東京高等裁判所 平成11年(う)53号 判決
被告人 關稔 外一名
〔抄 録〕
所論は、多義にわたるが、要するに、原判示第二の一の単発式けん銃を適合実包とともに保管して所持した点に関して、当該けん銃の製造者である被告人稔らが原判示第一のけん銃製造により製造したけん銃を製造直後短期間保管等しただけであるから、右保管等の行為は、けん銃製造のカテゴリーの範囲内にあり、特別な事情がない限り、銃砲刀剣類所持等取締法(以下、銃刀法という)の所持罪を構成しないと主張し、原判決は、こうした罪を構成しない訴因につき裁判をしており、審判の請求を受けていないのに審判をした違法など種々の違法がある、というのである。
そこで、検討すると、原判決挙示の証拠によれば、被告人稔らは、原判示第一の一のとおり、平成九年一〇月中旬から同年一二月上旬ころまでの間に、単発式けん銃(以下、II型けん銃という)八丁を製造し、また、同第一の二のとおり平成一〇年二月下旬ころから同年四月上旬ころまでの間に、II型を改良した単発式けん銃(以下、III型けん銃という)三二丁を製造していること、このIII型けん銃は、平成一〇年四月上旬ころには、ほぼ出来上がり、金属製弾丸を発射する機能を備えるに至ったが、その製造依頼者で共同正犯者の丸山正道から、右けん銃の引き金やバネ等にクレームを付けられたためこれらの点を調整し、本件捜索を受けた同月二一日の数日前にはこれらの点の調整を終えており、前夜から二一日の当日にかけて、右けん銃を塗装するなどしてこれを乾燥させていたところ、当日午後一一時過ぎ、右丸山が被告人らの工場を訪れた際に、警察官による捜索が開始されて、右工場内から右のIII型けん銃三二丁と丸山から補修のため預かり保管していた金属製弾丸発射機能のあるII型けん銃一丁が発見され、適合実包などとともに押収されたこと、が認められる。
そして、その所持が認定された原判示第二の一及び二のけん銃合計三三丁は、右の如く被告人らの工場を捜索した際に発見、押収されたものである。
しかるところ、武器等製造法は、けん銃等の武器の製造を規制するものであり、所持については規定がなく、他方、けん銃の所持については、銃刀法が規制しているところ、武器を製造するものについても、銃刀法の規制が及ぶことは、同法三条一項七、八号の除外規定に照らしても、明らかである。しかして、けん銃を製造する過程で、当該製造物がけん銃の形態を備え、かつ、金属製弾丸を発射する機能を具備してけん銃となった直後のこれに必然的に伴うけん銃所持については、これが製造罪に含まれると解する余地があるとしても、その後の所持は、それがけん銃の機能の調整や塗装等のためにするものであっても、既にけん銃の所持等に伴う危害予防の必要性は生じているのであるから、この段階での所持は武器製造罪に吸収されることはなく、銃刀法の規制を受けると解するのが相当である。
本件では被告人稔らが製造した、押収された三二丁のIII型けん銃は、四月上旬ころには、けん銃の機能を具備しており、その後の同月二一日までの調整や塗装は、いわば商品としての完成過程にあるだけで、被告人稔らにおいて、既にけん銃として機能しうるものとして存在することも認識の上所持しているのであるから、本件所持は銃刀法の所持に当たるというべきであり、これをもって武器等製造法にいう製造に必然的に伴う所持ということはできない。また、丸山から預かったII型けん銃についても、丸山から補修を求められていたとしても、その補修をしなくとも、けん銃として機能することは明らかである。
そうしてみると、原判決が、原判示第一の武器等製造法の銃砲の製造のほかに、同第二の一(更に二においても)の銃刀法のけん銃の所持の成立を認めた点に誤りはなく、論旨は理由がない。
(荒木友雄 田中亮一 林正彦)