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東京高等裁判所 平成11年(ネ)4926号 判決 2000年9月27日

控訴人(原告)

株式会社ウエスタン・アームス

右代表者代表取締役

【A】

右訴訟代理人弁護士

宗万秀和

荒木和男

近藤良紹

早野貴文

川合順子

高橋隆二

山枡幸文

鬼頭栄美子

同補佐人弁理士

【B】

被控訴人(被告)

株式会社東京マルイ

右代表者代表取締役

【C】

右訴訟代理人弁護士

湊谷秀光

右補佐人弁理士

【D】

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、原判決別紙物件目録記載の製品を製造、販売してはならない。

3  被控訴人は、その占有する前項記載の製品及びそれを製造するための金型を廃棄せよ。

4  被控訴人は、控訴人に対し、金四九五九万九〇〇〇円及びこれに対する平成九年四月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

5  訴訟費用は、第一、第二審を通じ、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨の判決

第二当事者の主張

当事者の主張は、次のとおり当審における主張を付加するほかは、原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。

一  控訴人

1  本件発明は、第1状態における第2のガス通路の状態について何ら限定が加えられているものではなく、これが閉状態であることを要するとした構成要件Hに関する原審の解釈は、本件発明に不要な要件を加えるものであり、失当である

2  本件発明における「第1のガス通路と第2のガス通路の夫々を開閉制御」する構成は、「ガス通路制御部」の制御の対象を二つの通路に特定したものであるが、それ以上に「開閉制御」の具体的な技術内容を特定するものではないから、第1、第2のガス通路がいつどのように「閉状態」に置かれるかは、要件ではない。

3  本件明細書では、「開閉制御」の技術内容について、これを開状態の制御と閉状態の制御とに区別して記載されておらず、また、「開閉制御」を「開閉」と「制御」の各文言に区分して説明しているものでもない。本件発明の「ガス通路制御部」は、ガス通路を閉状態にする制御を行うものと、閉状態にせずに制御を行うものの双方を含むものと解すべきである。

4  受圧部にガスが流れ込んでも、弾丸発射までにスライダ部に有意的な移動が生じない限り、弾道の狂いの原因となり得るスライダ部の後退が生じない。蓄圧室からのガスが受圧部に流れ込まないようにすることは、本件発明の技術思想において必然的なものではない。

5  本件発明の構成要件Hにいう「開閉制御」とは、ガス圧の作用のさせ方を制御することにほかならず、第1のガス通路を通じるガスにより装弾室の弾丸に対してガス圧を作用させて弾丸を発射させる状態と、第2のガス通路を通じるガスによりスライダ部と一体化した受圧部にガス圧を作用させる状態とを変化、制御する趣旨と解釈されるべきである。

二  被控訴人

1  本件発明の構成要件Hは、「第1のガス通路と第2のガス通路の夫々を開閉制御し」と明確に記載されており、ここにいう「夫々」とは、「第1のガス通路」と「第2のガス通路」の双方の意味であり、また、「開閉制御」という以上は、「開状態」と「閉状態」とが切り換えられることを意味する。

2  本件発明の構成要件Hにおいて、「第1のガス通路を開状態として、上記蓄圧室からのガスを上記装弾室に供給する第1の状態から、上記第2のガス通路を開状態として、・・・第2の状態に移行する」と記載されている以上、第2のガス通路は、開状態の前のいずれかの時点において閉状態となることが必要である。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと判断するところ、その理由は、当審における主張につき次のとおり付加するほかは、原判決「事実及び理由」の「第三 当裁判所の判断」のとおりであるから、これを引用する。

二  当審における控訴人の主張について

1  控訴人は、第1状態における第2のガス通路が閉状態であることを要するとした構成要件Hに関する原審の解釈は、本件発明に不要な要件を加えるものであると主張する。しかしながら、本件発明の構成要件Hにおいて、「第1のガス通路と第2のガス通路の夫々を開閉制御し」と規定されているから、この要件の解釈として、第2のガス通路の状態が一定のものに限定されると解することは、本件発明に不要な要件を加えるものではない。

2  また、控訴人は、本件発明の「第1のガス通路と第2のガス通路の夫々を開閉制御」する構成において、第1、第2のガス通路がいつどのように「閉状態」に置かれるかは要件とされていないと主張する。しかしながら、本件発明の構成要件Hには、「第1のガス通路と第2のガス通路の夫々を開閉制御し」と規定されており、ここにいう「夫々」とは、「第1のガス通路」と「第2のガス通路」の双方を意味し、「開閉制御」とは、「開状態」と「閉状態」とが切り換えられることを意味するから、本件発明は、「第2のガス通路」が「開状態」と「閉状態」とに切り換えられることを意味するものというべきである。

3  本件発明の構成要件Hには、「第1のガス通路を開状態として、上記蓄圧室からのガスを上記装弾室に供給する第1の状態から、上記第2のガス通路を開状態として、・・・第2の状態に移行する」と規定されているから、本件発明におけるこの構成を考え併せるならば、第2のガス通路は、開状態となる前では閉状態であると解するほかはない。本件発明の「ガス通路制御部」が第2のガス通路を閉状態にせずに制御を行うものを含むということはできない。

4  なお、受圧部にガスが流れ込んでも、弾丸発射までにスライダ部に有意的な移動が生じない限り、弾道の狂いの原因となり得るスライダ部の後退が生じないということはできるが、前記(原判決二八頁三行目ないし二九頁八行目)のとおり、本件発明は、「装弾室に装填された弾丸の発射後にスライダ部の移動が開始されるものとすることで、装弾室から発射される弾丸がスライダ部の移動による影響を受けてその弾道に狂いが生じることになる事態を回避する」ことを目的の一つとしており、そのためには、装弾室から弾丸が発射されるに至るまでの第1の状態において、スライダ部の後退が生じることのないような構成にすることが必要であり、そのためには、ガス通路制御部が第2のガス通路を完全な閉状態に制御する構成を採るのが最も望ましく、本件発明がこのような構成を採用しているものと解するのが合理的である。

三  このように、控訴人の被控訴人に対する請求はいずれも理由がなく、これを棄却した原判決は正当であって、控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき、民事訴訟法六一条、六七条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 長沢幸男 裁判官 宮坂昌利)

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