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東京高等裁判所 平成11年(行ケ)315号 判決 2000年3月21日

原告

スワン株式会社

代表者代表取締役

【A】

訴訟代理人弁護士

深井潔

同 弁理士

【B】

被告

ザ ポロ/ローレンカンパニーリミテッドパートナーシップ

代表者

【C】

訴訟代理人弁理士

【D】

【E】

【F】

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  原告

特許庁が平成7年審判第27344号事件について平成11年8月9日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨

第2当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は、商標法施行令第1条別表(平成3年政令第299号による改正前のもの)第21類の「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品とし、「ポロカントリー」の片仮名文字と「POLOCOUNTRY」のローマ字を二段に横書きしてなる商標登録第2579042号商標(平成2年11月2日に登録出願、平成5年9月30日に設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。

被告は、平成7年12月19日に指定商品「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、化粧用具」について本件商標の商標登録の無効の審判を請求し、特許庁は、同請求を平成7年審判第27344号事件として審理したうえ、平成11年8月9日、「登録第2579042号商標の指定商品中『装身具、ボタン類、かばん類、袋物、化粧用具』についての登録を無効とする。」との審決をし、その謄本を同年9月3日に原告に送達した。

2  審決の理由

別紙審決書の理由の写しのとおり、本件商標は、これを「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、化粧用具」について使用したときは、被告又は被告と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるから、本件商標の登録は、その指定商品中、「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、化粧用具」については、商標法4条1項15号に違反して登録されたものであると認定判断した。

第3原告の審決取消事由の要点

審決の理由1から3までは認める。同4は、8頁末行から9頁1行の「するものである」まで、9頁4行の「本件商標」から19行の「首肯されようが」まで、10頁11行から15行の「ものであるところ」まで、及び11頁9行から13頁1行の「適用されている。」までを認め、その余は争う。同5は争う。

審決は、商標「POLO」の著名性や本件商標による出所の混同のおそれについての認定判断を誤り、その誤りが結論に影響を及ぼしたものであるから、違法として取り消されるべきである。

1  審決は、被告が「アパレル、眼鏡等」に使用する商標「POLO」が本件商標の出願前から著名性を有していることについて争いがないとしている。

しかし、原告が商標「POLO」の著名性を認めた事実はない。仮に、同商標が、アパレルや眼鏡等に使用されるものとしては周知著名であり、かつ、その使用の範囲が拡大する傾向にあるとしても、一般的に「POLO」の語は本来の意味であるポロ競技を表すものとしても普通に使用されており、本件商標の指定商品との関係においては、他人の使用によって出所の混同を生じるほどの周知著名性を獲得しているとはいえない。

また、被告は、「POLO」を単独で使用しているのではなく、常に「RALPH LAUREN」又はその他の文字をこれに併記して使用している。そもそも、商標「POLO」「ポロ」は、被告以外の第三者の登録商標であって、被告が使用できないものである。したがって、商標「POLO」は、単独では商標として使用されていないから、著名性を有しているとはいえない。

商標法4条1項15号の混同は、混同される他人の商標が使用されていることが条件となるべきである。ところが、被告は、前述のとおり、商標「POLO」をいかなる商品にも使用していない。そうである以上、混同の対象となる使用商標がないことになるから、商品の混同などあり得るはずがない。

被告は、「ポロ」を略称であると主張する。しかし、被告自らが「ポロ」を略称として使用した事実はない。被告が「ポロ」を略称として商品に付して使用したとすれば、他人の登録商標との関係において権利侵害になるため、略称としても使用できないのである。したがって、「ポロ」は被告ブランドの略称ではない。

2  審決は、「被服、装身具からかばん類まで一人のデザイナーによるデザインなどによるトータルファッションが確立され、・・・これらの商品は、いわゆるブランド商品乃至はファッション関連商品と呼ばれるものの範囲に含まれ、そこで使用される前記の商標は同一の出所を表示するものと認識されている」と認定したが、誤りである。

男性用の被服や眼鏡のデザイナーが単独で装身具、かばん類等まで幅広くデザインを行うことは、考えにくい。元来、被服、装身具、ボタン類、かばん類、袋物、化粧用具等の商品は、それぞれ別々の専門のデザイナーがデザインを行い、専門の業者によって生産や販売が行われるものである。

また、現代の商品の多くはファッション性を有しているから、「ブランド商品乃至はファッション関連商品」という概念は、あらゆる商品に無限に拡大するため、商標の周知著名性の判断に用いるのは適切ではない。

3  本件商標において、「ポロ」「POLO」と「カントリー」「COUNTRY」は、同じ大きさ、同じ字体で軽重の差なく一体的に構成されており、「ポロカントリー」と一連に称呼されるものである。「カントリー」「COUNTRY」は、「クロスカントリー」「カントリーハウス(邸宅、別荘)」等のように、その前後に置かれる文字と強く結びついて一体不可分の成句を作る傾向があり、本件商標も、その例外ではなく、一体不可分のものである。

また、本件商標は、ポロ競技が行われている広大な大地の風景を連想させるものであり、商標「POLO」とは異なる独自の意味合いを有している。

4  原告は、カタログを用いて本件商標を使用し、長期間にわたり数多くの取引を行っているが、今までに需要者から他者の商品と誤認・混同したとの苦情を受けたことはなく、本件商標は原告の商品を表示するものとして定着している。

5  審決は、平成11年7月1日より実施の、改正された審査基準に基づいて判断されたものと考えられる。しかし、上記審査基準は、本件商標の商標登録出願後に改正されたものであるから、これに基づいて本件商標の登録を無効にすることは、判断基準の適用において違法である。

6  商標「POLO」と本件商標の混同のおそれについては、本件商標の商標登録出願日の実情に基づいて判断されるべきである。ところが、審決はこの点を全く無視して判断しているから、違法である。

第4被告の反論の要点

1  【G】のデザインに係る被服等について使用される標章は、「Polo」、「POLO」の文字とともに、「By Ralph Lauren」の文字及び「馬に乗ったポロ競技者の図形」などの各標章である。我が国においては、これらの標章を総称して単に「ポロ」と略称しており、この「POLO」(ポロ)の標章は、遅くとも昭和55年ころまでには、我が国において取引者・需要者の間に広く認識されるに至っており、その認識の度合いは現在においても継続している。

2  「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、化粧用具」は、人が装粧する目的のために使用する商品であって、ファッション(装身に関する流行)商品と用途及び使用目的等において同じ、あるいは近似する商品であり、いわゆるファッション関連商品である。

取引者・需要者は、いわゆるデザイナーブランドの取扱商品は、装粧品全般に及ぶのが一般的と認識しているから、著名な服飾デザイナーである【G】も、被服、眼鏡以外のいわゆるファッション関連商品を取り扱っているものと理解している。事実、1983年当時、【G】のデザインに係るPOLO商品中には、すでにバッグ類が含まれていた。

3  我が国においてよく使用されている英和辞典には、「POLO」及び「COUNTRY」の語は掲載されているが、「POLOCOUNTRY」の語は掲載されていない。確かに、独自の意味を有する語として通用している「COUNTRY」の語を有する複合語はあるが、そのことが本件商標を「ポロ競技が行われている広大な大地の風景」なる意味不明の意味合いを想起させ、一体不可分の語と認識させる理由とはならない。

「POLO」は、中高校生が用いる一般的学習辞典でも、学習基本語(約7000語)にも選別されておらず、その意味するところの「ポロ競技」自体日本において馴染みが薄く、個人対抗なのかチーム対抗なのかすら知られているとは考えられないマイナーなスポーツである。

したがって、本件商標に接する取引者・需要者は、「POLO COUNTRY」及び「ポロカントリー」は、一体不可分の語としてではなく、「POLO」(ポロ)と「COUNTRY」(カントリー)の2語を結合したものと理解するとともに、「POLO」の部分に特に注意を引かれ、その商品が【G】あるいはその関連会社に係る商品であると理解し、商品の出所の混同を生ずるのである。

4  原告は、被告の商品との混同が生じていないとして証明書を提出する。しかし、原告が商品に付しているとする商標は、「POLOCOUNTRY」又は「POLO COUNTRY」であって、本件商標とは構成を異にする。また、この商標を付した商品が何であるのか不明である。さらに、原告提出の証明書には、つじつまが合わず、同一の筆跡で表されている等信憑性が疑わしいものが含まれている。したがって、上記証明書は、本件商標と被告及び【G】の関連会社の商品とが混同を生じないということの証明にはならない。

5  審決は、特許庁における審査基準の改定とはかかわりなく、本件商標の商標登録出願日及び審決時において本件商標が出所の混同を生じるおそれがあると判断したものであるから、何ら違法ではない。

第5当裁判所の判断

1  本件商標の商標登録出願時における商品の出所の混同のおそれについて

(1)  乙第1ないし第10号証、第11号証の1によれば、次の事実が認められる。

【G】 は、1939年(昭和14年)生まれのアメリカの服飾等のデザイナーである。同人は、1970年、73年の2回にわたりアメリカのファッション界では最も権威があるとされるコティ賞を受賞し、1974年には映画「華麗なるギャツビー」の男性衣装を担当するなどして、世界的に知られるようになった。【G】のデザインに係る商品には、「Polo」と「by Ralph Lauren」の文字を左右、上下等に組み合わせた標章、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形」の標章ないしこれらを組み合わせた標章(以下、これらをまとめて「ラルフ標章」という。)が用いられている。我が国においては、日本での【G】のデザインに係る商品の輸入・製造・販売のライセンス(許諾)を得、ポロ・ラルフロ―レンブランドとして紳士服、婦人服、子供服、皮革製品等を販売していた西武百貨店(ただし、眼鏡、ネクタイのライセンスは、別の会社が有していた。)の昭和62年における同ブランドの小売販売高は約330億円であり、昭和63年から平成元年初めにかけて第三者がラルフ標章を付した偽ブランド商品を大量に販売して摘発されるという事件が発生するほど、ラルフ標章は顧客吸引力を有していた。本願商標の商標登録出願前から、各種雑誌等において、【G】のデザインに係る紳士服、婦人服、眼鏡を始めとする商品が一流ブランドないし流行ブランドとして、「ポロ」、「POLO」、「Polo」のブランド名のもとに紹介され、「別冊チャネラー ファッションブランド年鑑’80年版」(株式会社チャネラー昭和54年ころ発行、乙第9号証)に「★ポロ(POLO)・・・ポロはアメリカのデザイナーの第一人者、【G】の商標」、平成元年5月19日付け朝日新聞夕刊(乙第11号証の1)に「『ポロ』の偽 大量販売 警視庁 通信販売会社を摘発・・・『Polo(ポロ)』の商標で知られるラルフローレンブランド・・・米国の『ザ・ローレン・カンパニー』社の商標・デザインで西武百貨店が日本での独占製造販売権を持っている『Polo』の商標」という各記事が掲載されているように、ラルフ標章は「ポロ(「POLO」ないし「Polo」)の商標」の名で知られ、これを付したブランドも「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)とも呼ばれていた。

以上の事実によれば、本件商標の商標登録出願時までには、ラルフ標章は「ポロ(「POLO」ないし「Polo」)の商標」、これを付したブランドは「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)とそれぞれ通称されて、いずれも紳士・婦人物の被服、眼鏡等についてアメリカの服飾等のデザイナーである【G】のデザインに係る商品に付される商標及びそのブランドとして著名であったことが認められる。

(2)  本件商標に係る指定商品のうち、審決が登録を無効とした「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、化粧用具」は、人の身を飾り、装うことを重要な用途とし、デザインが重視されるものであって、ファッションに関係する商品である。一方、

【G】 のデザインに係る商品に付される商標及びそのブランドとして通称「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)が著名であった被服、眼鏡等も、人の身を飾り、装うことを重要な用途とし、デザインが重視されるものであって、ファッションに関係する商品である。したがって、被服、眼鏡等と「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、化粧用具」とは、商品の関連性が強いものというべきである。

(3)  「POLO COUNTRY」「ポロカントリー」との文字ないし語が、全体として特定の熟語や団体名称を表すものとして一般の取引者・需要者によく知られているものとは認められない。そして、「COUNTRY」「カントリー」は、「国」「地方」という意味も有するから、その前の「POLO」「ポロ」を受けて「ポロの国」「ポロの地方」というような意味合いを感じさせる。したがって、本件商標において、「POLO」「ポロ」の文字は重要な意味を持つ言葉と認識される。

(4)  以上の事実によれば、本件商標の商標登録出願時において、本件商標がその指定商品のうち、「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、化粧用具」という、デザインが重要な要素とされるものに使用された場合には、本件商標に接した取引者・需要者は、その「POLO」「ポロ」に着目して、「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と通称される著名な商標や「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と通称される著名なブランドを連想し、【G】又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあったものというべきである。

2  本件商標の商標登録査定時における商品の出所の混同のおそれについて本件商標の商標登録出願後、商標登録査定時までに事情の変更があったと認めるに足りる証拠はないから、商標登録査定時においても、前記商品の出所の混同のおそれはなお継続していたものというべきである。

3  原告の主張について

(1)  ア 原告は、審決のいう「請求人が『アパレル、眼鏡等』に使用する商標『POLO』」(9頁2行)を、「POLO」のローマ字を単独で横書きしてなる商標であるとの前提に立って、被告はこれを単独で使用しているのではなく、常に「RALPH LAUREN」又はその他の文字を併記しているから、著名性を有しているとはいえないと主張する。

しかし、被告が「POLO」のローマ字を単独で横書きしてなる商標を使用していたか否かにかかわらず、「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と通称される商標及び「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と通称されるブランドが、被服、眼鏡等について【G】のデザインに係る商品に付される商標及びそのブランドとして著名であったことは前認定のとおりである。審決の上記「商標『POLO』」との記載も、前記1(1)の認定に係る「別冊チャネラー ファッションブランド年鑑’80年版」及び平成元年5月19日付け朝日新聞夕刊の記事において「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)が商標である旨記載されているのと同じように、通称「POLO」商標と呼ばれる商標のことを指しているものと解することが可能である。

イ また、原告は、被告自らが「ポロ」を略称として使用した事実はないから、「ポロ」は被告ブランドの略称ではないと主張する。しかし、被告自身が使用しなければ、被告の商標ないしブランドについて通称ないし略称が発生しないというものではなく、新聞・雑誌等のマスコミや取引者・需要者等に特定の名称で呼ばれれば、それが通称ないし略称となり得ることは自明である。そして、被告自身が「ポロ」を略称として使用したか否かにかかわらず、「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と通称される商標及び「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と通称されるブランドが、被服、眼鏡等について【G】のデザインに係る商品に付される商標及びそのブランドとして著名であったことは前認定のとおりである。

ウ さらに、原告は、原告が商標「POLO」の著名性を認めた事実はない、仮に、同商標がアパレルや眼鏡等に使用されるものとしては周知著名で、かつ、その使用の範囲が拡大する傾向にあるとしても、本件商標の指定商品との関係においては、他人の使用によって出所の混同を生じるほどの周知著名性を獲得しているとはいえない、と主張する。

しかし、審決も、審決のいう「商標『POLO』」が、アパレル、眼鏡等に使用されるものとして著名性を有しているとしたうえで、ブランド商品ないしファッション関連商品と呼ばれる取引の実情等を考慮して本件商標に係る指定商品との出所の混同を判断したものにすぎず、上記商標が本件商標の指定商品について著名性を有していることを原告が争っていないと認定したものではないことは、その説示に照らし明らかである。

なお、甲第3、第44、第45、第47号証によれば、審判において、被告が「POLO」の文字は、「請求人(判決注・被告を指す。)が・・・昭和56年以前から、アパレル、眼鏡その他のファッション商品について使用している著名商標である。」と主張したのに対して、原告は、これを争うことを明らかにせず、かえって、「異議申立人会社(判決注・被告を指す。)の商号が『POLO』『ポロ』または『ポロ社』と略称され著名であることは認められるとしても、・・・一連にのみ称呼される本願商標をその指定商品に使用しても・・・混同を生ずるおそれはない」と説示した登録異議の申立てについての決定謄本を証拠として提出したうえ、「上記異議決定に於ける考察の正当性は、被請求人(判決注・原告を指す。)が異議答弁書に於いて指摘した事実・・・が裏付けともなっている。」と主張していることが認められる。

以上の事実によれば、審決のいう「商標『POLO』」が、アパレル、眼鏡等に使用されるものとして著名性を有していることについては当事者間に争いがないとした審決の認定を誤りということはできない。

エ 原告は、商標法4条1項15号の混同は、混同される他人の商標が使用されていることが条件となることを前提として、被告は、商標「POLO」をいかなる商品にも使用していないから、混同の対象となる使用商標がないと主張する。しかし、同号の混同は、他人の商号、氏名や、商標ないしブランドの略称との関係により出所が混同される場合も含むものであって、混同される他人が商標を使用している場合に限られるものではない。原告の主張は前提において誤りである。

(2)  ア 原告は、男性用の被服や眼鏡のデザイナーが単独で装身具、かばん類等まで幅広くデザインを行うことは考えにくく、元来、被服、装身具、ボタン類、かばん類、袋物、化粧用具等の商品は、それぞれ別々の専門のデザイナーがデザインを行い、専門の業者によって生産や販売が行われるものであると主張する。

しかし、【G】は紳士服及び眼鏡に限らず、婦人服のデザイナーでもあったことは前認定のとおりである。

また、乙第2号証によれば、本件商標の商標登録出願前から、【H】、【I】、【J】といった著名な服飾デザイナーが、衣料、バッグ、皮革製品、時計、アクセサリーのすべてにわたってデザインを手がけており、また、イヴ・サンローラン、エマニュエル・ウンガロ、エルメス、クリスチャン・ディオール、セリーヌ、ニナ・リッチ、バーバリー、シャネル等の著名な海外ブランドがファッションに関係する商品を、衣料、バッグ、皮革製品、アクセサリー、化粧品等の複数の分野にわたり販売していたことが認められる。原告の主張は、上記認定に反するものであって、採用することができない。

イ 原告は、現代の商品の多くはファッション性を有しているから、「ブランド商品乃至はファッション関連商品」という概念は、あらゆる商品に無限に拡大すると主張する。しかし、前記ア認定に係る著名な服飾デザイナー及び著名な海外ブランドの取扱商品からすれば、著名な服飾等のデザイナーである【G】ないし著名な海外ブランドである通称「ポロ」ブランドについての混同のおそれを判断する場合に、ファッションに関係する商品であるか否かを考慮することは当然である。そして、ファッション(装身に関する流行)との定義からすれば、それが無限に拡大するものではないことも自明である。原告の主張は、採用することができない。

(3)  ア 原告は、本件商標が一体不可分のものであると主張する。

しかし、本件商標は、「ポロ」「POLO」と「カントリー」「COUNTRY」よりなるものであることは、その構成自体から明らかである。そして、「POLO COUNTRY」「ポロカントリー」との文字ないし語が、全体として特定の熟語や団体名称を表すものとして一般の取引者・需要者によく知られているものではないことは前認定のとおりである。そうである以上、これが一体不可分のものと認識される理由はない。

イ また、原告は、本件商標は、ポロ競技が行われている広大な大地の風景を連想させるものであり、商標「POLO」とは異なる独自の意味合いを有していると主張する。

しかし、本件商標から、原告の主張するごとき風景が連想されるとは認められない。

のみならず、本件商標において、「POLO」「ポロ」の文字が重要な意味を持つ言葉と認識されることが前認定のとおりである以上、本件商標に接した取引者・需要者において、その「POLO」「ポロ」に着目して、「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と通称される著名な商標や「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と通称される著名なブランドを連想し、本件商標を著名な「ポロ」ブランドの一種である等と誤解するおそれがあるものというべきである。

(4)  原告は、今までに需要者から他者の商品と誤認・混同したとの苦情を受けたことはないと主張し、甲第106ないし第132号証の証明書を提出する。しかし、これらの書証の作成者は、本件商標を付した商品を販売している業者の一部であって、本件商標の登録が無効とされるか否かに利害関係を有する者であるうえ、需要者が混同した場合に直ちにこれらの者に苦情を述べるとも限らないから、上記書証をもって需要者が混同していないことの証左とすることはできない。

(5)  原告は、審決が平成11年7月1日より実施の、改正された審査基準に基づいて判断したとして、判断基準の適用において違法であると主張する。しかし、審決に誤りがあるか否かは、本件商標に商標法4条1項15号該当事由があるとした審決の認定判断そのものに基づいて決められるべき事柄であり、審決が上記審査基準に基づいて判断したか否かが、これに関係することはあり得ないものというべきである。原告の主張は失当である。

(6)  原告は、混同のおそれについては、本件商標の商標登録出願日の実情に基づいて判断されるべきであるのに、審決はこの点を全く無視して判断したと主張する。

しかし、審決が、本件商標の商標登録出願日における混同のおそれをも判断していることは、「請求人が『アパレル、眼鏡等』に使用する商標『POLO』・・・が本件商標の出願前から著名性を有していることについては当事者に争いが無く」(9頁2行から4行)との記載から明らかである。原告の主張は、採用することができない。

4  以上のとおりであるから、 原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。

第6よって、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山下和明 裁判官 山田知司 裁判官 宍戸充)

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