東京高等裁判所 平成12年(行ケ)169号 判決 2000年11月29日
原告
X
代表者代表取締役
【A】
訴訟代理人弁護士
岩出誠
同
外山勝浩
同
中村博
同
村林俊行
同
小林昌弘
被告
特許庁長官【B】
指定代理人
【C】
同
【D】
補助参加人
ザポロ/ローレンカンパニーリミテッドパートナーシップ
代表者
【E】
訴訟代理人弁理士
【F】
同
【G】
同
【H】
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 原告
特許庁が平成10年審判第18535号事件について平成12年4月27日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は、指定商品を商標法施行令別表による第14類「貴金属、貴金属製食器類、貴金属製のくるみ割り器、こしょう入れ、砂糖入れ、塩振出し容器、卵立て、ナプキンホルダー、ナプキンリング、盆及びようじ入れ、貴金属製の花瓶及び水盤、貴金属製針箱、貴金属製宝石箱、貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て、貴金属製のがま口及び財布、貴金属製靴飾り、貴金属製コンパクト、貴金属製喫煙用具、身飾品(カフスボタンを除く)、カフスボタン、宝玉及びその模造品、宝玉の原石、時計、時計の部品及び附属品、記念カップ、記念たて」とし、別添審決書写しの「本願商標」欄記載のとおり、円輪郭内に、山並みを背景にして馬に乗ったポロ競技の2人のプレーヤーの図形を描き、そのプレーヤーの後部に椰子のような1本の木を上記円輪郭をはみ出して描き、さらに上記円輪郭の下部に重ねて横長四角形を配し、その四角形内に「ELDORADO POLO CLUB」の欧文字を書して成る商標(以下「本願商標」という。)について、平成6年8月25日に商標登録出願(商願平6-85318号)をし、平成7年3月1日付け手続補正書により、指定商品を第14類「貴金属製きせる、きせる筒、たばこ入れ、たばこケース、たばこホルダー、灰皿、パイプ、その他の貴金属製喫煙用具、イヤリング、カフスボタン、貴金属製き章、貴金属製バックル、貴金属製バッジ、貴金属製ボンネットピン、ネクタイ止め、ネクタイピン、ネックレス、ブレスレット、ペンダント、宝石ブローチ、メダル、指輪、ロケット、その他の身飾品、時計、時計の部品及び附属品」と補正したが、平成10年10月28日に拒絶査定を受け、同年11月25日、これに対する不服の審判を請求した。
特許庁は、同請求を平成10年審判第18535号事件として審理した上、平成12年4月27日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年5月1日、原告に送達された。
2 審決の理由
審決は、別添審決書写し記載のとおり、本願商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「POLO」の文字又はポロ競技のプレーヤーの図形部分に注目し、そのデザインに係る商品に用いられる、横長四角形中に記載された「Polo」の文字、「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形から成る周知の各商標(以下「引用商標」という。)を連想、想起し、当該商品がアメリカ合衆国在住のデザイナーである【I】又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのようにその商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、本願商標は、商標法4条1項15号に該当するとした。
第3原告主張の審決取消事由
審決は、本願商標について商品の出所の混同のおそれの認定判断を誤ったものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 国内ポロブランドについて
審決は、「POLO」商標及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形から成る商標は、【I】のデザインに係る商品であることを表示するものとして周知であると認定するが、「POLO」の語を用いた商標としては、ラルフ・ローレン以外にも日本国内で「POLO CLUB」、「BEVERLY HILLS POLO CLUB」、「SANTA BARBARA POLO&RACQUET CLUB」等が有名であり、これらの国内ブランドで20年前より年間総売上2000億円を達成し、ラルフ・ローレンの年間300億円の売上の数倍の市場を誇っているほか、その宣伝、広告の規模もラルフ・ローレンの10倍を超える。そして、ラルフ・ローレンの商品が高級品として、ポロシャツの場合デパート等で8000円以上の価格で売られているのに対し、上記の国内ポロブランドは、それより下の中級品として若者を中心に圧倒的支持を得ている。
これに対し、審決は、本願商標をその指定商品に使用した場合、【I】のデザインに係る商品と混同するおそれがあると判断するが、商標の一部に「POLO」が組み込まれたとしても、審決のいうような出所の混同を生じることはない。国内ポロブランドとラルフ・ローレンとの区別がつかないような消費者はあらゆるブランドにおいて同様に誤認するもので、議論の対象外である。
ところで、東京高等裁判所平成12年1月27日判決(平成11年(行ケ)第253号事件、以下「別件判決」という。)は、「PALM SPRINGS POLO CLUB」商標につき、ラルフ・ローレンに係る「POLO」商標との関係で商品の出所混同のおそれを否定し、拒絶不服審判において請求を不成立とした審決を取り消しており、これと同様の事実関係にある本件についても、この判断が尊重されるべきである。
2 「POLO」が一般用語であることについて
「POLO(ポロ)」の名称は、もともと、ペルシャで始まりイギリスで盛んになった乗馬球技を示すスポーツ名であり、一般用語にすぎない。このことは、日本国内の辞書、辞典類計414件の記載から明らかであり、外国の辞書、事典にも同様に記載されている。他方、これらの辞書、辞典類において、「POLO」とラルフ・ローレンの関係が記載されているものはない。
なお、被告は、ポロ競技は日本ではなじみがないスポーツであると主張するが、日本ポロ協会は、財団法人日本体育協会の公認団体として認められているほか、英国チャールズ皇太子がポロ競技を好むことは有名で、多く報道されていること、アメリカ映画「プリティー・ウーマン」(1990年公開)の主演男優【J】のポロ・シーンが同映画のヒットで有名になったこと、【K】著作の「ポロ、その歴史と精神」が朝日新聞社より出版されていること等から、日本においても知られているというべきである。特に、近年におけるマスコミの発達、インターネットの普及等を考えると、実際にスポーツを行ったり観戦することとスポーツ名としての認識が確立することとは無関係というべきである。
また、日本では「POLO(ポロ)」は、「ポロシャツ」の略称として普通に用いられる言葉であり、消費者に認知されている。このことは、辞書、商品カタログ、雑誌広告などの記載から明らかである。
3 「ELDORADO POLO CLUB」が実在のポロクラブであることについて
本願商標の文字部分である「ELDORADO POLO CLUB」は、アメリカ合衆国に実在する全米最大のポロクラブの名称である。
原告は、同クラブと契約して、スポーツイメージのライセンス商品の展開を行うことを考え、本願商標の登録出願をしたものであって、同クラブから本願商標の登録出願の同意を得ている。
4 「POLO」の登録商標について
【I】のデザインに係る商品の主力である平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令の商品区分第17類についての「POLO」の登録商標(登録第1434359号)は、昭和55年9月29日に他人によって登録され、その後譲渡を受けたポロ・ビーシーエス株式会社が現在の商標権者となっている。したがって、ラルフ・ローレンは、他人の登録商標を日本国内で有名にしたというにすぎない。また、仮に、ラルフ・ローレンが「POLO」の登録商標について何らかの権利を有しているとしても、ポロ・ビーシーエス株式会社が「米国ポロ・ロ―レン社とは、契約により友好関係にあります。」と広告していること、ビバリーヒルズポロクラブが「自分たちのブランドは、ラルフ・ロ―レンとの共存関係を維持していくことが確認されている。」と宣伝していることからすると、【I】自身は、自己の権利を放棄し、又は他の「POLO」ブランドの存在は、何ら自己の営業活動に実害がないと表明しているものにほかならない。
第4被告の反論
1 国内ポロブランドについて
被服を始めとするファッション関連の商品に、「Polo」の文字、「by 【I】」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形」などの各標章(以下「ラルフ・ローレン標章」という。)を使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、【I】のデザインに係る商品であると認識する。したがって、ラルフ・ローレン以外にも「POLO」の語を含む商標を使用する者が多数存在し、それらの売上がラルフ・ローレンの商品の売上と拮抗しているという実情があるとしても、我が国において「POLO」といえば、ラルフ・ローレンがファッション関連の商品に使用する標章を連想、想起させるものであるから、取引者、需要者に商品の出所についての混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
なお、別件判決は、その認定判断に誤りがあるから、本件について参考にされるべきではない。本件と同種の事案については、東京高等裁判所の圧倒的多数の判決において、商品の出所混同のおそれがあるとされており、本件についても、これらの判決を参考とすべきである。
2 「POLO」が一般用語であることについて
原告は、「POLO」はポロ競技を示す一般用語ないしポロシャツの略称として認知されていると主張するが、ポロ競技は、我が国においては、その愛好者は極めて少なく、なじみの薄いスポーツである。また、仮に、「(ポロPOLO)」の語がポロシャツの略称であるということができるとしても、それは本願商標の指定商品については、ポロシャツが含まれているものではなく、十分に自他商品の識別機能を発揮するものである。
なお、原告は、「POLO」とラルフ・ローレンの関係を記載した辞典類はない旨主張するが、「ランダムハウス英和大辞典(第2版)」(株式会社小学館1998年1月10日発行、乙第1号証)には、「Polo」の語の意味として、「商標 ポロ:米国のRalph Laurenデザインによるバッグなどの革製品」、「ポロ→Poloby【I】」の記載がある。
3 「ELDORADO POLO CLUB」が実在のクラブであることについて
我が国において「ELDORADO POLO CLUB」がクラブ名として知られているとはいえない上、これが実在するクラブであるか否かと、それを商標として商品に使用した場合に、商品の出所混同のおそれがあるか否かは別のことである。
4 「POLO」の登録商標について
原告主張の「POLO」の登録商標についてラルフ・ローレンが商標権者でないとしても、ラルフ・ローレン標章は、被服を始めとするファッション関連の商品分野において、【I】のデザインに係る被服等について使用される標章を総称するものとして、取引者、需要者に広く認識されているものである。また、ラルフ・ローレンが他の「POLO」ブランドの日本国内での展開に協力し、自己の営業活動に影響がないと判断することと、審決の判断する商品の出所混同のおそれとは別な次元のことである。
第5当裁判所の判断
1 商品の混同のおそれについて
(1) 乙第2~第11、第12号証の1、2、第13号証の1、2によれば、以下の事実を認めることができる。
【I】は、1939年(昭和14年)生まれのアメリカの服飾等のデザイナーであり、アメリカのファッション界で最も権威があるとされるコティ賞を1970年、1973年の2回にわたり受賞し、1974年の映画「華麗なるギャツビー」で主演した【L】の衣装デザインを担当するなどして、世界的に知られるようになった。ラルフ・ローレン標章は、【I】のデザインに係る商品に使用されている。我が国においては、西武百貨店が、昭和52年ころから【】Iのデザインに係る紳士服、婦人服、眼鏡等の輸入、販売をしており、平成元年ころ及び平成4年ころには、第三者がラルフ・ローレン標章ないしこれに酷似した標章を付した偽ブランド商品を販売して摘発されるという事件が発生するほど、ラルフ・ローレン商標は顧客吸引力を有していた。また、本願商標の商標登録出願前から、各種雑誌等において、【I】のデザインに係る紳士服、婦人服、眼鏡等の商品が一流ブランドないし流行ブランドとして、「ポロ」、「」POLO、「Polo」のブランド名で紹介され、一般新聞においても、「『Polo』(ポロ)の商標で知られるラルフローレンブランド」(平成元年5月19日付け朝日新聞夕刊、乙第13号証の1)、「ラルフローレンのポロのマーク」(平成3年12月5日付け朝日新聞大阪地方版/京都版、乙第12号証の2)、「アメリカの人気ブランド『ポロ』(本社・ニューヨーク)のロゴ『ポロ・バイ・ラルフ・ローレン』」(平成4年9月23日付け読売新聞朝刊、乙第13号証の2)などの記載が用いられるよう、にラルフ・ローレン標章は、「ポロ」「(POLO」ないし「Polo」)の商標の名で知られ、これを付した商品もブランドとして「ポロ」「(POLO」ないし「Polo」)と呼ばれていた。
以上の事実によれば、本願商標の商標登録出願時(平成6年8月25日)までには、ラルフ・ローレン標章は、「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標などと呼ばれ、これを付した商品もブランドとして「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と呼ばれて、紳士服、婦人服、眼鏡等のファッション関係商品について【I】のデザインに係る商品に付される商標ないしそのブランドとして著名であったことが認められる。
(2) 次に、本願商標の構成について検討するに、本願商標の図形部分は、円輪郭内に、山並みを背景にして馬に乗ったポロ競技の2人のプレーヤーの図形を描き、そのプレーヤーの後部に椰子のような1本の木を上記円輪郭をはみ出して描いたものであるところ、このうち、円輪部は商標全体の縁取りであり、山並み及び木は単なる風景であるのに対し、馬上のポロ競技者の図形が商標の中央部分に大きく表示されて看者の注意をひくところである。しかし、この馬上のポロ競技者の図形は、「ポロ」の観念を生じるが「ELDORADO POLO CLUB」という観念を想起させるものではない。
一方、本願商標の文字部分は、16文字から成り、また、これから生じる「エルドラドポロクラブ」の称呼は10音で構成され、その外観、称呼とも、全体が一体不可分のものとはいえない。そして、本願商標の図形部分と文字部分との結びつきも、一体不可分であると認めることはできない。
(3) 以上の認定判断に基づいて、本願商標についての商品の出所混同のおそれについて判断するに、本願商標が、その指定商品のうち「イヤリング、カフスボタン」等のファッション関連商品に使用された場合、これに接した取引者、需要者は、「ポロ」の観念を生じる上記図形及び「ポロ」の文字部分に着目して、「ポロ」の観念を生じるラルフ・ローレン標章を想起、連想し、【I】又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(4) 乙第1、第13号証の3~5及び弁論の全趣旨によれば、平成10年1月10日小学館発行の「ランダムハウス英和大辞典(第2版)」の「Polo」の欄に「(商標)ポロ:米国の【I】デザインによるバッグなどの革製品」及び「ポロ→Polo by 【I】」との記載があり、また、新聞においても、「ポロ競技のマークで知られる米国のファッションブランド『POLO(ポロ)』の製品に見せかけた眼鏡枠」の販売行為の摘発記事(平成5年10月13日付け読売新聞大阪版朝刊、乙第13号証の3)、「米国ブランド『ポロ』などのマークが入った偽物のセーターやポロシャツ」の販売目的所持行為についての有罪判決の記事(平成11年6月8日付け朝日新聞夕刊、乙第13号証の4)、「米国の衣料品ブランド『ポロ・ラルフローレン』の偽物セーター」の販売行為の摘発記事(平成11年9月9日付け日本経済新聞朝刊、乙第13号証の5)などが掲載されたことが認められ、以上を総合すれば、前記1の認定に係る商品の出所混同のおそれは、審決時においてもなお継続していたものと認めることができる。
2 原告の主張について
(1) 国内ポロブランドについて
原告は、ラルフ・ローレン標章以外にも「POLO」の語を含む商標は多数存在し、これらはラルフ・ローレンとは別のブランドとして消費者に認知されている旨主張する。
確かに、甲第2号証の1~197によれば、本願商標の商標登録出願当時、既に「POLO」の文字を含む商標が多数存在し、特に被服等を含むファッション分野の商品に使用されていたことが認められるが、これらの証拠は、本願商標とは別の商標に関するものにすぎず、本件全証拠に照らしても、本願商標がその商標登録出願当時、取引者、需要者に広く知られていたことを認めることはできない。したがって、本願商標と関係のない国内ポロブランドが多数存在しているとしても、本願商標についての商品の出所混同のおそれが否定されるものではないというべきである。
原告は、「PALM SPRINGS POLO CLUB」商標に係る別件判決の存在を指摘するが、本件とは事案を異にするものであって、上記の判断を左右するものではない。
(2) 「POLO」の語が一般用語であることについて
「POLO(ポロ)」の語は、乗馬球技であるスポーツ名を示すものであるが、前示のとおり、ラルフ・ローレン標章がラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品に付される商標としてその取引者、需要者に周知であり、これが「ポロ」の称呼及び観念を生じるから、本願商標の指定商品で本願商標を付されたものに接した取引者、需要者は、本願商標の「ポロ」の文字部分及びポロ競技者の図形部分に注目するのであって、このことは、「POLO」がポロ競技を示す一般用語であることと矛盾するものではない。
原告は、「POLO」はポロシャツの略称として普通に用いられているとも主張するが、本願商標がポロシャツ以外の指定商品に使用された場合に、取引者、需要者が「POLO」の語をポロシャツを示すものとして認識することはないというべきであるから、この点についての原告の主張も理由がない。
(3) 「ELDORADO POLO CLUB」が実在のポロクラブであることについて
原告は、「ELDORADO POLO CLUB」がアメリカ合衆国に実在するポロクラブであると主張するところ、甲第11号証、第12号証の1ないし3によれば、同クラブがアメリカ合衆国に実在する全米最大のポロクラブであることは認められるものの、このことが我が国のファッション関連商品の取引者、需要者に知られていることを認めるに足りる証拠はない。
したがって、同クラブがアメリカ合衆国に実在するという事実は、我が国における本願商標についての商品の出所混同のおそれの判断を左右するものではない。
(4) 「POLO」の登録商標について
原告は、ラルフ・ローレンが「POLO」の登録商標(登録第1434359号)の商標権者ではなく、また、仮に、ラルフ・ローレンが何らかの権利を有していたとしても、その権利を放棄し、又は他の「POLO」ブランドの存在が自己営業活動に実害がないと表明している旨主張する。
しかし、ラルフ・ローレンが上記登録商標の商標権者でないことは、本願商標についての商品の出所混同のおそれの判断に何ら影響を及ぼすものではないし、原告の主張するように、ラルフ・ローレンが、一部の企業との間で「POLO」ブランドの使用に関して友好関係を構築し、その旨を外部的に宣伝するという事実があったとしても、そのような事実から、ラルフ・ローレンが自らの上記権利を放棄したとか、他の「POLO」ブランドの存在が自己の営業活動に実害がない旨を表明をしたというような事実を推認することはできない。
3 以上によれば、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 篠原勝美 裁判官 石原直樹 裁判官 長沢幸男)