大判例

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東京高等裁判所 平成12年(ネ)2051号 判決

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求める裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文第一項同旨

第二事案の概要

本件の事案の概要は、次のとおり付け加えるほかは、原判決の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決書四頁三行目冒頭から五行目末尾までを次のとおり改める。

「4 本件ゴルフ場の会則九条は、会員は所定の年会費及び所定の利用料を遅滞なく更正会社に支払うべき旨を定めているが、具体的な年会費の額については「倶楽部の運営に関する基本的事項」あるいは「倶楽部運営に必要な事項」の一つとして理事会の決議に委ねられており(会則一七条)、更生会社理事会は、平成三年五月二一日、本件ゴルフ場の正会員の年会費を五万円とし、毎年八月一日から翌年七月三一日までの年会費を支払うことを決議した。」

二  控訴人の補充主張

1  ゴルフ場でのプレー権は、ゴルフ場会員契約の本質的な要素であるから、会員のプレー権を制約することができるのは、会員に著しい信義則違反があった場合に限られるが、以下のとおり控訴人にはそのような信義則違反はない。

(一) 控訴人のプレー代金の支払拒否は、更生会社の経営破綻によって控訴人が多額の預託金債権を事実上失うという更生会社に責任のある事態を理由とするものである。

(二) また、更生会社はいったん控訴人のプレー権の行使を認め、控訴人と更生会社の関係は正常に服し、控訴人はそのプレー料金は支払っているから、再度プレー禁止をすべき正当な理由はない。

2  プレー禁止は、年会費の滞納があっても直ちにされるわけではなく、滞納が数年にわたり、理事会の決議を経て初めてされるものである。しかし、控訴人に対してのみプレー代金の支払拒否後直ちにプレー禁止の通告がされ、しかも保全管財人の独断によってなされたものであり、本件通告等がされるについて手続の違背がある。

3  控訴人は、本件ゴルフ場のみならず、他の二つのゴルフ場の会員権も有しており、他の二つのゴルフ場の会員については本件ゴルフ場で優先的にプレーできる権利が与えられていた。本件のプレー禁止通告によって控訴人はこの権利・利益も奪われたが、これには明らかに正当な理由がない。

第三証拠関係

証拠関係は、本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第四当裁判所の判断

当裁判所も、被控訴人の請求は認容すべきであると考える。その理由は、次のとおり付け加えるほかは、原判決の「第三 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

一  控訴人は、更生会社の責めに帰すべき事由によって多大な損害を被ったこと及び控訴人と更生会社の関係はいったん正常なものに戻り控訴人のプレーが認められ、そのプレーに対する代金を控訴人が支払っていたことを理由として、更生会社が控訴人のプレーを禁止したのは理由がない旨を主張する。

本件のプレー禁止の措置は、控訴人が支払の催告を受けたにもかかわらず、本件未払料金を支払わなかったことによるものであることは前記のとおりであるが(原判決の「第三 当裁判所の判断」)、本件未払料金は会社更正手続開始の申立て後に行われた控訴人らの施設利用等によって発生したものであり、控訴人は右申立てのあったことを知っていたものと認められるから(控訴人本人)、控訴人が右以前に何らかの債権を有していたとしても、本件未払料金債権を受働債権とする相殺は許されず(会社更生法一六三条二号本文)、控訴人につき本件未払料金の支払を拒絶することができる法的な理由は存在しない。

他方、優先的な施設利用権、特にゴルフ場の使用権はゴルフクラブ会員の最も重要で基本的な権利であるが、施設を利用した場合の利用料の支払も施設利用者の最も重要な義務の一つであり、会則にその旨の規定がなくとも、ゴルフクラブは施設利用者が施設利用に係る代金を支払わない場合は、右支払があるまで以後の施設利用を禁止することができると解すべきである。控訴人は、この点について会員に著しい信義則違反がなければプレー禁止(施設の利用禁止)の措置を採ることはできないと主張しているが、会員の除名や資格停止といったより重大な処分を発動する場合であれば格別、本件のように一時的な、しかも控訴人において容易にその事態を解消できる施設利用の禁止という措置につき、控訴人主張のような要件がなければならないと解すべき根拠はない。そうすると、本件未払料金を支払うまで本件ゴルフ場の施設利用を禁止したことには正当な理由があったというべきである。

なお、このことは、その後更生会社が控訴人の施設利用を認め、控訴人がその代金を支払ったことがあるとしても変わりはない。

二  次に、控訴人は、本件ゴルフ場の施設利用を禁止するためには理事会の決議が必要である旨を主張するところ、通常右措置につき理事会の決議が必要だと解したとしても、前記のとおり本件通告がなされた当時更生会社には管理命令が発せられ(会社更生法三九条一項)、会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利は保全管理人に専属していたのであるから(同法四〇条一項)、保全管理人が本件通告を行い、本件のようなゴルフ場施設の利用禁止措置を採ることはその権限の範囲内の行為であったということができる。

なお、控訴人は、本件ゴルフ場以外の他の二つのゴルフ場の会員資格に基づいて本件ゴルフ場で優先的にプレーできる権利・利益を奪われることには正当な理由がないとも主張しているが、控訴人が本件未払料金の支払を拒絶している以上、そのように解すべき根拠はない。

三  以上のとおりであるから、控訴人が本件ゴルフ場の年会費の支払を拒絶することはできない。

第五結論

したがって、被控訴人の請求を認容した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六七条一項本文、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 新村正人 裁判官 宮岡章 裁判官 田川直之)

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