東京高等裁判所 平成11年(行コ)181号 判決 1999年12月22日
控訴人
細谷光男
右訴訟代理人弁護士
伴昭彦
被控訴人
糸魚川税務署長 早川順太郎
右指定代理人
戸谷博子
同
安岡裕明
同
吉村正志
同
渡邊雅行
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一同自社の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が平成六年五月三〇日付けで控訴人の平成三年分所得税についてした更正処分中納付すべき税額二四万九〇〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。
3 控訴費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文と同旨
第二事案の概要等
事案の概要等は、次のとおり改めるほかは、原判決(事実及び理由)の「第二 事案の概要等」欄(原判決書三頁末行から一五頁二行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決書四頁三行目の「税務調査を行わずになされた」の次に「など」を加える。
二 原判決書六頁五行目の「二三日」を「二二日」に改める。
三 原判決書七頁二行目の「謝礼金」の前に「土地取引に関する」を加える。
四 原判決書一〇頁末行の次に改行して次のとおり加える。
「(四) 本件課税処分は国税局の職員の調査に基づくものであるから、国税通則法二八条二項の規定により、更正通知書にその旨を附記しなければならないところ、右附記を欠いた違法がある。
(五) 被控訴人は、控訴人のした異議申立てに対して三か月以内位には異議決定を行うことが、法の精神であるのに、被控訴人の直接調査でなく国税局の間接調査であるため、全く手つかずで放置したが、これは違法であり、控訴人の国税局長に対する異議申立権を失わせる結果となった。
なお、税務調査において査察資料を利用できるという趣旨の最高裁昭和六三年三月三一日第一小法廷判決があるが、これは、課税庁の税務調査が先行している事案において、収税官吏が犯則嫌疑者に対し国税犯則取締法に基づく調査を行った場合に、課税庁が、右調査により収集された資料を右の者に対する課税処分を行うために利用することが許されるというものである。しかし、本件においては、課税庁の調査が行われておらず、犯則嫌疑者でなく参考人に対し査察資料でなく査察の判断結果を利用したものであるから、違法である。」
五 原判決書一五頁二行目の次に改行して次のとおり加える。
「(四) 本件課税処分は、国税通則法二四条が定める税務署長の調査に基づくものであって、同法二七条が定める国税局の職員の調査に基づくものではないから、控訴人の更正通知書への附記欠如の主張はその前提を欠くものである。
(五) 国税通則法七五条五項は、異議決定が遅延した場合の異議申立前置の緩和措置であり、異議決定をその申立ての日から三か月以内にしなければならない旨を定めたものではなく、他にその旨を定めた規定も存しないから、被控訴人が本件課税処分に係る異議決定を三か月以内にしなかったことは違法ではない。なお、本件課税処分は被控訴人の調査に基づき被控訴人が行った処分であるから、同法七五条一項により税務署長に対して異議申立てをすることができるのであって国税局長に対して異議申立てをすることはできないから、控訴人の国税局長に対する異議申立権を失わせた旨の主張はその前提を欠くものである。」
第三当裁判所の判断
当裁判所も、本件課税処分が違法であるということはできず、控訴人の請求は理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり改めるほかは、原判決「事実及び理由」の「第三 当裁判所の判断」欄(原判決書一五頁四行目から二六頁初行まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決書一五頁九行目の「同年」を「平成四年」に改める。
二 原判決書一八頁二行目の「原告が、」の次に「謝礼金として、」を加え、同三行目の「三月」を「二月」に改める。
三 原判決書二〇頁末行の「異する」を「異にする」に改める。
四 原判決書二一頁四行目の「違法性の著しい」を「違法な」に改める。
五 原判決書二三頁六行目の「刑部査察官ら」から同八行目の「必要はない」までを「控訴人が小川及び東栄不動産から土地取引に関する謝礼金として、合計五三〇五万三三〇〇円を受領しており、これが雑所得に該当する。」に、同九行目の「である」を「であって、国税通則法二四条所定の調査として欠けるところは」にそれぞれ改める。
六 原判決書二四頁二行目の「国税局」から同九行目末尾までを「国税局と同一の判断をし、控訴人に対する面接調査や関係者に対する反面調査を実施していないが、その事実をもって、税務調査手続に違法があったと解することはできない。」に改める。
七 原判決書二五頁二行目の「処分前」を「処分後」に改め、同末行の「資料はない」の次に「(甲第六号証及び控訴人の原審供述中右事実に関する部分はたやすく採用できない。)」を加える。
八 原判決書二六頁初行の次に改行して次のとおり加える。
「4 控訴人は、本件課税処分は国税局の職員の調査に基づくものであるから、国税通則法二八条二項の規定により、更正通知書にその旨を附記しなければならないところ、右附記を欠いた違法がある旨主張するが、本件課税処分は同法二四条が定める税務署長の調査に基づくものであるから、控訴人の右主張はその前提を欠き失当である。
5 控訴人は、控訴人のした異議申立てに対して三か月以内に異議決定を行わなかった違法があり、控訴人の国税局長に対する異議申立権を失わせる結果となった旨主張する。しかし、国税通則法七五条五項は、異議決定が遅延した場合の異議申立前置の緩和規定であって、異議決定をその申立ての日から三か月以内にしなければならない旨を定めたものではないから、被控訴人が本件課税処分に係る異議決定を三か月以内にしなかったことをもって違法とはいえない上、前示のとおり、本件課税処分は被控訴人の調査に基づき被控訴人が行った処分であって、国税局長に対して異議申立てをすることはできないから、控訴人の右主張は失当である。
6 以上のほか、控訴人がるる主張するところは、いずれも採用することができない。」
第四結論
以上のとおりであるので、原判決は相当であって、本件訴訟は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結の日・平成一一年一一月二四日)
(裁判長裁判官 瀬戸正義 裁判官 大島崇志 裁判官 山口博)