東京高等裁判所 平成12年(う)1680号 判決
被告人 高村健
〔抄 録〕
1 所論は、要するに、次のようなものである。すなわち、原判決は、罪となるべき事実第一、第二として、被告人が、平成九年二月一九日午後三時三〇分ころ及び同月二七日午後六時ころ、東京都北区内の被告人方において、本件被害少女(昭和五九年三月五日生)が一三歳未満であることを知りながら、同児の着衣を脱がせるなどしてその乳房や陰部を弄ぶなどのわいせつな行為をそれぞれしたとの事実をほぼ起訴状の公訴事実のとおり認定判示している。しかしながら、被告人については、既に児童福祉法違反事件につき有罪判決が確定しているところ、右確定判決の罪となるべき事実の要旨は、被告人は、かねて本件被害少女に現金を与えるなどして同児の乳房や陰部に触れるなどの行為を繰り返し、平成九年二月一九日から右行為をビデオカメラで撮影するなどしていたものであるが、平成一一年三月一五日被告人方で同児が一八歳未満であることを知りながら、現金を与える約束をして自己を相手に性交させ、もって児童に淫行させる行為をしたというものであり、右事実と本件とは併合罪の関係に立つが、右確定判決の事件において本件は実質上審理されその実刑の根拠とされているから、大阪高等裁判所昭和五〇年八月二七日判決(高等裁判所刑事判例集二八巻三号三二一頁)の事案よりも、本件と右確定判決の事件との関係はより密接である。したがって、確定判決において罪となるべき事実として認定されることなく余罪として論及されるにとどまった場合であっても、実質上これを処罰する趣旨で認定され量刑の資料として考慮され重い刑を科せられた場合には、その余罪として論及された事実について一事不再理の効力が生ずるとの右大阪高裁判決の法理に則り免訴とされるべきである。しかるに、原判決は被告人に有罪判決を言い渡しているから、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある。
2 しかしながら、余罪を実質的に処罰した違法があったか否かについては、被告人は当該事件で上訴を申し立てることによって事後審査を受けることができるのであるから、被告人においてその点について不服申立てをしないことにより、あるいは、その上訴審において右の違法はないと判断されたことにより、その判決が確定したような場合を考えてみると、右大阪高等裁判所判決が、このような場合でも後に起訴された別事件の審理において、裁判所は、確定した判決に右の違法があるとの主張を当然に許容し、その点について審査義務を負うというのであれば、その立場には直ちには賛成することができない。その点をさておいても、本件においては、原判決が詳細に説示するとおり、児童福祉法違反に関する確定判決の罪となるべき事実において本件の事実と時期的に重複するわいせつ行為についても言及しているのは、右確定判決の事件に至る動機・経緯を明らかにしたものにすぎず、これを実質的に処罰する趣旨で摘示したものでないことが記録上明らかであるから、論旨は理由がない。
(河辺義正 廣瀬健二 大谷直人)