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東京高等裁判所 平成11年(行ケ)123号 判決 2000年3月23日

原告

ポロ・ビーシーエス株式会社

代表者代表取締役

【A】

訴訟代理人弁護士

北方貞男

弁理士

【B】

【C】

【D】

【E】

被告

代表者代表取締役

【F】

訴訟代理人弁護士

飯田秀郷

栗宇一樹

和田聖仁

早稲本和徳

久保田伸

秋野卓生

七字賢彦

主文

特許庁が平成10年審判第30618号事件について平成11年3月23日にした審決のうち結論第1項の部分を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1原告の求めた裁判

主文第1項同旨の判決。

第2事案の概要

1  特許庁における手続の経緯

原告は、登録第1434359号商標(昭和47年6月13日登録出願、昭和55年9月29日設定登録、平成2年9月20日存続期間の更新登録。本件商標)の商標権者である。本件商標は「POLO」の欧文字を横書きして成り、旧第17類「ネクタイ、その他本類に属する商品、但し、ポロシャツ及びその類似商品ならびにコートを除く」を指定商品とする。

被告は、平成10年6月19日、原告を被請求人として、商標法50条1項の規定により、「本件商標の指定商品中「被服(運動用特殊被服を除く)」の登録を取り消す」との審決を求める審判請求をし(平成10年7月15日予告登録)、平成10年審判第30618号事件として審理されたところ、平成11年3月23日、「(結論第1項)登録第1434359号商標の指定商品中「被服、但し、ポロシャツ及びその類似商品ならびにコートを除く」についての登録を取り消す。(結論第2項)その余の指定商品「ポロシャツ及びその類似商品ならびにコート」についての審判の請求は、却下する。」との審決があり、その謄本は同年4月7日原告に送達された。

2  審決の理由の要点

(1)  被告(請求人)は、審判請求の理由を次のように述べた。

被告が調査した結果、本件商標は商標権者により、少なくとも過去3年以内に日本国内でその指定商品には使用されていないことが判明した。

したがって、本件商標の指定商品中「被服(運動用特殊被服を除く)」についての登録は、取り消されるべきである。

(2)  原告(被請求人)は要旨次のように述べ、証拠方法として審判乙第1号証ないし審判乙第9号証を提出した。

(2)-1 審判乙第1号証に示すように、公冠株式会社は、原告の関連会社である公冠販売株式会社(当時の本件商標権者)の主要株主であることから、公冠株式会社と公冠販売株式会社は実質的に親会社、子会社の関係にある。

そのため、公冠販売株式会社は、公冠株式会社に本件商標に関する通常使用権を「被服」等について昭和63年11月ころから、平成10年4月ころまで未登録ながら許諾している。

(2)-2 審判乙第2号証は、公冠株式会社が、株式会社アスティーに見本出荷した丸ネックカラーTシャツの拡大コピーである。該商品の織ネーム及び下げ札には「POLO」が大きく付され、その下段に小さく「BRITISH COUNTRY SPIRIT」と書されている。

この使用形態は、社会通念上、本件商標と同一性のある商標の使用にほかならない。

(2)-3 審判乙第3号証は、公冠株式会社が、少なくとも1998年2月18日に上記カラーTシャツを納品した事実を証明する納品伝票である。

この納品伝票には、品番6600-21が記載されており、この品番は上記「カラーTシャツ」の下げ札に印刷されていたものと同一である。

このカラーTシャツの存在により、少なくとも平成10年3月中旬までに、日本国内において本件商標が、指定商品「被服」について使用されていたことが確認され、かつ、上記納品伝票から、本件商標に係る商品のうち少なくとも「被服」については、実際に出荷された事実が証明される。

(2)-4 審判乙第4号証は、本件商標が付された他の「Tシャツ」の複写物、審判乙第5号証は、本件商標が付された「ワイシャツ」の複写物、審判乙第6号証は、。本件商標が付された靴下の写真及び種々の下げ札の複写物であるこれらの商品の織ネーム及び下げ札等にも本件商標が使用されている。

(2)-5 さらに、審判乙第7号証及び審判乙第8号証に示すように、公冠販売株式会社は、米国のポロラルフローレン会社に、本件商標及び登録第1447449号商標の使用を許諾する契約を締結しており、該契約は現在も有効に存在している。

この通常使用権に基づいて、ポロラルフローレン会社は、本件商標を被服について現在も使用している。

ただし、この契約書には、守秘義務のある内容が含まれているので、契約事実を確認できる個所のみを抜粋している。

なお、審判乙第9号証にあるように、本件商標について、ポロラルフローレン会社とは良好な関係にある。

(2)-6 よって、本件商標は、本件取消審判の請求前3年以内に、日本国内において、商標権者及び通常使用権者が、その請求に係る指定商品のうち「被服」について使用していたことは明白であり、本件は商標法50条1項の規定には該当しない。

(3)  審決の判断

(3)-1 本件商標の指定商品は、上述のとおり「ネクタイ、その他本類に属する商品、但し、ポロシャツ及びその類似商品ならびにコートを除く」であり、本件請求に係る指定商品「被服(運動用特殊被服を除く)」に属する「ポロシャツ及びその類似商品」、「コート」は、本件商標の指定商品に含まれていないことが明らかである。

したがって、本件審判請求中の指定商品「ポロシャツ及びその類似商品ならびにコート」について登録の取消しを求める請求は、不適法であって、その補正をすることができないから、商標法56条において準用する特許法135条の規定により却下すべきである。

(3)-2 次に、本件審判請求中の「ポロシャツ及びその類似商品ならびにコート」以外の商品について登録の取消しを求める請求について判断するに、原告は、本件商標を本件請求の登録前3年以内に日本国内において使用していることを証明するために、商品「Tシャツ」に係る証拠を提出している(審判乙第1号証ないし審判乙第3号証)。

類似商品の範囲は、生産部門・販売部門・原材料及び品質・用途・需要者の範囲が一致するか否か、完成品と部品との関係にあるか否かを総合的に考慮し判断すべきものであり、これに基づいて判断すれば、「ポロシャツ及びその類似商品」の範囲は、「セーター類、ワイシャツ類、下着、ねまき類」であって、「Tシャツ」はこの範疇に属する商品と認められる。

そうとすれば、商品「Tシャツ」は、本件商標の指定商品に含まれないものといわざるを得ず、原告の主張及び提出に係る審判乙第1号証ないし審判乙第3号証によっては、本件商標を本件請求の登録前3年以内に日本国内において使用しているとは認められない。

また、審判乙第6号証の写真には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した、本件商標の指定商品に含まれる「靴下」が表されているが、これに係る使用者、使用時期、使用場所等が明らかでなく、さらに、原告の主張及び提出に係る審判乙各号証を総合勘案しても、本件請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を使用していると認めることができない。

してみれば、原告は、本件請求に係る指定商品について、本件請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を使用していることを証明していないというべきであり、また、本件商標を使用していないことについての正当な理由があることの立証もしていない。

したがって、本件商標の登録は、商標法50条1項の規定により、請求に係る指定商品中「被服、但し、ポロシャツ及びその類似商品ならびにコートを除く」について、取り消すべきである。

第3原告主張の審決取消事由

本訴で提出の甲号各証等によれば、原告を含む本件商標権者ないし本件商標の通常使用権者が、本件取消審判請求の予告登録前3年以内に、本件商標をその指定商品中審決の結論第1項で登録を取り消す旨判断された商品に使用していた事実は明らかであり、これを認めずに本件審判請求を認容した審決の結論部分は誤りである。

第4審決取消事由に対する被告の反論

原告主張の事実は否認する。

第5当裁判所の判断

1  原告主張の本件商標の使用の事実関係についてみるに、以下に示す書証のほか、甲第12号証及び証人【G】の証言並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。

(1)  公冠販売株式会社(旧商号・丸永衣料株式会社)は、昭和58年12月19日登録により本件商標権を【H】から譲り受けたが、その後原告に本件商標権を譲渡し、平成10年4月27日その旨登録されたこと(登録受付は同年2月26日。甲第1号証の3)、

(2)  公冠販売株式会社は、平成8(1996)年9月17日、本件商標「POLO」の標章を付した品番6450-01の「紳士綿混ソックス」(「ソックス」は本件商標の指定商品に属する。)を、東京都中央区<以下略>所在の株式会社イマムラに対して出荷したこと(甲第2号証の1、2)、

(3)  公冠販売株式会社は、平成8(1996)年9月17日、本件商標「POLO」を付した品番6450-01の「紳士綿混ソックス」と、本件商標「POLO」を付した品番6450-02の「紳士綿混ソックス」を、大分市<以下略>所在のヤマキ株式会社に対して出荷したこと(甲第2号証の2、第3号証の1、2)、

(4)  公冠販売株式会社は、平成8(1996)年9月27日、本件商標「POLO」を付した品番6450-01の「紳士綿混ソックス」と、本件商標「POLO」を付した品番6450-42の「紳士綿混ソツクス」を、青森県弘前市<以下略>所在の木村合名会社に販売したこと(甲第2号証の2、第4号証の1、2)、

(5)  公冠販売株式会社は昭和63年11月ころから、公冠株式会社に本件商標権の通常使用権を許諾していたが(甲第5号証の3)、公冠株式会社は平成10(1998)年2月18日、本件商標「POLO」を付した品番6408-09の「L ハイソックス」を販売店にサンプル出荷したこと、

(6)  原告は、東京都台東区<以下略>所在の株式会社山豊に平成10年3月1日から3年間の本件商標権の通常使用権を許諾したが(甲第6号証の3)、株式会社山豊は、平成10(1998)年4月から8月までの間、本件商標「POLO」を付した品番P08XC02の「帽子」(本件商標の指定商品に属する。)を販売したこと(甲第6号証の1、同号証の2(1)、(2))、

(7)  原告が平成8(1996)年1月ころ全国各地の代理店向けに頒布した1996年「POLO」ブランドの春夏用衣料品カタログに、本件商標「POLO」が付された靴下が表示されていること(甲第7号証の1、2)、

(8)  原告が平成8(1996)年7月ころ全国各地の代理店向けに頒布した1996年「POLO」ブランドの秋冬用衣料品カタログに本件商標「POLO」が付されたソックスが表示されていること(甲第8号証)。

2  上記認定の各事実によれば、本件商標は、少なくとも平成8年9月17日から本件審判請求の予告登録の日(平成10年7月15日)までの間に、審決の結論第1項で示された商品、すなわち「被服、但し、ポロシャツ及びその類似商品ならびにコートを除く」に含まれる「くつ下」及び「帽子」について、商標権者ないし通常使用権者によって使用されていたことが明らかである。

したがって、「原告は、本件請求に係る指定商品について、本件請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を使用していることを証明していない」とした審決の認定は誤りであり、これを前提にして示した審決の結論第1項は取り消されるべきである。

第6結論

以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由があるので、原告の請求は認容すべきである。

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 市川正巳)

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