東京高等裁判所 平成11年(ネ)83号 判決 1999年6月03日
千葉県柏市あけぼの一丁目一番三号
控訴人
村上一男
右訴訟代理人弁護士
池谷昇
東京都豊島区南大塚一-五〇-五 コーポ大塚マンション二〇二
被控訴人
森口和晃
栃木県小山市西城南二-二五-一五
同
永岡忠治
東京都練馬区桜台二-五-四-二〇三
同
近藤昌人
青森県むつ市新町一〇-一七 森山アパート一〇三
同
川田靜子
埼玉県川口市長蔵一-四-一二
同
佐藤一郎
東京都北区田端新町一-三-八-二〇一
同
鷺島誠一郎
茨城県古河市東本町一-二二-二六-二〇五
同
小倉毅
北海道札幌市北区新川三条一五丁目五番一-二〇三
同
川人誠司
埼玉県東松山市箭弓町二-一二-一九 プログレス東松山三〇二
同
遠藤照光
栃木県小山市本郷町一-六-三
同
関根準司
神奈川県横須賀市追浜町二-二〇
同
山崎磨智
滋賀県長浜市春近町二二〇-二
同
矢野宏一
新潟県中蒲原郡横越町茜ケ丘二九二六-一四
同
南場正俊
東京都新宿区西新宿七-一-八 ヒノデビル三階
新宿カイロプラクティックセンター内
同
宮崎伸宜
被告ら訴訟代理人弁護士
水戸守巖
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
原判決を取り消す。
被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して金三億四〇〇〇万円及びこれに対する平成八年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
との判決及び仮執行宣言
二 被控訴人ら
主文と同旨
第二 事案の概要
事案の概要は、次のとおり当審における控訴人の主張を付加するほかは、原判決の事実及び理由の第二 事案の概要のとおりであるから、これを引用する。
(当審における控訴人の主張)
一 被控訴人森口は、平成七年一〇月二七日に村上整体学院の学院長を退任し、同年一二月二三日に全国カイロ師会の専務理事を退任している。ところが、日本CD学院及び日本CD協会が営業を開始したのは、同年一一月一日である。
日本CD学院及び日本CD協会の発足には、資金・人、場所・物(物的諸設備)の準備が当然必要であって、被控訴人森口において、平成七年一〇月二七日の退職後、右営業開始までのわずか四日間でこれらを準備したものではない。事務職員の確保、宣伝チラシ、学校案内、入学案内の作成、場所の借入、電話の架設、学生、生徒の確保、講師の確保等々の各種準備は、それらに必要な資金の手当も含めて、平成七年夏ころから、被控訴人森口、同永岡、同鷺島を中心にして行われていたものである。
二 被控訴人森口は、控訴人の被雇者であって、控訴人からの任命により、村上整体学院の学院長及び全国カイロ師会の専務理事に就任していたものであるから、控訴人に対して競業避止義務を負担していたにもかかわらず、平成七年夏ころから、新渡英夫と共謀して、控訴人の営業する村上整体学院及び全国カイロ師会と競合する日本CD学院及び日本CD協会を設置すること及びそれらの経営母体として株式会社ナチュラルウェルネスの設立を企図して、村上学園で知り合った仲間の内から協力者を捜すことにした。
被控訴人森口は、平成七年夏ころ、被控訴人鷺島に対して、日本CD学院及び日本CD協会を設立することについての協力を求め、同被控訴人もその趣旨に賛同して、被控訴人森口が控訴人と競業する営業をすることを了解して、そのころ、一五〇万円を出資した。
被控訴人鷺島は、同年夏ころ、右趣旨のもとに、山根悟を説得し、同人もこれを了解して、その後、二〇〇万円を出資した。
被控訴人森口は、同年一〇月ころ、同趣旨のもとに被控訴人南場を説得し、同被控訴人もこれを了解して、同月三〇日、一〇〇万円を出資して「日本CD学院」名義の銀行口座に振込み送金した。
被控訴人遠藤は、同年夏ころ、新渡及び被控訴人森口とともに日本CD学院及び日本CD協会を設立することを共謀し、そのころ、被控訴人矢野を説得し、同被控訴人もこれを了解して、そのころ、一〇〇万円を出資した。
被控訴人森口は、同年夏ころから日本CD学院及び日本CD協会を開設する場所を探索し、同年一〇月中ころ、貸主有限会社ヒノデ商事との間で、ヒノデビルを賃借することとして、被控訴人永岡を交渉担当者としてビル賃貸借契約を締結した。ただし、賃借名義人は、新渡としたものである。
三 被控訴人森口は、村上整体学院の学院長として、生徒に販売する教材教具販売に係る利益金を自由に運用・消費し、また、全国カイロ師会の専務理事として会費その他の会の公金の管理運用の権限を有し、これらの費用を費消してアメリカ研修旅行に出かけたりしていた。したがって、被控訴人森口は、退職後においても、相当の期間は、競業避止義務を負う。
第三 争点に対する判断
当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するところ、その理由は、次のとおり訂正し、控訴人の当審における主張に対する判断を付加するほかは、原判決の事実及び理由の第三 争点に対する判断と同じであるから、これを引用する。
(当審における控訴人に主張に対する判断)
控訴人は、日本CD協会が平成七年一一月一日に営業を開始したことを前提として、全国カイロ師会に対する競業に該当すると主張するものと解されるけれども、日本CD協会が平成七年一一月一日に営業を開始したことも、全国カイロ師会が控訴人の事業であることも、これを認めるに足りる証拠はない。かえって、証拠(甲一四、一六の八)によれば、全国カイロ師会は、会員の総会が開催されて多数決の原則が行われ、会員の資格の得喪の規定を有して会員の変動にかかわらず同会は存続するものであること、同会の組織においては、定款等により代表の方法、総会の運営、財産の管理等が定められていたこと、被控訴人森口が全国カイロ師会を退会したころ、同会の代表者である会長は小林興起であったことが窺われるところである。
控訴人は、事務職員の確保、宣伝チラシ、学校案内、入学案内の作成、場所の借入、電話の架設、学生、生徒の確保、講師の確保等々の各種準備は、それらに必要な資金の手当も含めて、平成七年夏ころから、被控訴人森口、同永岡、同鷺島を中心にして行われていたと主張するけれども、被控訴人らが違法な準備行為をしていたと認めるに足りる証拠はない。また、当審における控訴人の主張の二の項に係る日本CD学院及び日本CD協会等を設立することについての協力要請や出資が違法であると解すべき事情も認めることができない。なお、控訴人は、日本CD学院及び日本CD協会の設立の準備行為ないし出資行為をすること自体が村上整体学院に対する競業であると主張するものとも解されるけれども、右設立の準備行為ないし出資行為が村上整体学院の事業の部類に属する取引であるということはできないから、これを直ちに違法な競業であるということはできないものである。
更に、控訴人は、被控訴人森口について、村上学院の学院長ないし全国カイロ師会の専務理事として、利益金ないし会費等を費消し、アメリカ研修旅行に出かけたりしていた等の事実を根拠として、村上整体学院の退職後においても、相当の期間は、競業避止義務を負う旨主張するけれども、控訴人主張の事実によっても、被控訴人森口が、村上整体学院の退職後に競業避止義務を負うと認めることはできない。
したがって、控訴人の主張は、採用することができない。
第四 結論
よって、原判決は相当であって、本件控訴は、理由がないから、棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴訟法六七条、六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結日・平成一一年五月六日)
(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 山田知司 裁判官 宍戸充)