大判例

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東京高等裁判所 平成11年(う)1500号 判決

被告人 自称 ジャムシッド・ゴリザーデ・チェシュメ・ケシ

〔抄 録〕

4(一) 以上のとおり、前記1認定の犯行に至る経緯等に、小川供述のうち高い信用性の認められる前記部分及びジョーノシ供述を中心とする関係各証拠を総合すると、被告人が原判示の日時及び場所においてけん銃<1>及びこれに適合する本件実包を自己のズボンのポケットに入れるなどして携帯所持したことは明らかである。

(二)(1) もっとも、原判決は、被告人がけん銃<1>を単独で所持し、これを本件実包と共に携帯した旨認定しているところから、右認定の当否について検討を加えることとする。

(2) 前記認定事実に関係各証拠を総合すると、けん銃<1>等はジョーノシがアマドから購入したものであること、九月二三日にジョーノシがこれをジャバドから取り上げて被告人に預け、被告人が保管するようになったこと、翌二四日午前一〇時半ころ被告人がけん銃<1>等を携帯して外出した際には、ジョーノシも同行していること、同日午前一一時過ぎころ被告人、ジョーノシらが共にハツヤマハイツから逃げ出した際も、被告人がけん銃<1>等を自己のズボンのポケットに入れて携帯したが、堤防付近まで逃げたところで、ジョーノシが被告人に「けん銃隠しなさい」と言ったため、被告人は小川から受け取った本件ポーチにけん銃<1>等を入れたこと、これに続き、ジョーノシが被告人からけん銃<1>等の入った本件ポーチを受け取って堤防の草むらに隠したこと、被告人及びジョーノシは同月一二日ころからジャバド方を拠点としながら行動を共にしていたことが認められる。

(3) 以上のとおり、被告人はハツヤマハイツを逃げ出してから田川堤防に至るまでけん銃<1>等を自己のポケットに入れて携帯所持していたが、けん銃<1>等はジョーノシの所有物であり、被告人はこれをジョーノシから預かったものにすぎない。しかも、右堤防にはジョーノシも同行しており、同人が被告人にこれを隠すように指示したり、被告人から受け取って自ら隠すなどしていることも考慮すると、原判示の日時及び場所におけるけん銃<1>等の携帯所持は、被告人単独によるものではなく、被告人とジョーノシとが意思相通じた上共同して行ったものと認めるのが相当である。なお、弁護人は、ハツヤマハイツから田川堤防に至るまでの間において被告人自らはけん銃<1>等の携帯所持がなかったことを前提として、被告人にはジョーノシとの共謀はない旨弁論において主張しているが、右認定のとおり、逃走中における被告人自身の携帯所持が認められるのであるから、弁護人の主張は前提を欠き失当というほかない。

したがって、この点において、原判決の事実認定には誤りがあり、ひいて刑法六〇条の適用を遺脱した点でその法令の適用にも誤りがあるというべきである。

(4) しかしながら、被告人が自らけん銃<1>等を自己のズボンのポケットに入れて携帯所持したことに変わりはなく、また、被告人はその前日にジョーノシからけん銃<1>等を預けられるや、当日の朝まで布団の下に隠すなどしてこれを保管し、ジョーノシと外出する際にも自らこれを携帯するなど、田川堤防に至るまで終始これを直接に所持しており、ジョーノシもそのことを容認していたのである。したがって、このようなけん銃<1>等の所持の態様に照らせば、右堤防におけるけん銃<1>等の携帯所持が被告人単独によるものかジョーノシとの共同によるものかによって犯情にさほど差異があるとはいえないから、原判決の右のような事実認定の誤り及び法令適用の誤りはいずれも判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。

(河辺義正 廣瀬健二 大谷直人)

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