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東京高等裁判所 平成11年(行コ)202号 判決 2000年1月31日

控訴人

佐野義之

右訴訟代理人弁護士

桜井和人

被控訴人

館林税務署長 新山幸男

右指定代理人

大圖明

須藤哲右

中沢信明

磯野宏

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者が求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が平成三年一二月二四日付けで控訴人に対してした控訴人の昭和六三年分の所得税につき納付すべき税額を一億三三九四万二二〇〇円とする更正処分のうち、総所得金額一三二二万五〇〇〇円及び還付されるべき税額二五万二七〇〇円を超える部分並びに過少申告加算税六〇〇〇円及び重加算税四六九四万二〇〇〇円の各賦課決定処分をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審を通じて被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二事実の概要等

控訴人の本訴請求の内容並びに本件事案の概要及び争点に関する当事者双方の主張は、原判決の「事実及び理由」欄の「第一 原告の求めた裁判」及び「第二 事案の概要」に記載された事実摘示のとおりであるから、これらを引用する。ただし、原判決四頁一〇行目の「永徳屋商事株式会社」の次に「(以下「永徳屋商事」という。)」を加え、同七頁七行目の「本件株式は、」を「本件全株式は、」に、同一〇頁七行目の「非課税処分」を「非課税所得」に、同一二頁九行目の「国民の」を「国税の」に、同一〇行目の「一〇〇〇万円」を「一〇〇〇円」に、同一八頁六行目の「三名が所有権を取得した」を「三名が現実にその対価を支払って右株式を取得した」に、同二〇頁一行目の「三名から」を「三名より」にそれぞれ改める。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も、被控訴人が控訴人の昭和六三年分の所得税に関してした本件課税処分はいずれも適法で

あり、その取消しを求める控訴人の本訴請求は理由がなく、これを棄却すべきものと判断するが、その理由は、原判決が「事実及び理由」欄の「第三 争点に対する判断」で説示するところと同一であるから、右説示を引用する。ただし、原判決二一頁九行目の「揚げた」を「掲げた」に、同二三頁二行目の「支払う」を「交付する」に、同行の「切るよう」を「準備するよう」に、同二七頁五行目の「3」を「2」にそれぞれ改め、同二八頁一行目の「有価証券の発行法人の株主であって、当該」を削除し、同二行目の「有していること、」を「有している株主が、」に、同六行目の「4」を「3」に、同二九頁六行目の「5」及び同末行の「6」をそれぞれ「4」及び「5」に、同三〇頁七行目の「乙六」を「乙一」に、同三一頁六行目の「残った」を「預かっていた小切手金四二六〇万円のうち」に、同三二頁四行目の「同年五月二〇日」を「同年五月一〇日」に、同七行目の「依頼されたが、」を「依頼され、さらに、」に、同八行目の「打診された、」を「要請され、」に、同四二頁三行目の「深町らとの」を「深町ら及び石原らとの」に、同五行目の「深町らに」を「右深町ら六名に」に、同四四頁一行目の「深町らの」を「深町ら」に、同四六頁七行目の「5(一)<2>」を「5(一)(1)<2>」に、同四七頁四行目の「法人税」を「所得税」にそれぞれ改める。

二  なお、控訴人は、当審において、控訴人とは別人格を有する早稲田開発に対する法人税法違反嫌疑事件の査察の過程で得られた資料を利用してされた点において、本件課税処分は違法とされるべきであると主張するので、この点に関する当裁判所の判断を付言しておくと、以下のとおりである。

すなわち、そもそも、収税官吏が国税犯則取締法に基づく調査によって収集した資料を課税処分を行うために利用することは、一般に許容されるものと考えられるところであり、しかも、本件においては、国税犯則取締法に基づきされた早稲田開発に対する調査において、査察官が質問てんまつ書等の資料を収集したところ、右の調査の過程で、右早稲田開発の代表者である控訴人の本件株式の売買に伴う所得税の申告漏れが判明したため、改めて控訴人の所得税に関する調査を開始しようとしたが、控訴人が税務署員に対して、本件株式の売買については、右の調査の際に査察官に対してすべて話してあるので、そちらで聞いてくれというだけで、所得税関係の調査に協力しなかったことが認められる(乙一)のである。そうすると、このような控訴人の態度からしても、本件において、課税庁が右早稲田開発に対する査察調査の過程で収集した資料を利用して控訴人に対する課税処分を行うことが許されないものとすべき理由はないものというべきである。また、右査察の手続の過程で作成された質問てん末書にある関係者の供述内容が任意性を欠くものといえないことも、前記引用に係る原判決の説示にあるとおりである。

なお、控訴人は、原判決が本件株式の譲渡人が控訴人ではなく早稲田開発であるとする控訴人の仮定主張を却下したことが違法であるとも主張する。しかしながら、原審における審理の経過等からして、右の仮定主張を却下した原審裁判所の訴訟指揮に違法とすべき点は存しないものというべきであり、また、右の仮定主張に係る事実については、本件全証拠によってもこれを認めることができないことも、右引用に係る原判決の説示にあるとおりである。

三  結語

以上によれば、控訴人の本件請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 涌井紀夫 裁判官 増山宏 裁判官 合田かつ子)

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