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東京高等裁判所 平成12年(行ケ)139号 判決 2000年10月05日

原告

代表者代表取締役

【A】

訴訟代理人弁護士

岩出誠

中村博

村林俊行

小林昌弘

被告

特許庁長官【B】

指定代理人

【C】

【D】

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  原告

特許庁が平成11年異議第90915号事件について平成12年3月28日にした決定を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨

第2当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は、商品区分第18類の「皮革、かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、かばん金具、がま口口金、傘、ステッキ、つえ、つえ金具、つえの柄、乗馬用具、愛玩動物用被服類」を指定商品とする、別紙本件商標欄表示の「黒塗りの象」の図形から成る登録第4260224号商標(平成9年12月9日登録出願。以下「本件商標」という。)の商標権者である。本件商標につき、平成11年7月13日に、商標法4条1項10号、11号、15号及び19号の全部又はその一部に該当するとして、異議申立てがあり、特許庁は、同申立てを平成11年異議第90915号として審理した結果、平成12年3月28日に「登録4260224号商標の登録を取り消す。」との決定をし、その謄本は同年4月15日原告に送達された。

2  決定の理由

別紙決定書の理由の写しのとおり、本件商標をその指定商品に使用する場合には、これに接する取引者・需要者は、容易に後記各引用商標ないしハンティングワールドエルエルシー(以下「ハンティングワールド社」という。)を想起するから、同社又は同社と組織的、経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあり、したがって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当すると認定・判断した。

3  引用各商標

ハンティングワールド社は、別紙AないしE商標欄表示の各商標(以下、別紙A商標欄表示の商標を、「引用A商標」といい、他についても、これにならう。また、各商標を総称して「引用各商標」という。)の商標権者である。

引用A商標は、昭和48年6月8日に登録出願され、旧第21類「バンド類、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花」を指定商品として昭和62年1月28日に設定登録された。

引用B商標は、平成元年8月22日に登録出願され、旧第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として平成4年5月29日に設定登録された。

引用C商標は、平成6年2月7日に登録出願され、第18類「皮革、かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、かばん金具、がま口口金、傘、ステッキ、つえ、つえ金具、つえの柄、乗馬用具、愛玩動物用被服類」を指定商品として平成9年9月12日に設定登録された。

引用D商標は、平成6年4月14日に登録出願され、第18類「スーツケース、アタッシュケース、書類入れかばん、手提げかばん、肩掛けかばん、ハンドバッグ、その他のかばん類、財布(貴金属製のものを除く。)、札入れ、小銭入れ、キーケース、その他の袋物、携帯用化粧道具入れ」を指定商品として平成9年11月28日に設定登録された。

引用E商標は、平成6年2月7日に登録出願され、第18類「皮革、かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、かばん金具、がま口口金、傘、ステッキ、つえ、つえ金具、つえの柄、乗馬用具、愛玩動物用被服類」を指定商品として平成9年9月12日に設定登録された。

第3原告主張の決定取消事由の要点

決定は、出所の混同のおそれについての認定・判断を誤ったものであって、この誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、違法として取り消されるべきである。

1  引用各商標の周知・著名性について

(1)  被告が証拠として提出したハンティングワールド社のブランド商品の宣伝広告は、「いずれもハンティングワールド」の宣伝広告であって、「象」の図形を紹介しているものではないから、引用各商標の周知・著名性を根拠付けるものではない。

(2)  被告は、ハンティングワールド社の商品を販売した取扱者を列挙し、各種書籍やハンティングワールド社自身が出稿した各種新聞等の広告を証拠として提出するが、それはあくまでハンティングワールド社の商標である「HUNTING WORLD」を著名にしただけで、象のマークを有名にしたとはいえない。

(3)  被告は、ハンティングワールド社の商標を付した商品の偽物が出回った事実を指摘するが、これはあくまで「HUNTING WORLD」の商標の偽物であり、本件商標とは関係がない。

2  出所の混同のおそれについて

本件商標については商品の出所の混同のおそれはない。

(1)  本件商標は、象の図形だけのものである。これに対し、引用各商標は、すべてが、象の図形と「HUNTING WORLD」の文字との組合せであって、象の図形だけのものはない。

(2)  象は、動物として子供から大人まで広く知られた有名なものであるから、一企業が使用したとしても、それに独占的な権利が発生することはない。

(3)  本件商標と引用各商標の象の図形は次の点で大きく異なる。

① 本件商標の象は、「アフリカ象」の特徴である大きな耳がよく見える。引用各商標の象は、耳が明確に描かれておらず、かえって小さく、そのため「東南アジアの象」に見える。

② 本件商標の象は目が描かれているのに対し、引用各商標の象にはそれがない。

③ 本件商標の象は、立ち止まっているのに対し、引用各商標の象は早足で移動している。

④ 本件商標の象は、鼻を空に大きく振り上げているのに対し、引用各商標の象は、鼻を巻き取っている。

⑤ 本件商標の象は、横向きであるのに対し、引用各商標の象は、後ろ向きである。

⑥ 本件商標の象は、尻尾が短いのに対し、引用各商標の象は、尻尾が長い。

⑦ 本件商標の象は、足が太いのに対し、引用各商標の象は、象にしては足が細すぎる。

第4被告の反論の要点

本件決定の認定・判断は正当であり、同決定に原告主張の違法はない。

1  引用各商標の周知・著名性について

引用各商標は、周知・著名性を有する。

(1)  ハンティングワールド社のバッグ等の販売取扱者は、全国的規模に及んでいる。ハンティングワールド社の、バッグは昭和54年ころから、腕時計は平成7年1月ころから継続して販売されており、同社は、他にキーケース、財布等をも販売している。

(2)  ハンティングワールド社は、探検家、冒険家、狩猟家として知られる【E】により1965年に設立された。同社のバッグは、同氏の狩猟等の経験に基づく創意工夫によって作られたものであり、特に「バチュークロス」と呼ばれる、三層構造を採用したバッグは、防水、断熱などの耐久性に優れているほか、バッグ内のカメラやめがねを保護する柔軟性、クッション性にも優れている旨、紹介されている。このように、ハンティングワールド社は、独自の機能性、耐久性を有するバッグの製造会社として広く取引者・需要者に認識されている。

(3)  ハンティングワールド社のバッグ、腕時計、キーケース、財布等には、引用C商標及び引用E商標が使用されている。これらの商標に描かれた「象」の図形については、「【E】がデザインしたアフリカ象」、「トレードマークのアフリカ象」、「『ハンティング・ワールドのロゴマークは牙のない子象』」、「ハンティングワールドは『牙のない子象』のマークで知られる。」、「『牙のない子象』が同社のシンボルマーク」、「シンボルである牙のない子象」などの形で紹介がされている。

このように、引用各商標中に描かれた「象」の図形部分は、「アフリカ象」「牙のない子象」をモチーフにしたものであって、ハンティングワールド社のシンボルマーク、トレードマークとして、取引者・需要者に広く認識されている。

(4)  ハンティングワールド社のバッグについては、偽物が出回っている事実があり、このことは新聞でも報道されている。これは、ハンティングワールド社のバッグが模倣の対象となるほどに周知・著名性を既に獲得していることを示すものである。

(5)  以上の事実によれば、引用各商標は、遅くとも、本件商標の登録出願時には、ハンティングワールド社の製造に係る機能性、耐久性に優れたバッグ等に使用される商標として、取引者・需要者に広く認識されていたことが明らかである。

2  商品の出所の混同のおそれについて

(1)  引用各商標中の「アフリカ象」「牙のない子象」をモチーフとする図形は、円輪郭及び円輪郭に沿うように描かれた「HUNTINGWORLD」の欧文字の中心に置かれて大きく描かれるなど、引用各商標の構成上、見る者の注意を引くように顕著に描かれ、看者に強い印象を与え、ハンティングワールド社のシンボルマーク、トレードマークとして、取引者・需要者に広く認識されている。

そうすると、引用各商標中の象の図形は、ハンティングワールド社の商品を識別する標識として、極めて強い自他商品の識別力を有するから、引用各商標に接する取引者・需要者は、象の図形部分のみに着目して識別することがあり得る。

(2)  本件商標と引用各商標中の象の図形を比較すると、次の共通した特徴が見い出せる

① 象を側面からシルエット風に表していること

② 象は、鼻を振り上げ、前足の一本を上げるなど、体全体に動きを感じさせること

③ 象には、牙が描かれていないこと

④ 象に牙がないため、未熟な子象らしさを感じさせること

⑤ 本件商標は、耳が大きく描かれ、アフリカ象の特徴を感じさせ、引用各商標の図形部分はアフリカ象を表したものとして知られていること

⑥ 象の全体的な表現が擬人化したものでないこと

このように、本件商標は、特徴となる多くの点で引用各商標と共通しているから、引用各商標中の「象」の図形部分を容易に連想、想起させ得る。

(3)  商標等をバッグに直接に付する方法として、商標等を円輪郭の中に表示する方法は、ハンティングワールド社以外の会社も普通に採用している。本件商標を上記の方法でバッグに使用した場合には、本件商標は、引用各商標中の象の図形部分を容易に連想・想起させ得る。

(4)  本件商標の指定商品中「かばん類」は、引用各商標の使用に係る商品である「バッグ」と同種の商品である。そして、本件商標をその指定商品である「かばん類」について使用した場合、取引者・需要者は、(1)ないし(3)の事情により、その商品がハンティングワールド社又は同社と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれがある。

第5当裁判所の判断

1  本件商標の商標登録出願時における商品の出所の混同のおそれについて

(1)  証拠(乙1ないし36号証、第37号証の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

ハンティングワールド社は、アメリカの探検家、狩猟家として著名な【E】(1937年(昭和12年)生まれ。以下「【E】」という。)によって、1965年(昭和40年)に設立された。【E】は、同人の探検、狩猟の体験に基づき、耐水性、対暑性、防塵性等の耐久性に優れた、軽く機能的なバッグの素材として「バチュークロス」(ウレタンコーティングしたナイロンオックスフォードに、厚さ1ミリのウレタンをはさみ、裏からナイロンジャージを貼り合わせた三層構造)を考案した。バチュークロスを用いたハンティングワールド社製造のバッグは、日本国内では、遅くとも昭和54年1月ころには、東京をはじめ、横浜、大阪、福岡等の有名百貨店等において販売されており、昭和60年までには、名古屋、神戸、広島、福岡、札幌、仙台、新潟、岐阜、金沢、京都、高知の有名百貨店や専門店等において、全国的に販売されるようになり、今日まで継続して、全国的規模で販売されている。

引用各商標は、いずれも、象の図柄と「HUNTINGWORLD」の文字が組み合わされた商標であり、かつ、別紙引用AないしE商標欄表示のとおり、中央部に同一形状の象の図形が描かれている点において共通している。引用C商標は、円形の皮ラベル上に打ち出され、あるいは商品上に円形の模様で打ち出されるなどして、ハンティングワールド社製造のバッグ等に付されて使用されている。また、引用E商標は、ハンティングワールド社の商品の広告に用いられている。これらの商標中に描かれた象の図形は、書籍等において、「【E】が自らデザインしたもので、アフリカゾウをモチーフにしてある。」、「マークのアフリカ象は、(中略)【E】のデザイン」、「トレードマークのアフリカ象」、「ハンティングワールドのロゴマークは、牙のない子象」、「牙のない子象のマーク(中略)で知られるハンティングワールド」、「牙のない仔象が同社のシンボルマーク」などと紹介されている。

昭和61年発行の「世界の一流ブランド 本物・ニセモノ大図鑑」と題する書籍には、引用各商標に酷似した標章を付したハンティングワールド社のバッグの偽物が出回っていることが紹介され、平成5年には、大手量販店で同様のハンティングワールド社のバッグの偽物が販売されたことが新聞で報道され、平成7年にも、日本国内でハンティングワールド社のバッグの偽物が出回っている旨が新聞で報道された。また、平成2年、5年、6年には、引用各商標に酷似した標章を付したハンティングワールド社のバッグの偽物を販売した卸業者が摘発されるという事件が発生した旨が、新聞で報道された。これらの紹介や報道を総合すると、ハンティングワールド社の引用各商標は、本件商標の登録出願時までに、これを模倣する者が現われるほどに顧客吸引力を有するに至っていたということができる。

以上の事実によれば、引用各商標中の、アフリカ象ないし牙のない子象の図形は、ハンティングワールド社及びその製造に係るバッグのシンボルマークとして著名であったことが認められる。

原告は、前記書籍等により著名になったのは、引用各商標のうち「HUNTING WORLD」の部分のみであって、象の図形自体が著名になったとはいえない旨主張するが、前記認定・判断に照らし採用することができない。

(2)  一般に、簡易、迅速を尊ぶ取引の実際においては、商標は、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどまでに不可分的に結合していない限り、常に必ずその構成部分全体によって称呼、観念されるというわけではなく、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、その結果、一個の商標から二個以上の称呼、観念の生ずることがあるのは、経験則の教えるところである(最高裁判所第1小法廷昭和38年12月5日判決・民集17巻12号1621頁参照)。

また、本件商標が使用される商品のうち「かばん類」等の商品の主たる需要者は、老人から若者までを含む一般大衆であって、その商品「かばん類」等に係る商標やブランドについて、詳しくない者や中途半端な知識しか持たない者も多数含まれている。そして、このような需要者が購入する際は、恒常的な取引やアフターサービスがあることを前提にメーカー名、その信用などを検討して購入するとは限らず、そのような検討もなくいきなり小売店の店頭に赴いたり、ときには通りすがりにバーゲンの表示や呼び声につられて立ち寄ったりして、短い時間で購入商品を決定することも少なくないものである(以上の事実は、当裁判所に顕著である。)。

したがって、本件商標についての混同のおそれの判断に当たっては、以上のような経験則、及び取引の実情における需要者の注意力を考慮して判断すべきである。

(3)  原告は、本件商標は象の図形だけのものであるのに対し、引用各商標は、すべてが象の図形と「HUNTING WORLD」の文字との組合せであるから、本件商標を使用しても商品の出所の混同のおそれがない旨主張する。

しかし、引用各商標は、象の図形を中央部に大きく表示し、文字部分を図形の周囲ないし上方にやや小さめに表示することにより、象の図形部分が独立して看る者の注意を引くように構成されていると認められる。また、引用各商標中の象の図形部分が、それ自体として、ハンティングワールド社及びその製造に係るバッグのシンボルマークとして著名であることは前記説示のとおりである。このような事実関係の下では、引用各商標の図形と文字とは、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどまでに不可分的に結合しているものと認めることはできない。したがって、原告の前記主張は、混同のおそれを否定する根拠とはならず、失当である。

(4)  本件商標の象と引用各商標の象は、いずれも象の全身の輪郭を側面方向から見たものを、シルエット風に表したものであること(原告は、引用各商標の象は後ろ向きであると主張するが、見る方向は微妙に異なるものの、おおむね側面から見たものといって差し支えない。)、象が右側を向いていること、鼻を振り上げており、振り上げた鼻が左向きに曲がり、先端が上方を向いていること、鼻の付け根の部分に下顎の輪郭が突き出て、口の部分を表現していること、象の牙が描かれていないこと、前足の一本をやや上げていることにおいて、共通点を有することが認められる。また、前記認定のとおり引用C商標は、円形の皮革製のラベル上に打ち出される等して商品に付されており、このように、商標等をバッグに直接に付する方法として、商標等を円輪郭の中に表示する手法が、一般的に採用されている方法であることは、当裁判所に顕著な事実である。このことに、前記認定の、引用各商標中の象の図形がハンティングワールド社のシンボルマーク、トレードマークとして取引者・需要者に認識され著名であることや、取引の実情における需要者(一般消費者)の注意力等を併せ考慮すると、本件商標が、円輪郭の中に標示される方法で、その指定商品である「バッグ類」等に使用された場合などには、これに接した需要者は、象の図形部分に着目して、引用各商標及びこれらを使用する特定の出所を想起し、その出所について混同を生じるおそれがあるものというべきである。

原告は、本件商標の象の図形と引用各商標の象の図形との相違点を指摘し、混同のおそれが認められない旨主張する。確かに、本件商標と引用各商標との間には原告主張のような相違点があることが認められるから、看者が注意深い者であるならば、あるいは看者がこれらを並べて同時に対比して看るならば、両者を混同することは生じ得ないかもしれない。しかしながら、本件で問題となる看者である需要者には注意深くない者も少なくないことは前述のとおりであり、商標法における混同のおそれが、時と所を異にした離隔的観察における問題であることはいうまでもないことであって、これらを前提にした場合には、上記混同のおそれを否定することはできない。引用各商標の象の図形が特定の出所に係るものとして周知であるという前認定の状況のもとでは、これとの間に相違点を有する商標も、その相違点が、象を擬人化して漫画的に表現するなど、これに接した需要者に明らかに上記特定の出所とは無関係のものであるとの観念を生じさせるようなものでない限り、混同のおそれを否定することはできないというべきであるのに、原告主張の相違点はいずれもそのようなものとは認められないからである(なお、本件商標の象の耳の輪郭や目は、皮革上に周囲と同一色で打ち出された場合などにはほとんど目立たないと認められるので、相違点としてさほど重視することができない。)。

(5)  また、仮に、上記相違点により、本件商標と引用各商標とを取り違えることがなく、商標自体同士の間では混同のおそれが認められないとしても、その場合には、前記の事情に鑑みると、本件商標に接した需要者は、引用各商標を使用する特定の出所又はそれと組織的、経済的に何らかの関係を有する者が使用する他の商標の一つであると誤認するおそれがあるというべきである。

(6)  原告は、象のような有名な動物の図形については、一企業が使用したとしても、それに独占的な権利が発生することはない旨主張する。しかし、ある商標が有名な動物の図形を用いているというだけで、商標法等による保護の対象とならないなどとは到底いうことができない。原告の主張は失当である。

2  決定時における商品の出所の混同のおそれについて

本件商標の商標登録時から決定時までの間に、前記1の認定に係る事情に変化があったものと認めるに足りる証拠はないから、決定時においても、前記1の認定に係る混同のおそれは、なお継続していたものと認められる。

3  以上のとおりであるから、原告主張の取消事由は理由がなく、その他決定にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない(なお、上述したところによれば、本件商標には商標法4条1項11号に該当する事由があることになり、したがって、同15号の適用はないことになるはずであるから(同15号括弧書き)、決定には法令の適用を誤った瑕疵があることになる。しかし、これは、決定の結論に影響を及ぼすものでないことが明らかであるから、決定を取り消すべき瑕疵には当たらない。)。

第6よって、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山下和明 裁判官 山田知司 裁判官 阿部正幸)

<以下省略>

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