東京高等裁判所 平成12年(行コ)207号 判決 2000年11月08日
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一控訴の趣旨
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人が控訴人に対し平成九年八月二九日付けでした控訴人の平成七年分の所得税の更正処分のうち純損失額六二六七万七四五九円、還付金の額に相当する税額四五万七〇四一円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(但し、いずれも異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。
三 被控訴人が控訴人に対し平成九年八月二九日付けでした控訴人の平成八年分の所得税の更正処分のうち総所得金額〇円、還付金の額に相当する税額七〇万〇四五〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。
第二事案の概要(略記等は、原判決の例に従う。)
一 本件の概要
本件は、控訴人が被控訴人に対し、平成七年分の不動産所得の金額の計算上、本件土地を物納するために支出した本件費用等は必要経費に算入できないとした本件各更正処分等の取消を求める事案である。
控訴人は、原審と同じように、本件費用等は譲渡費用に該当しないし不動産所得の金額の計算上必要経費に当たると主張した。
二 前提となる事実
原判決の事実及び理由の「第二の一 前提となる事実」欄記載のとおりであるから、これを引用する。
三 本件各更正処分等の適法性に対する被控訴人の主張
原判決の事実及び理由の「第二の二 本件各更正処分等の適法性に対する被告の主張」欄記載のとおりであるから、これを引用する。但し、原判決一九頁八行目の「一万二二五〇円」を「一二万二二五〇円」に改める。
四 争点及び争点に対する当事者の主張
原判決の事実及び理由の「第二の三 争点及び争点に対する当事者の主張」欄記載のとおりであるから、これを引用する。
第三当裁判所の判断
当裁判所も、本件費用等は不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することができず、本件各更正処分等に違法はないと判断する。その理由は、次に付加するほか、原判決の事実及び理由の「第三 当裁判所の判断」欄記載のとおりであるから、これを引用する。
(控訴人の当審主張について)
控訴人は、原判決には① 本件費用等(本件解除損害金、本件取壊費用及び本件資産損失)は、そもそも不動産所得の金額の算定上必要経費となるか否かの判断が欠けている、② 譲渡費用に該当する場合には右の必要経費に該当しない法的根拠が明らかにされていない、③ 本件費用等は譲渡費用に該当しないのにこれを認めた誤りがあると主張している。
しかしながら、原判決の説示するとおり、本件解除が本件土地を更地として物納するためにされており、これに伴って支出された本件解除損害金及び本件取壊費用は、いずれもその原因が資産の譲渡の対価を得るためのものと認められ、また、本件資産損失も本件土地を更地として物納するためにされているから、右損失は譲渡のために生じたことは明らかである。本件費用等が譲渡費用に該当する以上、不動産所得の金額の計算上必要経費に該当するかどうかを問わず、租税特別措置法第四〇条の三により、個人がその財産を相続税法第四一条第一項の許可を受けて物納した場合には所得税法第三三条の適用については当該財産の譲渡がなかったものとみなされ、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する余地はないから、右①の主張は理由がない。次に②及び③の主張は、要するに原審と同じ趣旨の主張を繰り返すもので、原判決の説示するとおり、いずれも理由がない。
第四結論
以上によれば、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 江見弘武 裁判官 小島浩 裁判官 原啓一郎)