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東京高等裁判所 平成11年(ネ)2145号 判決 1999年10月21日

控訴人(被告) Y1

控訴人(被告) Y2

右両名訴訟代理人弁護士 當山泰雄

被控訴人(原告) 巣鴨信用金庫

右代表者代表理事 A

右訴訟代理人弁護士 丹羽健介

同 佐藤米生

同 髙畑満

同 八賀和子

同 岡野和弘

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決中、控訴人ら敗訴部分を取り消す。

2  被控訴人の控訴人らに対する請求を棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文一項同旨

第二事案の概要

事案の概要は、原判決一三頁三行目に「平成五年」とあるのを「昭和五一年」と訂正し、当審における新たな主眼を次のとおり付加するほか、原判決の事実及び理由欄の二(事案の概要)の予備的請求に関する部分のとおりであるから、これを引用する。

一  控訴人らの主張

1  本件新建物は、控訴人Y2がその実家の母から取得した一三〇〇万円を出捐して昭和五一年七月ころに建築したものであり、建築当初から控訴人Y2がその真の所有者であった。本件贈与は真の所有者である控訴人Y2に所有権を帰属せしめた真正な登記である。本件新建物の所有名義を一旦控訴人Y1としたのは、司法書士から、控訴人Y2が夫からもらったという形式をとる方がよいといわれたので、それに従ったに過ぎない。

また、本件地上権設定契約は、本件新建物の所有者である控訴人Y2の正当な土地利用権を保護するために、本件新建物新築時に設定されたものである。

このように本件贈与及び本件地上権設定契約は、本件新建物建築当初から控訴人Y2に権利が属していたものを、そのまま登記簿に反映させたに過ぎず、控訴人Y1の一般財産を減少させる行為ではないから、詐害行為には該当しない。

2  控訴人Y2は、本件贈与及び本件地上権設定契約が控訴人Y1の債権者を害することを知らなかった。控訴人Y2は控訴人Y1の不動産業務に関する帳簿付け等は手伝っていたが、それ以外のことは全く知らない。控訴人Y2は、控訴人Y1が、被控訴人や朝日化成興業株式会社とどのような取引をしていたかについては全く知らなかった。本件贈与及び本件地上権設定契約は、控訴人Y1と被控訴人との債権債務関係を全く知らないままに行われたものである。

二  被控訴人の認否

控訴人らの主張は、いずれも否認する。

第三当裁判所の判断

当裁判所も、被控訴人の予備的請求は理由があると判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の事実及び理由欄三(当裁判所の判断)の予備的請求に関する部分のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二八頁七行目の「そして」から同八行目までを「そして、控訴人Y1は前記二2(五)(3)のとおり、被控訴人に対し、平成五年二月二四日以降、合計六一七六万二〇〇〇円及び利息・損害金(年一四%)を支払うべき義務を負っていたものであるところ、甲一七号証及び原審における控訴人Y1本人尋問の結果によれば、控訴人Y1は、当時、本件土地、本件新建物以外に預貯金等の資産はなく、一時一括で前記債務を返済することができないとして、前記(一)(3)のとおり、債務の一部免除、支払猶予、分割弁済等についての協議を求める調停を申し立てていたものであることが認められ、また、<証拠省略>によれば、本件新建物の当時の価格は、到底前記控訴人Y1の被控訴人に対する債務額に及ばないものであること、本件土地と本件新建物の固定資産評価額を合わせても五九〇〇万円弱で前記控訴人Y1の被控訴人に対する債務の元本に及ばないことが認められるから、たとえ、本件土地と本件新建物の実際の価格がこれを幾分上回ることがあっても、本件贈与及び本件地上権設定契約は債権者である被控訴人を害するものと認められ、かつ、控訴人Y1はそのことを認識していたものと推認される。

また、本件贈与登記、本件地上権登記がされたのは、被控訴人から控訴人Y1に対して前記二2(五)(3)記載の債務の履行を請求する内容証明郵便が到達し、これに対し控訴人Y1が前記(一)(3)のとおり、債務の一部免除、支払猶予、分割弁済等についての協議を求める調停を申し立てた後、まもなくであることによれば、本件贈与登記及び本件地上権登記の登記原因の記載並びに当審における控訴人らの地上権設定契約の時期についての主張についてはにわかにそのとおりの時期に契約があったものとは認められず、各登記の直前頃に合意されたものと推認するのが相当である。」と訂正する。

二  原判決二九頁四行目の次に行を改めて、

「控訴人らは、本件新建物は、昭和五一年七月ころの建築当初から控訴人Y2がその真の所有者であったもので、本件地上権設定契約は、本件新建物新築時に設定されたものである旨、前記のとおり当審において新たに主張し、乙一五号証、原審における控訴人Y1本人尋問の結果中には右主張に沿う部分がある。しかし、本件贈与登記の登記原因は平成七年一〇月二一日贈与であることは基本的事実関係のとおりであり、また、乙七号証(控訴人Y1の陳述書)中には、本件新建物について所有権保存登記をし、控訴人Y2に贈与した動機として、本件土地及び本件旧建物の購入資金の融資を受けた平和相互銀行への繰り上げ一括返済の資金が、控訴人Y2が実家から得た資金による援助であったことから、妻の要求もあってしたとする部分があり、それぞれ右主張に沿う証拠とは食い違っていること、原審における控訴人Y1本人尋問の結果によれば、本件新建物の建築費用は約二〇〇〇万円で、自分が出したように思うし、はっきりしない、とりあえず私が建築費を大工に払って、後で妻の実家から補填した、五分の一位は私が出した旨の部分もあり、建築費全額が控訴人Y2の実家の援助ではなかったことがうかがわれること、甲二四号証の一ないし六の本件新建物の建築代金の領収書の宛名が控訴人Y1であることからすると、建築請負契約の発注者は控訴人Y1であったものと推認されること、甲二二号証によれば、本件新建物の保存登記をする際、控訴人Y1が浦和地方法務局大宮支局へ提出した平成七年一一月二〇日付けの上申書には、本件新建物について、「私が資金を全額出して新築したものであります。」と記載していることが認められる。これらのことを考え合わせると、本件新建物の建築資金一三〇〇万円を控訴人Y2が出捐したこと自体いまだ認めるに足りないし、たとえ出捐があったとしても、夫名義で建築取得する建物の、資金の用意についての夫婦間の内部関係の問題であり、対外的には控訴人Y1が建築により所有権を取得したものと認められ、いずれにせよ、控訴人らの前記主張は認めることができない。

また、控訴人らは、控訴人Y2は、本件贈与及び本件地上権設定契約が控訴人Y1の債権者を害することを知らなかった旨主張し、乙一五号証(控訴人Y2の陳述書)中にはこれに沿う部分がある。しかし、控訴人Y2は控訴人Y1の同居の妻で、その主張するところによっても、控訴人Y1の不動産業務に関する帳簿付け等は手伝っていたというのであり、控訴人Y1の経済活動に全く関係がなかったわけではないこと、本件贈与登記、本件地上権登記がされたのは、被控訴人から控訴人Y1に対して前記二2(五)(3)記載の債務の履行を請求する内容証明郵便が到達し、これに対し控訴人Y1が前記(一)(3)のとおり、債務の一部免除、支払猶予、分割弁済等についての協議を求める調停を申し立てた後、まもなくであること等の事情を考え合わせると、控訴人Y2がそう記述していることのみから右主張を認めることはできない。」を付加する。

第四結論

よって、予備的請求を認容した原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないから、それぞれ棄却し、控訴費用は控訴人らに負担させることとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 矢崎秀一 裁判官 西田美昭 榮春彦)

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