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東京高等裁判所 平成12年(行ケ)365号 判決 2000年10月30日

原告

ホーユー株式会社

代表者代表取締役

【A】

訴訟代理人弁理士

【B】

【C】

被告

特許庁長官【D】

指定代理人

【E】

【F】

主文

特許庁が異議2000-90221事件について平成12年8月17日にした決定を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた判決

1  原告

主文と同旨

2  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第2当事者の主張

1  原告

(1)  特許庁における手続の経緯

原告は、別添決定謄本写しの末尾「本件商標」欄に記載した構成より成り、指定商品を商標法施行令別表による第3類「せっけん類、香料類、化粧品、歯磨き」とする登録第4333644号商標(平成10年11月26日登録出願、平成11年11月12日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。

エッチ・ツー・オー・プラス・リミテッド・パートナーシップ(以下「異議申立人」という。)は、平成12年3月17日、本件商標につき登録異議の申立てをした。

特許庁は、同申立てを異議2000-90221事件として審理した上、平成12年8月17日、結論を「登録第4333644号商標の登録を取り消す。」とする決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は、同年9月4日に原告に送達された。

(2)  本件決定の理由

別添決定謄本写し記載のとおりである。

(3)  本件決定取消事由

本件商標が商標法4条1項10号、11号、15号及び19号に該当し、その登録は取り消されるべきであるとする異議申立人の登録異議の申立てに対し、本件決定は、結論では「登録第4333644号商標の登録を取り消す。」としながら、その理由中では、本件商標が当該各号に違反して登録されたものではないとするものであるから、本件決定は、理由を付せず、又は理由に食い違いがあり、違法として取り消されるべきである。

2  被告

原告の主張は全部認める。

第3当裁判所の判断

1  原告の主張(1)(特許庁における手続の経緯)及び同(2)(本件決定の理由)は、当事者間に争いがない。

2  原告主張の本件決定取消事由について

前示争いのない本件決定の理由によれば、本件登録異議の申立ての理由は、①本件商標が、異議申立人の有する登録第4295930号商標(平成8年3月26日登録出願、平成11年7月16日設定登録、以下「引用商標」という。)と類似する商標であって、指定商品も類似するものであり、また、②異議申立人の有する引用商標及び商標「H2O PLUS」は、本件商標の登録出願前、異議申立人の化粧品等を表示するものとして米国及び日本国内において周知、著名であったところ、本件商標は、これらに類似するものであり、本件商標をその指定商品に使用した場合には、異議申立人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあり、さらに、③本件商標は、異議申立人の商標に化体した信用にただ乗りしようとして採択されたものと考えられ、不正の目的をもって使用をするものであるとして、本件商標が、商標法4条1項10号、11号、15号及び19号に該当するというものである(決定謄本2頁7行目~21行目)。

これに対し、本件決定は、その理由中において、本件商標と異議申立人の引用商標及び商標「H2O PLUS」とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても非類似の商標であって、本件商標により異議申立人を想起させることはないから、引用商標及び商標「H2O PLUS」が化粧品に使用され、需要者にある程度知られていたとしても、本件商標を指定商品に使用した場合に、その商品が異議申立人又は異議申立人と関係を有する者の業務に係るものであるかのように商品の出所の混同を生ずるおそれがなく、また、出所表示機能を希釈化させたり、その名声を毀損させるなど、不正の目的をもって出願されたものとも認められないから、本件商標は、商標法4条1項10号、11号、15号及び19号に違反して登録されたものではないと判断している(同2頁22行目~3頁13行目)。

そうすると、本件決定の上記理由に従えば、本件商標の登録を維持する旨の結論となるべきものであるのに、本件決定は、その結論では、本件商標の登録を取り消すとしているのであるから、結論と理由との間に食違いがあることは明白であり、したがって、本件決定はこの点において違法として取消しを免れない。

3  よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 篠原勝美 裁判官 石原直樹 裁判官 長沢幸男)

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