大判例

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東京高等裁判所 平成12年(ネ)466号 判決

主文

一  本件各控訴をいずれも棄却する。

二  第一審原告の控訴費用は第一審原告の、第一審被告の控訴費用は第一審被告の各負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  第一審原告

1  原判決を次のとおり変更する。

2  第一審被告は、第一審原告に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する平成一一年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも第一審被告の負担とする。

4  2につき仮執行宣言

二  第一審被告

1  原判決中、第一審被告敗訴部分を取り消す。

2  第一審原告の請求を棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも第一審原告の負担とする。

第二事案の概要

本件事案の概要は、原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」欄に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決書三頁末行の「うち四七通」から同四頁二行目末尾までを、「この全文書につき、特定の一〇名の者が閲覧したことに基づく違約金合計四四〇〇万円(五万円×八八通×一〇名=四四〇〇万円)のうち金一〇〇〇万円の支払を求めた事案である。」と改める。)。

第三争点に対する判断

一  争点に対する判断は、控訴の理由にかんがみ当裁判所の判断を次のとおり付加するほかは、原判決が「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」の欄に記載するところと同旨であるから、これを引用する。

1  争点1について

本件和解条項は、四項において第一審被告の義務を定め、六項において第一審原告の義務を定めている。しかし、本件和解条項は、両者の義務を特に関係付けて規定してはいない。すなわち、本件和解条項は、この両者の義務をそれぞれ別個独立に規定しているのであって、一方に義務違反があったからといって、当然に他方がその義務を免れるものではない。第一審被告は、第一審原告に本件和解条項六項に違反する行為があったとして、自らは本件和解条項四項の義務を免れるかのように主張するが、右のとおり、理由がない。

2  争点2について

本件和解条項五項は、第一審被告が同条項四項に違背した場合の違約金の算定について、「文書の交付一通あたり金五万円の割合による」と定めているが、「文書の交付」の概念については、特に明らかにしていない。しかし、本件和解条項は、「文書」について、「電子メールその他媒体の如何を問わず」(本件和解条項四項)として、電子メールも含めたあらゆる媒体の文書を含むとしているのであるから、「文書の交付」という概念も、それぞれの媒体の文書ごとにその概念を確定するのでなければならない。そこで、これを本件についてみるに、パソコン通信の電子会議室へのメールの送信は、特定の者に宛てて発するものではないが、いったんメールが電子会議室に送信されれば、あとは第三者においてこれにアクセスすることにより、いつでもその文書を閲覧することができるのであるから、電子会議室へのメールの送信は、それ自体が本件和解条項五項にいう「文書の交付」に当たると解するのが相当である。本件和解条項一項が、東京大学社会情報研究所教育部の研究生ら五〇余名に対する第一審被告の電子メールの送付を、その閲覧者ごとではなく、電子会議室へのメールの送信ごとに合計五回と数えているのも、このような考え方に基づくものであり、当事者の合理的意思にも合致するというべきである。

この点について、第一審原告は、第三者が電子会議室にアクセスするごとに文書が交付されたとみるべきであると主張するが、右のように、第三者の電子会議室へのアクセスは文書の閲覧に相当するものであり、これをもって交付ということはできないというべきであるから、第一審原告の主張は採用することができない。

二  したがって、第一審原告の本訴請求は原判決が主文第一項において認容した限度で理由があるのでその限度でこれを認容すべきであるが、その余は理由がないのでこれを棄却すべきものである。よって、右と同旨の原判決は相当であり、本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法六七条、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小川英明 裁判官 近藤壽邦 裁判官 川口代志子)

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