東京高等裁判所 平成12年(ラ)581号 決定
主文
本件抗告を却下する。
理由
第1抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨及び理由は,別紙「即時抗告申立書」(写し)記載のとおりである。
第2当裁判所の判断
1 当裁判所は,以下のとおり,本件抗告を不適法であり,却下すべきであると判断する。
(一) 本件後見人選任申立て等の経過
(1) 本件後見人選任申立ては,養母が死亡したため事件本人の親権者が存在しなくなったところ,事件本人の養育監護及び養母の遺産の遺産分割協議のため必要なので,実母である抗告人を事件本人の後見人に選任することを求めるというものである。
(2) 原審判は,そもそも養母と事件本人の養子縁組は,縁組意思がなく無効であるから,抗告人の申立ては前提を欠くとして,これを却下した。
(3) 抗告人は,後見人選任を却下する旨の審判に対し即時抗告をすることができる旨の規定はないが,
<1> 再度,後見人選任の申立てをしても,管轄裁判所が小規模であるため,常に同一の裁判官によって同一の判断をされ,他の裁判官による判断を求める機会が実質上奪われることになること,
<2> 事件本人の養子という法律上の地位を脅かすような重大な権利関係を確定するには,正式裁判による十分な証拠調べをすることが必要であり,かつ,三審制の裁判が保証されるべきであること,
<3> 利害関係人全員が養子縁組を有効として,その効力を争っていないから,養子縁組が有効であることを確認する訴訟を提起することができないこと,
以上の事実からすれば,家事審判規則87条2項の規定を類推適用して,即時抗告が認められるべきであり,即時抗告が認められないとすれば,抗告人の裁判を受ける権利が奪われる旨主張して,即時抗告をした。
(二) 家事審判法14条は,「審判に対しては,最高裁判所の定めるところにより,即時抗告のみをすることができる。」と規定しているところ,家事審判規則は,後見人選任申立てを却下した場合に即時抗告をすることができる旨の規定をおいていないから(家事審判規則82条ないし93条参照),後見人選任申立てを却下した審判について即時抗告をすることはできないといわざるを得ない。このように解したからといって,憲法32条の規定に違反するものではない(最高裁昭和32年10月23日第2小法廷決定・民集11巻10号1776頁参照)。
抗告人は,再度,後見人選任の申立てをしても,管轄裁判所が小規模であるため,常に同一の裁判官によって同一の判断をされ,他の裁判官による判断を求める機会が実質上奪われることになる旨主張するが,同一の判断をされるか否かは,抗告人の主張立証の問題に帰するものであり,同一の裁判官であれば,主張立証如何にかかわらず必ず同一の判断に達するというものではないから,抗告人の上記主張は採用することができない。また,抗告人は,事件本人の養子という法律上の地位を脅かすような重大な権利関係を確定するには,正式裁判による十分な証拠調べをすることが必要であり,かつ,三審制の裁判が保障されるべきである旨主張するが,本件は,後見人選任申立事件であり,その申立ての適否を判断する前提として養母と事件本人との養子縁組の効力について判断したとしても,その有効無効を確定するものではないから,抗告人の上記主張は採用することができない。さらに,抗告人は,利害関係人全員が養子縁組を有効として,その効力を争っていないから,養子縁組が有効であることを確認する訴訟を提起することができない旨主張するが,上記のとおり,後見人選任申立却下審判は,養子縁組の無効を確定する効力を有するものではない上,仮に,第三者との間で,養母と事件本人との養子縁組が有効である旨確認されたとしても,第三者との間の確認訴訟における上記判断が,後見人選任の審判を拘束するものではないし,逆に後見人選任の審判の結論が上記確認訴訟の結論を拘束することもないのであって,確認訴訟が提起できるか否かは,本件の結論を左右しないから,抗告人の上記主張も採用することができない。
2 よって,本件抗告は,不適法であるから却下することとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 塩崎勤 裁判官 小林正 裁判官 萩原秀紀)
別紙 即時抗告申立書<省略>