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東京高等裁判所 平成11年(ネ)4086号 判決 1999年10月20日

控訴人・被控訴人(一審原告) A野太郎(以下「一審原告」という。)

右訴訟代理人弁護士 山本裕夫

被控訴人・控訴人(一審被告) 三東食品加工株式会社 (以下「一審被告」という。)

右代表者代表取締役 藤田正敏

右訴訟代理人弁護士 山田直大

同 一宮正寿

主文

一  一審原告の控訴及び一審被告の控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は、一審原告に生じた控訴費用は一審原告の、一審被告に生じた控訴費用は一審被告の各負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  一審原告

原判決を次のとおり変更する。

1  一審被告は、一審原告に対し、三〇〇〇万円及びこれに対する平成四年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、第一、二審とも一審被告の負担とする。

3  仮執行宣言。

(なお、一審原告は、当審において、請求の趣旨を右のとおり減縮した。)

二  一審被告

1  原判決中の一審被告敗訴部分を取り消す。

2  一審原告の請求を棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも一審原告の負担とする。

第二事案の概要

本件は、一審原告が、平成四年一一月九日午後三時ころ、冷凍庫内で、リーチフォークリフト(以下「本件リフト」という。)を運転して冷凍食品の入出庫作業をしていた際、本件リフトの右横に顔を出して本件リフトを後退させたところ、本件リフトがスリップしたため、冷凍庫内のコンクリート製の柱と本件リフトの雨除け用鉄枠(以下「本件マスト」といい、本件リフトの前部にあるマストを「前部マスト」、運転席側にあるマストを「後部マスト」という。)の間に前頭部を挟まれるという事故(以下「本件事故」という。)に遭って左前頭骨・左眼窩骨折、左頬骨弓骨折、左上顎洞骨折等の傷害を負い、休業損害、逸失利益及び慰謝料等合計五三一六万一四一五円の損害を被った旨主張し、使用者である一審被告に対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償として右のうち三〇〇〇万円及びこれに対する本件事故の日である平成四年一一月九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

一  前提となる事実(当事者間に争いのない事実は証拠を掲記しない。)

1  当事者

(一) 一審被告は、物品保管荷役及び運送、水産物及び農産物の加工及び販売等を目的とする株式会社である。

(二) 一審原告(昭和一八年五月一七日生)は、平成四年一〇月二八日、一審被告に雇用されたものであり、本件事故当時、一審被告の従業員であった。

2  本件事故の発生

一審原告は、以下のとおり、本件事故に遭い、これにより傷害を負った。

(一) 発生日時 平成四年一一月九日午後三時ころ

(二) 事故現場 東京都品川区《番地省略》所在の東洋水産株式会社東品川冷凍庫工場五階五〇Bの倉庫内(以下、これを「本件冷凍庫」という。)。

(三) 事故態様 一審原告は、本件冷凍庫において、本件リフトを運転して冷凍食品の入出庫の作業中に、本件冷凍庫内のコンクリート製の柱と本件リフトに設置された後部マストの間に前頭部を挟まれた。

3  一審原告の入通院の経過

一審原告は、本件事故により左前頭骨陥凹骨折、左眼窩骨骨折、左側頬骨骨折、左上顎洞骨折、左眼球運動障害の傷害を負い、救急車で国立東京第二病院に搬送されてそのまま入院し、その後、次のとおり、入通院等をした。

(一) 国立東京第二病院

(1) 入院 平成四年一一月九日から同年一二月二四日(合計四六日)

(2) 通院 平成五年一月八日から平成八年一月一八日(実日数五〇日)

(二) 東京労災病院

通院 平成六年四月八日

(三) 虎の門病院

通院 平成六年四月二五日から平成七年八月一四日(実日数一四日)

(四) 東京警察病院

通院 平成七年六月一〇日

(五) 東十条病院

通院 平成七年六月二四日から平成八年四月六日(実日数一一日)

(六) アイランド調剤薬局

通局 平成七年一〇月二一日から平成八年三月九日(実日数五日)

(七) 帝京大学病院

通院 平成七年八月一五日

(八) 関東逓信病院

通院 平成八年五月一日

4  症状固定

一審原告は、平成五年九月六日、障害が治癒した旨の診断を受け、症状が固定した。

5  労災認定

一審原告は、平成八年七月一一日、東京労働者災害補償保険審査官によって、症状固定時において、本件事故の後遺障害として、準用等級第一二級に該当する眼球の運動障害(複視)、第九級の七の二に該当する強度な三叉神経痛、第一二級の一三に該当する外貌醜状が残存しており、併合八級に該当する旨の認定を受けた。

6  労災給付

一審原告は、本件事故に関連して、次のとおりの労災給付を受けた。

(一) 療養補償給付 二二三万三四二五円

(二) 休業補償給付

保険給付額 三八万四四九三円

特別支給金額 一二万八一三八円

(三) 障害補償給付

保険給付額 四〇八万〇八三九円

特別支給金額 六五万〇〇〇〇円

二  争点

1  本件事故の態様

(一) 一審原告の主張

一審原告は、本件冷凍庫内で、本件リフトを一人で運転し、冷凍食品の入出庫作業をしていたところ、本件リフトで持ち上げたパレットが不安定であったため、本件リフトを後退させてリフトのツメを外した上、再度本件リフトのツメをさし直すことにしたが、その際、光線の射し具合でパレットが良く見えなかったことから、パレットを良く見るため、頭を右斜めに傾げて本件リフトの右横に出しながら本件リフトを後退させたところ、冷凍庫内の床に降り積もった霜の影響で本件リフトがスリップし、本件冷凍庫内のコンクリート製の柱と本件リフトに設置された後部マストの間に前頭部を挟まれた。

(二) 一審被告の主張

本件事故は、一審原告が、後方を十分確認しないまま、しかも、右側から頭を出したまま、本件リフトをスピードを出して後退させたことにより発生したものであり、一審原告の一方的な過失による自損事故である。

本件リフトは、荷物を積んでいないときにスリップするということはない。本件リフトにはライトがついており、本件リフトの右側に顔を出さなければリフトのツメ付近が見えないということはない。

2  一審被告の安全配慮義務違反の有無

(一) 一審原告の主張

(1) 一審原告が作業をしていた本件冷凍庫は、冷凍食品が、ぎっしりと何列にも重ねられ、五ないし六メートルの高さに積まれていた。しかも、極低温で床には霜が積もり、自然光も差し込まない薄暗い状態であった。奥に置かれた冷凍食品を出庫させようとする場合は、積み上げられた冷凍食品の間の幅一・二メートルないし一・五メートルという狭い場所で本件リフトを運転することを余儀なくされた。さらに、一審原告は、本件リフトの運転及び冷凍庫の作業経験が乏しかった。

(2) したがって、一審被告は、一審原告の生命及び身体の安全に配慮するため、

① 本件リフトの操作方法や冷凍加工食品の置場をも含めて、本件冷凍庫内での作業について必要な知識が吸収できるように安全教育を行う義務、

② 一審原告が作業に慣れるまでは経験者を一緒に配置して作業を指導する義務、

③ 事故に至らないように、また、事故が発生した場合には損害が発生しないように、ヘルメットを着用させる義務、

が存した。

(3) 一審被告は、右(2)記載の安全教育をする義務、経験者を一緒に配置する義務、ヘルメットを着用させる義務のいずれをも怠り、安全配慮義務に違反した。

(二) 一審被告の主張

(1) 一審被告は、冷凍庫内において本件リフトを操作して作業することができる即戦力者を募集したところ、一審原告は、フォークリフト技能講習を終了しており、冷凍庫内の作業経験がある旨申告して応募してきたので、一審原告に、ならし作業をさせたところ、現実に、そのような能力を有していたので採用したものである。一審被告は、一審原告の作業について、二、三日様子を見た後、一審原告が本件冷凍庫内の作業を希望したことから、一審原告に本件冷凍庫内での作業を任せることとしたが、その後も一週間ほどは一審被告の従業員である中田英明(以下「中田」という。)が一審原告の指導をしていた。このように、一審被告は、一審原告の経験、能力及び仕事の内容に応じた安全教育をしている。

(2) 一審被告は、ヘルメットについて、一審原告用のものの所在場所を教え、その着用を指示していたのであり、一審原告がそれを遵守せずに着用しなかったにすぎない。また、ヘルメットは、荷物の荷崩れの危険等から労働者を守るために着用するものであり、本件リフトの運転ミスから生じた本件事故とヘルメットを着用していなかったこととの間には、法律上の因果関係が存在しない。

3  一審原告の損害

(一) 一審原告の主張

(1) 治療費

① 自己負担分 四万〇八七〇円

② 労災療養補償給付分 二二三万三四二五円

(2) 通院交通費 五万九三六〇円(ただし、国立東京第二病院及び虎の門病院分)

(3) 休業損害 六八万一四九二円

平成四年一一月九日から平成五年一月三一日まで八四日につき一日八一一三円

なお、一審原告は、同年二月一日から症状固定の日である平成五年九月六日までの休業損害を請求していないが、これは、一審原告が平成四年二月一日から働き始めたためであり、右期間中の休業損害は、後遺障害の逸失利益を算定する際、考慮すべきである。

(4) 入通院慰謝料 一五〇万円

(5) 逸失利益 四一九八万六八九四円

① 労働能力喪失率 後遺障害等級は八級とされているが、その症状にかんがみると、労働能力喪失率は五〇パーセントとするのが相当である。

② 平均賃金 六六六万三〇〇〇円(平成五年賃金センサス高卒男子四五歳ないし四九歳の平均賃金)

③ 稼働年数 四九歳から六七歳まで一八年

④ 中間利息の控除 一二・六〇三(新ホフマン係数)

⑤ 逸失利益 六六六万三〇〇〇円×一二・六〇三×五〇パーセント=四一九八万六八九四円

(6) 後遺障害慰謝料 一〇〇〇万円

(7) 過失相殺 〇パーセント

本件事故の態様は、前記1(一)記載のとおりであり、本件事故について一審原告には過失がない。

(8) 損害のてん補 六六九万八七五七円(労災保険からの給付合計七四七万六八九五円から休業補償給付特別支給金一二万八一三八円、障害補償給付特別支給金六五万円の合計七七万八一三八円を控除した残額)

(9) 弁護士費用 四〇〇万円

(10) 総額 五三八〇万三二八四円

(二) 一審被告の主張

(1) 治療費 一審原告は、平成六年五月三一日まで、労災保険法上の療養補償給付を受けており、治療費のうち自己負担分は、過剰診療にかかるものであって、必要、かつ、相当な治療費ではない。また、一審原告は、平成五年九月六日に傷害を治癒しており、その後の治療費については治療の必要性があるとは認められない。

(2) 通院交通費 通院交通費は、不知であるが、過剰診療分にかかる通院交通費については争う。

(3) 休業損害 休業損害の主張は争う。

(4) 入通院慰謝料 一審被告には、本件事故の責任はないが、それを措いても、一審被告が、事故後、一審原告のことを考え、労災等の諸手続をし、職場への復帰等を考えていたことを考慮すると、一審原告の慰謝料請求は理由がない。

(5) 逸失利益 一審原告は、本件事故から三か月を経過しない平成五年二月一日から、労働基準監督署に対し、自ら働き始めると申し出て労災保険の給付を打ち切っている。右事実からすれば、一審原告が主張する頭痛、顔面痛の後遺障害については、本件事故との因果関係を含めて疑問が存する。

一審原告の傷害等級は、併合八級であり、殊に外貌の醜状障害が考慮されて障害等級が八級に繰り上がっていることからすれば、現実の労働能力喪失率が本来の八級と同様の四五パーセントであるとは認められない。また、外貌の醜状障害、眼球の障害、神経症状等が一審原告主張の六七歳まで持続するとは限らない。

一審原告は、運送関係の仕事を転々としていたものであり、平成五年賃金センサス高卒男子四五歳ないし四九歳の平均賃金を逸失利益算定の基礎とすることはできない。

(6) 後遺障害慰謝料 入通院慰謝料についてと同旨。

(7) 過失相殺 本件事故は、右1(二)のとおり、一審原告の一方的過失によるものである。仮に、一審被告に何らかの責任があるとしても、損害額の算定に当たっては大幅な過失相殺がされるべきである。

(8) 損害のてん補 一審原告の損害から労災給付金を控除すべきである。

第三当裁判所の判断

一  争点1(本件事故の態様)について

1  前提となる事実、《証拠省略》によれば、本件事故等に関し、次の事実が認められる。

(一) 一審原告は、高等学校を卒業後、主として、運送会社などに勤務し、トラックやフォークリフトの運転をしていたものであり、昭和五六年一一月ころ、フォークリフトの運転免許を取り、本件事故のあった平成四年一一月九日当時は、フォークリフトの運転歴が約五年ないし六年に達していたが、リーチフォークリフトの運転経験は延べ三か月、正味一か月程度、冷凍庫での仕事の経験は二か月程度にすぎなかった。

(二) 一審原告は、平成四年一〇月二七日、一審被告の出した求人広告を見て応募し、一審被告に採用され、同月二八日から勤務するようになった。なお、右求人広告には「フォークリフト(冷凍庫内)」「資格▼20~45歳位迄 一般の方」等の記載はあったが、「冷凍庫内でリーチフォークリフトを運転した経験がある者を求める」といった記載はなかった。

(三) 一審原告は、約二日間、冷凍庫外でフォークリフトを運転して補佐的な業務をした後、平成四年一〇月三〇日ころから、本件冷凍庫において、一人で、本件リフトを運転して冷凍食品を出し入れする業務に従事するようになった。

(四) 本件リフトは、前方に荷物を乗せる爪(フォーク)が二本ついており、この爪は、レバーの操作で、前後及び上下に動くとともに、爪の先を少し上げて傾斜をつけることができる(荷物を乗せるときは、それが落ちないように、爪の先を少し上げて傾斜をつける。)。運転席は右端に存在し、通常のフォークリフトと異なり、立って運転する。爪が取付けられている部分は、運転席から一メートルくらい前方であり、爪と同じ幅で高さ二・五メートルくらいの二本の鉄柱(前部マスト)が存在し、爪はこの鉄柱を上下にスライドする構造になっている。運転席の目の前にも、これと同じ間隔で二本の鉄柱(後部マスト)が存在し、運転席上の鉄製の屋根がこの鉄柱で支えられている。

(五) 本件冷凍庫は、入口の扉から奥に向かってまっすぐ通路があり、その両側に冷凍食品が天井近くまで積み上げられている。冷凍食品は箱結めされており、幅一・二メートルほどの木製や金属製の枠(パレット)の上に数箱ずつ積み重ねられ、その上にパレットが置かれて、またその上に冷凍食品が積み重ねられ、パレットごとに一組とすると、おおむね四組ほど積み重ねられている。そして、通路の脇に、コンクリート製の大きな柱が複数存在しており、この柱ごとに「マス」という区画で区切られ、このパレットが、ひとつのマスごとに、通路と平行に四列、通路側から奥に向かって(すなわち、通路と交差する方向)六列並んで積み重ねられている。

本件冷凍庫内は、雫下二〇度ほどに保たれており、倉庫外との温度差が大きいため、入口近くほど、天井や床に霜がついていた。そして、内部の通路付近に多少の照明は存在したものの、自然光は殆ど差し込まず、薄暗い状態であった。本件リフトには、後部マストに二機の照明灯(前照灯)が取り付けられていた。

(六) 一審原告の業務内容は、五階にある本件冷凍庫前までエレベーターで運ばれてきた冷凍食品を本件冷凍庫内に運び入れて積み重ねて保管するとともに、運ばれてきた冷凍食品に本件冷凍庫から運び出すべき冷凍食品を記載した伝票が貼付されてくるので、その伝票に従って、運び出す冷凍食品を選別し、本件リフトで運び出すことであった。

伝票には、マスの番号が記載されており、それに従って伝票に記載された冷凍食品を探して運び出すことになっていたが、一審原告は、本件事故当時、本件冷凍庫内での作業を始めてから約一〇日が経過していたが、休日等を含めると実際に本件冷凍庫内で作業した日数は約一週間程度であったため、冷凍食品の保管場所を十分に把握していなかった上、冷凍食品が保管されたパレットが高く積みあげられているため、目的の冷凍食品を探すのに手間取ることが多く、冷凍食品を探せないうちに、又は、他の冷凍食品をどけて目的の冷凍食品を取り出すことができないうちに次の伝票が到着するなど、入出庫の指示に追われるように作業をすることが多かった。

(二) 一審原告は、平成四年一一月九日午後三時ころ、本件冷凍庫内で、伝票に従って冷凍食品を選別して運び出す作業を一人でしていた。作業をしていたのは、七番のマスであった。

一審原告は、運び出そうとする冷凍食品が、通路と直交する方向の奥に存在し、その手前に他の冷凍食品のパレットが置いてあったため、本件リフトで目的の冷凍食品の手前にある冷凍食品を、本件リフトの左右に約三〇センチメートルないし約四〇センチメートルの幅が残る形で除去し、さらに奥へ進入して、本件リフトの爪に、目的の冷凍食品の手前に置いてある冷凍食品のパレットを乗せ、一旦通路側まで後退してそのパレットを降ろし、再び奥に進入するという作業を繰り返していた。

なお、本件リフトが進入する方向に対して右側で、かつ、通路側(本件リフトが奥まで進入した場合における右後方)にコンクリート製の大きな柱が存在していた。

(八) 一審原告は、約三列分ほどのパレットをどけた後、さらに前方のパレットをどけるため、そのパレットに本件リフトの爪を入れて爪の先を少しあげた上、一旦持ち上げたが、重心が不安定であった。そこで、もう一度重心が安定する位置に爪を入れ直そうと考え、パレットを一旦置いて、後退することにした。一審原告は、爪を前後させる方法もあったが、爪を出したままの状態でそのまま後退する方が時間がかからないと考え、この方法を採った。その際、一審原告は、爪が水平になっておらず傾斜がついたままで後退すると、一旦置いたパレットを引きずってしまうので、爪の傾斜と位置を確認しようとしたが、倉庫内が薄暗い上、右側の爪が本件マストの影になって見えにくいため、爪が良く見えるように本件リフトの右方から顔を外に出してそのまま一メートル程度後退したところ、右後方に存在したコンクリート製の柱と後部マストの右側との間に顔面を挟まれ、左前頭骨陥凹骨折、左眼窩骨骨折、左側頬骨骨折、左上顎洞骨折、左眼球運動障害の傷害を負った。

(九) 一審被告は、従前から、小さいヘルメットを備え付けていたが、従業員が着用を嫌がっていたため、本件事故当時、東洋水産株式会社東品川冷凍庫では、従業員がヘルメットを着用することなく作業をしており、一審被告も、これに対して、特に、着用を徹底させるような指導をしていなかった。なお、一審被告は、従来のヘルメットが防寒帽の上から着用するには小さいことから、大きなヘルメットを支給する予定でいたが、本件事故当時は、まだ支給をしていなかった。右のような事情であったため、一審原告は、本件事故当時、ヘルメットを着用していなかった。

一審被告は、一審原告を採用した際、ヘルメットを直接支給したことはなかったし、具体的に着用の指示をしたことはなかった。また、東洋水産株式会社東品川冷凍庫における一審被告の現場責任者であった田中英明は、一審原告が本件冷凍庫内で作業を開始した当初、作業の指導をしたことがあったが、一審原告は、その際にもヘルメットの着用はしておらず、中田英明も、特にそのことを注意することはなかった。

2(一)  一審原告は、本件事故の原因について、冷凍庫内の床に降り積もった霜の影響で本件リフトがスリップし、本件冷凍庫内のコンクリート製の柱と本件リフトに設置された後部マストの間に前頭部を挟まれた旨主張し、《証拠省略》中には、右主張に沿う陳述部分ないし供述部分が存する。しかし、右陳述ないし供述は、スリップを体験したというものではなく、後日良く考えてみればスリップ事故であったと推測できるというものである上、右陳述ないし供述を裏付けるに足りる的確な証拠、例えば、本件冷凍庫内に本件リフトによって印象されたと認められるようなスリップ痕があったとの証拠などはないから、右陳述ないし供述によって、本件事故が一審原告主張のようなスリップ事故であると認めることはできない。

(二) 一審被告は、本件事故は、一審原告が、後方を十分確認しないまま、しかも、右側から頭を出したまま、本件リフトをスピードを出して後退させたことにより発生したものであり、一審原告の一方的な過失による自損事故である旨主張するが、右主張を裏付ける確実な証拠はなく、一審原告の供述によっても、一審原告が、本件事故の際、特にスピードを出して本件リフトを後退させたことを窺わせる形跡はなく、また、前記1(八)のとおり、本件事故の際、本件リフトが後退した距離が一メートル程度であり、一審原告において運転を誤るほどのスピードが出る距離とは思われないことを考慮すると、本件事故の態様が、一審被告主張のような一審原告の過失による自損事故であると認めることはできない。

(三) 一審被告は、ヘルメットの着用に関し、一審原告に対し、同人用のヘルメットの所在場所を教え、その着用を指示していた旨主張し、原審における証人中田英明の証言中には、中田が、一審原告の入社当初、一審原告に対し、ヘルメットの所在場所を教え、ヘルメットをかぶるように指示した旨、仕事場においてヘルメットを着用しないで仕事をする従業員はいない旨の供述部分が存する。しかし、中田は、平成五年二月一二日に、一審原告訴訟代理人及び一審原告と話し合った際、本件冷凍庫がある第二工場において、従業員がヘルメットを着用しないで仕事をすることがあったことを認めていること、一審被告が、労働災害保険支給請求書に記載されている、「(一審原告に対し)安全帽の用意、指示、注意は一切なかった。」との事実を前提として、本件事故当時、一審原告が安全帽を着用していた旨記載した労働災害保険支給請求書を一審原告に作成・交付させたことを陳謝する旨の顛末書を品川労働基準監督署に提出していること(顛末書の提出については一審被告も認めている。)を考慮すると、一審被告が一審原告に対しヘルメットの着用を具体的に指示していたとは認め難く、これに反する中田の前記供述はたやすく信用することができず、一審被告の前記主張は採用できない。

(四) そして、他に、右1の認定を覆すに足りる証拠は存在しない。

3  前記1記載の事実によれば、本件事故態様は、一審原告が、本件リフトを後退させるに当たり、爪の傾斜と位置を確認するため本件リフトの右方から顔を外に出してそのまま一メートル程度後退したため、右後方に存在したコンクリート製の柱と後部マストの右側との間に顔面を挟まれたというものであると認められる。

二  争点2(一審被告の安全配慮義務違反の有無)について

1  雇傭契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払をその基本内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負っているものと解するのが相当である(最高裁昭和五九年四月一〇日第三小法廷判決・民集三八巻六号五五七頁参照)。

2  右一1の事実によれば、本件冷凍庫が雫下二〇度という極低温に保たれていること、若干の照明はあるものの自然光が殆ど入らないため内部が暗く見通しが悪いこと、冷凍食品が高く積み上げられていること、冷凍食品を入出庫するためには、右のような冷凍庫内の状況の下で、積み上げられた冷凍食品を本件リフトを使って積み降ろしをし、冷凍食品を積んだ本件リフトを運転して、狭いスペースを前後進して通路に出た上、本件冷凍庫の入口まで運ばなければならないこと、本件冷凍庫内には各所にコンクリート製の柱が存在することが認められ、これによれば、一審被告としては、冷凍食品の入出庫作業の際に、高く積み上げられた冷凍食品が荷崩れする事故、又は、本件冷凍庫内が暗く極低温に保たれていることから本件リフトを操作、運転するのが難しい状況であるため、本件リフトの運転を誤って冷凍庫内のコンクリート製柱に衝突する事故などが発生する可能性があることを容易に予見できたというべきである。そして、一審原告が、本件リフトの運転及び冷凍庫での業務経験があったとはいえ、その経験がわずかであり、また、事故当時は、一審被告に採用され、本件冷凍庫内で作業を始めてから一〇日ほどしかたっておらず、本件冷凍庫内での作業は正味約一週間程度であったため、十分作業に習熟しておらず仕事に追われている段段であったことを併せ考えると、一審被告としては、一審原告について、しばらくの間は、本件リフトを使用した冷凍食品の積み降ろし作業や冷凍食品の保管位置を含めた作業方法などを監督して、本件リフトの危険な操作、運転があればこれを是正するなどし、また、一審原告にヘルメットを支給することはもちろんのこととして、その着用を確実に履行するように指示監督をするなどして安全かつ速やかに作業ができるように配慮すべき注意義務があったというべきである。

一審被告は、右注意義務を怠り、ヘルメットの支給や着用の指示を明確にせず、ヘルメットを着用せずに作業することが倉庫全体で習慣化していたにもかかわらず、これを放置していた(新しいヘルメットの支給を予定していたが、事故当時は実現していなかった。)上、一審原告が、本件冷凍庫で作業を始めた当初に作業の指導をしたのみで、採用まもない一審原告を一人で作業させ、本件リフトについて危険な操作、運転をしていないか否かなどの監督、注意を怠ったため、一審原告が、本件リフトの右横に顔を出したまま本件リフトを後退させるなどの危険な運転操作をすることを防止することができず、そのため本件事故が発生し、かつ、その際一審原告にヘルメットを着用させていなかったため、一審原告の傷害の程度がより重篤になったと認められる。そうすると、一審被告には、右の点で、安全配慮義務違反があったというべきである。

なお、一審被告は、一審原告を、冷凍庫内において本件リフトを操作して作業することができる即戦力者として採用した上、一審原告の作業について、二、三日様子を見た後、本件冷凍庫内での作業をさせたが、その後も一週間ほどは中田において一審原告の指導をしていた旨主張するが、前記一1(一)、(二)のとおり、一審被告が出した求人広告中には、即戦力者を求めるといった趣旨の記載はなく、現実には一審原告が冷凍庫内でリーチフォークリフトを使った作業に従事した経験がわずかであったこと、加えて、一審原告が本件冷凍庫内で作業を始めた後、中田が実際に本件冷凍庫内で一審原告と一緒に作業をした形跡はないことを考慮すると、一審被告が、一審原告に対し、十分な安全教育ないし作業の監督をしたとは認められないから、一審被告の右主張は、採用することができない。また、一審被告は、ヘルメットは、荷物の荷崩れの危険等から労働者を守るために着用するものであり、本件リフトの運転ミスから生じた本件事故とヘルメットを着用していなかったこととの間には、法律上の因果関係が存在しない旨主張するが、本件冷凍庫内での作業状況を考慮すれば、荷崩れ等だけでなく本件リフトの運転自体に伴って事故が発生する可能性があることは容易に推測できるところ、このような事故が発生した場合に、ヘルメットを着用していれば少なくとも傷害の程度を軽く押えることができ損害の拡大を防ぐことができることもまた容易に予見することができるのであって、このような事実にかんがみれば、本件リフトを運転する際にヘルメットを着用させることを規定する具体的な法規がないとしても、使用者である一審被告には、その従業員である一審原告の身体の安全を確保するため、ヘルメットの着用を指示、指導する義務があったというべきであるから、本件事故による損害の発生・拡大とヘルメットを着用していなかったこととの間に法律上の因果関係があることは明らかである。したがって、一審被告のこの点での主張は採用できない。

三  争点3(一審原告の損害)について

1  治療費について 二二五万四六九五円

一審原告の症状固定時期は、前記第二、一4記載のとおり、平成五年九月六日であるところ、一審原告は、症状固定後も、多くの病院に通院しているが、そのうち、国立東京第二病院及び虎の門病院での通院治療については、顔面痛や頭痛が頻繁にあり、復帰して新たに就いた仕事が継続できないような状態になったことから、痛みを緩和させるための投薬治療目的で通院したことが認められる。

一審原告には、障害等級九級に該当する強度の三叉神経痛が残存していることからすると、この痛みの緩和のため、投薬治療目的で通院することは、ある程度やむを得ないというべきであるから、国立東京第二病院及び虎の門病院での通院治療は、本件事故と相当因果関係があるというべきである。

しかし、その他の病院については、痛みの原因を知るために多くの病院に通院したものであり、国立東京第二病院において、その原因が具体的に把握されていたことを考慮すると、右目的での通院について、本件事故と相当因果関係があるとは認められない。

したがって、本件事故と相当因果関係を有する治療費等に関する損害は、症状固定時までの分も含めた国立東京第二病院の治療費及び文書料二二三万七九三五円及び虎の門病院の治療費一万六七六〇円の合計二二五万四六九五円であると認められる。

2  通院交通費 五万九三六〇円

一審原告は、国立東京第二病院に通院するに際し、電車とバスを利用して一回につき往復九八〇円、虎の門病院に通院するに際し、電車と地下鉄を利用して一回につき往復七四〇円を支出した。

したがって、通院交通費としては、国立東京第二病院への通院日数五〇日分として四万九〇〇〇円、虎の門病院への通院日数一四日分として一万〇三六〇円の合計五万九三六〇円となる。

3  休業損害 六七万七五四四円

(一) 一審原告が、一審被告に雇用された条件は、日給一万円の日払いであり、交通費や昼食費は支給され、勤務日は月曜日から金曜日までであり、土曜日と日曜日は休日であったこと、一審原告は、本件事故により、事故当日である平成四年一一月九日から平成五年一月三一日までの八四日間休業を余儀なくされたことが認められる。

昼食費は、給与分に含ましめるのが相当であるから、これを一日当たり一〇〇〇円として換算し、一月(三〇日)当たりの出勤日数を二二日として換算すると、一日当たりの収入は、八〇六六円(一円未満切り捨て)となる。

したがって、これを基礎に八四日間分の休業損害を算定すると、六七万七五四四円となる。

(二) 一審原告は、平成四年二月一日から症状固定の日である平成五年九月六日までの休業損害を請求していないが、これは、一審原告が平成四年二月一日から働き始めたためであり、右期間中の休業損害は、後遺障害の逸失利益を算定する際、考慮すべきである旨主張する。しかし、一審原告が、同日以降働いたことにより、どの程度の収入を得ていたかを確定するに足りる証拠は存在しないから、これを休業損害、逸失利益において考慮することはできず、症状固定前に働かざるを得なかったことについては慰謝料において考慮するのが相当である。

4  慰謝料 九五〇万円

一審原告の負傷内容、入通院の経過、障害の内容及び程度並びに一審原告が症状固定前に働くことを余儀なくされたこと、労災等の諸手続がされた経過など、本件にあらわれた一切の事情を総合すると、一審原告の慰謝料としては、九五〇万円が相当であると認められる。

5  逸失利益 一六八八万二五七二円

(一) 一審原告は、本件事故により、複視になり、物体が二つに見えるほか、振動が加わると針を刺すような頭痛が走るため、車両関係の仕事をするのが困難になったこと、顔面痛や頭痛がひどく、生活のために平成五年二月から、本の結束、溶接助手、運転助手、搬送センターでの荷物の積み換えなどの日給の仕事に従事したが、痛みのために仕事ができず、仕事を断られたことがあったこと、ほかにも、左目から涙が出たり、痛みによるむかつきなどもあること、現在は、自動車部品に必要な軽い部品をラインの作業者へ手押し車に乗せて配る仕事を眼帯をしてなんとか継続していること、したがって、相当の給与を得られる時期があるとしても、常に退職させられる危険性があるため、継続して就業し年齢相応の給与を得ることは極めて困難であることが認められる。

一審被告は、一審原告が、本件事故から三か月を経過しない平成五年二月一日から、労働基準監督署に対し、自ら働き始めると申し出て労災保険の給付を打ち切っていることからすれば、一審原告が主張する頭痛、顔面痛の後遺障害については、本件事故との因果関係を含めて疑問が存する旨主張するが、一審被告が症状固定前に就労したのは、自分の生活を維持するため、就労することが必要であると考えたためであると認められ、一審原告が当初受けた診断内容等をも併わせ考慮すると、右就労の事実から、一審原告が主張する頭痛、顔面痛の後遺障害と本件事故との間に因果関係がないとすることはできない。

(二) 右事実及び一審原告の障害等級等を総合すると、一審原告は、残存した障害により、症状固定時である五〇才から労働可能期間である六七才まで一七年間にわたって四五パーセントの労働能力を喪失したと認めるのが相当である。

一審被告は、一審原告の傷害等級が、併合八級であり、殊に外貌の醜状障害が考慮されて障害等級が八級に繰り上がっていることからすれば、現実の労働能力喪失率が本来の八級と同様の四五パーセントであるとは認められないし、外貌の醜状障害、眼球の障害、神経症状等が一審原告主張の六七歳まで持続するとは限らない旨主張する。しかし、一審原告の後遺障害は、外貌の醜状障害を除いても、準用等級第一二級に該当する眼球の運動障害(複視)、第九級の七の二に該当する強度な三叉神経痛があり、右三叉神経痛については薬剤を用いてもコントロールをすることが困難であるから、これらの事実を考慮すれば、労働能力喪失率は四五パーセントであるというべきである。また、右事実からすれば、一審原告は、六七歳までの間、四五パーセントの労働能力を喪失したと認められる。

(三) 一審原告が、本件事故まで転々と職を変えており、一審被告での給与も日給制であることを考慮すると、一審原告の逸失利益の算定については、平成五年賃金センサス産業計・学歴計の男子全年齢平均である年間四七五万三九〇〇円の七〇パーセントに相当する年間三三二万七七三〇円を基礎とすべきである。

一審原告は、一審原告の収入が、右金額を超えると主張し、平成三年九月ないし一二月の給与証明書を提出するが、右証拠によっても、一審原告の年間給与が右三三二万七七三〇円を大きく超えているというわけではないのであって、一審原告の就労状況を考慮すると、逸失利益算定の基礎収入としては、三三二万七七三〇円が相当であり、この点に関する一審原告の主張は採用できない。

(四) これらを前提に、ライプニッツ方式(係数一一・二七四〇)により中間利息を控除し、一審原告の逸失利益を算定すると、一審原告の逸失利益は、一六八八万二五七二円(一円未満切り捨て)となる。

三三二万七七三〇円×〇・四五×一一・二七四〇=一六八八万二五七二円

6  過失相殺 五〇パーセント

本件事故の態様は、前記一3記載のとおりであり、一審原告には、本件事故について、本件リフトを後退させる際、コンクリート製の柱が存在することや、そこまでの距離を認識できたにもかかわらず、それを怠り、頭部を本件リフトから右側に出した状態で後退し、本件事故を惹起した過失があるというべきである。一審原告の右過失を勘案すると、本件事故の発生については、一審原告にも五〇パーセントの過失があったとするのが相当である。

7  損害のてん補

一審原告は、労災保険による給付を受けているが、これによって損害のてん補がされるのは、同一の事由に基づく損害に限られるところ、療養給付は、治療費等及び通院交通費にかかる損害と、休業補償給付及び障害補償給付は、合わせて休業損害及び逸失利益相当の損害と、それぞれ同一の事由に基づくものであると認められるから、右対応関係に応じて右各損害のてん補がされると解される。

そうすると、治療費等及び通院交通費の合計額二三一万四〇五五円に、原告の過失割合である五〇パーセントに相当する額を減額すると、一一五万七〇二七円(一円未満切り捨て)となるから、これは、療養給付により全額てん補されたことになる。また、休業損害及び逸失利益の合計額一七五六万〇一一六円に、一審原告の過失割合である五〇パーセントに相当する額を減額すると、八七八万〇〇五八円となるから、これから、保険給付として支給された休業補償給付及び障害保障給付の合計額四四六万五三三二円(なお、特別支給金の合計七七万八一三八円は、被害者の福祉を目的として支給されるものであるから、損害額から控除するのは相当でない。)を控除すると、四三一万四七二六円となる。さらに慰謝料の九五〇万円に一審原告の過失割合五〇パーセントに相当する額を減ずると、過失相殺後の金額は四七五万〇〇〇〇円となる。

したがって、一審原告の損害残額は、合計九〇六万四七二六円となる。

8  弁護士費用 一〇〇万円

本件事故の難易、本件における認容額等を考慮すると、本件事故と相当因果関係を有する弁護士費用相当の損害は、一〇〇万円であると認められる。

9  総額 一〇〇六万四七二六円

四  以上の次第で、一審原告の請求は、一審被告に対し、安全配慮義務違反に基づく損害金一〇〇六万四七二六円及びこれに対する請求の日の翌日である平成五年三月七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。

よって、右と同旨の原判決は正当であり、一審原告及び一審被告の本件各控訴はいずれも理由がないからそれぞれ棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 塩崎勤 裁判官 小林正 萩原秀紀)

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