことを認めるに足りる証拠もないうえ、」を、同六三頁三行目の「照らし、」の次に「右甲一の記載や市川勇の証言は」をそれぞれ加える。

2  同六四頁六行目の「証人市川勇、」の次に「証人中山克巳、」を加え、同六七頁一〇行目の「努める」を「兼ねる」に改める。

3  同七五頁七行目の末尾に「控訴人は、控訴人代表者市川之一にとって同族会社である都市開発が本件仲介手数料を所得として申告し納税しているから、合計納税額にほとんど変化はないから仮装する実益はないと主張するが、本件仲介手数料の有無が控訴人と都市開発の合計納税額にほとんど変化がないことを認めるに足りる証拠はなく、本件仲介手数料の有無は一般の営業所得として課税されるか土地譲渡利益として課税されるかで差異があり、控訴人の右主張はにわかに採用できない。」を加える。

4  同七一頁七行目の「四〇」を「二〇」に改め、同七六頁四行目の「認められない」の次に「ので、ジャパンオールが清和に対して仲介手数料の支払債務を負うことはない。」を加え、六行目の「ならない。」を「ならないし、また、控訴人がジャパンオールの清和に対する右債務を引き受けた旨の控訴人の主張は、採用できない。」と改める。

5  同八一頁三行目の「過ぎないから」を「過ぎないうえ、本件土地及び本件建物の場所や環境等の条件、建物の老朽化状況等に照らすと、右価額の割付けは不動産取引の実例、実情に比べると極めて異常なものであり、」を加え、四行目の「仮にこれが信用し得るものであったとしても、」を「契約の自由を有する当事者が価格決定の自由を有するとして右のような価格の割付けを念頭において合意したとしても、右の合意決定は税務対策その他の目的でなされることが多いので、右のような価格決定が明らかに正常なものでないときは、課税処分等においてこれに当然に拘束されなければならないものではない。この点に関する控訴人の主張は到底採用できない。また、」に改める。

6  同八二頁一一行目から八三頁一行目にかけての「売買実例価額、家屋にあっては再建築価額を基礎として客観的に評価されるものであるから」を「売買実例価額を参考にして当該土地の現状により補正を加えたうえで、家屋にあっては再建築価額から経年減価を施したうえで、客観的に算定した適正な時価に基づいて決められるものであるから」に改める。

7  同八四頁五行目の「その対価は、」から八行目末尾までを「その対価は、本件土地の価額と本件建物の価額の合計額にほかならないところ、固定資産税の課税標準額は、土地についてはその現状を反映した売買実例価額を参考にして客観的に算定される『適正な時価』であって、必ずしも常に更地であることを前提にした評価とはいえず、一応時価を反映した金額に基づくものと認められ、本件土地の時価を算定するに足りる特段の証拠資料がない限り、固定資産税の課税標準額を基に本件土地の価額を算定することも不合理といえない。」に改める。

第四結論

以上によれば、控訴人の本件請求は理由がないので棄却すべきである。

よって、原判決は相当であって本件控訴は理由がないので、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鬼頭季郎 裁判官 池田亮一 裁判官 廣田民生)

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